近年、サステナブルな素材として注目されている「USAコットン」。日本でも、衣服や小物などの生地として使用されています。しかし、なぜUSAコットンが、サステナブルな素材として注目されているのでしょうか。本記事では、USAコットンの特徴や魅力、SDGsとの関係性、実際に取り入れているブランドなどをまとめました。
まずは、USAコットンがどのような素材なのか詳しく見ていきましょう。
USAコットンとは
USAコットンとは、アメリカ合衆国の「コットンベルト」と呼ばれる17の州(約411ha)で栽培されている、アプランド綿やアメリカ・ピマ綿などの品種の綿花です。綿花は咲いた後に実がなり、その実がはじけると中から白い綿繊維が出てきます。この繊維がUSAコットンになります。
またアメリカでは、合理的・近代的な大規模農法や最新の科学技術を導入しており、品質や生産量の安定化にもつながっています。このようにUSAコットンは、栽培や労働環境、農作物に関する厳格な法監視のもと生産されているのです。
COTTON USAマーク
USAコットンを使用した製品を見分ける方法として、国際綿花評議会(以下CCI)が認定する「COTTON USAマーク」があります。
「COTTON USAマーク」のついた製品は、50%以上がコットンであり、種類もUSAコットンを100%使用しなければいけません。そしてマークの取得には、CCI事務所に申請書類を提出し、申請を希望する製品の情報を確認してもらう必要があります。
参照元:The Value of the Cotton USA Mark|COTTON USA
USAコットンの特徴や魅力
続いては、USAコットンの特徴を見ていきましょう。
夏涼しく、冬暖かい
UASコットンは通気性が良く汗の吸収・発散に優れているため、夏に着ると涼しく感じます。さらにコットン繊維の中心部は空洞になっているため、この空洞部分に暖かい空気が集まることによって冬は暖かく感じるのです。
吸湿性が高く、熱に強い
吸湿性が高いため、皮膚から分泌される汗や汚れも良く吸収します。またコットンは、水に濡れると繊維の強度が増すところも特徴のひとつです。生地の厚みにもよりますが、汚れを落とすために、ゴシゴシと揉み洗いをしても耐えられる素材になっています(※)。そのうえ熱にも強く、アイロンを使用することも可能です。
(※)製品の加工方法や生地の厚さによって強度も変わるため、必ず洗濯表示などを確認しましょう。
肌触りが良い
USAコットンは、ほどよい張り感と油分が少なくカラッとした肌触り、硬めの質感が特徴です。生地は、何回も着ていくうちに少しずつ柔らかくなり、肌に馴染んでいきます。透けずに、しっかりとした質感の生地を好む人にはおすすめです。
「U.S. Cotton Trust Protocol」
2020年から開始された「U.S. Cotton Trust Protocol」は、SDGsに沿ってつくられた人と環境に優しいサステナブルな綿花生産のための基準です。
このプログラムでは、
- 水使用量
- エネルギー効率
- 温室効果ガス排出量
- 土壌保全
- 土壌炭素
- 土地利用
の、6つのサスティナビリティ指標があり、具体的な目標数値を設定し継続的な改善を推進します。繊維業界で初となるサスティナビリティ・システムであり、USAコットンは、サプライチェーンの透明性を品目レベルで提供できるコットンなのです。
参照元:U.S. コットン・トラスト・プロトコルが ISEALコミュニティメンバーに認定
USAコットンとSDGs
続いては、USAコットンとSDGsの関係性について触れていきます。まずは、SDGsとは何かを知りましょう。
SDGsとは
SDGsとは、2015年に開催された国連総会で、参加していた193カ国が賛同した国際目標です。地球上で起きている、環境・社会・経済の課題を解決するために、17の目標と169のターゲットが設定されています。私たちは、17の目標を2030年までに達成しなければいけません。
そしてUSAコットンは、SDGsの下記の目標達成に貢献すると期待されています。
- 目標6「安全な水とトイレを世界中に」
