SDGsの目標1では「貧困を無くそう」を掲げています。貧富の差が完全に無くなることは難しいですが、2030年まで「あらゆる貧困を無くそう」と世界中が一つになって動いています。
「誰一人取り残さない」世界のために、まずは世界の貧困の現状を私たちは知る必要があると思いませんか?今回は「貧困を無くそう」の観点から世界や日本の貧困における現状をお伝えします。
貧困はなぜ生まれる?原因を考えよう
そもそも「貧困」が生まれた理由はどのようなものでしょうか?原因は一つではなく、いくつもの原因が重なって貧困が生まれています。
原因①政治・経済
昔当たり前に行われていた人種の違いでの差別、奴隷制度。未だに南アフリカではその影響が色濃く残っています。日本でも部落差別がなくなったとは言えない状況です。ずいぶん前の差別なのに世代を超えて人は差別を続けています。
差別された側は十分に収入を得ることができず、貧困地域では教育も満足に受けられないので親から子に貧困が受け継がれてしまいます。貧困の連鎖です。教育を十分に受けられない国や地域では経済発展ができません。
さらに経済が発展しないと医療体制も教育も遅れてしまいます。社会保障制度も発展せず、貧困により資源を奪い合うなどさらに貧困に拍車がかかります。
原因②紛争・難民
未だに中近東などでは、紛争が繰り返されていて治安がよくなりません。紛争により住むところを追われ難民となってしまう人があとを絶ちません。
民族や宗教違い、政治など紛争がおこる原因は様々ですが、巻き込まれる人が貧困に陥ってしまうことは共通です。難民として他国に逃げても収入が得られず、住むところも決まらず貧困が解消されることがほとんどないのが現状です。
紛争のおかげで国の政治経済にも大きなダメージがあり、国自体が貧困に陥ります。
原因③災害
自然災害も貧困の原因になり得ます。雨が少ない干ばつ、ハリケーンやサイクロンなどの嵐、地震や大雨など自然災害は甚大なダメージをその地域に与えてしまうことは最近の日本を見てもわかりますよね。
世界銀行によれば、年間2600万人もの人が自然災害により、貧困に陥っているのです。
例えば2008年ミャンマーではサイクロンによる被害が大きく、サイクロン後の借金を返済するため、農地を売って手放さなくてはならなくなりました。サイクロンは自然災害なので防ぎようがありません。
ただ、そこに農地があったというだけで貧困へと陥る不条理さはとても他人事とは思えませんよね。
このような事態にも対応できる国の体制があれば助けることもできますが、国自体に余裕がなければ助けることもできません。
上記のように貧困問題の原因については世界各国で共通している課題です。
さらに日本では、ひとり親世帯の増加や少子高齢化などの問題も貧困に陥る原因として挙げられるでしょう。
日本特有の課題も含め、貧困問題の原因については下記の記事でも詳しく紹介しています。
世界中の貧困に対する厳しい現状
「貧困をなくそう」という目標を考えるにあたって、貧困の現状を知る必要があります。SDGsの取り組みにより改善されつつありながらもまだまだ厳しい現状の世界。具体的に見ていきましょう。
世界銀行は「絶対的貧困」を具体的に定義しています。1日1,9ドル未満で生活している人が「絶対的貧困」と呼ばれる貧困層です。
世界中の人口の約10%の人が貧困状態で今も日々の生活を営んでいます。また国によって定義が変わる「相対的貧困」の存在も忘れてはいけません。
貧困層の子どもたちの多くが犠牲に
10人に1人が貧困層であり、さらには6人に1人の子どもたちが貧困層です。子どもは大人の貧困に引きずられる形で極度に貧しい生活を強いられているのです。
貧困だけでなく、貧しさにより5歳未満でなくなる子どもが2007年では年間900万人もいます。1990年には年間1260万人であったことを考えると年々改善されていますがまだまだ多くの子どもが亡くなっているのです。
5歳未満で死亡した子どものうち、約4割は生後1か月にも満たない新生児です。
医療サポートが整っていないことによる出産時の死亡や、衛生管理が不十分であるために、マラリアやはしかなどの感染症による死亡です。
よっぽどのことがないと出産時になくなることはなくなった今の日本の医療サポートとは大違いです。「助かる命が助からない」ことが貧困により起こってしまう現状に私たちは目を背けてはいけません。
貧困層が特定地域に集中
全体の約10%が貧困層ですが、世界中に満遍なく散らばっているわけではなく、南アジアとサハラ以南のアフリカに多く集まっています。
特に貧困層の半数が、インド・エチオピア・コンゴ民主共和国・ナイジェリア・バングラデシュの5か国に集中しています。
