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海の豊かさを守ろう

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の概要、ターゲット、取り組み内容とは?2026年の現在地と日本の動き

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の概要、ターゲット、取り組み内容とは?

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、海洋汚染の防止、水産資源の持続的な利用、海の生態系の保全を、10のターゲットで定めた国際目標です。2015年に国連で採択された17のゴール、169のターゲットのうちの一つで、「海のごみ」と「魚の獲りすぎ」が二本柱になっています。

ただ、ターゲットの多くは2020年や2025年といった期限を先に迎えています。概要を知った読者が次に気になるのは、「期限が過ぎた今、海はどうなっているのか」「日本では何が動いているのか」「自分は何を選べばよいのか」ではないでしょうか。この記事では、2026年10月時点で確認できる最新の公開資料をもとに、その3点に答えていきます。

この記事で学べること

  • 目標14の10のターゲットが何を求めているか
  • 乱獲と海洋ごみについて、国際機関の最新データで見る現在地
  • 「2048年に魚がいなくなる」など、よく聞く数字の読み方
  • 公海条約やWTOの漁業補助金協定など、2025年から2026年に動いた国際ルール
  • 日本の漁業管理、水産エコラベル、海ごみ調査の実践と、読者が今日できること

目標14の10のターゲットを3つの塊で読み解く

目標14は全部で10のターゲットからできています。番号順に読むと分かりにくいので、「何を守るのか」「どう管理するのか」「誰のためのルールか」という3つの塊に分けると整理しやすくなります。

汚染、生態系、酸性化を扱う14.1〜14.3

14.1は、陸上の活動に由来する海洋ごみや栄養塩を中心に、あらゆる海洋汚染を防止し大幅に減らすことを求めています。期限は2025年までで、すでに過ぎています。14.2は、海と沿岸の生態系を管理・保護し、回復のための行動を取ることです。14.3は、二酸化炭素の吸収で進む海洋酸性化の影響を最小限にすることを掲げています。

この3つに共通するのは、原因の多くが海の外、つまり陸の暮らしや産業にあることです。海のごみも、酸性化の背景にある温室効果ガスも、元をたどれば私たちの生活圏から出ています。

漁業と保護区、補助金を扱う14.4〜14.6

14.4は、漁獲を効果的に規制し、違法・無報告・無規制(IUU)漁業や破壊的な漁法をやめ、科学的な管理計画で資源を回復させることを定めています。14.5は沿岸域と海域の少なくとも10%を保全すること、14.6は過剰漁獲につながる補助金を禁止し、IUU漁業を助長する補助金をなくすことです。いずれも期限は2020年でした。

資源を守るには、漁獲量のルールだけでなく、保護区と、漁船に対するお金の流れまで整える必要があります。この3つがセットで置かれているのはそのためです。

人、知識、ルールを扱う14.7、14.a、14.b、14.c

14.7は、小さな島国や後発開発途上国が海洋資源の持続可能な利用から得られる経済的利益を増やすことです。14.aは海洋科学の知識と研究能力の向上、14.bは小規模・零細な漁業者が海洋資源や市場を利用できるようにすること、14.cは国連海洋法条約に基づいて海の法的枠組みを実施することです。

守るためのルールが、漁業で暮らす人の生活を奪っては意味がありません。この塊は、環境保全と生計の両立をめざす部分です。

期限が過ぎた今、海の現在地はどうなっているか

2020年や2025年の期限を過ぎたターゲットが多いため、「達成できたのか」を確認する必要があります。結論から言うと、国連の報告でも、進捗は十分とは言えない状態が続いています。

水産資源は「約6割が持続可能な水準」

国連食糧農業機関(FAO)が2026年に公表した「世界漁業・養殖業白書」(SOFIA 2026)によると、評価対象の水産資源のうち、生物学的に持続可能な水準にある資源の割合は2023年時点で62.4%でした。2年前の報告で64.5%とされた水準から2ポイント強低下しています。ただし、この低下には手法の更新や評価対象の追加も影響しているとされ、すべてが実態の悪化とは言い切れません。

一方、漁獲量で見ると、持続可能な資源から獲られている割合は72.6%です。大きく生産性の高い資源ほど管理が進んでいる傾向があり、資源の数で見るか、獲れた量で見るかで印象が変わります。地域差も大きく、地中海と黒海では127資源のうち持続可能な水準にあるのは58資源(45.7%)でした。

国連が示す進捗の遅れと資金不足

国連の2025年の報告では、乱獲状態にある資源の割合は2019年の35.4%から2021年には37.7%に上昇したとされています。海洋空間計画に取り組む国と地域は2024年に126に増えましたが、正式に計画を承認したのは45にとどまります。海洋酸性化の指標である海面の平均pHも低下が続いています。

