地方創生という言葉をニュースや新聞でよく見聞きするようになりました。
地方創生とは、地方を活性化させることによって人口減少を食い止めて、日本全体で持続可能な発展を目指していくための取り組みです。
この記事では、
・地方創生とは?
・なぜ地方創生が必要なの?
・地方創生を実現するにはどうすればいいの?
このような疑問について解説していきます。
この記事を読めば、地方創生についての理解が深まり、日本の未来を自分ごとのように考えられるようになります。
地方創生とは?
地方創生とは、地方における人々の豊かな暮らしと地域経済の活性化を実現するためのさまざまな取り組みをいいます。
具体的にはどのような取り組みが地方創生の一環として行われているのでしょうか。一例として、地方の特産品を活用した新商品開発や、観光資源を活かしたイベントの開催などがあります。また、地元の企業と連携して新たなビジネスを立ち上げる動きも見られます。
地方の特色を生かし、もっと地方の経済を発展させることができれば、人々が安心して長く暮らせるようになります。地方に活気があふれれば、少子高齢化による人口減少や東京一極集中による人口流出に歯止めをかけることもできます。
第二次安部内閣が発足した2014年には、地方衰退の流れを食い止めるために看板政策として「地方創生」が掲げられ、同年12月には目指すべき将来像として「まち・ひと・しごと創生長期ビジョン」が打ち出されました。
地方の活性化を政策的に推進するためのもので、地方の自立と活性化を目指すさまざまな取り組みを後押ししています。
地方創生は、これからの日本の未来にとって大切な取り組みなのです。
地方創生と人口減少の関連性
日本はすでに人口増加のピークを過ぎています。
総人口は、平成20年(12808万人)をピークに、23年(12783万人)以降は徐々に減少しています。
日本全体の人口が減少しているにもかかわらず、さらに地方からは首都圏などの都市部に人口が流出しています。
都市部は地方に比べて雇用に対する需要が高く、さらに生活に便利なお店や施設がたくさんあるのも主な理由として挙げられます。
若い世代にとっては、にぎやかな都市部の方が生活しやすいのです。
しかし、首都圏などの都市部に人口が集中してしまうと、地方に住む人がどんどん減ってしまいます。地方自治体は税収が減り、公共サービスを維持できなくなります。
人口が減れば、地方の経済はますます衰退していきます。経済が衰退すると雇用も減ってしまいます。
雇用が減れば、子育てをする若い世代は雇用を求めて都市部へ移ります。地方に住む若い世代が減り、ますます人口が減少していきます。
このような負のスパイラルが進行してしまうと、もはや誰にも地方の衰退を止めることができなくなってしまいます。地方が衰退していく未来を阻止するためには、地方に住む人の人口減少をできるだけ抑える必要があるのです。
地方創生をせずに人口減少が進んだ未来とは?
地方創生をせずに人口減少が進んだ未来は、どうなってしまうのでしょうか?
日本の総人口は、2008年をピークに減少傾向にあり、2050年には約9500万人にまで減少する見込みとなっています。
人口減少が進むうえに東京一極集中が続いてしまうと、若い世代がどんどん都市部へ流れることになります。
すると、地方の経済は少子高齢化も相まって、経済も行政も成り立たなくなってしまうのです。
推計によると、2040年には全国896の市区町村が「消滅可能性都市」に該当し、そのうち523市区町村は人口が1万人未満となり、消滅の可能性がさらに高いのです。
高齢者を支える若い世代の人たちがいなければ、その地域の医療や福祉は成り立ちません。子どもたちが増えなければ、その地域に住む人はいずれいなくなってしまいます。
地方創生をせずに人口減少が進むと、たくさんの地方都市が消滅していってしまうのです。
参照元:
「国土の長期展望」中間とりまとめ 参考資料|国土交通省
「地域消滅時代」を見据えた今後の国土交通戦略のあり方について|国土交通省
地方創生が必要とされている背景
では、地方創生がこれほどまでに必要とされている背景はどういった点があるのでしょうか。ここでは下記の2点についてそれぞれを解説していきます。
1.少子化による人口減少
2.地域経済の衰退
1.少子化による人口減少
そもそも日本の人口が減らなければ、地方も都市も共に発展していくことができるはずです。
では、なぜ日本の人口は減り続けているのでしょうか?
