SDGs(持続可能な開発目標)の15番目のゴールは「陸の豊かさを守ろう」です。
この目標は「陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進。持続可能な森林の経営。砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する」をテーマとして様々なターゲットを設定しています。
そしてこのゴールにおける最大の問題であり、テーマを包括して関わる問題は、森林破壊です。
では、森林破壊が起こっていることにより実際にどのような問題を引き起こし、地球や生物に影響があるのでしょうか?
本記事では、森林破壊に関する基礎知識から、森林破壊によってもたらされる影響について学んでいきたいと思います。
森林破壊についての基礎知識
森林破壊という言葉の意味は理解できるけれど、具体的にどのような状態のことを言うのか、そしてその原因について答えられる人は少ないのではないでしょうか。
森林破壊の影響について知る前に、森林破壊に関する基礎知識を確認してみましょう。
森林がもつ役割
まずは森林がどのような役割を担っているかについて説明をしたいと思います。
森林には大きく分けて4つの役割があります。
①生態系の保全:森林は植物、菌類、微生物から、昆虫、鳥、爬虫類、哺乳類など多くの生物を養っていて、その生物は食物連鎖によって支え合い種の保存をしている。
②土壌保全と災害防止:落葉や草木を食べた生物の糞や市街が土壌に養分を与えている。また、樹木の根や草は地面を多い、土壌を押さえることで降雨による土砂崩れなどを防ぐ頑丈な土壌を作りだす。
③天然のダム・浄水場:森林土壌は、雨水を貯蔵し、河川へ流れ込む水量を調整して洪水を緩和することができる。また、土壌内で水をろ過し、水質浄化をすることもできます。
④地球の空気清浄機:森林は二酸化炭素を吸収して酸素を放出、水分の蒸発散作用により空気中の酸素や水分、温度のバランスを取っている。また、汚染物質の無害化能力を持ち地球の大気を浄化している。
森林破壊とは
前述したように、森林には重要な役割があります。
では、森林破壊とはどのような状況のことを言うのでしょう?
辞書などでは森林破壊を、『人間の手によって森林の皆伐または間伐が行なわれた結果,森林が減少・劣化すること。』と定義しています。
この減少・劣化というのは単に面積や木々の本数が減るだけではなく、森林の役割の効果が下がっている状態をも指します。
世界の森林面積は約39億haもあり、全ての陸地の約3割になりますが、1990年から2000年までの10年間で、約9400万haの森林が失われています。
また、今でも毎年1300万haの森林が失われているのです。
森林破壊の主な原因
森林破壊の原因は、人間による商業目的の森林伐採です。
例えば、途上国では森林を大量に伐採し、作った木材は先進国に輸出され消費されています。
あるいは、森を切り開くことで工場建設をしたり、大規模プランテーション農園を作ったり、酪農を行う、リゾート施設を作るなどの開発による森林破壊が起こっています。
また、一部の途上国では日常生活の燃料として薪を利用してるので、生活のために森林を伐採している場合もあります。
他にも、森林火災などの自然災害の影響などにより、世界の森林は破壊され続けています。
森林破壊が地球に与える影響
それでは、森林破壊が地球に与えている影響にはどのようなものがあるのでしょうか?
大気汚染
先述したように、森林には有害な汚染物質を浄化・無害化する機能があります。
また、大気中のチリや埃も葉が吸着してくれます。
公害として有名な光化学スモッグの発生源となるガスの一部は、樹木の葉の表面に触れるだけで分解されます。
森林破壊が進めば進むほど大気の浄化をする木々が減り、大気汚染は進んでいきます。
地球温暖化
森林が破壊されると、酸素を作る植物が減り結果的に二酸化炭素排出量が増えていきます。
これにより地球の温室効果が高まり、地球全体の温度が上昇する「地球温暖化」をもたらします。
砂漠化
世界では、毎年日本の国土の半分ほどの面積の森林が破壊されていて、さらにその半分は砂漠化しています。
土壌の劣化
森林破壊が起きると土地がやせ、土壌が緩み洪水や土砂崩れの原因を生みます。
また、土壌の栄養価も落ちることで畑としての利用も望めなくなっていきます。
異常気象・自然災害
これまで上げたいくつかの影響は、すべて異常気象や自然災害の原因となります。
気温が上がることによって北極の氷が溶け、海の水位が上昇し、水害の原因を生みます。
また、海面の温度があがることでハリケーンや熱波が増加したり、ゲリラ豪雨等の局所的な降雨にもつながっています。
森林や熱帯雨林は雨水を吸い、大気中に戻す働きがあるため、森が破壊されると、相対的に雨量がへって砂漠化にもつながります。
また、土壌が表出していることで雨水を貯蔵できず、大量の水が土砂災害や洪水をおこします。
加えて大気汚染がすすむと、有害物質を分解しきれないままで酸性雨が増加し、その酸性雨は土や水を汚染し、森林にダメージをあたえ、さらに森林破壊が起こり問題が連鎖していきます。
森林破壊が生物・生態系に与える影響
では、森林が破壊されることにより、生物や生態系に一体どのような影響が考えられるのでしょうか。
生態系の破壊と生物の絶滅
森は命の宝庫であり、森林には地球の生物の半分以上が生息しています。
森林破壊は森林の減少と同時に、野生動物も絶滅の危機に向かわせてしまいます。
また、森にすむ生物が減少・絶滅することは、森以外の環境に住み共生や食物連鎖の関係性にいる生き物にも影響します。
たった1種類の絶滅であっても生態系のピラミッドが崩れ、全ての命の危機につながっていくのです。
森林破壊が人類に与える影響
最後に、森林破壊が私たち人間に与える影響について知りましょう。
疫病や感染症の拡大
動物由来の感染症や疫病が拡がる原因には、森林破壊が関係しているとも言われています。森に暮らす生物の中には、未知の細菌やウイルスなどを保有している種も多くいます。
本来であれば人間や家畜などとは関わらなかったそれらの生物も、森林破壊により生息地を奪われることで、人間の生活圏に接触するようになることで、ウイルスが人や家畜に伝播し、ヒトの間で感染拡大されるようになるのです。
争いのきっかけ
オセアニアや東南アジアなどでは、豊かな森林資源を巡る争いが多発しています。
例えば、森林が経済発展のための重要な資源となるような地域では、企業と地元住民の間での利権の争いが起きたり、住民間でも森林の所有権をめぐるトラブルが起こってしまうのです。
食糧生産性の減少
森を伐採して畑を作っていれば食糧生産性は増加するように感じますが、実はそうではありません。
アフリカやインドなど、人口増加が激しい地域では、食料が慢性的に不足しているため、収穫後の休耕期間が不十分なままで次の栽培を始めてしまいます。
これにより一時的な生産性が上がっても、土壌はやせ細っていく一方です。
やせた土壌では十分な食糧生産が出来ないため、また森林を伐採してしまいます。
こうして、森林が減ると周辺の気候にも影響を与え、干ばつや洪水などを引き起こし、食糧難を増減させていくことにつながってしまいます。
まとめ
森林破壊は、地球上に暮らす全ての生物の危機につながるということが理解出来たでしょうか?
持続可能な世界を構築するために、森を守っていくことの重要性が伝わったのではないかと思います。
森林破壊の問題は当事国だけでなく、世界のすべての国が何らかの形で関わっており、地球に暮らす誰もがこの問題を真剣に考え、行動を起こしていく必要があるでしょう。
まずは、本記事で知った一つ一つの事実についてより深く学んでいき、地球の未来のためにどのようなことが出来るか考え、行動を始めてみると良いかもしれません。