ジェンダーフリーを目指していこうとする社会の流れから、よく耳にするようになった「女性差別」というワード。
女性差別は女性であることを理由に、差別など不当な扱いを受けたり、ぞんざいに扱われたりすることを言います。
女性ジャーナリストの勇気ある告発を皮切りにSNSで「#me too」運動が広がったり、著名人の差別的な発言があった場合は適正に指摘されるようになったりしたことで認知度が格段に上がりました。
しかし、まだまだ女性差別の問題が解決されたとは言えません。
今回は日本や世界での女性差別の歴史や現状、女性差別を改善し誰もが平等に権利を得られるような社会にしていくために、私たちができることをご紹介します。
日本で女性差別が始まった歴史背景
かつての邪馬台国の女王卑弥呼や巫女などを一例に、元々、女性は神仏との距離が近く神聖的な存在とされていました。
女性への差別的な考えが始まったのは、武力が物をいう鎌倉時代からだと言われています。
もちろん、地位の高い武士の妻や側近であれば政権にも参加し、高い地位の女性もいましたが、戦にも参加できない大半の女性はだんだんと弱い立場に立たされるようになりました。
戦国時代が終わり江戸時代に入ってからは、政府は武士と百姓を基準に階級で身分を分けていき人民を支配することで差別意識は高まりました。
また、性を売買する「吉原」や「島原」などの遊郭が幕府公認でスタートしたキーポイントとなる時代です。
遊郭は遊女たちの煌びやかな髪結いや衣装でファッションの発信地となったり、歌舞伎や浄瑠璃の舞台となったりと人々の目には華やかな世界として映ることもありました。
しかし遊女達は、どれだけ稼ぐことが出来るかで厳しくランク分けされ、梅毒などの性病に苦しんだり、不衛生で危険な中絶で感染病になり命を落としたりする者も大勢いました。
戦後から11年後の1956年に「売買春防止法」が公布され、法的に性を商品として扱うことは禁止されました。
しかし長年の間、女性の性を買うことが出来るという認識や、女性の性はビジネスになるという認識が根付いてしまったのが女性差別の根本の原因のひとつであると考えられます。
日本と世界の女性の社会進出のきっかけ
当時25歳の若さで女性の自由と権利を確立するため女性解放運動を行い、1911年に日本で初めての女性向け雑誌「青鞜(せいとう)」を出版した平塚らいてうの活躍が、女性の社会進出の大きなきっかけです。
青踏に載せられた「元始、女性は太陽であった」のフレーズは多くの女性を勇気づけ、歴史に教科書にも記載されるほど有名になりました。
一方、世界で最初に女性解放運動が行われたのは、18世紀末、1789年のフランス革命で人間と市民の人権運動の対象となったのが「男性」のみだったため、女性の権利を求める運動が各地に広がりました。
19世紀になるとアメリカやヨーロッパでも女性の参政権を求める運動が盛んになり、1970年頃には世界中で女性解放運動が広まり女性の労働の自由が認められていくようになりました。
現在ではフェミニズム(女性解放論)を浸透させる活動を行う方が増え、SNSの普及により誰でも発言し、情報発信していくことで改善を求められる時代になりました。
昔もいまも、史実にない、色々な方の活動や発信が少しずつ女性差別をなくしていると感じます。
新型コロナウイルスで浮き彫りになった日本の女性差別の現状
女性差別が以前よりはなくなってきたとはいえ、まだまだ各所で女性差別が問題視されています。
特に新型コロナウイルスの影響で、女性差別が要因の女性の貧困問題が注目されています。
女性は家で家庭を守るといった古くからの固定概念や妊娠、出産といった女性ならではの役割があるという理由で不当な扱いを受ける女性は少なくありません。
女性の労働者は増えてきましたが、パートや派遣といった不正規労働者の割合は男性より圧倒的に女性の割合が多いのが現状です。
今回の新型コロナウイルスは、急激な経済状況の悪化を巻き起こし派遣切りや不正規雇用の休業が余儀なくされました。
内閣府男女共同参画局の調査によると、令和2年4月の就業者数が男性は39万人減少、女性は70万人減少しました。
もちろん男性も多くの人が職を失いましたが、女性の減少幅の方が多いことがわかります。
このように、社会情勢が悪化した場合に、貧困問題は顕著になります。
女性自身が納得し、望んで選んだ雇用形態や職務内容なら問題ありません。
女性自身に能力があったとしても「女性だから」という理由で、対男性とは違った対応や評価になってしまうことは差別にあたります。
