「2050年には海のプラスチックごみの総量が魚の総量を超える」という話を聞いたことがありますか?
2006年に、アメリカの科学情報誌サイエンスでも2048年までに、海にいる全ての魚がいなくなる可能性があると発表されています。
また環境保全団体WWFでは、2019年に「平均すると人は1週間にクレジットカード1枚分(約5g)のプラスチックを摂取していることが分かった」とも発表されています。
美しい海を守れないということは、海の生物の枯渇危機だけでなく、人体にも悪影響が出で来る危険性もあります。
SDGsでも、目標14「海の豊かさを守ろう」という項目が設けられていて、世界でも海をきれいにし海洋資源を守っていこうという動きが出てきています。
そこで今回は、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の概要やターゲット、日本や世界での取り組み内容について、まとめてご紹介します。
そもそもSDGsとは?
Sustainable Development Goalsの略で、持続可能な開発目標として、2015年の国連サミットにより加盟国の完全一致で採択されました。
2030年までに環境や資源を大切にしながら、全ての人々がより良い暮らしをしていくことができる世界を目指すといった国際的な目標です。
その為の17のゴールと169のターゲットから構成されていて、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを宣言しています。
参照元:外務省|SDGsとは
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の概要とは?
現在、年間800万トンものプラスチックごみが海に流れ出てしまっていると言われています。
これは15tトラックに満載されたプラスチックごみが、1分間に1回、海へ放出されている計算になります。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の最重要課題の1つになっているのが、河川海洋ごみ問題です。
また、乱獲により増えすぎた漁獲量が原因で、海にいる魚の量が減ってしまったという事実もあるため、それぞれの原因に対しての対策を明確に「ターゲット」とし示しています。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」のターゲットと実現方法は?
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」は、全部で10個のターゲットから作られています。
それぞれのターゲットの中身をまとめると、河や海や大気の汚染をなくすよう管理していくことに加え、漁獲量や範囲を調整したり、海をきれいにしていくための研究に励んだりしながら、どの国も取り残されないように協力していくといった内容です。
目標を細分化することで、もれなく海と海洋資源を回復・保護し、継続的に利用していける様な未来を目指しています。
参照元:SDGs Journal|SDGs 目標14 海の豊かさを守ろう プラスチックの量が魚を超える?
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の取り組み例
では実際にSDGs目標14「海の豊かさを守ろう」を達成するために、どのような取り組みが行われているのでしょうか?
国内外の事例をまとめてみました。
海外の事例(1)
約2憶2,000万円の寄付金を集めた「海を救いたい高校生」考案の海ごみ回収ロボット
ビル・ゲイツさんやスティーブ・ジョブズさんが登壇したこともある、講演会を配信するNPO団体が行うイベント「Ted Delft」
2012年、当時17歳だったボイヤン・スラッドさんが、海洋ごみ問題解決方法についてのスピーチを行いました。
その内容は、全長約600mの浮きが潮の流れや自然エネルギーを利用し、海に浮かぶ大量のごみを回収・リサイクルすることができる海洋ごみ回収ロボットです。
この画期的で斬新な提案を当時17歳の青年が発表したことで瞬く間に拡散されたスピーチ動画は、多くの人の心を動かし目標額を上回る200万ドル(約2憶2,000万円)以上もの寄付金額が集まりました。
実際のシステムの運用は試行錯誤を続けている段階ですが、若者が河川海洋ごみ問題に興味を持ち自らが解決方法を考え世界に発信したことが問題解決への大きな一歩になったと感じます。
参照元:Ted×Tokyo|海の自浄作用を進化させる方法
参照元:BRIDGESTONE|高校生が世界を変える⁉太陽光と海流で海をキレイに「The Ocean Cleanup」
海外の事例(2)
6ドルの「プラスチックごみ」が雇用を生み、貧困で苦しむ人を救う「PLASTICS FOR CHANGE」