日本では少子化が進んでいます。特にバブル崩壊以降、日本は長い景気低迷に苦しみました。
長い不景気をやっと脱すると思いかけた矢先、リーマンショックによってさらにどん底の苦しみを味わいます。
さらに追い打ちをかけるように東日本大震災もありました。日本経済は長い苦しみを味わいました。失われた20年、30年とも言われています。
この長い不景気によって、若者の非正規雇用が加速し、未婚率が上昇。
家計所得は増えず、貧困世帯の増加や将来への不安なども重なって、結婚や出産ができない若者も増え続けていきました。
結婚したいのに経済的にできなかった、子どもが欲しいのに経済的に躊躇してしまった、子育てが大変で二人目、三人目は難しいと思ってしまった、そんな人たちが増えてしまったのです。
出生率の低下も相まって、出生数はどんどん下がり続けてしまったのです。
人口が減少すれば、経済は衰退していきます。地方の経済が衰退すれば、若者は都会へ出たがります。なるべく便利で仕事も豊富な場所に住みたいからです。
少子化が進むと、地方の人口減少は加速していきます。地方の人口減少が加速していけば、地方経済は衰退の一途と辿ります。
少子化に歯止めをかけ、人口減少を抑えない限り、どんなに小手先の地方創生をやったとしても焼け石に水になってしまいます。
少子化を食い止めることが、地方創生の根本的な対策と言えるでしょう。
参照元:図表1-1-7出生数、合計特殊出生率の推移|厚生労働省
2.地域経済の衰退
人口減少や人々の生活スタイルの変化もあり、地域経済が衰退しています。
地方都市は駅ビルや商店街を中心に発展してきました。
しかし、郊外のロードサイド店や大型ショッピングモール、東京などの都市部へのアクセスが向上したことにより、地方の中心街は空洞化するようになりました。
中心街が空洞化すると、その地域の経済が衰退していきます。
地域経済が衰退していくと、郊外のロードサイド店や大型ショッピングモールは売上が低下し撤退してしまいます。
郊外の店舗が消え、駅前は空洞化したまま。
雇用が減り、街が衰退していくので、若い世代が地方都市に住む理由がなくなります。
そして、利便性の高い都市部にますます人口が流出してしまうのです。
しかし、都市部は子育てがしやすいとは言えない面もあります。
生活費や住居費が高くなりがちで、保育所なども足りない傾向があるからです。
家計を支えるために女性も忙しく働くことになりがちで、男性は通勤に時間を取られ子育てに参加しにくくなります。
都市部に引っ越すと便利な生活ができる反面、子育てはしにくいため、少子化がますます加速してしまいます。
地域経済が停滞した結果、人口流出と少子化が加速し、ますます人口が減少していくという負のスパイラルになります。
住みやすい地方で、安心して子育てができる、そんな暮らしを実現するためにも地域経済を活性化することが必要なのです。
地方創生における課題点とは?
地方創生の取り組みは、一見すると非常に理想的で、活力ある地方社会の実現に向けた明確な道筋を示しているように思えます。しかし、その道のりは決して容易なものではありません。地方創生における主な課題と解決策を見ていきましょう。
課題1:都市部への一極集中と人口流出
日本では長年、都市部、特に東京への一極集中が進行しています。地方からの人口流出は、地域の活力を奪い、地方経済の衰退を加速させる要因となっています。地方での仕事や生活の機会が少ないため、多くの若者が地方を離れ、都市部に集まる傾向にあります。
【解決策】地方での雇用機会の創出と生活環境の整備
この課題を解決するためには、地方での雇用機会を増やすことが必要です。地元企業の振興や新規ビジネスの創出、地域資源を活かした産業の育成などを通じて、地方で働く魅力を高める取り組みが求められます。
また、教育や医療、公共交通などの生活基盤を整備し、地方での生活が都市部と比べて不便でないようにすることも重要です。
課題2:地域の魅力の認知度不足
地方創生においては、地域の魅力を引き立てることが大切です。しかし、地方の魅力や資源は、地元の人々にとっては当たり前のものであり、それが他地域の人々にとっては新鮮で魅力的であることを認識することが難しい場合があります。
【解決策】地域ブランディングと情報発信
地域の魅力を最大限に活かすためには、地域ブランディングが効果的です。地域の特性や資源を活かした商品開発やサービス提供、イベント開催などを通じて、地域の個性を表現し、魅力を伝える取り組みが求められます。
また、SNSやウェブサイトを活用した情報発信も重要で、地域の魅力を広く知らせ、新たな住民や観光客を引き寄せる役割を果たします。
課題3:若者の地方離れ
若者が地方を離れて都市部へ流出する傾向は、地方の活力を奪い、地域社会の高齢化を進行させます。若者が地方に住み、働き、家庭を持つことが難しい環境では、地方創生は成立しません。
【解決策】若者を対象とした地方移住支援
若者が地方に定住するためには、就職や起業の機会、住宅の提供、子育て支援など、多面的な支援が必要です。地方自治体が移住支援制度などを設け、地方での生活を具体的にイメージしやすくすることが求められます。
また、地域の魅力を活かしたイベントやワークショップを開催し、地方のライフスタイルを体験できる機会を提供することも有効です。
課題4:少子高齢化と地域コミュニティの維持
少子高齢化が進行すると、地域コミュニティの維持が難しくなります。高齢者が多く、子どもや若者が少ない地域では、地域の活力が失われ、地域コミュニティの維持が難しくなります。これは、地方創生にとって大きな課題となります。
【解決策】地域コミュニティの強化と多世代交流
地域コミュニティの維持・強化のためには、地域の住民が互いに支え合い、活動を共有することが重要です。地域の祭りやイベントを通じて地域住民が交流する機会を増やし、地域の絆を深める取り組みが求められます。
また、多世代交流を促進し、若者と高齢者が相互に学び、支え合う社会を創り出すことも重要です。高齢者が地域の知識や経験を若者に伝え、若者が新しい視点やエネルギーを地域に持ち込むことで、地域の活力を維持・増進することが可能となります。
地方創生を実現するには?