女性差別を見本に改善できるすべての差別問題
女性差別をなくすために声を上げたり、何とか改善しようと奮闘してきた方が歴史上たくさんいます。
そして、その数をはるかに上回る見えない戦いがたくさんありました。
そういった小さな変化の積み重ねが、女性差別だけではなくあらゆる差別問題に関心を寄せるきっかけになっているのではないかと考えています。
中でも、女性差別と同じ性差別を受けてしまう「LGBT」といったセクシャルマイノリティーに対する認知度は以前より高くなりました。
LGBTにとどまらず「LGBTQ」や「LGBTQIA」といって自分の性や性的指向がわからなかったり、同性だけでなく異性にも恋愛感情を抱かなかったりと多様なセクシャリティーが浸透しつつあります。
最近は若い世代の人たちが学校やメディアで情報を得ていることもあり、理解が高まっている反面中高年の理解度はまだまだ課題感があります。
厚生労働省の調査によると、LGBTの約半数が職場で困難を感じているとの結果が出ています。
職場の人と接しづらくなるという不安を感じてカミングアウトができず、プライベートの話しがしづらかったり、自分の心とは異なる性別として振る舞わなければならない葛藤を感じています。
LGBT等の方々が生きやすくなるまでの道のりは長いかもしれませんが、時代の変化とともに一歩ずつ差別改善への道を進んでいると感じます。
参照元:職場におけるダイバーシティ推進事業について|厚生労働省
女性差別を含めるすべての差別をなくしていくために私たちができること
女性差別を含めるすべての差別や偏見をなくしていくために何ができるのでしょうか?
今日からできることを、まとめてご紹介します。
①正しい情報を収集する
女性差別に関する情報はメディアでもよく取り上げられますし、SNSなどでも注目されることが多くなりました。
ただし最近は、誰でもいつでも情報を発信できることで、間違った情報や極端な意見がを目にしたりもします。
時に心無い意見に傷ついてしまったり、戸惑ったりすることもあるかもしれませんが、それもごくごく一部の意見ということを忘れないでほしいと思います。
一部の意見だけを鵜呑みにせず、いろんな人の意見を聞いて自分はどう思うかを、意識して考えることが重要だと感じます。
②固定概念や思い込みで決めつけないようにする
自分の今までの経験から、「こうあるべきだ」や「こうに違いない」といった固定概念や思い込みが強すぎる場合は注意が必要です。
良かれと思っての行動や発言であっても、相手を気付つけてしまう可能性があります。
例えば、「ワーキングマザーは育児が最優先だから重要な仕事を任せたら困るよね」といった周りの遠慮から、マミートラック(出世コースから外れること)に陥り悩む女性も少なくありません。
「もしかしたら相手は嫌かもしれない」や「もしかしたらこういう考えの人もいるかもしれない」といった想像力が女性差別をなくしていくことには必要不可欠でしょう。
③相手に希望を伝える
相手の気持ちは相手に確認してみないとわからないのと同じで、伝えなければ伝わりません。
思い切って相手に伝えてみたら理解してくれたというケースもあります。
勇気のいることかもしれませんが、最初から諦めず話しを聞いてくれそうな相手であれば伝えてみる価値はあります。
⑤おかしいと感じたことは声に出してみる
今までもたくさんの女性が声を上げてきたことで、何年も何百年もかけて少しづつ女性の権利が確立されてきました。
当事者ではなかったとしても、様々な人の行動が積み重なって女性差別を改善させて来たと思います。
もし女性差別と感じる場面で、他人ごとにせず一言「それって女性差別じゃないですか?」と言ってくれる人がいるだけで、当事者は救われたり勇気付けられたりします。
そういった一声一声が、女性差別に限らずすべての差別をなくしていく小さな積み重ねになると感じています。
まとめ
女性差別の歴史は根深く、すぐに根絶するのは難しいかもしれません。
しかし、一人ひとりが声を上げ行動に起こしてきたから改善されたこともたくさんありました。
反対に、ただ我慢して黙っているだけでは何も改善されないという厳しい現実があるのも事実です。
勇気を出して声を上げることで少しずつでも状況が改善したり、思いがけない仲間が増えることもあります。
また、女性差別だけに目を向けるのではなく、その他の差別についての歴史を勉強したり、現状を知ったりすることも重要です。
一人ひとりが相手を思いやる想像力を働かせ、少しずつ行動していくことが全ての差別をなくしていく一歩になると感じています。