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SDGs

発展途上国の医療格差|命を分ける「生まれた場所」の現実と2030年への課題

発展途上国における医療格差問題|すべての人に健康と福祉を

世界のどこに生まれるかによって、医療を受けられるかどうかが決まる——。そんな現実が、今も世界中で続いています。WHOの報告によると、2023年時点で世界人口の約半数にあたる45億人以上が、必要な医療サービスへのアクセスを十分に得られていない状況にあるとされます。発展途上国では「先進国にいれば助かっていた」命が毎日失われており、その多くが感染症・出産合併症・栄養不良といった、予防・治療が可能な原因によるものです。

この記事では、発展途上国における医療格差の現状を最新データで整理し、SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の達成に向けた取り組みと残された課題を見ていきます。

医療格差とは何か|生まれた場所が命運を左右する

医療格差とは、所得・地域・民族・ジェンダーなどの社会的要因によって、医療へのアクセスや医療の質に差が生じることを指します。先進国でも都市部と農村部のあいだで格差は存在しますが、発展途上国ではその幅が桁違いに大きく、結果として「助かるはずの命が助からない」という状況が繰り返されています。

WHOが提唱する「ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)」は、すべての人が必要なときに費用の心配なく保健サービスを受けられることを目指す概念です。UHCサービスカバレッジ指数(0〜100のスコアで測定)を見ると、2021年時点で世界平均が68なのに対して、サブサハラアフリカ地域の平均は約46にとどまるとされています。この数字は、医療の恩恵が届いていない人々が、特定の地域に集中していることを示しています。

医療格差の背景には、複数の要因が重なっています。貧困による受診費用の負担、医師・看護師などの医療従事者数の絶対的な不足、医療施設までの物理的な距離、そして健康に関する知識や情報へのアクセス不足——これらが複合的に絡み合い、格差を固定化しています。

感染症の95%が発展途上国で発生している背景

発展途上国における死亡原因の上位を占めるのは、HIV/エイズ・結核・マラリア・肺炎・下痢性疾患といった感染症です。感染症の約95%が発展途上国で発生しているとされており、先進国ではほぼ制御されているこれらの病気が、今も多くの命を奪い続けています。

結核・肝炎・破傷風などはすでにワクチンが開発されており、ほとんどの先進国では幼少期に接種することが義務づけられています。ところが、医療アクセスの乏しい地域では予防接種を受けられないまま成長する子どもが多く、防げるはずの感染症で命を落とすケースが後を絶ちません。日本では保健所から予防接種スケジュールの案内が届き、無料または低コストで接種できるのが当たり前ですが、生まれる国が違えばそれは「一部の裕福な家庭だけの特権」になります。

感染症の拡大には、水・衛生環境の問題も深く関わっています。コレラ・赤痢・腸チフスなどの水系感染症は、清潔な飲み水と適切な下水処理があれば劇的にリスクを下げられます。SDGs目標6「清潔な水とトイレをすべての人に」と目標3「すべての人に健康と福祉を」は、この点において密接に結びついています。

SDGsターゲット3.3では「2030年までに、エイズ・結核・マラリア及び顧みられない熱帯病を根絶するとともに、肝炎・水系感染症などに対処する」ことが掲げられています。各国政府やNGO、国際機関による取り組みは着実に進んでいますが、2024年時点でもペースは目標水準を下回っており、さらなる加速が求められています。

5歳未満児の死亡率|地域格差が示す2024年の現実

UNICEFが2023年に公表したレポートによると、5歳の誕生日を迎える前に亡くなる子どもの数は年間約470万人とされています。元記事執筆当時の推計よりも減少傾向にあるものの、依然として1日あたり約1万3000人の子どもが命を落としている計算になります。

地域差は依然として大きく、サブサハラアフリカでは出生1000件あたりの5歳未満児死亡率が74前後(2022年推計)と報告されており、高所得国の平均である5前後と比べると15倍近い差があります。この数字は、子どもが5歳を迎えられるかどうかが、生まれた場所によって大きく左右されることを示しています。

主な死因は肺炎・下痢性疾患・マラリアの3つで、これらは早期に適切な医療を受ければ回復できるケースが多い病気です。また、5歳未満児死亡のうち新生児死亡(生後28日以内)が占める割合はおよそ47%とされており、出産直後のケアの不足が深刻な問題であることも浮き彫りになっています。

