地球温暖化が問題となっている昨今、カーボンオフセットという活動が増えています。
カーボンオフセットとは、日常生活や経済的な活動において排出される温室効果ガスを削減するための考え方です。
今回は、カーボンオフセットのメリットや課題を解説するとともに、すでに行なっている企業による実例も紹介します。
カーボンオフセットとは?
カーボンオフセットという言葉を分解すると、「カーボン(炭素)」と「オフセット(埋め合わせる)」という単語になります。
直訳すれば炭素を埋め合わせるという意味で、つまり、二酸化炭素の排出量を削減する際に、どうしても削減できない部分に関して埋め合わせを行うという考え方です。
世界的に動きが進むカーボンオフセットですが、日本では、2008年に環境省が「カーボンオフセットフォーラム(J-COF)」を設立し、適切で透明性の高いカーボンオフセットの普及を始めました。
参照元:カーボン・オフセット|環境省
カーボンオフセット制度について
信頼性のあるカーボンオフセットの取り組みを普及し得るために設立されたのが、カーボンオフセット認証制度です。
環境省により開催された「カーボン・ニュートラル等に夜オフセット活性化検討会」での提言がベースとなって設立されました。
2017年には、環境省の公開文書に則って、民間主導で行われています。
認証機関は、一般社団法人カーボンオフセット教会です。
認証基準を満たせば、「カーボンオフセット認証」が付与されます。
クレジットとは?
カーボンオフセットによって実現した温室効果ガス削減や吸収量を、定められた手段に従って数値化し、取引可能な形態にしたものをクレジットといいます。
クレジットは電子システム上の口座を使って売買され、カーボンオフセットをするためには、クレジットを購入して、購入したクレジットを無効化しなくてはなりません。
カーボンオフセットに利用されたクレジットを、再度利用されないための大切な手続きです。
カーボンオフセットの必要性
気候変動を評価する機関である「気候変動政府間パネル(IPCC)」は、2013年の第5次報告書において、20世紀半ば以降に観測された温暖化は、人間活動が支配的な要因であった可能性が高いことを伝えています。
実に95%以上の確率で、人間活動が影響していると報告されており、1880年から2012年の間に世界の平均気温は0.85度上昇しました。
特に、温室効果ガスの排出量は、1970年から2010年の間に増加しており、GDPと人口増加に比例しているといいます。
この先2100年位は、産業革命以前の水準と比較して、3.7~4.8度程度上昇されており、危機的状況です。
第5次報告書では「2℃シナリオ」という目標が立てられました。
これは、気温上昇を産業革命前と比較して2度未満に抑えられる可能性の高いシナリオです。
2010年の状況と比較した時に、2050年には40~70%の温室効果ガスを減らす必要があるとされています。
さらに、2100年には、温室効果ガスの排出量をゼロもしくはマイナスの状況にしなくてはならないともいわれるほどです。
この目標を達成するためには、世界全体で団結し、カーボンオフセットの取り組みをしなくてはなりません。
カーボンニュートラルとの違い
カーボンオフセットとよく似た言葉として「カーボンニュートラル」が挙げられます。
カーボンオフセットは、抑えきれなかった温室効果ガスを投資や環境活動などの取り組みで埋め合わせるという考え方なのに対して、カーボンニュートラルは、排出される温室効果ガスを人間の活動において吸収除去した上で、プラスマイナスゼロ、いわゆる「ニュートラル」な状態に持っていうという考え方です。
カーボンオフセットの主な方法
カーボンオフセットの取り組み方法は様々ですが、日本では下記にあげる5つの方法がメインとなっています。
それぞれの取り組み方法について見ていきましょう。
オフセット製品やサービス
製造業や販売業など、ほとんどの企業において経済活動を行う際に温室効果ガスを排出しています。
さらに、提供された製品やサービスを私たちが活用する際にも、温室効果ガスが排出されることが多いでしょう。
こうした製品の製造や販売、仕様に関わる動きで排出される温室効果ガスを埋め合わせる方法です。
会議やイベントによるオフセット
国際会議やコンサート、スポーツ大会などのイベントでも、温室効果ガスは大量に発生します。
この排出量を埋め合わせるために、イベントの主催者がCO2削減プロジェクトなどを通してオフセットする方法です。
自己活動オフセット
個人や組織の事業活動において温室効果ガスを直接オフセットする方法を「自己活動オフセット」といいます。
例えば、植林プロジェクトなどのCO2削減プロジェクトで貢献した団体がクレジットを販売し、購入した個人や団体は、排出した温室効果ガスをオフセットすることが可能です。
クレジット付き商品やサービス
企業が対象となる商品やサービスに、クレジットを付けて販売することがあります。
購入した人が日常的に排出している温室効果ガスをオフセットする考え方です。
寄付型オフセット
商品やサービスを提供する企業や、イベントの主催者がクレジットを購入するために寄付を募る仕組みを寄付型オフセット言います。
消費者は、寄付を求める商品やサービスを購入したりイベントに参加することで、オフセットが可能です。
企業や団体によるカーボンオフセットの取り組み例
カーボンオフセットの取り組みを行う企業は、国内外問わず増加傾向にあります。
その取り組み方法は実に様々で、企業や団体によって工夫を凝らしているのが特徴です。
続いては、企業や団体によるカーボンオフセットの取り組み例を紹介します。
佐川急便の取り組み
運送業は、温室効果ガスを多く排出する業種のひとつです。
日本の大手運送業である佐川急便では、温室効果ガスを排出する車両を使わない「カーボン・ニュートラル宅配便」を手がけています。
車両の代わりに、台車や自転車を導入し、CO2排出量ゼロを実現する取り組みです。
どうしても車両を使う必要があるエリアや、サービスセンター間の輸送などによる温室効果ガスについては、森林保全活動によってオフセットしています。
参照元:【佐川急便】「第7回 カーボン・オフセット大賞」において環境大臣賞を受賞|佐川急便
道の駅「にちなん日野川の郷」の取り組み
企業に限らず、地方自治体や地方団体もカーボンオフセットへの取り組みに積極的です。
例えば、鳥取県日南町にある道の駅「にちなん日野川の郷」では、2016年にカーボンオフセット大賞において農林水産大臣賞を受賞しました。
この道の駅がオープンしたのは2016年4月だったため、実に半年程度でのスピード受賞です。
オープンの段階で施設から排出される温室効果ガスを全てオフセットにすることを前提としていました。
また、全ての取扱商品を寄付型のオフセット商品としており、1アイテムにつき1円のクレジットがついています。
参照元:
・道の駅「にちなん日野川の郷」公式HP
・「第6回カーボン・オフセット大賞」の受賞者決定について|環境省
まとめ
今でも排出され続ける温室効果ガスは、地球に大きな影響をもたらしています。
温暖化から発展する異常気象や気候危機は、人間だけではなく様々な生物の暮らしを奪っているのが現状です。
この先カーボンオフセットという考え方は、もっと定着していく必要があるでしょう。
企業はもちろん、私たち消費者も買い物をしたり日常生活を送る中で、意識して活動しなくてはなりません。
まずは、カーボンオフセットという考え方に着目してみることが大切です。
寄付型のオフセット商品を購入したり、オフセットをしている企業のサービスを活用するなど、できることからチャレンジしてみましょう。