2020年7月1日からプラスチック製のレジ袋が有料化され、1年以上が経ちました。
スーパーやドラッグストア、コンビニでは今まで無料でもらえたプラスチック製のレジ袋が2〜5円で販売されています。
大手コンビニ3社が行った調査によると、2020年7月~2021年2月にレジ袋を辞退した方(商品を購入したがレジ袋を買わなかった方)は75%以上となりました。
今や常識となったレジ袋有料化ですが、その背景や理由を皆さんは知っていますか?
この記事では、レジ袋有料化の背景や有料化の本当の目的を、分かりやすく解説します。
2020年7月スタートのレジ袋有料化
レジ袋有料化は、「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律」(平成7年法律第 112 号。以下、「容器包装リサイクル法」という。)によって義務となりました。
実施の対象は、プラスチック製バッグを扱う全ての小売業者。
主な業種が小売業でない製造業やサービス業でも、事業の一部として小売業を行っている場合は、有料化の対象です。
プラスチック製買物袋が有料となりますが、環境性能が認められる場合は、有料化の対象外となっています。
対象外となる買物袋は、以下の3つです。
・プラスチックのフィルムの厚さが50マイクロメートル以上のもの
・海洋生分解性プラスチックの配合率が100%のもの
・バイオマス素材の配合率が25%以上のもの
有料の対象となるのは、購入した商品を持ち運ぶためのプラスチック製買物袋であるため、持ち手のないビニール袋や紙袋、布の袋も対象外となります。
参照元:経済産業省・環境省 プラスチック製買物袋有料化実施ガイドライン
レジ袋有料化の背景には「環境問題」がある
レジ有料化の背景には、環境問題が関連しています。
その中でも深刻とされているのが、海洋プラスチック問題です。
街で捨てられたゴミが、川に流れたり風に飛ばされることにより海に流れ、海に住む生物たちに悪影響を及ぼしています。
一度海に出たプラスチックごみは、波や紫外線によって小さくなるものの、自然分解することはありません。
細かくなったプラスチックは、マイクロプラスチックと呼ばれ、魚などを介して私たちの身体に取り込まれていると言われています。
日本は世界の中でプラスチック廃棄量が4番目に多い
日本のプラスチック廃棄量は、主要な地域・国の中で4番目に多いことをご存知でしたか?
オーストラリアのNPO法人Minderoo Foundationによって行われた調査によると、2019年の使い捨てプラスチックの廃棄量は、全世界で1億3000万トンでした。
その中で日本は、471万トンを占めています。
国別の廃棄量は以下のとおりです。
1位:中国(2,536万トン/年)
2位:アメリカ(1,719万トン/年)
3位:インド(558万トン/年)
4位:日本(471万トン/年)
5位:イギリス(289万トン/年)
廃棄されたプラスチックのうち、焼却処分は35%、埋め立てが31%、残りの19%は河川や海に捨てられたと予想されています。
世界60カ国以上でレジ袋に関する規則が制定されている
日本だけでなく、世界の国々でレジ袋禁止や有料化、課税などの規制が行われています。
アメリカ、フランス、イタリア、カナダ、中国、パキスタン、インド、サウジアラビア、イスラエル、アフリカ諸国などでは、プラスチック製買物袋の利用が部分的または全面禁止となっています。
イギリス、ベルギー、オランダ、ポルトガル、台湾、カンボジア、コロンビアなどでは有料となっています。
レジ袋の規制が最も早かったバングラディッシュでは、2002年より禁止されています。
また、ケニアでは2017年からビニール袋が使用禁止となりました。
ビニール袋の製造、輸入、販売、使用で最高430万円の罰金刑もしくは最長4年の禁固刑で、世界で最も厳しい禁止令です。
すでに多くの国がプラスチック製買物袋の規制に取り組んでいる中で、日本もやっと実施されました。
2050年にはプラスチックごみが魚の量を上回ると予想されている
2014年時点で、海には1億5,000万トン以上のプラスチックごみがあると言われてます。
そして現在も多くプラスチックごみが海へと流れています。
その数、全世界では年間800万トン。
このまま廃棄され続けると、2025年には2億5,000万トン、そして2050年には6億トンとなるとされています。
乱獲などにより魚の量が減少した場合、2050年の海洋プラスチックごみは、魚の量を上回る可能性があるのです。
2018年の関西広域連合による調査では大阪湾には、現在300万枚以上のレジ袋と610万枚以上のビニール片が沈んでいることが分かりました。
レジ袋の有料化だけでは意味がない
レジ袋有料化によって、環境問題が良い方向へ向かったかというと、そうではありません。
レジ袋を断る人が増えたため、有料化のメリットはあります。
しかし、有料となってから様々な課題も指摘されています。
・レジ袋を減らしても環境への影響はわずか
・プラスチック製ゴミ袋を買う必要がある
