海の豊かさを守ろう

油による海洋汚染の原因と深刻な生態系への影響

油による海洋汚染が、海洋生態系にどのような影響を与えているかご存じでしょうか?

海洋生態系が崩れることは、環境や海洋生物への影響だけではなく、私たちの生活にも変化が生じる可能性があります。

この記事では、海洋汚染の問題になっている油についてご説明します。

海洋汚染の原因のひとつが油の流出

海洋汚染の原因のひとつが油の流出

まず、海洋汚染が起こる原因として主にあげられるのが、海洋ごみ、廃棄物、工場排水や生活排水、油の流出です。

ひとつずつ簡単に説明します。

海洋ごみ

海洋ごみの中でも特に問題になっているのが、ペットボトルやビニール袋などのプラスチックごみです。

プラスチック製品は丈夫なため、分解されないのまま海に浮遊し、海洋生物が誤飲してしまい、死に至るケースがあります。

工場排水や生活排水

排水に含まれる多くの有害物質は下水処理場で取り除かれていますが、海に流れだした有機物(窒素やりん)は富栄養化しプランクトンが異常増殖し、赤潮を発生させます。

赤潮が発生すると、海水の酸素が減り、大量の魚が死んでしまいます。

廃棄物

廃棄物とは家庭ごみの廃棄や、漁業で不要になった漁具や資材などの不法投棄を指します。

「処分にお金がかかる」など、自分勝手な理由で不法投棄をする人がいます。

油の流出

油の流出は、タンカー座礁事故で大量の油が流出するだけでなく、船舶海難(衝突や転覆、火災など)の原因もあります。

また、油の流出は事故だけでなく、川沿いの工場からの漏洩などによっても発生します。

油による海洋汚染の現状

油による海洋汚染の現状

近年、コンテナ船やタンカーの座礁が相次いで起きており、世界でも大きなニュースになっています。
油が流出することで、海の生態系が崩れるのはもちろん、人の生活にも大きな影響を与えます。

日本ではそのような大きな船による油の流出はありませんが、海洋汚染の原因となる事故が増えています。

日本での海洋汚染の現状

海上保安庁によると、令和2年の人的な海洋汚染確認件数は増えており、

・油による海洋汚染は286件(63%)
・廃棄物による海洋汚染が158件(35%)

と発表しています。

油による海洋汚染が、半分以上を占めています。

油による海洋汚染の原因の内容としては、船舶(主に漁船)からの排出が多く、次いでプレジャーボートや貨物船、作業船です。
先述した通り、排出原因は船舶海難が多く、次に作業中の取り扱い不注意です。

取り扱い不注意による油の排出原因は、

・油の移送作業
・給油作業
・ビルジ取扱作業中

です。

また、取り扱い不注意による排出作業の内容のひとつは、タンク計測不適切です。
タンク計測不適切とは、タンク残量の計測をせずに、見込みで残量を把握し、さらに移送、給油も見込みで行ったことにより発生しています。

さらにもうひとつの原因は、バルブ操作不適切です。
バルブ操作不適切とは、燃料の移送中に持ち場を離れ、ポンプの停止が遅れたことにより船外に油が排出したことをいいます。

どちらの原因も予測できない事故とは違い、適切な作業や点検をしていれば防ぐことができる事故です。
「慣れている作業だ」と、気を抜くと大きな事故つながってしまうのです。

モーリシャス沖座礁

モーリシャス沖での貨物船の座礁事故では、大量の燃料油が流出しニュースでも大きく取り上げられました。
2020年7月、インド洋の島国、モーリシャス沖で日本の貨物船「WAKASHIO」が座礁し、流出した燃料油は約1,000トンといわれており、事故海域のサンゴ礁や島の海岸への被害は甚大なものでした。

この事故で注目を集めた理由には、「WAKASHIO」が座礁した場所にあります。
「WAKASHIO」が座礁した場所はラムサール条約の指定地域の近く。
2つの海洋生態系の 自然保護区と、国際的に貴重な湿地帯として指定されたサンゴ礁が広がる海洋保護区付近でした。

モーリシャスの海は、約800種類の魚、17種類の海洋哺乳類、2種類のカメを含む約1700もの生物のすみかとなっています。
壮大なサンゴ礁と世界的にも生物学上貴重な地域とされている場所に燃料油が流れ込んだことにより、そこに生きる多くの生き物、島の人たちに深刻な影響を与えたのです。

参照元:ラムサール条約とは|ラムサール条約と条約湿地|環境省

油による海洋汚染の海洋生態系への影響とは?

