SDGsの目標のひとつとして、「貧困をなくそう」というものがあります。
2016年から取り組みを行い、2030年には達成すると掲げられています。
この貧困を無くすとは、どういう取り組みなのでしょうか。
また、このSDGsの目標を達成するために私たちができることは、どのようなことなのでしょうか。
今回は、SDGsの目標1「貧困をなくそう」について解説していきます。
「貧困」の状態にいる人はどのくらい?どのような生活をしている?
2021年時点で、世界の人口は78億7500万人といわれています。
そして、この世界の人口の10%を占める人々が極度の貧困状態で毎日の暮らしを送っているといわれているのです。
この世界の人口の10%に当たる貧困に苦しむ人々は7億人を超え、世界では10人に1人の割合で貧困に苦しんでいるという事実があります。
極度の貧困状態の人々は、主にサブサハラ(サハラ地域を含めた南部のアフリカ)や南アジアに集中しています。
なかでも、ナイジェリア、バングラディシュ、エチオピア、インド、コンゴ民主共和国の5ヵ国の人々が多く、貧困とされる人口の大半を占めているといわれているのです。
ちなみにSDGsでは、この「貧困」を定義づけしています。
この貧困だとされるラインは、1日を1.9ドルで生活しているかどうかです。
ただ、この金額だけでは具体的な生活が分からない人もいるでしょう。
分かりやすくお伝えすると、もちろん電気は使えません。
木材や家畜の排せつ物を燃やすことで明かりを確保し、生活をしています。
そして、きれいなお水を飲むことすらできません。
川の水を汲んで生活に使用しますが、細菌や泥などが混じった危険な水であり、この水を飲んだことが原因で死亡する人が年間で30万人以上といわれているほどです。
また生活をするための木材を集めたり、家畜の世話をしたり、水を汲みに行くことで、十分な教育を受けることもできません。
学校へ行く時間がなく、さらに生活のために行わなければならない重労働のせいで体力が残っておらずに学校へ行くことができない子どもが多いのです。
最も深刻なことは、これらの人々が適切な医療を受けることさえできていないという状況だといえるでしょう。
特に妊産婦や新生児、そして5歳未満の小さな子どもが医療を受けられないために命を落としているケースは非常に多いのです。
SDGsの「貧困をなくそう」とする目標には、2030年までに、このような暮らしをする人々がいない世界にするという強い想いが込められています。
SDGs目標1「貧困をなくそう」は、日本にも大きく関係している
貧困といっても「絶対的貧困」と「相対的貧困」の2種類あります。
「絶対的貧困」とは、最低限の生活を送ることすらも難しいほどの貧困のことです。
一方の「相対的貧困」とは、貧困が起きている国の生活水準と比べて困窮した生活を送る貧困のことを指します。
そのため、貧困とは関係がないと思われがちである日本でも相対的貧困は多いです。
具体的には、日本に住む人の15.4%にあたる人、6人に1人は相対的貧困の状態だといわれています。
ひとり親世帯、高齢者を含む単身世帯、人口の少ない地方在住者などが挙げられ、中でも貧困世帯のひとり親世帯の場合は子どもも貧困状態になりやすく、早急に解決しなければならない問題です。
ひとり親世帯のほとんどは母子家庭で、母親の就労状況が不安定であることが多い傾向があります。
そのうえ、元主人から養育費を継続的にもらえず、負担が増えて貧困状態になってしまうのです。
このような貧困に陥ったひとり親世帯は多く、日本に住む子どもの7人に1人はこのような世帯で育っているとされています。
貧困が引き起こす大きな課題
貧困は、貧困状態で毎日の暮らしを送っている人が苦しむということにとどまりません。
貧困が引き起こす最も深刻なものとして、紛争が挙げられます。
実際に貧困で苦しむ人々が多い地域では、紛争が発生しているのです。
もう少し、詳しくお伝えしましょう。
貧困によって生活や経済活動が立ち行かなくなることによって、政治に対する人々の不満が高まり、紛争が起こります。
そして紛争の数が増えれば増えるほど、ますます貧困で苦しむ人が増えていき、さらに深刻な貧困を招くのです。
また、日本でも負の連鎖は起こっています。
先ほどお話をした、ひとり親世帯の問題がそのひとつです。
生活費に余裕がないので、一般的には当たり前とされていることもできない子どもが多くいます。
例えば塾や習い事に行くことが難しい、修学旅行へ行くことができない、本やノートを買うこともできないということが挙げられます。
これでは安心して勉強をすることも難しく、そのため仕事に就くための資格取得なども難しく、親と同じ非正規の仕事に就くことになってしまう傾向があります。
なかには進学ができずに、家計を助けるためにアルバイトを掛け持ちし、そのまま年齢を重ねてしまうというケースも少なくありません。
貧困が紛争を引き起こし、紛争が貧困を引き起こします。
ひとり親世帯の生活環境が、子どもの貧困を引き越します。
このように、まさに負の連鎖となっているのです。
そして、この負の連鎖を断ち切ろうとする試みがSDGs目標1「貧困を無くそう」です。
企業が進めているSDGs目標1「貧困をなくそう」
2030年までにこれらの問題を解決し、目標を達成するため、さまざまな取り組みが行われています。
例えば、フロムファーイースト株式会社の「森の叡智プロジェクト」が、SDGs目標1「貧困をなくそう」のために取り組まれた活動のひとつです。
「森の叡智プロジェクト」は、2015年にカンボジアで行われた植林の取り組みです。
カンボジアで植物が増えると、これらの植物が商品の原材料となります。
また、植物を採取するという仕事を生み出すことができるので、カンボジアの雇用を増やすことも可能です。
そして、これらの植物は大きな伐採をしない限りはカンボジアに残るため、SDGsが目指す「継続的可能な目標達成」だといえます。
日本ではよく「魚を与えるのではなく、魚の釣り方と教えよ」という言葉が使われますが、まさにこのフロムファーイースト株式会社のカンボジアでの取り組みが、まさに当てはまるものだといえるでしょう。
カンボジアの貧困を本当の意味で助けるためには、ただ寄付を送るという対処的な支援ではなく、カンボジアの人々が自らの手で生活できるようになるシステム作りが必要なのです。
そして、このような取り組みがSDGs目標1「貧困をなくそう」の目標達成につながります。
私たちでできるSDGs目標1「貧困をなくそう」
SDGs目標1「貧困をなくそう」は、個人でも取り組むことが可能です。
私たちができることが、いくつもあります。
例えば、本やインターネット、YouTubeなどで貧困の現状を知ることができます。
現状を知ることによって寄付を行う場合に、どのような寄付をすることが「魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えよ」になるのかを考え、SDGs目標1「貧困をなくそう」の考えに沿った寄付方法を選択しやすくなります。
ボランティアに参加することで直接的な取り組みをしたいけれど、時間や体力的に難しいと感じる人は多いでしょう。
そのような場合でも、フードバンクや地域の支援団体への協力をすることによって、確実にSDGs目標1「貧困を無くそう」の取り組みに参加できているといえます。
無理なく継続的にできることから参加してみましょう。
まとめ
SDGs目標1「貧困をなくそう」は、ただ「貧困をなくす」という目標を達成するだけではなく、持続的なかたちで目標を達成することが求められます。
また、SDGsが掲げる目標は貧困だけに限られたものではなく、他に16の目標が掲げられています。
問題は大きなものではあるものの、私たちひとりひとりが目標達成を意識することで変わります。
2030年にSDGs目標1「貧困をなくそう」を達成できるよう、できることから始めてみませんか。