世界各国で海洋汚染の原因となる事例が発生しています。
特に多いのが、油の流出です。
近年でも環境に影響する大規模な事例が起き、ニュースになりました。
この記事では油流出による海洋汚染と、パンデミックの影響、ペットボトルやビニールなど海洋ごみでの海洋汚染についての事例をご紹介します。
海洋汚染の現状や概要については下記の記事もあわせてご覧ください。
事例①:スリランカ沖でのコンテナ船火災
2021年5月20日、スリランカ沖のコンテナ船で火災が発生し、燃料タンクから石油が流れ、さらに大量のプラスチックが海岸に漂着するというスリランカ史上最悪の海岸環境災害が起きました。
インド西部グジャラートからスリランカ・コロンボに向かっていたシンガポール船籍「エクスプレス・パール」には硫酸が25トン、化学物質や化粧品などコンテナ1500個が積まれていました。
8個のコンテナが海に落下し、そのうち1個はコロンボから北に4キロ離れたネゴンボという観光地に漂着しました。
スリランカ海軍により乗員25人は全員退避し、大規模な消火活動が行われたが消火には2週間ほどかかり、6月1日に鎮火。
この事故により、コンテナから膨大な量のプラスチックが流出したことで、西海岸を中心に海岸は広範囲にはわたってプラスチックの粒で覆われました。
環境や周辺水域を保護するために緊急措置として漁業が禁止となり、漁業を収入源としている住民の大打撃となっています。
しかし、漁が再開されてもマイクロプラスチックによる海洋生態系への影響と、有害物質やマイクロプラスチックによる人体への影響により、風評被害が起こる可能性が懸念されています。
また、プラスチック粒が砂に混ざることで海岸の温度が上昇し、ウミガメの産卵に影響がでると言われています。
さらに、コンテナ船が沈没した後、ウミガメ176匹、イルカ20頭、クジラ4頭の死骸が海に打ち上げられたと政府関係者が発表しています。
大量の石油や硫酸、化学物質、プラスチックにより、スリランカの絶命危惧種や、海洋生物に多大な影響を与え、生殖過程を危うくする可能性があります。
スリランカ海洋環境保護局は、「スリランカ史上最悪のビーチ汚染」だと発表しています。
事例②:イスラエルの海岸に大量のタールが漂着
2021年2月1日にイスラエルの海岸、南部から北部にかけてタールに襲われていると政府公式アカウントで発表しました。
イスラエル自然公園局によると、原因は沖合の船舶から流出している疑いとのこと。
タールの塊は、地中海に面した同国の沿岸から漂着しているとみられています。
海鳥やカメなどがタールにより油まみれでべたべたになっており、野鳥生物の生存に影響が危ぶまれています。
海岸は立ち入り禁止となり、兵士やボランティアによって清掃活動がおこなわれていますが、大規模な除去作業となるため、安全を取り戻すには時間がかかるだろうとみられています。
事例③:パンデミックにより各地の海洋汚染が悪化
フィリピンのコバン・コーヴと呼ばれるダイビングスポットに、使い捨てマスクやフェイスシールド、防水シートやペットボトルがサンゴ礁に打ち上げられて、海洋汚染が悪化しています。
アジア開発銀行によると、フィリピンの首都マニラでは、パンデミックの影響で使用した使い捨てマスクなど、医療ごみが1日あたり280トンも増えていると発表しています。
環境保護団体によると、使い捨てマスク使われているプラスチックがマイクロプラスチックになり、魚やカメなどそこに住む生物が誤飲してしまう可能性を懸念しています。
フィリピン政府はマニラ近郊の水路を清掃していますが、パンデミックによる医療ごみの増加に対策実施が追いついていないのが現状です。また、同様にマスクやゴミの漂流は、トルコのボスポラス海峡、フランスのコートダジュール、イギリスのロンドンなどで起きています。
不適切に廃棄された医療廃棄物が世界各地で見つかっており、環境活動家はパンデミックの影響で海洋汚染が急速に進むと警告しています。
事例④:モーリシャス沖で貨物船座礁し大量の重油が流出
2020年7月25日、インド洋の島国モーリシャス沖で日本の大型貨物船「わかしお」が座礁。
船は座礁後ふたつに割れ、前方部分は沈められましたが、天候不良を理由に作業ができないまま放置された後方部分から、約1000トンの重油が流出しました。
この事故は、生物学上最悪の災害と言われています。
なぜなら、この場所は、魚が約800種類と海洋哺乳類が17種、カメ2種を含む約1700種にも及ぶ生き物がいる、生物学上貴重な地域で生物多様ホットスポットでした。
広大なマングローブに重油が入り込み、油を分解する薬剤などは生態系を壊す可能性があり使用できず、重油の除去は手作業で行われ時間がかかっています。
またサンゴ礁も同様に広範囲に被害が広がっており、被害回復までの時間は予測できないと言われています。
貴重生物が生息し、自然豊かな島国のマングローブやサンゴ礁の環境資源への影響が懸念されています。
また、重油による被害は、海洋生物の生息地だけでなく食料の共有源も破壊し、人々の生活への影響も大きく長期化すると予想されています。
事例⑤:オーシャン・クリーンアップによる太平洋ゴミベルト
北カリフォルニア州沖からハワイ沖に位置に「太平洋ゴミベルト」と呼ばれる、アジアや北アメリカなどを中心に世界からゴミが流れつく場所があります。
面積は日本の4倍以上で、160万平方キロメートルを超えていると言われています。
起業家ボイヤン・スラット氏が立ち上げたオランダのNPO「オーシャン・クリーンアップ」と研究者により、2015年、18の船舶が参加し太平洋ゴミベルトの調査が行われました。
研究者らは、113万6145個、668キログラムのゴミを回収し、その99.9%はプラスチックだったと発表しました。
また、飛行機で上空から調査しデータを精査した結果、太平洋ゴミベルトには少なくとも1兆8000個、7万9000トンのゴミがあると推測しています。
さらにこのうち、1兆7000億個は0.05~0.5センチメートルほどのマイクロプラスチック(プラスチックの小さな破片)とみています。
回収されたプラスチックゴミの総重量の46%は、「ゴースト・ネット」と呼ばれる廃棄された漁業の網でした。
この網は海を漂いながら、生き物に絡みついたり、プラスチックをより小さな破片にしているといいます。
扱いやすく耐久性のあるプラスチック製品は分解されず、ペットボトルで約400年、釣り糸などテグスは600年と、一度海にでてしまうと半永久的に海に浮遊し残り続けるのです。
調査はまだ北太平洋の一角のみでしか行われていないので、はるかに大量のプラスチックごみ、マイクロプラスチックゴミが海中のより深い所にあると考えられています。
NPO「オーシャン・クリーンアップ」は今度もゴミの回収の計画を進めたいと考えていますが、多くの研究者はゴミを海に捨てないことが最善策だとしているようです。
まとめ
海洋汚染の原因となっている事例を5つご紹介しました。
海洋汚染は、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」に掲げられている世界で解決したい重要課題のひとつでもあります。
また、過剰なプラスチックごみの生産は目標12「つくる責任 つかう責任」にも関係しています。
広い海のことを考えると、自分一人が捨てるごみなんてちっぽけな存在かもしれません。
でも、その積み重ねにより深刻な海洋汚染につながっているのです。
1人ひとりの行動を見直し、きれいな海を残すために自分に何ができるのか、考えてみましょう。