「CDP(シー・ディー・ピー)」は、人々と地球のための長期的な経済の繁栄の実現を目的として発足した非政府組織(NGO)です。
CDPの活動によって世界全体の主要企業の環境活動の状況が把握できるだけでなく、各企業の環境活動が促進されます。
しかし、私たちが日常生活をするうえでCDPの活動はなじみがありませんよね?
そこでこの記事では、CDPとはどのような組織なのかについて解説します。
また合わせて、具体的な活動内容も解説します。
環境活動とりわけ気候変動に対して、そして日本に住む私たちにとってCDPの活動がどのように関係するのか、ぜひ参考にしてください。
企業の環境活動を評価する 「CDP」とは?
CDPは2000年に発足し、イギリス ロンドンに本部を置く非政府組織です。
日本では、2005年に「CDPジャパン」として活動を開始しました。
おもな活動として、世界の主要な企業に対して環境活動に関する情報開示を求め、得られた情報を分析・評価し、その結果を機関投資家や主要購買企業などに提供しています。
CDPの活動が企業の環境活動を促進する理由
なぜ、CDPの活動は企業の環境活動を促進するのでしょうか?
考えられる理由は、以下の3つです。
・自社の環境活動に対する第三者評価となる
・投資家の投資判断、購買企業の取引実施判断の材料となりうる
・CDPによる質問に回答することで、本質的な環境活動実践の振り返りとなる
CDPが開示した情報は、投資判断や取引実施判断の材料となります。
そのため、投資家からの継続的な投資を必要とする企業や購買企業との取引を拡大したい企業は、中長期的かつ本質的な環境活動が求められます。
CDPの活動によって実状が明らかとなり、その後の投資や取引の実施を左右することから、CDPの活動が環境活動促進のきっかけとなっていると言えます。
この活動の影響力は年々拡大していて、2020年時点で情報開示請求に対して9,600社が回答し、世界最大規模の情報量が集まっています。
情報量の多さにより、投資家や購買企業にとっては活動における判断材料、国や地域にとっては環境管理のための情報源として高い信頼を集めています。
CDPがおこなう企業の環境活動への評価活動とは?
CDPの活動領域は、「気候変動」「水の安全性」「森林」に分けられます。
領域ごとに作成された計3種類の質問書を主要企業に送り、回答という形で情報開示を求めます。
その後得られた回答内容にもとづいて、CDPが明確な基準をもって、各企業の環境活動を評価します。
評価基準は、環境影響・環境リスク・事業機会・ガバナンス・環境行動についての包括的な開示、環境リスクとその事業への影響の把握、環境リスクの管理と環境先進性を伴うベストプラクティスの明示です。
また評価はA、A-、B、B-、C、C-、D、D- の8段階で評価され、Aが最高位とされています。
2020年度には海外も含め、過去最高の9,600社以上の企業が環境情報の開示に協力しました。
そのうち、「気候変動」では277社、「水セキュリティ」では106社、「森林」では16社がA評価を獲得しています。
いずれかの領域でA評価を受けた企業を本社の所在地域別に分けてみると、ヨーロッパに133社、次いでアジアに100社、そして北米に61社設けられていることがわかりました。
また国別に見ると、日本に66社が存在し最多、次いでアメリカに58社があり、日本企業が着実な環境活動をおこなっていることがわかります。
さらにイギリスに21社、ドイツには19社、フランスに18社と並びます。
3分野すべてにおいてA評価を獲得した場合、「トリプルA」という評価がなされます。
2020年、日本では花王株式会社と不二製油グループ本社株式会社がトリプルAの評価を受けました。
CDPによる2020年の「気候変動レポート」からわかる日本企業の活動実態
活動領域のひとつである気候変動は、各企業の地球温暖化対策の現状を把握し、温室効果ガス削減に向けた対策を考えるきっかけを与えるために設けられています。
毎年、CDPは各企業の回答内容を集計したレポートを発表しています。
2020年のレポートでは、質問書に対する日本企業の回答率が他国と比較して高く約65%にのぼり、日本企業の気候変動に関する情報開示への積極的な姿勢が評価されました。
また、CDPにおけるガバナンス(管理体制)に関する設問である「取締役会の気候変動関連課題への監督」の問いに対して、全回答企業のうち95%が「監督している」と回答しています。
「取締役会の気候変動関連課題への監督頻度」については、「全ての会議」と回答した企業が27%、「一部の会議」と回答した企業が65%となり、日本企業において取締役会レベルで気候変動に関する課題について高い頻度で議論されていることがわかりました。
さらに、温暖化対策として早急に対策が求めらている再生エネルギーの利用に関する設問があります。
回答結果を見ると、全体のエネルギー消費量に対して、10%以上再生可能エネルギーを利用している企業は、9.6%に留まりました。
日本の再生可能エネルギーの利用に対し遅れが危惧されているなか、各民間企業においても遅れが生じていることがわかります。
一方で、エネルギー消費のうち再生可能エネルギーの利用が99%以上であると回答した企業が1社、50%~75%未満が2社、25%~50%未満が6社あります。
この結果を見ると、条件に応じて再生可能エネルギーへの転換が可能であることがわかり、今後の拡大が期待できます。
気候変動への対策におけるCDPと環境省との関係性は?
環境省はCDPと密接かつ友好的な協力関係を築いています。
例として2019年から、サプライヤーの環境に関する取組の促進をはじめとする目的で「CDPサプライチェーンプログラム」に参加しています。
同じく2019年には「サプライチェーン・アジアサミット2019」をCDPと共催しました。
2020年の開催は感染症拡大予防措置として中止されましたが、2021年にも「サプライチェーン・アジア・サミット2021」を日本政府の環境省と共催しています。
2020年1月時点で、CDPの気候変動プログラムのA評価企業数において日本は最多数となり、積極的な企業の環境活動も評価されています。
CDPによる気候変動対策の評価が私たちの生活に与える影響
私たちの生活においては、勤務している会社がCDPによって情報開示を求められ、対応することがあるかもしれません。
また、CDPによる高評価を目指す企業が環境活動をおこなううえで、今後私たちの暮らしに影響があるでしょう。
しかし、その先の目標は気候変動の抑制です。
CDPの活動は一見、私たちの生活に全く関係がないと思いがちですが、実は密接な関りがあるのです。
さらにCDPによる評価は、グローバルな視点で環境活動における日本企業の環立ち位置を知る重要な機会と言えます。
参照元:
・CDPとは?よくある疑問に回答!│未来をおしえて!アミタさん
・CDP 気候変動 レポート 2020:日本版│CDP
・CDP Climate Change 2021 Reporting Guidance│CDP
・CDP気候変動質問書 2020日本概要報告│ソコテック・サーティフィケーション・ジャパン株式会社