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人や国の不平等をなくそう

情報格差(デジタルデバイド)とは?実態と原因、解決に向けた取り組みを紹介!

私たちは当たり前のようにネットから情報を手に入れています。しかし、不十分な教育、インフラの不整備、貧困などの理由で情報通信技術(ICT)にアクセスできない人はどうでしょうか。

必要な情報にアクセスできず、そこから教育的、経済的、そして社会的な格差が生まれています。この格差が「情報格差(デジタル・デバイド/デジタル・ディバイド)」です。今回は、情報格差について詳しく見ていきましょう。

情報格差とは

情報格差とは

冒頭でも触れましたが、「情報格差(デジタル・デバイド/デジタル・ディバイド)」とは、情報通信技術(IT)(特にインターネット)の恩恵を受けることのできる人とできない人の間に生じる経済格差を表す言葉です。

1990年代にインターネットが登場し、さまざまな場面でデジタル化が進みました。日常的にインターネットに接し、デジタル情報にアクセスできる人ほど多くの情報を得ています。

それまでは、血縁関係をはじめとした組織・人脈のつながりが多様な人や、情報の多い都会に住む人ほど、情報に触れる機会があったのですが、現代ではインターネットがそれを担うようになったのです。

身近な例だと、同じ商品でもネットの方が安く買えることが多いです。それだけではありません。有益な情報にアクセスできるかどうかで、進学や就職など、人生に関わるような事柄においても差がつくようになりました。

通信インフラが貧弱だったり、貧困により通信端末を得られなかったり、使いこなせないと、さまざまな場面における情報収集で不利になります。それは多くの機会を逃すことにつながってしまうのです。

最近では、新型コロナウイルスの影響で情報格差はより鮮明になっています。例えば、感染リスクを避けるためにテレワークをする、買い物をネットで行う、ワクチンをいち早く接種する、学校授業をオンラインにする……これらは全てIT化が進み、PCやスマホを使いこなせる人のみが受ける恩恵です。情報格差は、いまやあらゆる場面で生じていると言えます。

国や地域の情報格差の実情

国や地域の情報格差

国際電気通信連合(ITU= International Telecommunication Union)が、2018年末時点でのインターネット普及率を調査したデータによると、世界人口全体に占めるインターネットユーザーは総人口の51.2%となる39億人に達しました。

世界中の2人に1人はネットにアクセスできるということになります。しかし、その内訳は国や地域によって隔たりがあるのが現状です。先進国は80%以上の普及率であるものの、開発途上国では50%を切っているところも珍しくありません。また、同じ国でも都市部と地方間における普及率は異なります。

このように、国家単位で見たときに現れる情報格差を「国家間デジタル・デバイド」、国内の都市部と地方部の情報格差のことを「地域間デジタル・デバイド」といいます。

日本でも、例えば東京の中心部と山間部では、テレビのチャンネル数や販売される本・雑誌の数、博物館や図書館などの数や質に大きな差があります。ここに、インターネット環境も加わったことでより大きな差が生じるようになりました。

では実際に海外で起きている情報格差の事例について取り上げていきます。

海外で起きている情報格差の事例

情報格差の事例:何が起こっているのか

情報格差により実際にどのようなことが起きているのか、ここではスウェーデンの事例とインドの事例を紹介します。

◇スウェーデンにおける情報格差

キャッシュレス化が最も進んでいると言われているスウェーデンでは「swish」というモバイルマネーが普及し、現金を使える場所は非常に限られています。

公衆トイレさえもコインを利用することができないほど電子マネー化が進んだ結果、ITを使うことができない高齢者や障がい者、移民といった社会的弱者の日常生活に不平等が生まれ、国内問題になっています。

参照元:Sweden’s Cashless Experiment: Is It Too Much Too Fast?|npr

◇インドにおける情報格差

インドではジェンダーの格差が情報格差に繋がり、女性に対する不利益をさらに助長する結果となっています。

インドにおける携帯保持率は、男性の79%に対し女性は52%、インターネット利用は男性の45%に対し、女性は30%にとどまっています。

この背景には、「結婚前に携帯電話を持つことは、女性の評判を落とす」「公共の場で女性が携帯電話で話をするのは好ましくない」といったインド社会の認識に加え、女性が携帯を持つことができても、家でのインターネット利用は男性が管理することが多いことなどが影響しているとみられます。

参照元:India’s gendered digital divide: How the absence of digital access is leaving women behind|observer research foundation

情報格差はなぜ生まれる?主な原因

個人間、集団間の情報格差

上記では、国や地域における情報格差の実情をを解説しましたが、実際にインフラ環境が整っていても、その他のあらゆる原因によって情報格差は生じてしまいます。それはなぜでしょうか。
ここでは主な原因として下記3点を解説していきます。

  • 収入格差による情報格差
  • 地理的制約による情報格差
  • ネットリテラシーによる情報格差

収入格差による情報格差

まず考えられるのは、収入格差です。PCやスマートフォンがないとインターネットに接続できません。端末を購入するだけでなく、ネット回線の使用料金を支払う必要があります。