目標14は、17のゴールの中で最も資金が不足しているゴールの一つとされています。2025年6月にフランスのニースで開かれた国連海洋会議でも、実施のための資金をどう増やすかが大きな論点になりました。期限を過ぎたターゲットが多いのは、技術がないからというより、お金と実施体制が追いついていないためです。

数字の年次が違うときの読み方

国連の報告の37.7%(2021年)とFAOの新しい62.4%(2023年)は、評価の手法や対象が更新されており、単純に並べて「改善した」「悪化した」と判断するのは避けたほうがよいデータです。比べるなら、同じ版の報告の中で年次の推移を見るのが安全です。

よく聞く2つの数字を、出典に戻って読み直す

この分野には、インパクトの強い数字がいくつも流通しています。誤解されたまま広がると、「もう手遅れだ」という諦めにつながりかねないので、出典に戻って確認しておきます。

「2048年に魚がいなくなる」は予言ではない

2006年に科学誌サイエンスに載った論文は、当時の減少傾向が続けば2048年には現在漁獲されている水産資源が崩壊状態になりうる、と報じられました。ただし、欧州委員会の共同研究センターの研究者は、観測データ上の最大の減少幅が約3割だったにもかかわらず、時間の経過だけを説明変数として100%の崩壊まで45年先を外挿している点を批判しています。後の分析でも、この論文を引用した664本の論文のうち、2048年の予測に触れていたのは11%でした。

つまり「2048年に魚がいなくなる」は確定した未来ではなく、傾向を延長した場合の試算が一人歩きした言い方です。そのうえで、FAOの最新データでも資源の約4割弱が持続可能な水準を下回っている点は、重く受け止める必要があります。

「年間800万トン」は2010年の推計の幅の中の数字

海に流れ出るプラスチックごみの量としてよく引用される「年間約800万トン」は、2015年にサイエンスに載ったジャムベック氏らの推計に由来します。この研究は2010年の192の沿岸国を対象に、海に流入したプラスチックを480万〜1,270万トンと推計しました。800万トン前後という数字は、この幅の中の代表的な値として広まったものです。

したがって、「現在ちょうど年間800万トンが流れている」という意味ではありません。それでも、環境省は、海ごみの約8割が陸域、つまり街から出ていると紹介しています。出どころが街なら、街での減らし方で変えられる余地があるということです。

数字を使うときの3つの確認

引用するときは、年次、対象範囲、推計か実測かの3点を確認すると誤解を避けられます。読者が自分で調べるときも、「何年の、どこの、誰の推計か」を見る習慣が役に立ちます。

2025〜2026年に動いた国際ルール

ここ1〜2年で、目標14に直結する国際ルールが相次いで動きました。進んだものと、止まったものを整理します。

WTO漁業補助金協定が発効

2025年9月15日、WTOの漁業補助金協定が、必要な111の加盟国・地域の受諾を得て発効しました。IUU漁業につながる補助金や、すでに乱獲状態にある資源を対象にした補助金を禁じる内容で、目標14.6に対応します。WTOとして初の環境・持続可能性に関する多国間協定とされます。日本は2023年7月に受諾しています。

一方で、漁船の建造や近代化への補助金など、漁獲能力を高める補助金への規律は十分でないとの批判もあり、監視と執行が今後の課題です。

公海条約(BBNJ協定)が発効

どの国の管轄にも属さない公海の生物多様性を守る協定(BBNJ協定、通称「公海条約」)は、2026年1月17日に発効しました。日本は2025年12月に加入書を国連事務総長に寄託しており、日本についても同日から効力が生じています。公海での海洋保護区のような区域型管理ツール、環境影響評価、海洋遺伝資源の利益配分などを定める枠組みで、第1回締約国会議は2027年1月にニューヨークで開かれる予定です。環境省は、この協定の環境影響評価に関するガイドラインも公表しています。

プラスチック条約は2025年8月に合意できず

プラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際条約をめざす交渉は、2025年8月にジュネーブで再開会合(INC5.2)が開かれました。目的、製品設計、放出・流出、廃棄物管理などは条文の文言交渉まで進みましたが、生産の扱い、プラスチック製品、資金などで各国の隔たりが埋まらず、合意には至りませんでした。

日本は2019年のG20大阪サミットで「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提唱し、2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにする目標を共有してきました。2023年のG7広島サミットでは、先進国は2040年までに前倒しすることで合意しています。条約は未成立でも、この目標年は今も有効な物差しです。

日本の制度と実践を見る

国際ルールが決まっても、現場で動くのは国内の制度と、漁業者、企業、市民です。日本の実践を3つの角度で見ていきます。

漁業管理の中心は漁獲可能量(TAC)

2020年12月に施行された改正漁業法で、日本の資源管理は漁獲可能量(TAC)による管理が基本になりました。水産庁は、漁獲量に占めるTAC対象魚種の割合を8割にする目標を掲げています。当初の期限は2023年度でしたが、2023年度末時点で6.5割にとどまったため、2024年3月のロードマップで2025年度までに8割へと改めました。