SDGsターゲット3.2は「2030年までに新生児死亡率を出生1000件中12件以下、5歳未満死亡率を25件以下に削減する」としています。しかし2023年のWHO報告では、60か国以上がこの目標を2030年までに達成できない見通しと示されており、取り組みを加速させることが急務です。

妊産婦死亡の現状|全死亡の94%が発展途上国で起きている

子どもだけでなく、妊娠・出産を機に命を失う女性もまた、そのほとんどが発展途上国に集中しています。WHOの2023年発表データによると、2020年の妊産婦死亡数は世界全体で年間約28万7000人とされており、全体の約94%が低・中所得国で発生しています。

主な死因は大量出血・感染症・妊娠高血圧症候群などで、いずれも適切な医療介入があれば防げるケースがほとんどです。しかし医療施設が遠く、交通インフラが未整備な地域では、緊急時に間に合わないことが多く、また費用の問題で受診をためらうケースも見られます。

一方で改善の兆しもあります。2020年のデータでは、分娩の80%以上が医療従事者の立ち会いのもとで行われるようになったとされており、2000年代初頭と比べると大幅な前進です。しかし裏を返せば、今でも世界の出産の約2割は医師も助産師もいない環境で行われているということでもあります。

SDGsターゲット3.1「2030年までに世界の妊産婦死亡率を出生10万人あたり70人未満に削減する」の達成に向け、サブサハラアフリカや南アジアの一部の国では、産前ケアの普及・助産師の育成・緊急産科ケアへのアクセス改善が継続的に取り組まれています。

医師不足・衛生インフラ不足|医療格差を生む構造的な問題

医療格差の根底には、医師や看護師などの医療従事者の絶対的な不足があります。WHOの統計では、アフリカ地域における医師1人あたりの担当人口は依然として3000人を超えており、欧州地域の230人前後と比べると10倍以上の差があります。農村部では都市部よりもさらに医師が少なく、一国のなかでも深刻な格差が生じています。

医療従事者不足の原因の一つが「ブレイン・ドレイン(頭脳流出)」です。発展途上国で医師や看護師として訓練を受けた人材が、より高い給与と良好な労働環境を求めて先進国へ移住するケースが多く、途上国の医療現場から人材が流出し続けています。この問題を受け、WHOは2010年に「保健人材の国際採用に関する行動規範」を採択し、倫理的な採用慣行を各国に促しています。

衛生インフラの不足も深刻です。手洗い設備・安全な飲料水・適切な廃棄物処理が整っていない医療施設では、感染管理が難しく、院内感染のリスクも高まります。WHO・UNICEFの共同調査によると、低所得国の医療施設の約4割が安全な水へのアクセスを持たないと報告されており、これが医療の質を底上げする上での大きな障壁となっています。

医療格差を縮める取り組み|国際機関・NGO・民間企業の連携

医療格差の解消に向けては、国際機関・各国政府・NGO・民間企業が連携しながら取り組みを進めています。

ワクチン普及と予防接種の強化

「Gavi(ワクチンと予防接種のための世界同盟)」は、低所得国へのワクチン供給支援を続けており、2000年からの取り組みで10億人以上の子どもへの接種を支援し、推定1700万人の命を救ったとされています。2021〜2025年の戦略目標では、さらに3億人以上の子どもへの接種を目指しています。Gaviへは日本政府も拠出国として参加しており、国際的な連帯の一例です。

デジタル技術を活用した遠隔医療

スマートフォンの普及を背景に、発展途上国でも遠隔医療(テレメディシン)の活用が広がっています。医師がいない農村部でも、スマートフォンで症状を送信し、専門医から診療を受けられるサービスが各国で開始されています。ケニア・ルワンダ・インドなどではNGOや民間企業が連携し、デジタル診療プラットフォームの展開が進んでいます。医療従事者の絶対数を短期間で増やすことが難しい現状において、テクノロジーによる補完は有効なアプローチの一つです。

コミュニティ保健ワーカーの育成

医師や看護師の代替として、地域の住民が短期研修を経て「コミュニティ保健ワーカー(CHW)」として活動する仕組みが、アフリカや南アジアで広がっています。CHWは家庭訪問・妊婦ケア・ワクチン接種の案内・感染症予防教育などを担い、医療施設へのブリッジ役を果たしています。エチオピアでは100万人規模のCHW育成が進んでいるとされており、地域密着型の取り組みが成果を上げています。

