皆さんは「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」の違いを説明できますか?
なんとなく“誰もが使いやすく、便利なもの”。
そんな印象のある2つの用語ですが、実は似て非なる意味合いを持ちます。
「誰一人取り残さない」の理念を掲げるSDGsにおいても、両者は改めて重視したい概念と言えるでしょう。
今回は、「バリアフリー」と「ユニバーサルデザイン」をテーマに、その違いを具体例を交えながら詳しく解説します。
ぜひ最後までご覧ください!
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いとは?
最初に結論を申し上げましょう。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いは、【配慮される対象者の違い】にあります。
先に生まれたバリアフリーの概念は、「障害者や高齢者にとって生活の支障となる物理的な障壁を排除しよう」という発想で、製品などをデザインします。
しかし、当然これらは障害者や高齢者を対象にしているため、それ以外の人にとってはそもそも利用することがなかったり、場合によっては、かえって不便に感じられたりするケースもあります。
こうした背景から、新たに登場したのがユニバーサルデザインです。
ユニバーサルデザインは対象者を限定せず、あらゆる人にとって使いやすいデザインが施されます。
また、バリアフリーは、障害者や高齢者などにとって物理的な困難が生じるケースを想定してデザインされることが多いですが、ユニバーサルデザインは国籍による文化の違いなど、より抽象的な内容に対しても配慮をします。
ユニバーサルデザインを推進するために、以下の7原則が制定されています。
①【公平性】誰でも公平に利用できること
②【単純性】使い方が簡単ですぐ使えること
③【分かりやすさ】必要な情報がすぐ理解できること
④【安全性】うっかりミスや危険につながらないデザインになっていること
⑤【体への負担の少なさ】無理な姿勢をとることなく、少ない力でも楽に利用できること
⑥【スペースの確保】使いやすい寸法・空間になっていること
どの原則からも、“誰もが使いやすいデザイン”につながることがお分かりいただけるのではないでしょうか。
SDGsを達成するために、ユニバーサルデザインはまさに欠かせない取り組みとなっているのです。
国の重点施策としてのバリアフリー、ユニバーサルデザイン
国が掲げる方針にも、バリアフリーやユニバーサルデザインが登場します。
例えば、2018年に公表された重点施策「落ち着いて、やさしく、持続可能な社会の実現」の「Ⅲ暮らしやすく働きやすい社会の実現」に関する項目においては、以下の2点について触れています。
①全ての人にやさしい公共施設のユニバーサルデザイン化の推進
②情報バリアフリーの促進
特に、②に関しては、情報格差を生むデジタル・デバイドを解消し、誰もがICTの恩恵を教授できる社会を目指すもの。
必ずしも物理的な障害のことを「バリアフリー」と呼ぶわけではないということは認識しておくと良いでしょう。
バリアフリーとユニバーサルデザインの違いが分かる具体例
概念の理解が深まったところで、具体的にどんなシーンで使われているのかが分かりやすい例を挙げていきます。
日常生活でよく目にしているものばかりだと思いますので、ぜひイメージしながら読み進めてみてくださいね。
バリアフリーの例
3つの具体例を紹介します。
例①:点字ブロック
目が不自由な方が安全に歩行したり、文字を認識したりするために欠かせないのが点字ブロック。
公共施設や駅、道路など、さまざまな場所で使われています。
例②:スライド式のドア
スライド式のドアは、バリアフリーを意識した住宅などでよく使われています。
引き戸よりも少ない力で開閉でき、車椅子に乗った方にとっても操作がしやすくなります。
例③:スロープ
車椅子に乗った方やお年寄りにとって、段差は転倒の危険を伴います。
スロープを設置することで楽にそして安全に移動することができるようになります。
ユニバーサルデザインの例
3つの具体例を紹介します。
例①:自動ドア
自動ドアがあることで、両手に荷物を持った人や子どもを抱いている人など、あらゆる人が楽に通行することができます。
例②:多機能トイレ
スペースが広くなっていたり、ベビーシートなどが設置されていたりと、便利なデザインになっています。
例③:センサー式蛇口
手を差し出すと水が出てくるセンサー式蛇口もユニバーサルデザインと言えます。
手に障害のある方やお年寄りはもちろん、握力の弱い子どもにとっても使いやすくなっています。
バリアフリーとユニバーサルデザインは似て非なるもの
ここまでご紹介してきた通り、誰もが便利で暮らしやすい世の中を作るためには、バリアフリーだけではなく、ユニバーサルデザインも導入していくことが大切です。
ユニバーサルデザインの考え方を通じて、SDGsの理念「誰一人取り残さない」が意味するところを、改めて考えるきっかけになれば幸いです。