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過疎化とは?日本の現状や対策、SDGsとの関係性まで紹介

これまで人々は、歴史や経済の流れと共にさまざまな場所に移り住んできました。
特に、発展している都市部には、自然と人が集まり更なる成長を遂げていきます。
しかし、都市部に多くの人が移ることによって、課題も発生しているのです。

近年、日本が抱える課題の1つに「過疎化」があります。
過疎化とは、一体どのような現象を指すのでしょうか。

本記事では、過疎化に対する日本の現状や課題・対策などをまとめました。
まずは、過疎化について見ていきましょう。

過疎化とは

過疎化とは

日本は昭和30年代以降に高度経済成長期を迎え、これをきっかけに農山漁村を中心とした地方に暮らす人々が続々と都市部へ移住しました。
主に、雇用の機会を求めている若者やその家族が都市部へと流れていったのです。

しかし、多くの人々が都市部へ住まいを移したため地方の人口は減少。
これを「過疎化」と言います。

過疎化が起きた地域は、税収も減り行政サービスの低下が起こります。
これにより、教育や医療など基礎的な生活条件の確保も困難になる地域が出てきました。

そして、過疎化が起こっている地域は「過疎地域」や「過疎市町村」と呼ばれています。

参照元:「過疎」のお話|全国過疎地域連盟

過疎地域を決める過疎法

過疎地域は、昭和45年に「過疎地域緊急対策措置法」として誕生し、これまで4次にわたり「過疎法」として制定されてきました。
令和3年4月には、5次になる「過疎地域持続的発展の支援に関する特別措置法」が施行されています。

そして過疎地域は、過疎法の中で下記の「人口要件」と「財政力要件」の2つを満たした市町村です。参照元:神奈川県過疎地域持続的発展方針|神奈川県

日本にある市町村のうち47%が過疎市町村に分類される

令和3年4月時点で、日本に存在する過疎市町村の数は820ヵ所です。
これは、1,718市町村のうち47%を占めていることになります。

過疎市町村の大部分である農山漁村地域は、自然環境の保持や国土の保全など国民がより良い生活を送るために重要な役割をはたす地域が大半です。
そのため農山漁村地域が衰退すると、国民の暮らしにも影響がでてくるでしょう。

参照元:
令和元年度版 過疎化の現状|総務省
「過疎」のお話|全国過疎地域連盟

過疎化は地方だけの問題ではない。

人口が都市部に流れることで起こる過疎化は、地方のみが被害を受けているかのように見えますが、都市部にも影響は出ています。

地方の多くは、農業や林業といった第一次産業を主として生計を立てています。
そのため、過疎化により地域が衰退してしまうと産業の維持も難しくなり、都市部への供給も止まってしまうのです。

ここまでは過疎化についてお伝えしました。
続いては、日本の過疎化の現状を確認していきます。

日本の過疎化の現状

日本の過疎化の現状

ここからは、日本の過疎化の現状を確認していきましょう。

現在日本では過疎化によって、主に3つの影響が起きています。

人口減少と高齢化

過疎化による人口減少は、高度経済成長期から問題視されてきました。
当時のように激しい減り方ではありませんが、現在も若者が都市部へ流れたり、過疎地域の死亡者が出生者を上回ったりすることによって人口減少は進んでいます。

そして地方では、高齢者以外の年齢層が都市部へ流れたことにより、相対的に高齢化率が上がる結果となっているのです。

参照元:過疎地域における高齢者向け生活支援の課題|日本総合研究

地域産業経済の停滞

過疎地域では、農林水産業(第一次産業)を主産業にしていることも少なくありません。

しかし、

・若者が都市部へ流出したことにより後継者がいない
・昔から農林水産業の職に就いていた人の高齢化

などが原因で、急速に衰退しています。

その結果、地域経済も縮小化され、新しい事業所を建てることも難しい状態に。
今まで以上に働く場所がなくなると、若者はさらに都市部へと流れていきました。

このように、悪循環に陥ってしまうのです。

都市部と地方に格差が生じる

過疎化によって、社会資本整備の面でも都市部と地方の間に大きな格差が生じています。
地方の過疎化が進んだことにより税収も減り、交通や保健福祉など行政のサービスなどに投入できるお金も限られてくるのです。

このまま過疎化が進むと、基本的な生活環境の維持も難しくなるでしょう。

ここまでは、過疎化の現状を紹介しました。
それでは、日本は過疎化を食い止めるために、どのような対策を行っているのでしょうか。

過疎化防止のために行われている対策や取り組み

過疎化防止のために行われている対策や取り組み

過疎化の進行を防ぐために日本では、下記のような対策が行われています。

奈良県の対策

これまで奈良県の人口は、北西部の奈良盆地に集中していたため、南部や東部地域で過疎化が進行していました。
奈良県では、更なる過疎化を防ぐために集落実態調査を開始。

その後調査結果を踏まえて、「奈良県過疎地域自立促進方針」を策定しました。

内容は、

・医療・介護など高齢者福祉への福祉支援
・若者の雇用の場の創出
・林業など地域産業の復興
・集落の維持や活性化

など、主に4つの項目に分け、重点的に取り組んでいます。

参照元:過疎地域・これまでの対策|奈良県公式ホームページ

山形県の対策

35ある市町村のうち21が過疎市町村である山形県は、平成27年度に「過疎地域自立促進方針」と「過疎地域自立促進計画」を策定。
この計画をもとに、過疎市町村と連携しながら対策を行ってきました。

