大気汚染は、世界中が抱える大きな課題として各国が対策に追われています。
大気汚染がもたらす影響は、環境破壊だけではありません。
人体にも深刻な被害が及びます。
現在、特に大気汚染が深刻化しているのは途上国ですが、大気汚染は経済にも深刻なダメージを与えるため、人ごとではありません。
地球規模の問題として各国が取り組む必要があります。
こちらの記事では、大気汚染がもたらす影響を細かく解説するとともに、世界各国が行なっている対策について解説します。
大気汚染の現状
日本の大気汚染は、高度経済成長期に加速しました。
当時は、公害という言葉が定着しておらず、全国にある工業地帯で大量の石油や石炭が燃やされたことにより、大気汚染が深刻化したと言われています。
その後、全国で公害反対運度が激化し、1968年には大気汚染防止法が制定されました。
こうした動きにより日本の大気汚染は改善しつつありますが、世界に目を向ければ途上国を中心とした大気汚染が後を絶ちません。
日本もまだまだ完全ではなく、自動車から排出される窒素酸化物は、未だに課題となっています。
大気汚染がもたらす影響
大気汚染は、自然環境や生態系への影響はもちろん、私たち人間の体にも深刻な影響を及ぼします。
また、経済にも悪影響をもたらすため、世界中が対策を講じなければ被害拡大を抑えることはできません。
どのような影響があるかを知ることで、対策や考え方の変化にも繋がるでしょう。
続いては、大気汚染がもたらす影響について、項目ごとに解説します。
人体に対する影響
大気汚染の原因となる物質は、硫黄酸化物や粒子状物質といった大気中に混ざる物質です。
例えば、硫黄酸化物は石炭や石油といった化石燃料が燃焼する際に発生します。
工場や火力発電所から排出され、大気中に混ざった硫黄酸化物を吸い込むと喘息や気管支炎を引き起こすため、日本でも高度経済成長期より問題視されてきました。
現在は、規制が設けられており、日本における硫黄酸化物の濃度は減少しています。
しかし、当時は公害病とも呼ばれ、深刻な健康被害をもたらしました。
昨今、問題となっているのが粒子状物質です。
中でも、PM2.5と呼ばれる微小粒子状物質は、極めて粒が小さく、肺の奥まで入り込む可能性があり、特に危険視されています。
環境に対する影響
大気汚染が環境に与える影響の多くは、酸性雨が原因です。
大気中に混ざった汚染物質が、雨や雪、霧等に溶け込むことで、通常の雨よりも強い酸性を示します。
純粋のpHは7であり、酸性雨はpH5.6以下が目安です。
こうした酸性の強い雨が樹木に当たると葉が変色するばかりか、土壌に蓄積されることで、土壌の成分が変化し樹木を枯らすことになります。
そのほか、川や湖に蓄積した酸性雨により、昆虫や甲殻類、プランクトンが減少し、食物連鎖に与える影響も否めません。
経済に対する影響
WHOによると、世界の700万人にものぼる人が大気汚染で早死したと発表しています。
働き盛りの若者が亡くなることによりもたらされる経済的な損失は深刻です。
また、大気汚染は脳にも影響を及ぼし、子供の成長を妨げるともいわれています。
こうした悪影響は、生産性を損なうばかりか人的資源という観点から見ても大きな問題となるでしょう。
参照:気候変動と並ぶ大気汚染の健康リスクー新しい大気質ガイドライン発行|WHO最新ニュース|WHO
大気汚染に対する各国の対策
世界では、深刻化する大気汚染に対して、様々な取り組みがなされています。
日本も、大気汚染防止法をはじめとする環境整備が行われたことで、着実に改善してきました。
現在も、環境に対する取り組みは強化され、一般にも浸透しています。
続いては、各国が行なっている大気汚染への対策について紐解いていきましょう。
日本の大気汚染対策
1968年の大気汚染防止法に先駆けて制定されたのが、1967年の公害対策基本法です。
大気汚染をはじめとして、水害や土壌汚染、騒音問題など、経済発展による様々な公害を防止するために制定されました。
1993年には環境基本法が施行されたため、廃止されています。
そのほか、国土交通省では環境行動計画においてEST(環境的に持続可能な交通)という政策ビジョンを提案しています。
生活や経済活動をする上で欠かせない交通は、大気汚染などの環境問題の原因となる点も否めません。
こうした問題を抱えたままの交通手段を、この先も長く続けてしまえば、人が暮らせなくなるような環境が訪れる可能性もあります。
ESTの目的は、環境に負担のない交通行動や生活様式を選択できる都市構造を作り、環境的に持続可能な交通を提供することです。
もともとヨーロッパを中心に用いられた取り組みですが、日本でもESTモデル地域を選定するなど導入が進んでいます。
参照元:
・環境基準について|環境省
・環境的に持続可能な交通(EST)|国土交通省
世界的な大気汚染対策
イギリスでは、「大気浄化戦略」と銘打って、国民の健康と環境保護を目的とした汚染物質削減に取り組んでいます。
特に、粒子状物質に関しては厳しい基準を取り入れており、2025年までにはPM濃度がWHOの定める基準値を超えるエリアに暮らす人の数を半減することが目標です。
加えて、大気汚染がもたらす社会的損失額を抑える効果も期待されています。
そのほか、世界最悪レベルの大気汚染に直面しているのがインドです。
ガソリンに比べて割安な軽油を使うディーゼル車が浸透したことが要因の一つと言われています。
こうした背景から、インドでは排気量2リットルを超えるディーゼル車の新規登録を禁止しました。
また、製造から10年を超えるディーゼルトラックは、都市部であるニューデリーへの通行ができません。
加えて、ニューデリーを運行するディーゼルタクシーは、圧縮天然ガスを使用するCNG車に全面的に切り替えられています。
大気汚染対策として個人でできる取り組み
大気汚染を生み出す根本にあるのは、私たちの暮らしです。
日々の生活の中で行われる消費活動が、全てのベースとなっているため、個人の意識を変えることは大気汚染対策として欠かせません。
すぐにできる取り組みとして、省エネがあげられるでしょう。
どのような対策ができるかを一つずつ解説します。
暮らしでできる省エネ
生活の中の小さな取り組みも、集まれば大きな大気汚染対策になります。
例えば、電化製品や照明のスイッチをこまめに切ることも一つの対策です。
また、冷房を1度高くし、暖房を1度下げるだけでも、年間でかなりのCO2削減に繋がります。
一見するとささやかな行動に見えますが、大気汚染対策をするためには欠かせない個人的な取り組みと言えるでしょう。
移動手段でできる省エネ
自動車の交通量を減らすことも、大気汚染対策です。
例えば、できるだけ公共交通機関を使用したりカーシェアリングを活用したりすると、渋滞の緩和にもつながり全体的な排気量を減らすことができます。
そのほか、ハイブリッドカーや電気自動車、エコカーなどに移行していくのもおすすめです。
まとめ
日本における大気汚染問題は、一昔前と比べると解消したように見えます。
しかし、日頃の消費活動は、世界中で起きている大気汚染問題に直結している点は否めません。
大気汚染対策をするためには、現状を知ることが大切です。
私たちの暮らしと環境がどのような関わりを持っているかを理解し、意識を高めることで、大気汚染対策を念頭に置いた行動をしやすくなるでしょう。
一人一人の小さな行動が、結果的に世界の空気をきれいにしていきます。
誰もが健やかに暮らしていくためにも、一つ一つの行動を大切にしていきましょう。