「ヴィーガン」とは、動物性たんぱく質や白砂糖を摂取しない食生活のこと。
宗教やアレルギーといった理由のほか、近年では動物愛護や環境保護の観点で、こうした食生活を選択する人もいます。
メディアで取り上げられることも増え、一見するとヴィーガンに対する認知度が上がっているように感じます。
しかし実際には、どのくらいの人がヴィーガンという食生活を送っているのでしょうか?
そこで今回は、世界のヴィーガン人口について解説します。
サンプル調査では、世界のヴィーガン人口割合は約3%
2018年、イギリスの市場調査会社である「Ipsos MORI(イプソス・モリ)」が食生活に関するwebアンケートを行いました。
世界28ヶ国の成人男女20,313人を対象に実施され、回答者自身の食べるあるいは食べない食品によって、数字が集計されています。
この調査結果によると、世界のヴィーガン割合は約3%でした。
この結果をサンプルとして、2018年の世界人口を約76.3億人とすると、約2.3億人がヴィーガンであることになります。
なお、グラフ内のほかの選択肢の定義は、以下の通りです。
・オムボニア=動物性、植物性を問わず食べる
・フレキシタリアン=肉や魚は控えるが、卵や乳製品は食べる
・ぺスカタリアン=肉は食べず、魚や卵、乳製品等を食べる
・ベジタリアン=肉や魚は食べないが、卵や乳製品は食べる
ヴィーガン食を選択する理由
世界で約3%となるヴィーガンの人のなかには、宗教やアレルギーなど、選択の余地なくヴィーガンとなった人も多くいます。
一方で、自らの意思でヴィーガンとなった人は、どのような理由で食生活の選択をしたのでしょうか。
動物愛護のため
牛や豚などの家畜や魚の命を保護する目的で動物性食品をとらず、ヴィーガンを選択する人は多くいます。
またヴィーガンの場合、ミツバチの労働によって得られるハチミツや、精製過程で動物の骨を使う白砂糖の摂取も避け、動物の保護を徹底しています。
環境保護のため
家畜によるメタンガスの発生や、家畜を育てる土地開拓のための森林伐採が、地球温暖化の原因の一端であると言われています。
また、人間が魚を食べることで海の生態系を壊し、海の環境も破壊していることなどから、環境保護を目的にヴィーガンを選択する人も増えています。
ダイエットや体調管理のため
欧米では、脂質や糖質が多くカロリーの高い食事が目立ちます。
揚げ物やパスタ、ピザなどを食べる機会が多いことがその理由です。
そこで、ダイエットや体調管理の目的で、動物性食品を避け、脂質や糖質の摂取を控える人が増えました。
一方、日本では欧米と比較すると、もともと摂取する脂質や糖質が少ないため、ダイエットや体調管理のためにヴィーガンとなる人は少ないと言われています。
ヴィーガン食を選択しない理由
ヴィーガン食を選択する人がいる一方、選択しない人にはどのような理由があるのでしょうか。
栄養の偏りが心配
動物性食品をとらないヴィーガンでは、効率よくたんぱく質を摂ることができず、栄養が偏ると指摘されています。
体質は人それぞれであるため、動物性食品をとらないことで体調がよくなったと感じる人もいる一方で、必要なたんぱく質がとれずに不調を訴える人もいます。
ヴィーガン対応のメニューや食品が少ない
欧米だけでなく日本においても、ヴィーガン対応のレストランは増えているものの、現状ではバリエーションが少なく、外食できる場が少ないという問題があります。
ヴィーガンでありたいのに、職場や友人との食事の場に困り、人間関係の悩みに発展するケースも見られます。
また、スーパーやコンビニエンスストアで販売されている食品もヴィーガン対応の商品が少なく、ヴィーガンを選択しない理由のひとつとなっています。
忙しい毎日のなかで、自分で一からヴィーガン対応の料理をする時間もなく、継続が難しいことが考えられます。
ヴィーガン対応食品は価格が高い
ヴィーガンにならない、続けられない理由には、価格の高さも関係しています。
野菜や果物の値段だけ見ても、農園や野菜直売所が近くにある環境でない限り、旬の時期でない食材は価格が高騰します。
さらに、野菜のなかでもオーガニックのものを選ぼうとすれば、価格はより高くなるでしょう。
このほか、加工食品を見るとヴィーガン対応の食品が少なく、他の食品と比較すると値段が高くなってしまいます。
今後需要が高まれば、大量生産ができるようになり、手に取りやすい価格となる可能性はあります。
また、たとえ値段が高くても、病気のリスクが下がると考えれば、安いと感じられるかもしれません。
自分の体調や考えにマッチする食生活を選ぼう
ヴィーガン食を選ぶ理由、選ばない理由を踏まえ、私たちはヴィーガンとなるべきなのでしょうか。
その答えは、体調や思想によって正解が変わります。
動物愛護や環境保護の観点ではヴィーガンが好ましい一方で、栄養の観点ではバランスの偏りが指摘されています。
そのため、ダイエット目的の場合は、少量であっても動物性たんぱく質をとるべきと言われています。
そこで私たちは、自分の体調と相談しながら、自分の考えにマッチする食生活を選択したいものです。
毎日の食生活のなかで、週に一度、ヴィーガンの日を作るなど、少しずつ取り入れてみるのもおすすめです。
参照元:フードテックの振興に係る調査委託事業の報告書│農林水産省HP