リゾート地で有名な沖縄県で、深刻な貧困が問題になっています。
「綺麗な海」「温厚な住民」の印象が強いからこそ、貧困なんて信じられないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、沖縄が抱える貧困の原因やリアルな現状を解説していきます。
さらに貧困を解決するための支援についても詳しく紹介します。
多くの人から愛される沖縄が抱える問題や、貧困に苦しむ人の現状がより明確になるので、ぜひ最後までご覧ください。
沖縄の貧困は本当なのか?
果たして、沖縄の貧困は本当なのでしょうか。
結論からお伝えすると、これは事実。
沖縄の貧困率は全体的に高いと言われています。
中でも、子どもの貧困が大きな問題になっています。
2016年1月に沖縄県が実施した「子どもの貧困実態調査」によると、沖縄の子どもの貧困率は29.9%。
これは、全国の約2倍で、3人に1人が貧困状態であると言えます。
2018年には、小中学生の子どもをもつ家庭の約30%が、「世帯収入300万未満」であることも明らかになりました。
子どもの貧困は、学力や自己肯定感に影響を与えたり、未成年犯罪に繋がったりする可能性も高くなります。
子どもの健やかな成長を考えると、貧困は解決すべき問題です。
参照元:
・平成27年版 子供・若者白書(全体版)|内閣府
・沖縄県子どもの貧困対策計画(改定計画)|沖縄県
沖縄で起こる貧困の原因とは?
では、どうして、沖縄で貧困が起こるのでしょうか。
次は、複雑に絡み合う貧困の原因を解説します。
①収入と支出のアンバランスさ
一般的に生活費が安い地方の方が、賃金が安いです。
しかし、本土から離れた沖縄は賃金は低いが、生活費が高いという現状があります。
最低賃金は792円と全国でも最も安く、所得も全国平均より低くなっています。
支出にあう収入を得られないのが、まず一つ目の原因として考えられます。
参照元:沖縄労働局「令和3年度の沖縄県の最低賃金は時間額820円と答申」|厚生労働省
② 親の正規雇用の割合が低い
小中学生の子をもつ貧困層の家庭ほど、正規雇用の割合が低いのが現状です。
例えば、母親は「働いていない」「パートやアルバイト」」の割合が高いです。
また、父親は「自営」の割合が上がります。
このように、育児や健康面など何らかの理由で、親が安定した収入を得られないことも背景にあります。
③家庭環境の問題
家計が苦しくなる原因には、家庭環境も大きく関わっていると指摘されています。
沖縄は、全国と比べて発生率が高い家庭の問題がいくつかあります。
それは以下の通り。
・ 離婚率が全国1位
・人口10万人あたりのDV相談件数が全国7位
・19歳以下の初婚総数の割合が全国平均を大きく上回る
・10代の出産が全国と比較すると2倍
このように、貧困の裏には複雑な家庭環境が絡み合っています。
子どもも貧困に苦しんでいますが、その親も過酷な現状と戦っているケースが多くなっています。
経済面だけではなく、精神面でも苦しんでいる家庭を支援していく必要があるのではないでしょうか。
貧困の現状とは?