- 目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」
- 目標8「働きがいも経済成長も」
- 目標12「つくる責任つかう責任」
- 目標13「気候変動に具体的な対策を」
- 目標14「海の豊かさを守ろう」
- 目標15「陸の豊かさも守ろう」
今回は、その中でも特に関係の深い、目標15「陸の豊かさも守ろう」について見ていきましょう。
目標15「陸の豊かさも守ろう」
目標15は、陸の生態系の保護や回復・持続可能な利用の推進、持続可能な森林管理、砂漠化や土地劣化の阻止・回復、生物多様性の損失を防ぐなどが目的です。
コットン栽培には、大量の農薬や化学肥料・水を使用します。WWFによると、綿花の耕作面積は世界全体の2.5%ほどしかないにもかかわらず、殺虫剤の使用量は16%。この数値は単一作物の中で最も多く、世界の農薬使用料の6%を占めています(2021年3月時点)。
その一方でUSAコットンを生産する農家の人々は、「健全な土壌こそが、唯一で最大の資産」と考えており、どの国よりも早くサステナブルな農業を導入し、自然環境に配慮した綿花栽培を行ってきました。
その結果、35年間でこれだけの環境負荷が軽減されています。
土地利用 | 49%削減 |
土壌侵食 | 37%削減 |
水使用 | 79%削減 |
エネルギー使用 | 54%削減 |
温室効果ガス排出量 | 40%削減 |
このように、USAコットンは環境に配慮したコットンであり、目標15の達成にも貢献すると期待されているのです。
参照元:
・コットンって環境に悪い?サステナブルファッション視点でのコットンの生産と利用|WWF
・アメリカの綿は、なぜサステナブルなのか?|一般財団法品日本綿業振興会
USAコットンのブランド紹介
USAコットンについて理解したところで、続いては実際にUSAコットンを製品に取り入れている海外のブランドを3つ紹介します。
Original Marines
「Original Marines」は、2010年からCOTTONUSAのパートナーである、イタリアの子ども服ブランドです。1930年に誕生し、当時は白いTシャツを販売していました。現在はヨーロッパ30カ国、イタリア国内には約450店舗もあり、さまざまなデザインの子ども服を販売しています。
USAコットンは不純物がなく繊維が長いため、美しい光沢と染色後も色が際立つ点が気に入りライセンス契約を結んだそうです。
引用元:ORIGINAL MARINES
Vincenzo Zucchi SpA
2003年にCOTTONUSAとライセンス契約を結んだ、イタリアのリネンメーカー「Vincenzo Zucchi SpA」。自社ブランドである「Intinta Bassetti」と「Zucchi」では、100%綿のベッドリネンを中核事業にしていたため、耐久性にも優れ肌触りの良いUSAコットンを選んだそうです。
引用元:Zucchi official store|Zucchi
MARQUES‘ALMEIDA
デニム素材をメインに扱うブランドとして発足した「MARQUES‘ALMEIDA」。「自然体で心地いいクールな着こなし」がブランドのコンセプトであり、2018年にロンドンで行われたファッションウィークでは、COTTONUSAをパートナーに選びました。デニムを中心に、コレクションの半数にUSAコットンを使用したそうです。
引用元:MARQUES‘ALMEIDA
参照元:ブランドと小売に信頼されるコットン|COTTONUSA
まとめ
アメリカ合衆国のコットンベルトで、栽培や労働環境、農作物に関する厳格な法監視のもと生産されているUSAコットン。これまで綿花生産は、環境へのダメージや労働・人権などが問題視されてきましたが、USAコットンは人や環境に優しく、SDGsの目標達成にも貢献できるとして注目が集まっています。
コットンは、さまざまな製品に使用されている身近な素材です。私たち個人も、ただ「安いから」という理由だけではなく、「COTTON USAマーク」の有無も購入する際の条件のひとつに入れてみましょう。1人ひとりの選択が、やがて大きなアクションとなり、地球環境の保全につながります。