残り半数もやはりサハラ以南のアフリカの国々の割合が高いです。これらがまず至急援助が必要な地域です。
さらに国連開発計画とオックスフォード貧困・人間開発イニシアティブが発表した「多次元貧困指数(MPI)」(2018年)によれば、多次元貧困層は南アジアとサハラ以南アフリカで83%占めているとされています。
多次元貧困指数とは、ただお金が足りない所得の問題だけでなく、健康、教育、生活水準と3方面からの貧困層を定義する指標です。
この中で「所得と教育」「健康、所得、生活水準」のように同時にいくつもの種類の貧困と直面している人々のことを、多次元貧困層と呼びます。
貧困層に対して国の支援が届いていない
サハラ以南のアフリカでは人口の半数以上約58%(5億6000万人)が、南アジアでは人口の31%(5億4600万人)が多次元貧困層なのです。貧困層はさらに拡大しており、他の地域との格差が広がっています。
貧困層が多すぎると、国としての支援が行き届かないこともあるのです。
その一方、インドでは2005年から2015年にかけて2億7100万人が貧困を脱し、貧困率も55%から28%に半減するなど、大きく改善が見られます。
日本における貧困の現状
確かに他の貧困国と比べるとはるかに恵まれた日本ですが、そんな日本も貧困と無縁という訳では全くありません。
先進国である日本では平均所得よりかなり低い所得で暮らす層を「相対的貧困」と言い、日本人の6人に1人が相対的貧困層です。
単身世帯、高齢者、女性、ひとり親世帯、体の不自由な人などの社会的に弱い立場の人たちの割合が高いです。
具体的には単身世帯で年収が100万台前半ぐらいの人を相対的貧困層であると言います。
とりわけひとり親世帯の貧困率は高く、約半数が相対的貧困の中日々を暮らしています。親の貧困は子どもの貧困につながっていくので、早急な措置が必要とされています。
日本における貧困の状況については下記の記事でも詳しく紹介しています。
貧困によって起きる格差
上記で解説したように貧困によって、毎日の生活も十分に保障されておらず、多くの子ども達が犠牲になっています。
そして、貧困によってさらに格差が広がり、貧困から抜け出せないという負のスパイラルに陥ってしまっているのも現状です。
格差とは具体的には「医療格差」や「教育格差」「経済格差」などが挙げらます。
貧困で苦しむ人は十分な医療を受けられず、「マラリア」や「はしか」などの感染症に対する予防も十分ではありません。
また、病気になり先進国であれば十分な医療を受けて助かるはずの命も、貧困国ではそうではありません。
また、貧困国の人々は今日の暮らしのために、たとえ子どもであっても一日中働き、教育を受ける機会などほとんどないというのが現状です。
十分な教育を受けられないと、高度な仕事に就くことも難しくなかなか貧困から抜け出せなくなってしまいます。
貧困問題を解決するためには
世界中には、いまだ約8億人もの人々が極度に貧しい生活をしています。
貧困は多くの要因が絡みあって起こっていますので、貧困をなくすために私たちが日々の生活の中でできることはたくさんあります。
UNICEFや多くのNGO・NPOでは、寄付や募金を集め、開発途上国への支援を行っています。
支援したいと思う地域や問題について自分なりに調べてから寄付を行うという方法があります。
買い物をするときには、寄付につながる商品やフェアトレード商品を選ぶことで間接的な援助ができます。
また、あらゆる貧困を無くすために日本の企業が行う取り組みについても知っておくと良いでしょう。
三井不動産グループでは、NPO法人を通じて、世界中の難民や被災者に衣料品を寄付しており、寄贈する衣料品は、自社グループが運営する全国にある24の商業施設から調達しています。
また、株式会社ジモティーは、貧困層の半分を占めるひとり親世帯への支援も行っています。
このような取り組みをする企業を利用することでも貧困を無くすための援助となります。
私たち一人一人の援助が積み重なれば大きな力となります。貧困を遠いものと感じている私たちは、世界と日本を切り離さず、貧困は地続きだということをまず認識する必要があります。
まとめ|一人ひとりの積み重ねが大事
SDGs目標1「貧困を無くそう」の現状はいかがだったでしょうか?大きな改善がみられるものの支援が行き届いていない地域も多くあります。現状を知ることで、どこにどのような支援がどのくらい必要か、それぞれが考えることが必要です。
また、貧困問題に対して私たち一人ひとりができることもたくさんあります。
「誰一人取り残さない」世界にはまだまだ遠いですが、諦めずに行動し続ける限りいつかは「貧困を無くそう」の目標も達成され、世界中の貧困問題も解消されていくでしょう。