私たちは当たり前のようにネットから情報を手に入れています。しかし、不十分な教育、インフラの不整備、貧困などの理由で情報通信技術(ICT)にアクセスできない人はどうでしょうか。必要な情報にアクセスできず、そこから教育的、経済的、そして社会的な格差が生まれています。この格差が「情報格差(デジタルデバイド)」です。 本記事では、情報格差の実態と原因、解決に向けた取り組みを解説します。
情報格差とは
「情報格差(デジタルデバイド)」とは、情報通信技術(ICT)、特にインターネットの恩恵を受けられる人と受けられない人の間に生じる経済的・社会的な格差 を表す言葉です。
1990年代にインターネットが登場して以降、デジタル化が急速に進みました。日常的にインターネットに接し、デジタル情報にアクセスできる人ほど多くの情報を得られる一方、アクセスできない人は機会を逃しがちです。身近な例では、同じ商品でもネットの方が安く買えることが多く、進学や就職など人生に関わる場面でも情報の有無が差を生みます。
国際電気通信連合(ITU)が2024年11月に公表した「Facts and Figures 2024」によると、世界人口の約68%(約55億人)がインターネットを利用 しています。一方で、約26億人がまだオフラインの状態にあり、高所得国では93%、低所得国では27%と、国や地域による格差が大きいことが示されています。
国や地域における情報格差の実情
国家単位で現れる情報格差を「国家間デジタルデバイド」、国内の都市部と地方部の格差を「地域間デジタルデバイド」といいます。
日本のインターネット普及状況
総務省の令和7年版情報通信白書によると、2024年時点で日本のインターネット普及率は個人ベースで86.2% に達しています。一方で、年齢や収入、地域によって利用率に差があります。70歳以上では利用率が大きく低下し、年間収入が低い層ほど利用率が下がる傾向があります。また、スマートフォンでの利用率が60%を超えていない地域も存在します。
海外における情報格差の事例
スウェーデンではキャッシュレス化が最も進んでいるとされ、「Swish」というモバイル決済が普及し、現金を使える場所が限られています。その結果、ITを使えない高齢者や障がい者、移民といった社会的弱者の日常生活に不平等が生じ、国内問題となっています。
インドではジェンダー格差が情報格差に直結しています。携帯電話の保有率は男性79%に対し女性52%、インターネット利用は男性45%に対し女性30%にとどまっているとの調査があります。背景には、社会的な認識や家庭内での利用管理のあり方などが影響しているとされています。
情報格差が生まれる主な原因
インフラが整っていても、以下のような要因で情報格差は生じます。
収入格差による情報格差
PCやスマートフォンを購入し、通信料を支払うには一定の経済的余裕が必要です。生まれ育った環境が貧困だと、インターネット利用が困難な場合があります。総務省の情報通信白書では、世帯年収が高い層ほどインターネット利用率が高く、年収200万円未満の層では利用率に開きが見られると報告されています。
地理的制約による情報格差
過疎地や離島では、情報通信インフラの整備が遅れ、インターネットへのアクセスが制限されがちです。太平洋の島国などでは海底ケーブル敷設の支援が計画されているものの、政治的な対立などから実現が進まないケースもあります。
ネットリテラシーによる情報格差
インターネットの活用には、端末を自分で使いこなすスキルが必要です。これまでインターネットが身近になかった世代は、新しい技術を学ぶことに躊躇し、利用が広がりにくい状況があります。また、ネット上にはデマや詐欺も多く、質の高い情報を見極める情報リテラシーも重要です。リテラシーが低いと「ネットは家族に頼り切り」といった状況が生まれます。
コロナ禍以降の情報格差の拡大
新型コロナウイルスの拡大はデジタル化を加速させる一方で、情報格差を広げる要因にもなりました。リモートワークにはオンラインでのコミュニケーションやデータのやりとりが不可欠であり、自宅にICT環境がない人やITリテラシーが低い人は仕事上で不利な状況に陥りました。
授業のオンライン化が進むなか、パソコンのない学生や通信費用を払えない学生は教育を受けることが困難になりました。ワクチン予約がネット中心となった際には、ネットに不慣れな高齢者が不利になる事例も報告されています。
情報格差を解決するための取り組み
情報格差の解消には、以下のような対策が行われています。
学校におけるICT教育
家庭や学校におけるICT教育の不足は情報弱者を生みます。世界中でICT教育、情報リテラシー教育、プログラミング教育などを学校教育に取り入れる動きが広がっています。日本でもGIGAスクール構想により、児童生徒1人1台の端末整備が進められました。
無料での端末・回線の設置・貸与
経済的な理由で端末を入手できない人向けに、学校・図書館・役所などの公共スペースに端末を設置したり、教育機関で端末を貸与する取り組みが行われています。教育現場の格差解消が重視されています。
高齢者向けの教育
高齢層のインターネット利用者は年々増加していますが、ITリテラシーが低いため、膨大な情報から信頼性の高い情報を選ぶことが難しい場合があります。端末の扱いがわからず利用を諦めている人も少なくありません。高齢化社会において、高齢者へのIT支援は豊かな老後を送るためにも重要です。
まとめ|誰もが情報にアクセスできる社会へ
デジタル化により世の中は便利になりましたが、その恩恵を受けられない人々は、情報取得の機会を逃すことで格差が生じています。誰もが等しく必要な情報にアクセスできるよう、情報に触れる必要性と重要性を啓発し、インフラ整備や教育の充実を進めていくことが求められています。まずは身近な人にデジタル活用の手助けをしたり、地域のIT講座に参加したりするなど、一人ひとりができることから始めてみませんか。