生まれ育った環境が貧困だと、インターネットの利用どころではないという場合も考えられるでしょう。

総務省が発表した「令和2年版 情報通信白書」によると、2019年の所属世帯年収別インターネット利用率は、400万円以上の各階層で9割を超えている一方、200万~400万円のラインでは86.5%、さらに200万円未満では80.7%と開きが見られます。

参照元:総務省|令和2年版 情報通信白書|インターネットの利用状況

地理的制約による情報格差

地理的に条件の不利な過疎地や離島は、情報通信のインフラが整備されにくく、インターネットへのアクセスが制限されがちです。
太平洋の島国などでは海底ケーブル敷設に対する支援が計画されてはいますが、政治的な対立などからなかなか実現まで漕ぎつかないのが現状です。

ネットリテラシーによる情報格差

次に、知識とリテラシーです。ネットの活用には、PCやスマートフォンを自分で使いこなせることが必要です。
これまでインターネットがない世界で十分に事が足りていた世代は、新しい技術を学ぶことを面倒がってしまい、ネット利用がなかなか普及しづらい状況です。

また、情報格差は、単にネットにアクセスできるかどうかだけではありません。ネット上には多くのデマや詐欺の情報もあふれています。質の低い情報を切り分けて、正しい情報を見極めるには情報リテラシーも必要です。
ネットリテラシーが低い高齢者は、操作技術とリテラシーを身に着けるための意欲がないと「ネットは家族に頼り切り」といった状況が生まれます。

高齢者にとっての情報格差は大きな問題であり、下記のコラムでも詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

コロナ禍で拡大する情報格差

コロナ禍で拡大する情報格差

また近年の傾向として、新型コロナウイルスの拡大はデジタル化を急速に加速させる一方で、結果的に情報格差を広げる原因ともなりました。
ロックダウンなど外出の制限により、リモートワークが急速に普及しましたが、その為にはオンラインでのコミュニケーションや、データのやりとりが必要不可欠です。

結果、自宅にICT環境がない人やITリテラシーがない人は、仕事を行う上で不利な状況に陥っています。

そして、コロナ禍は学生の間にも情報格差を生み出しました。
授業をオンラインに切り替える学校が増えるなか、パソコンのない学生や毎月の通信費用を払えない学生は、教育を受けることが困難になっています。就職活動中の学生の間にも情報格差が生じるケースがあったと言います。

新型コロナワクチンの予約は電話とネットによる「早いもの順」が主流となっていましたが、ネットに不慣れな高齢者や容易にネットにアクセスできない人にとっては明らかに不利なシステムであり、取り残され不安に感じる人も多かったようです。

情報格差を解決するには?

情報格差を解決するには?

情報格差を解決するには多くの対策が考えられます。ここでは実際に行われている下記3点について紹介します。

  • 学校におけるICT教育
  • 無料で利用できる端末・回線の設置・貸与
  • 高齢者向けの教育

学校におけるICT教育

新型コロナの影響で、感染リスクを考慮して早々に在宅のオンライン授業に移行した私立校もあれば、なかなか踏み切れずに感染者を出した学校もあります。

それは、各家庭のネット環境やリテラシーがバラバラで、オンライン授業以前にタブレット端末などの操作が難しかったり、安定してつながる回線環境を整えるのが難しいからです。

家庭内、または学校におけるICT教育の不足は情報弱者を生みます。未来世代の子供たちがネットを使えないことによって生じる格差は、大人世代よりはるかに大きくなるでしょう

そのため、世界中でICT教育や情報リテラシー教育、プログラミング教育などを学校教育に取り入れる動きが高まっています。

無料で利用できる端末・回線の設置・貸与

家庭の金銭的な理由から、PC端末やスマートフォンが入手できず、情報弱者になってしまうケースは、特に小学生~高校生に大きな影響を及ぼします。

お金の面で情報を得られない人たちのためにも、学校・図書館や役所などの公共スペースに端末を設置したり、学校などの教育機関で買い上げた端末を貸与するなどして、教育現場の格差をまずはなくすようにつとめる必要があるでしょう。

高齢者向けの教育

統計上は、高齢層におけるインターネット利用者は、年々増加しています。しかし、多くのシニア層はITリテラシーが低いため、膨大な情報量から信頼性の高い情報を選択することが困難です。

そもそも端末の扱い方がわからないために、スマートフォンなどの利用が困難であり、コロナ禍で対面での教育が難しいことから、使いたくても使えない現状となっています。

また、コロナ禍で外出したり遠方に住む家族ともなかなか会えない状況でネットに繋がれないことは、孤立感を深める要因ともなります。
高齢化社会における高齢者へのIT支援は、豊かな老後を送るためにも必須です。

情報格差を無くすためには日本に限らず他の国でも様々な取り組みが行われています。詳しくは下記の記事をご覧ください。

まとめ

まとめ

デジタル化で世の中はとても便利になりました。自宅に居ながらにして、いつでもどこでも必要な情報を集めることができ、人とのコミュニケーションも可能です。

しかし、その便利さを享受できない人たちは、これまで以上に情報取得がもたらす機会を逃すことによって生じる格差も生み出しました。
皆が等しく必要な情報にアクセスできるように、情報に触れる必要性と重要性を啓発していく必要があるでしょう。

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