大阪公立大学は、2022年4月に大阪市立大学と大阪府立大学が統合して新しく誕生した公立総合大学です。
大阪公立大学では人材育成や先端研究、社会貢献など多方面でSDGsを達成するための取組みを推進しています。また、大学では学生が中心となって自由闊達な部活動が数多く行われており、その中にはSDGs関連の部活動も存在します。
今回は、そんなSDGsの目標達成に取り組む大阪公立大学の2つの部活動「環境部エコロ助」と「里環境の会OPU」について紹介します。
環境部エコロ助
環境部エコロ助は、2001年に創設。「できること・気づいたことから、楽しくエコ活動」を理念のひとつに掲げ、学内外で身近な環境活動を行っているクラブ活動です。
当初は5人だけで始まった団体も今では72人の部員が所属し、活動の幅も広がっています。以下では最近の活動についてご紹介します。
ごみの削減・分別・収集・清掃ボランティア
地球への環境負荷を考えるうえで、ごみの削減は大きな課題です。大学を代表するイベント、学祭でもたくさんのごみが出ますが、ポイ捨てごみの巡回回収や6種類分別収集、回収業者への引き渡しなどを行い、より地球にやさしい学祭にすることを目指しています。
子どもたちへの環境啓発
子どもたちに環境について楽しく学んでほしいという思いのもと、趣向を凝らした啓発活動を行っています。
地域の子どもがたくさん訪れる学祭では、臭いを吸収する性質がある保冷剤を再利用して、消臭剤を作ってもらうワークショップを行い、子供から大人までたくさんの方々にエコ工作を楽しんでいただきました。
また、2004年から継続して行っている個性的な取組みに「エコレンジャーショー」があります。
園児を対象にしたこのイベントでは、身近な環境問題を題材にしたヒーローショーやゲーム・工作などを行い、子どもたちが環境問題について考えるきっかけを提供しています。※
※2020~2022年度はコロナウイルスの影響で活動を休止していましたが、2023年春から活動を再開する予定です。
大学でのリサイクル・リユース活動
学生がキャンパスを移動する際によく利用される自転車ですが、毎年卒業と同時に放置されることが問題となっています。
部ではこの放置自転車を修理し、低価格で学生に販売することでリサイクルを実施。毎年新入生から好評を得ており、資源の再利用について考える機会にもなっています。
また、2022年11月からは粧美堂株式会社とのコラボでコンタクトレンズ空容器の回収プロジェクトを開始。キャンパス内数カ所に設置された回収ボックスで回収された空容器は、再生素材(リペレット)となり、新しい製品としてリサイクルされます。
農業・棚田の保全活動
キャンパス内の農地を借り、ひまわりやネギ・ほうれん草・バジル・オクラ・さつまいもといった花や野菜作りを行っています。
ここでは馬術部の協力のもと、馬糞が堆肥として有効活用されています。また、2018年からは千早赤阪村の「棚田夢灯り」というイベントの設営に参加。棚田保全活動に協力しています。
環境部エコロ助の部長と顧問の先生に聞いた!
部長の方のコメント
普段は、隔週水曜日にある「全体ミート」という部会で、今後の活動の連絡や報告、さらに、部内交流を行っております。部員は学年の壁を越えて皆仲良く、アットホームな雰囲気があるので、とても居心地が良いです。最近は、コロナウイルスの流行を境に途切れてしまった外部での活動を少しずつ再開しようと努めております。今後とも環境部エコロ助をどうぞよろしくお願いいたします。
顧問の先生のコメント
私は主に活動計画書に目を通し助言をしています。特にコロナ禍では、活動や部員間の交流を停滞させない行動様式を指導してきました。部員たちは、日々の生活から上手に環境問題解決の糸口を見つけ出しています。活動はアイデアに富み、頼もしく感じます。「環境を劣化させるのも私、環境を支え修正できるのも私」と言うことを意識し、誇りをもって活動に取り組んでくれたらと願っています。
里環境の会OPU
里環境の会OPU(通称:さとかん)は、「人と自然とのよりよい関わり方を探ること」をコンセプトに活動している部活です。
主に、自然体験活動の中で発見したことを共有しながら、部員同士で関わり方を議論し実行しています。「キャンパスビオトープ活動」「野外活動」「勉強会」を3つの軸として活動しています。
キャンパスビオトープ活動
中百舌鳥キャンパスには水田や果樹園、緑地帯やため池といったさまざまな自然環境があり、多くの生き物が生息しています。
さとかんでは、この生態相の豊かなキャンパス全体をビオトープと位置づけ、多様な生き物がありのままに生息する空間を保全し、人と自然が共生する場を整えるため、次のような活動を行ってきました。
府大池の外来種駆除・在来種保全活動
府大池(正式名称:園池)は、中百舌鳥キャンパス西部に位置する大きな池です。2007年のキャンパスビオトープ発足以来、2008年と2010年の2回にわたってこの府大池の池干しを行う保全活動を行いました。
在来種生物を別の場所に確保しつつ池の水を抜き、重機も用いて外来種の駆除を行うという大規模な作業でしたが、この作業を行ったことで池には多くの在来種が生息していることやその多様性を確認することができました。
ショウブ池のヨシ刈り
ショウブ池もまたキャンパスにある小さな池です。かつては農業用のため池として利用されたこの池でも、豊かな生物多様性を持つことが確認されています。しかし、ショウブ池の水辺には非常に強い繁殖力をもつヨシが生育しており、そのままにしておくと陸地化してしまう恐れがあります。
部では繁茂するヨシを刈る「ヨシ刈り」の作業を夏と冬の2度行い、夏にはトンボの産卵や鳥の飛来を促すために開水域(水面の見える部分)を確保し、冬には枯れたヨシの葉がヘドロ化するのを防いでいます。
蝶のルートセンサス
キャンパス内に生息する蝶を「ルートセンサス」という方法で調査しています。ルートセンサスとは予め決められたルートを歩き、その間に確認できた蝶を記録する方法です。
これにより、キャンパス内にいる蝶の種類や個体数を把握することができます。これまでの調査ではツマグロキチョウやコムラサキなどの希少種を確認することができました。
野外活動
部活動はキャンパス内だけにとどまるものではありません。郊外の山や川に行き自然を観察するなかで、自然との関わり方を考えるフィールドワークも大切な活動です。堺市・鉢ヶ峰での蛍の生息数調査など毎年継続して行っているものもあり、主要な活動のひとつとなっています。
里環境の会OPUの部長と顧問の先生に聞いた!
部長の方のコメント
さとかんでは主にキャンパスビオトープ活動・野外活動・勉強会の3つの活動を行っており、最近では、実際にフィールドに出る野外活動に特に力を入れています。部員は1~3年生までで90人ほどおり、和気あいあいとした雰囲気で活動を行っています。さとかんでは部員たちが人と自然との関わりについて学べるような活動を続けていこうと考えています。
顧問の先生のコメント
さとかんは、人と自然とのより良い関係を探ることを目的に、キャンパス内外の多様かつ豊かな自然の保全活動に積極的に関わっており、大学に対してショウブ池のコアビオトープ化の提案などもしていただきました。このような学生主体の活動は高く評価され、堺市生物多様性ネットワーク会議のメンバーにも加わってもらっています。
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