具体的には、カタクチイワシ太平洋系群が2025年1月から、ブリが同年7月から、特定水産資源として段階的にTACの運用が始まっています。身近な魚がルールの対象になってきたということです。目標年度を過ぎた今、達成状況は水産庁の公表資料で確認できます。

水産エコラベルを使う小売と漁業者

売り場に届く段階では、水産エコラベルが選ぶ手がかりになります。MSC認証は持続可能な天然漁業、ASC認証は責任ある養殖、MEL(マリン・エコラベル・ジャパン)は日本発の水産エコラベルです。大手小売でもMSC、ASC付き商品の取り扱いが広がっています。

ただし、ラベルがない魚が悪い魚というわけではありません。認証には審査費用と手間がかかるため、小規模な漁業者ほど取得しにくい面があります。これは目標14.bが扱う「小規模漁業者の参加」の問題とつながっています。ラベルは判断材料の一つとして使い、ラベルの有無だけで線を引かないほうが現実的です。

「調べるごみ拾い」が示した街由来のごみ

海ごみの出どころを自分たちで確かめる取り組みもあります。荒川クリーンエイド・フォーラムは1994年から、ごみを拾うだけでなく種類ごとに数えて記録する「調べるごみ拾い」を続けています。2014年の調査では、荒川で拾われる散乱ごみの約76%が容器包装で、ペットボトルが6年連続で個数の1位でした。

こうした記録は、「どの商品が、どこで流れ出ているか」を行政や企業との対話の材料にできます。秋は各地で海岸や河川の清掃活動が開かれやすい時期で、地域の催しに参加するだけでも、自分の暮らしと海のつながりを具体的に見ることができます。

暮らしの中で選べること

個人の行動だけで海が変わるわけではありません。それでも、買い物と身の回りの習慣には、選べる場面がいくつかあります。

魚を選ぶときの小さな基準

魚売り場では、MSC、ASC、MELのラベルがあれば、一つの目安にできます。ラベルがない場合も、産地や漁法の表示を見たり、普段あまり手に取らない魚種を試したりすることで、特定の魚に偏った需要を和らげられます。「未利用魚」と呼ばれる、味はよくても流通しにくい魚を扱う店や通販を選ぶのも一つの方法です。

流出源になりやすい身近なごみを減らす

海ごみの多くが街由来で、荒川のデータでも容器包装が中心だったことを踏まえると、使い捨て容器を減らすことは筋が通っています。マイボトルを使う、レジ袋や過剰包装を断る、ごみ箱のふたを閉めて風で飛ばないようにする、といった行動です。完璧を目指さなくても、ペットボトルの購入を週に数本減らすだけで、拾われやすいごみの量は変わります。

応援という選び方

海を守る活動をしている団体への少額の寄付や、地域の清掃イベントへの参加も選択肢です。自分に合った関わり方を一つ決めておくと、続けやすくなります。

まとめ

SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、10のターゲットで、海洋汚染の削減、水産資源の持続的な管理、生態系の保全、小規模漁業者の参加を求めています。2020年や2025年の期限を過ぎた今も、FAOの最新データでは資源の約6割しか持続可能な水準にない一方、漁獲量で見ると約7割が持続可能な資源から来ていて、実態は一言で語れません。

2025年から2026年にかけては、WTOの漁業補助金協定の発効、公海条約の発効と、国際ルールが前に進みました。プラスチック条約のように、合意に至っていない課題も残っています。日本ではTACの対象拡大、水産エコラベル、市民の「調べるごみ拾い」などが、制度と暮らしの両面から海に関わっています。

私たちにできるのは、数字の出典を確かめて冷静に受け止め、買い物と日々の習慣の中で選べるものを選ぶことです。まず1つだけ、次に魚を買うときにラベルや産地表示を見てみてください。

  • 目標14の10のターゲットは、守る対象、管理の方法、人と制度の3つの塊で整理できる
  • FAO最新版では、資源数の約62.4%、漁獲量の72.6%が持続可能な資源由来とされる
  • 「2048年に魚がいなくなる」は傾向を延長した試算で、確定した未来ではない
  • 2025年にWTO漁業補助金協定、2026年に公海条約が発効し、プラスチック条約は合意に至っていない
  • 日本ではTAC管理の拡大、水産エコラベル、街由来ごみの調査が進み、読者は魚選びとごみ削減から関われる

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事

河川海洋ごみ問題解決を目指すNPO法人にて勤務。 海洋プラスチックを使用したアップサイクルアクセサリーブランドの立ち上げ責任者や広報担当として活動。 出産を機にSDGsに興味を持ち、前職の人材業界や金融業界などでの経験を活かして「わたしたちにできること」にフォーカスしながら情報を発信中。

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