・エコバックの頻繁な買い替えは環境への負担が大きい
上記3つの課題を詳しくみてみましょう。
レジ袋を減らしても環境への影響はわずか
2016年に全国10拠点(稚内、根室、函館、遊佐、串本、国東、対馬、五島、種子島、奄美)で環境省により、海洋ごみの実施調査が行われました。
重量別で最も多かったのは、漁網やロープで41.8%なのに対し、ポリ袋はわずか0.4%でした。
分類 | 重量 | 個数 |
飲料用ボトル | 7.3% | 38.5% |
漁網、ロープ | 41.8% | 10.4% |
ブイ | 10.7% | 11.9% |
ポリ袋 | 0.4% | 0.6% |
その他プラスチック (ライター、発泡スチロール片等) | 26.7% | 3.3% ※ |
※発泡スチロール片等、回収中に破損等により個数が変化してしまう人工物の破片は、個数の計測はしていない。
参考:プラスチックを取り巻く国内外の状況 <第3回資料集>|環境省
そのため、レジ袋の使用を減らしても、海洋プラスチックごみの減少に大きく影響するとは言えません。
プラスチック製ゴミ袋を買う必要がある
レジ袋有料化に伴い、100円均一などでプラスチック製ゴミ袋を買う人が増えたことも指摘されています。
レジ袋は持ち手がついているため、生ゴミを入れたりや犬の散歩の際に使用していた方も多いでしょう。
レジ袋をゴミ袋として再利用している消費者は多くいます。
自治体によっては、指定ゴミ袋が無く、店でもらったレジ袋でゴミを出せるようです。
レジ袋を削減しても、プラスチック製ゴミ袋の需要が高まるのなら、プラスチックごみは減りません。
また、経済的な問題もあります。
今までは店側がレジ袋にかかる費用を負担してきました。
しかし、有料化によって、レジ袋の負担は消費者側に移ります。
レジ袋の売り上げの使用用途は、店側の自由となっています。
これでは、結局消費者の負担が増えるだけになってしまうのです。
エコバックの頻繁な買い替えは環境への負担が大きい
レジ袋有料化に伴い、マイバッグを持つ人が増えました。
様々なショップではお洒落でかわいいマイバッグが販売されています。
しかし、エコバッグを頻繁に買い換えたら環境への負荷が大きくなるのでは、という指摘があります。
2009年に報告された回日本LCA学会による調査では、マイバッグの使用回数が50回未満の場合、レジ袋を使用するよりも環境負荷が大きいとされています。
また、プラスチック素材でできたマイバッグの利用も、場合によってはレジ袋よりも多くのプラスチックを廃棄することになってしまいます。
例えばレジ袋の100倍のプラスチックを使用したエコバッグを100回未満で捨ててしまった場合、エコバッグの方がプラスチック廃棄量は多いことになるでしょう。
エコバッグを購入する際は、なるべくプラスチック素材を避け、長く使用することが大切です。
レジ袋有料化の本当の理由は「ライフスタイルの変革」を促すため
レジ袋有料化だけでは、プラスチックごみ削減は難しいと考えられます。
ではなぜ、政府はレジ袋有料化を実施したのでしょうか。
経済産業省のホームページには、以下のように説明しています。
”プラスチックは、非常に便利な素材です。成形しやすく、軽くて丈夫で密閉性も高いため、製品の軽量化や食品ロスの削減など、あらゆる分野で私たちの生活に貢献しています。一方で、廃棄物・資源制約、海洋プラスチックごみ問題、地球温暖化などの課題もあります。私たちは、プラスチックの過剰な使用を抑制し、賢く利用していく必要があります。
このような状況を踏まえ、令和2年7月1日より、全国でプラスチック製買物袋の有料化を行うこととなりました。
これは、普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています。”
引用:プラスチック製買物袋有料化 2020年7月1日スタート|経済産業省
レジ袋有料化は、プラスチックごみの削減が目的ではありません。
レジ袋を有料化を通して、日常生活の中にある無駄や不要な物を減らすという国民意識の見直しが本当の目的なのです。
レジ袋有料化がきっかけで、他のプラスチック製品を減らしたり、環境問題に興味を持った方がいるのなら、施行は意味があったと言えます。
まとめ
レジ袋有料化は、プラスチックごみを減らすことが目的ではありません。
本当の理由は、本当に必要かどうかを考えて、ライフスタイルを見直すきっかけを作ることです。
レジ袋が有料となり、レジ袋を持ち歩く人が増えました。
また、マイタンブラーやマイ箸などもテレビや雑誌で紹介されています。
このように考えると、レジ袋有料化は効果があったと言えるでしょう。
有料化実施の背景には、海洋プラスチックごみ問題があります。
日本は世界の中でもプラスチック廃棄量が多く、国内外から指摘されています。
プラスチック廃棄量を減らすためには、国や自治体の取り組みだけでなく、私たち消費者の意識改革が必要不可欠です。
レジ袋だけでなくフォークやスプーンなども断るなど、できることから少しずつ始めてみてはいかがでしょうか?