予防教育の普及

感染症の多くは正しい知識と行動によって防ぐことができます。きれいな水での手洗い・安全な水の使用・ワクチン接種・マラリア対策としての蚊帳の使用・HIV感染予防のための性教育——これらを地域の実情に合わせて普及させる活動が、多くのNGOによって継続されています。治療体制の整備と同時に、「病気にかからない環境」を育てる教育が不可欠です。

SDGs目標3の進捗と2030年に向けた課題

SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」は、17の目標の中でも特に多岐にわたるターゲット(13項目)を持つ目標です。2024年に国連が公表した「持続可能な開発目標報告書」では、目標3に関わる主要指標の多くで進捗が不十分であり、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが特に低・中所得国の保健システムに深刻な打撃を与えたことが指摘されています。

パンデミックによって、多くの途上国でワクチン定期接種のカバレッジが低下し、マラリア・結核などの感染症対策が後退したほか、妊産婦・乳幼児ケアへのアクセスも一時的に悪化しました。2030年の達成期限まで残りわずかという状況で、こうした「後退」を取り戻しながら目標を達成するためには、国際的な資金支援の拡大と各国の保健システム強化が急務です。

一方で着実な前進も見られます。世界全体の5歳未満児死亡率は、2000年に比べて半数以下に減少しています。妊産婦死亡率も長期トレンドでは低下傾向にあり、HIV感染者に対する抗レトロウイルス薬の普及も進んでいます。こうした改善の積み重ねが「すべての人に健康と福祉を」の実現に向けた確かな歩みになっています。

発展途上国の医療格差をめぐる取り組みの全体像について、あわせて読みたい方はこちらの記事もどうぞ。

私たちにできること|医療格差を縮める行動を日常から

「発展途上国の医療格差」は遠い話のように感じるかもしれません。しかし、日本に暮らす私たちの選択も、この問題と無関係ではありません。

たとえば、ユニセフやGavi、国境なき医師団(MSF)などの国際機関・NGOへの寄付は、医療アクセスの乏しい地域でのワクチン接種・医療支援に直接使われます。月500円〜1000円程度の少額からでも、継続的な寄付が現地の活動を支える力になります。

また、フェアトレード製品やエシカル消費を通じた経済的な支援も、途上国の生活水準・教育水準の底上げにつながり、間接的に医療へのアクセス改善に貢献します。貧困の解消と医療格差の解消は、切り離せない問題です。

さらに、医療格差を含むSDGsの現状を学び、周囲に伝えることも大切な行動の一つです。問題の存在を知る人が増えることが、政策的な優先度の引き上げや支援の輪の拡大につながります。

まとめ|「助かるはずの命」を一つでも多く救うために

発展途上国における医療格差は、感染症・子ども死亡・妊産婦死亡という形で今も多くの命を奪っています。その根底には、医師不足・衛生インフラの不整備・貧困・教育不足が複雑に絡み合っています。SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」の達成は2030年が期限ですが、現状のペースでは困難な国が多く、取り組みの加速が求められています。

この記事で取り上げたポイントを整理すると、以下のとおりです。

  • 感染症の約95%は発展途上国で発生しており、ワクチンで防げる病気での死亡が今も続いている
  • 5歳未満児死亡は年間約470万人(2023年推計)で、サブサハラアフリカの死亡率は高所得国の15倍近い
  • 妊産婦死亡の約94%が発展途上国で発生しており、適切な処置があれば防げるケースがほとんど
  • 医師不足・衛生インフラ不足・ブレイン・ドレインが医療格差を構造的に固定化している
  • ワクチン普及・遠隔医療・コミュニティ保健ワーカー育成など、複合的な取り組みが前進している
  • SDGs目標3の達成は2030年までに難しい国が多く、国際的な支援の強化と加速が急務
  • 日本からでも、寄付・フェアトレード・情報発信を通じて医療格差の解消に関わることができる

大きな課題を前に無力感を覚えることもあるかもしれません。しかし、ユニセフへの少額寄付や関連情報をSNSでシェアするといった小さな行動から始めることができます。まず1つだけ、今日できることを試してみてください。

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アフリカ在住フリーライター。現在はルワンダにて、2歳児を育てながらwebライターとして活動中です。無理しない範囲で「エコな暮らし」「サステイナブルな生活」を楽しむよう意識しています。実践しているのは、布おむつ・マイボトル・エコラップ・自宅ではできるだけベジタリアンなど。読者の背中を押して、明日からの生活に小さな変化をもたらせるような記事を書いていきたいです。

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