油による海洋汚染の海洋生態系への影響とは?

ほとんどの油は海面を浮遊し、波や風の影響を受けて広域に広がっていきます。
特に粘土の低い油の場合、波によって素早く薄められ分散する可能性が高いと言われています。

しかし、先述したモーリシャスでは海洋生物に大きな影響を与え、そこの住む人たちの暮らしは大きく変化しました。
どのような影響があるのか見てみましょう。

食物ピラミッドへの影響

海洋生態系の食物ピラミッドの下部にはプランクトンが位置しており、直接油の影響を受けなかった生物も、海洋生態系の変化により影響を受けることになります。

油の影響により、プランクトンは海面の油膜に太陽の光を遮られてしまい、光合成ができなくなります。
プランクトンが減少することと、プランクトン以外にも油に対応できない生物が減少することで生態系の変化が起こると考えられています。

また、サンゴ礁は感受性の高い生物なので、油に汚染されると回復に長い時間を要すると言われています。

海岸にすむ生物への影響

海中を泳ぐ魚は海面を漂う油から逃げることができますが、海辺に生息している生物は逃げることができず、油の影響をダイレクトに受けます。

浅瀬に生えている海藻類は葉体の表面が油の膜で覆われることによって光合成ができなくなったり、付着した油の重さで剥離したりします。
また、貝類やエビ・カニなど食用の生物は油の臭いがつき、食べることができなります。

海鳥や海洋哺乳類への影響

海鳥は海に住む生き物の中で特に被害を受けやすく、海面に群れを成して浮かぶ種は特に食糧源もしくは生息環境の喪失により死亡の危険にさらされます。
海鳥は、油で羽毛が汚れることで断熱効果と繊細な構造が破壊され体温が奪われ、低体温症によって死ぬ可能性があります。

また、クジラやイルカは呼吸のために海面に浮上する際、油により鼻や目に損傷を与えられると考えられています。
さらに、アシカやアザラシなど岸に上がり海岸で過ごすことのある海洋哺乳類は油の影響を受け、海鳥同様低体温症で死に至る可能性があります。

わたしたち人間の生活への影響

わたしたち人間の生活への影響

海の近くに住んでいない限り、影響がないように思いますが、時間が経つにつれ私たちの日常に変化が訪れることになります。

油の影響を特に受けるのが、内湾や養殖場です。
内湾や養殖場などの魚は油から逃れることが難しいため、大量死につながりやすいです。
稚魚や卵は成魚よりも油による影響を受けやすく、死に至らなくても身が石油臭くなる着臭という問題があります。

着臭とは、油に汚染されたエサやプランクトンを食べることで体内に石油成分が蓄積し、不快な味や臭いを発することをいいます。
当然、着臭した魚は、食用に向かず商品にできないため、漁業関係に大打撃となります。

漁獲量が減少することや、商品として売れないものが増えた場合、魚介類は高騰し食卓にも影響を与える可能性があります。

また、油には人に対する毒性が認められており、油の回収・防除作業をする人々は油と直接接するため、健康被害を受けやすいとされています。

まとめ

まとめ

油の流出は海洋生物に影響を与えるだけではなく、その地に住む人たちの仕事を奪い、生活を変えてしまいます。

私たちは海から資源や食物だけでなく、美しい海の景色に感動や癒しという恩恵を受けています。
貨物船の座礁などによる油の流出を防ぐことはできませんが、美しい海を守るために何ができるか考え、行動することができます。

「海に行ったときにはごみを持ち帰る」
「ペットボトル飲料の購入を控える」
「ビニール袋はもらわずエコバッグを使う」

など、海を汚さない小さな取り組みを継続することです。

1人ひとりの意識と行動が海に住む生物、海の近くに住む人たちの暮らしを変えていくはずです。

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