地方創生を実現するには、地域経済を活性化する必要があります。
地域経済が活性化すれば雇用を生み出し、子育て世代に定住してもらう必要があります。
子育て世代が定住すれば、人口減少を抑制することができます。
雇用を生み出し、子育て世代に定住してもらうためには、下記のような対策が必要です。
1.住宅や保育、病院などの若い世代向けのサービスを充実させる
2.若い世代の税制を優遇し、子育ての負担を減らす
3.住みやすい街づくりをして長く住み続けてもらう
それぞれを詳しく解説していきます。
1. 住宅や保育、学童などの若い世代向けのサービスを充実させる
若い世代は収入が低く、貯金も少ない傾向にあります。
自治体などが若い世代が住むための公営住宅を整備したり、格安で中古住宅を賃貸できるようにするなど、住居費にまつわる負担を減らす必要があります。
また、子育てがしやすいように保育園や病院を整備することが必要です。
保育施設だけでなく、小学校に上がった際の学童保育や地域全体で子育てをする体制の確立など、子育て世代を応援する仕組みが必要です。
なぜなら、今の子育て世代は頼れるところが少なく、子どもが育てにくいからです。
男性は家計を支えるために遅くまで働ければ、女性はワンオペで子育てをしないといけないのです。
代わりに子どもを見てくれる祖父母やご近所など頼れるところがないため、子育てしにくい環境の中で必死で子育てをしているという現状があります。
子育て世代が住みやすい地域を作れれば、もうひとり、もうひとりと子どもが欲しくなることでしょう。
出生数を上昇させるには、子育てしやすい環境を整えて、子どもが欲しいと思える安心感が必要です。
安心して子育てができるよう、子育て世代のために住宅や保育、病院など若い世代向けのサービスを充実させる必要があります。
2. 若い世代の税制や手当てを優遇し、子育ての負担を減らす
税金や社会保険料、介護保険料などの負担が増えているため、頑張って収入を増やしても手取りがなかなか増やせないという現実があります。
手取りが増えなければ、生活にゆとりや安心感を持つことはできません。
消費も貯蓄も増やせません。
備えができないため、結婚をしたり、子どもを増やそうとしたりすることに二の足を踏んでしまいます。
若い世代は消費が活発です。
税制や手当てを優遇することで消費が増え、地域経済を発展させることができます。
若い世代の消費が活発になれば、結果的に税収が増えるという好循環を生むことができます。
3. 住みやすい街づくりをして長く住み続けてもらう
住みやすい街づくりをすれば、若い世代が定住を増やすことができます。
空き家をおしゃれにリノベーションして貸し出せば、リモートワークが可能な若い世代が喜んで住みつきます。
生活に不便がなく、ショッピングやレジャーが楽しめれば、若い世代の定住を増やせます。
地方創生の切り札として注目したいのが、『コンパクトシティ』です。
コンパクトシティとは、駅などの中心部に人や商店、施設を集約し、活力のある小さな街づくりをすることです。
人が分散していると、生産性が落ちることがわかっています。
人はできるだけ集まって活動したほうが生産性が高まるのです。
郊外に分散してしまった人を中心部に集め、車を使わなくても生活できる街ができれば、消費を活発にすることができ、地域が活性化します。
若い世代も快適に暮らすことができ、学校や公共施設、病院、ショッピング、レジャーなどが徒歩圏内で楽しむことができます。
高齢者も車を運転する必要がなくなります。
歩く機会が多くなれば、健康にも良い影響があります。
車を使わなくなるのでCO2も削減でき、公共サービスも効率化することができるのです。
コンパクトシティは、今後の人口減少社会を乗り切るための切り札として注目を浴びています。
ただし、すでにコンパクトシティとして取り組みを始めている地方都市において、地域の活性化に失敗している事例もあります。
コンパクトシティ化は難しい取り組みではありますが、そのメリット・デメリットを理解したうえで、地方創生のために実現していく必要があります。
まとめ
この記事では、地方創生について解説するとともに、地域経済活性化の方法についても考えてきました。
地方創生をするには、少子化を食い止めて、人口減少を抑える必要があります。
また、地方からの人口流出も抑制する必要性もあります。
ただし、出生率を改善したり、子どもを増やすためには時間がかかります。
そこで、まずは地域経済を活性化することが大切です。
なぜなら、地域経済が停滞してしまうと、ますます人口が減ってしまうからです。
地域経済を活性化し、人口減少を抑えるには、経済活動が活発で子育てができる若い世代が安心して暮らせる環境づくりが大切です。
住みやすさや働きやすさ、生活の安心感のある豊かな街づくりをすることが必要なのです。
若い世代が定住すれば、地域経済は活性化します。
結果的に税収が増えたり、高齢者世帯を支える力も増えるのです。
地方創生について考えることは、日本の未来をより良くするために必要なことなのです。
自分や子どもたちの未来のために、まずは地方創生についてもっと知ることから始めていきましょう。