けれども、「沖縄に貧困が多い」「子どもの貧困」と言われても、具体的にどのような生活状況なのかイメージできない方も多いのではないでしょうか。
より貧困問題を把握するために、具体的な場面を通して解説していきます。
沖縄県が保護者を対象に行ったアンケート結果(「沖縄県子どもの貧困対策計画(改定計画)」)を参照しています。
家計の状況
子どもの年齢に関わらず、「家計が赤字であり借金をしている」と答えた割合も、「赤字であり、貯蓄を取り崩している」と答えた割合もともに10%以上でした。
つまり、赤字である家庭は3割近くを占めていることが分かります。
食料が買えない
過去1年間の間で、食料が買えなかった経験があると回答したのは、1歳児の親で15.9%、高校2年生の親では29.9%。
年齢が上がるにつれて高くなっていました。
さらに、貧困家庭の50%以上が食料を買えなかった経験をしたそうです。
日本では食料を買えるのは当たり前と思われがちですが、この数字を見ると日本での貧困の深刻さを感じるのではないでしょうか。
電気、ガス、水道を止められた
貧困家庭では、過去一年以内で光熱費を払えず、使用停止になったことを経験した世帯が多くあります。
一般家庭と比べると4倍以上です。
・電気
・ガス代
・水道代
・電話料金
・家賃や住宅ローン
・保育所や幼稚園の費用
・給食費
など、生活に欠かせないものまで支払えなくなる家庭が多くあります。
これでは、最低限の生活を保障することが難しくなってしまいます。
このような現状をみると、沖縄の貧困はとても深刻です。
問題解決には、生活に困窮している子どもやその親が安心して暮らせる社会が求められています。
沖縄の貧困を解決する支援とは?
現在、沖縄県は貧困を解決するために、どのような支援をしているのでしょうか。
貧困の現状を受け止めた沖縄県は、子どものライフステージに応じて、支援をすることを目指しています。
また、子どもや子育て家庭が相談できる居場所や、ニーズに合った支援機関へつなげる仕組みを構築します。
①「黄金(くがに)っ子応援プラン」
沖縄県は、子育て家庭も働きやすい環境を整えるために、預け先の確保や質の向上に力を入れています。
・子育て支援事業の提供体制を確保する
・待機児童をなくす
・保育士や幼稚園教諭の人材育成・資質の向上
・養育環境の整備
・児童虐待の防止
など
経済的にも精神的にも安定した環境の中で、子どもが健やかに成長することを目指しています。
さらに、保護者も生きる喜びや、やりがいを感じながら育児ができる社会の実現を支援しています。
②子育ての支援体制を整える
さらに、子育てをサポートする支援者の確保と資質の向上に取り組んでいます。
市町村へ「子供の貧困対策支援員」を配置。
現状把握や支援に努めています。
令和3年には、118人の支援員が配置され、3000以上の世帯が支援を受けました。
貧困家庭の親は、相談相手がいない場合がほとんどです。
そのため、利害関係なく頼れる場所があることは、精神的にも大きな支えになるのではないでしょうか。
また、支援員やソーシャルワーカーは教員免許や臨床心理士などの資格をもった方もいますが、さらに専門性を高めるために必要な研修も行っているそうです。
ますます需要が高まりそうですね。
③ 子どもの居場所づくり
子どもが安全・安心に過ごせる居場所を確保できるように、環境整備にも取り組んでいます。
地域の実情に応じて、食事の提供や共同での調理、生活指導、学習支援を行う取り組みが、各市町村で進められています。
子どもが過ごす環境をさらに充実するため、民間団体等の資金を活用した居場所の設置も促進しているそうです。
自治体だけではなく、地域住民や企業の協力も欠かせません。
参照元:
・沖縄県子どもの貧困対策計画(改定計画)|沖縄県
・黄金(くがに)っ子応援プラン|沖縄県
・令和2年度の沖縄子供の貧困緊急対策事業の実施状況について|内閣府
まとめ
今回、沖縄の貧困の現場を知ることで日本にも深刻な貧困問題があることがわかりました。
今までの沖縄のイメージとは全く異なる事実に、驚いた方も多いのではないでしょうか。
貧困の原因は、労働環境や家庭環境など複雑な問題が絡み合っています。
貧困によって、安全安心な生活だけでなく、心の安定や子どもの将来も奪われます。
自分たちにできることは多くはないかもしれません。
けれども、この記事で沖縄の貧困を知った方のように、まず沖縄が抱える貧困をより多くの人が知るということは解決への力になります。
そのため、自分が知った情報を、家族や友人などに伝えることも価値ある行動です。
リゾート地で有名な沖縄に隠れた貧困は、日本全体で早急に解決していく必要があるのではないでしょうか。
沖縄の自然とともに、人々の豊かな生活も守っていきたいですね。