企業から支払われた10kgあたり6ドル(約660円)をごみ収集をする方たちの賃金に充てたり、プラスチックごみを利用して、リサイクルプラスチック製品を作ったりしているのが「PLASTICS FOR CHANGE」です。
以前からSDGsに、関心の高い化粧品ブランドの「The Body Shop」も「PLASTICS FOR CHANGE」を通して、自社の製品にフェアトレードリサイクルプラスチック容器を使用するようになりました。
また、実は海ごみは約8割が陸から発生していると言われています。
フェアトレードリサイクルプラスチックが普及することは、街のごみを海に流れ出さないようにするだけでなく、街でごみを拾って生活している路上生活者の方へ適正な賃金を支払うこともできるのです。
参照元:PLASTICS FOR CHANGE|THE WORLD’S LARGEST AND MOST TRUSTED SOURCE OF FAIR-TRADE VERIFIED RECYCLED PLASTIC
参照元:日本財団|【増え続ける海洋ごみ】海ごみの7〜8割は街由来。その流出原因を探る調査から分かったモラルでは解決できない社会課題
日本事例(1)
“2048年問題”解決を願う海鮮居酒屋「四十八漁場」
ダボス会議での海ごみの総量が、魚の総量を上回るという“2048年問題“の発表を聞き、立ち上がった企業がありました。
株式会社エーピー・ホールディングスの運営する「四十八漁場」は、2048年以降の海の豊かさを守るために、漁師と直接契約を結び、流通などの中間業者を挟まずに加工、販売までを一巻して行っています。
そうすることで、漁師の雇用を確保し、収入を安定させたり、消費者にリーズナブルで新鮮な食材を提供することができます。
また、漁獲したものの市場では販売できない「未利用魚」を使用したり、そのおいしさを伝えたりする活動が評価され、WWFジャパン主催のサステナブルシーフードアワードのファイナリストに選出されました。
繋がりにくい消費者と漁師をつなぐことで、消費者は食材の本当の価値を知ることができ、生産者は自分たちの仕事の価値を実感することができます。
参照元:エーピー・ホールディングスHP|四十八漁場について
参照元:PR TIMESプレスリリースニュース|海洋資源の持続可能性を漁師と共に追求する<四十八漁場>の未利用魚活用事例が、第1回「ジャパン・サステナブルシーフード・チャンピオン・アワード」ファイナリストに選出!
日本事例(2)
エンタメで、河川海洋ごみ問題解決を目指すNPO法人団体「荒川クリーンエイド・フォーラム」
河川海洋ごみ問題を少しでも多くの人に知ってもらい、ごみを少しでも減らしていきたいと、25年以上活動を続けるNPO法人団体が「荒川クリーンエイド・フォーラム」です。
「調べるごみ拾い」をコンセプトにただごみを拾うだけでなく、ごみの種類や数や状態を記録し、ごみ拾い後にディスカッションすることで、自分事としてとらえることができ、参加者自発的な気付きや行動に繋げています。
また、大規模なごみの発生源や状態の研究・調査をしたり、団体単独での活動ではなく、市民はもちろん行政や企業と連携しながら、ごみ問題の解決を目指しています。
SNSも積極的に運用していて、youtube動画でSDGsの解説やごみ問題の発信にとどまらず、他のNPO団体と連携して、テーマソングをつくったりと、一般の方がごみ問題に触れるきっかけづくりにも注力しています。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」のために私たちができること
エコバックを利用したり、マイボトルを使ったり、過剰包装を断ったりと個人でできることの発信も最近多く見かけます。
ただ、個人個人趣向や状況も違うので限界があるのも事実です。
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」達成のために努力している企業や団体も多くあります。
そういった企業や団体の製品を選んだり、100円などの少額から寄付できるところもあるので、そういった形で応援するのもSDGsのひとつの形です。
より広い視野を持って、自分に合ったSDGsの方法を見つけていけるといいですね。
まとめ
SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の目標を達成するため、ひとつの目標に固執するのではなく、SDGs目標1「貧困をなくそう」やSDGs目標11「住み続けられる街づくりを」などを絡めた動きが必要になってきます。
是非、多角的な視点を持って環境にいい工夫をするという意識をし、取り入れられるところから取り入れてみてくださいね。
ひとりひとりの小さな工夫が、未来のきれいな海を守ることに繋がると考えています。
以上、SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」の概要、ターゲット、取り組み内容とは?について解説しました。