しかしコミュニティ機能や生活支援機能の低下など、現在も多くの課題が残っています。

山形県は、これらの課題解決に向けて更なる支援の強化を行っています。

内容としては、

・農山村地域の防災や減災・強靭化に向けた支援の強化
・豪雨災害に対応した土砂災害対策の推進
・中小河川の治水対策などの推進

などが挙げられます。

参照元:新たな過疎化制定法と支援の充実|山形県

地域おこし協力隊

コロナ禍の影響もあり「どこにいても仕事ができる」「自然豊かな場所で暮らしたい」などの理由から、近年都市部から地方へ移住する人も少しずつ増えています。
そして過疎地域の人々も、人口減少や高齢化の改善策として地域外に暮らす人々に注目。

このように「人を呼びたい過疎地域の住民と、地方で暮らしたい都市部の人」両方の希望を叶えた制度が「地域おこし協力隊」です。
隊員たちは現地に移住し、地域のPRや名産品の開発などを通して地域活性化に貢献します

総務省が発表した「地域おこし協力隊推進要綱」によると、令和2年度の隊員数は5,464人であり、1,065自治体が隊員を受け入れています。

参照元:報道資料|総務省

都市部から地方へ移住・交流を促す取り組み

総務省では都市部から地方への移住者を増やすために、下記のような取り組みを行っています。

・交流移住に関するポータルサイトの立ち上げ
・都市部に暮らす人々が、気になる地域の担当者に直接話しを聞けるイベントを開催
・IターンやUターン者向けの住宅団地を造る為に必要な費用を国庫補助する
・各地域でモニターツアーを行う
・都市から地方への移住・交流の促進に関する調査を行う
・空き家バンクの運営

このように自分たちが暮らす地域の衰退を防ぎ、豊かな状態で次世代に残すために各市町村でも対策や取り組みが行われています。
そして、全員が協力して進めていくことで過疎化を防ぐだけではなく、SDGsの目標達成にもつながるのです。

参照元:都市から地方への移住・交流の促進|総務省

過疎化が進む地域の減少はSDGsの目標達成にもつながる

過疎化が進む地域の減少はSDGsの目標達成にもつながる

過疎化の改善とSDGsには深い関わりがあります。

関係性を確認する前に、まずはSDGsについて知りましょう。

SDGsとは

SDGsとは「Sustainable Development Goals」の略称であり、日本語にすると「持続可能な開発目標」になります。
2015年に開催された国連総会にて、193の加盟国のすべてが賛同した国際目標です。
SDGsは2030年までに、環境・社会・経済に関する課題解決を目指し、17の目標と169のターゲットが設定されました。

私たちは「誰一人取り残さない」世界を目指し、地球上に暮らす全員が協力して目標を達成する必要があります。
そして、過疎化が進む地域を減らすことによって、SDGs目標3「すべての人に健康と福祉を」と目標11「住み続けられるまちづくりを」の達成にもつながるのです。

目標3「すべての人に健康と福祉を」

引用元:SDGsのアイコン|国連広報センター

目標3は、あらゆる年齢の人々の健康的な生活を確実にすると同時に、福祉の推進も行う内容となっています。

過疎化が進行している地域では、医療機関や介護事業所の廃業・撤退が問題となっています。
特に介護事業所は、収益の低さが原因で経営不振に陥る事業者も少なくありません。
また過疎地域であるがゆえに高齢者の人口密度が低く、サービス提供の効率が悪い点も原因の1つになっています。

医療機関の問題も地方自治体が改善しようと対策を行い、医療機関のない地区も2009年までは減少傾向にありましたが、2014年には増加に転じています。

上記のような医療・介護問題は、根本的な問題である「過疎化」を解決しなければいけません。
そして、過疎化の改善に成功すると、同時にSDGs目標3の達成にも貢献するのです。

参照元:過疎地域における高齢者向け生活支援の課題|日本総合研究

目標11「住み続けられるまちづくりを」

引用元:SDGsのアイコン|国連広報センター

目標11は都市や人の居住地を、安全かつ強靭で持続可能にする内容が盛り込まれています。
特に日本では地方創生の面で目標11が注目されており、ターゲット【11.a】でも、

各国・地域規模の開発計画の強化を通じて、経済、社会、環境面における都市部、都市周辺部及び農村部間の良好なつながりを支援する。

と、都市部や都市周辺地域・農山漁村地域のつながり強化を目指す内容が組み込まれています。

先述しましたが、ここ数年はコロナ禍の影響もあり、テレワークの需要が増え都市部から地方へ移り住む人も増えました。
高い家賃を払ってまで都市部で暮らす理由がなくなり、普段は地方で暮らし、必要な時は都市部へ出かけるという生活が当たり前になっています。

他にも、都市部の自治体と地方都市が連携し、取り組みを共同で行うことで地方創生につながるでしょう。

上記のような活動を行い、都市部以外の地域に人が流れてくると過疎化の改善・SDGs目標11の達成につながるのです。

まとめ

まとめ

地方を中心に、日本各地で起きている過疎化の問題。
現在も政府や市町村・住民が、過疎化の進行を食い止めるために力を合わせ取り組んでいます。

過疎化は、「ただ人口が減る」だけではありません。
第一次産業の衰退や地域産業経済の停滞など、過疎地域への影響だけではなく、地方産の木材や農産物を都市部へ供給することが難しくなるなども起こります。

このように過疎化は「地方の問題」と考えるのではなく、「日本全体の問題」と考える必要があるのです。
昔のように活気に満ちた地域を増やすために、まずは日本の現状を知ることからはじめましょう。

そして、もし「この地域に行ってみたい、暮らしてみたい」と思ったのであれば、移住体験ツアーや地域おこし協力隊などを活用して足を運んでみてください。

  • 記事を書いたライター
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鹿児島県在住のフリーライター。コーヒーをきっかけにSDGsを知り、興味をもつように。普段は、ライフスタイルやSDGsに関する記事を執筆しています。

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