ファストファッションと環境汚染の関係とは、「安く作られ、短い周期で買われ、すぐ手放される服」が、水・エネルギー・原油といった資源を大量に使い、洗濯や廃棄の段階でも環境に負荷をかける、という関係のことです。値段が下がり、供給される枚数が増えるほど、1着あたりの資源は気軽に消費されやすくなります。
この記事では、環境省の最新の推計や国連・欧州の資料をもとに、日本でいま何が起きているのかを整理します。あわせて、よく引用される数字のどこに注意が必要か、国や企業はどう動いているか、衣替えの季節にあたる今、私たちは何を選べばよいかまで具体的に見ていきます。
数字で見る日本のファストファッションと環境負荷
日本のファストファッションをめぐる状況は、環境省が公開している数字から、かなり具体的に見えてきます。ここでは「どれだけ作られ、買われ、手放されているか」を押さえます。
供給は35億着に増え、1着の値段は半分近くになった
環境省によると、国内に供給される衣服は1990年の約20億着から、2024年には約35億着へと約1.8倍に増えました。一方で、消費者が購入している量はほぼ横ばいとされています。つまり、増えた分の多くは、買われないまま、あるいは買われても着られないまま滞留している可能性があります。
1着あたりの平均価格も、1990年の6,192円から2024年は3,211円へと下がりました。値段が下がるほど、「とりあえず買う」「1シーズンで手放す」ことへの心理的なハードルも下がります。ファストファッションだけの問題ではなく、衣料品全体の価格構造が変わってきたことが背景にあります。
買う服より、着られていない服が多い
環境省の2025年度の消費者調査では、1人が1年間に購入する服は約19枚、手放す服は約11枚です。さらに、1年間に1回も着なかった服が1人あたり約24枚あるとされています。所有している服の約45%は、使われないまま家にしまい込まれているという推計もあります。
「捨てる」前に、そもそも「着ていない」状態が長く続いていることが分かります。環境負荷の中心は、購入する枚数よりも、使われないまま眠っている服が増えていく構造にあります。
手放した服の半分以上はごみになっている
家庭から手放される服の行き先を見ると、最も多いのは可燃・不燃ごみとして出す方法で、環境省の推計では55%です。フリマアプリなどでの売却は18%、自治体や地域の回収は19%、店頭回収は5%にとどまります。
その結果、家庭から焼却・埋立される衣類は年間約46万トン、1日あたり大型トラック約130台分と推計されています。再利用や再資源化されるのは合計で約4割です。このうち「リサイクル」は一部で、古着として海外に輸出される分も含まれます。輸出先の現地産業への影響が懸念されている点も、環境省は注記しています。
元の記事では「捨てられる服の約68%がごみとして処分される」と紹介されていましたが、環境省の最新の推計ではこの割合はやや下がっています。ただし、依然として半分以上が焼却・埋立という点は変わっていません。
洗濯のたびに流れ出るマイクロプラスチックの実態
ファストファッションの環境負荷は、捨てた後だけに生じるわけではありません。着ている間にも、洗濯という日常の行動のなかで、目に見えない形の汚染が進んでいます。
合成繊維の服は洗うたびに細かい繊維を出す
ポリエステルやナイロンなどの合成繊維は、石油を原料にしています。洗濯機のなかで衣類同士がこすれ合うと、5mm以下の細かいプラスチック繊維が抜け落ちます。これがマイクロプラスチック(マイクロファイバー)です。繊維は下水処理場で一部が除去されますが、すべては取り切れず、川から海へ流れ出ます。
自然界で分解されにくいため、海に流れ出した繊維は長く残ります。安価な服にポリエステルが多く使われがちなことを考えると、衣類の量が増えるほど洗濯由来の流出も増える可能性があります。
「35%」の意味を正しく読む
この問題でよく引用されるのが、「海のマイクロプラスチックの35%は洗濯由来」という数字です。これは2017年のIUCN(国際自然保護連合)の報告書の推計がもとですが、正確には「海に放出される一次マイクロプラスチック(もともと小さな粒子として放出されるもの)のうち、合成繊維の洗濯が約35%を占める」という意味です。海にあるマイクロプラスチック全体の35%という意味ではありません。
欧州環境機関(EEA)は2022年の資料で、合成繊維製品が占める割合を16〜35%の幅で示しています。推計には前提条件による幅があり、1つの数字を断定的に使わないことが大切です。それでも、衣類が海洋プラスチック汚染の無視できない発生源であるという点は、複数の資料で一致しています。
洗濯をやめずに流出を減らす方法
洗濯をしないわけにはいかないので、現実的な対策を整理します。
日本の研究では、福井大学の報告に、ドラム式洗濯機の排水口に水切りネットを取り付けると、約10kgの洗濯で1〜2gのマイクロプラスチックを捕集できたとあります。縦型洗濯機は排水口にフィルターがない構造のため、同じ方法は使えません。また、マイクロプラスチック対策をうたう洗濯ネットについては、排出量を85%以上減らせたとする企業発表もありますが、これは事業者の発表であり、条件の異なる独立した検証が十分にあるわけではありません。
家庭でできる対策を、効果が分かりやすい順に挙げます。
- 洗濯ネットに入れる、または洗濯機の糸くずフィルターをこまめに掃除する
- 洗濯物を詰め込みすぎず、洗う頻度を必要以上に増やさない
- 新しい服を買うときに、混紡や素材の表示を見て、洗濯回数が多くなるアイテムの素材を意識する
どれも流出をゼロにする方法ではありません。それでも、1回ごとの流出量を減らし、服を長く着る習慣と組み合わせることで、累積の負荷は変わります。
服をつくる段階の水・CO2・化学物質
洗濯や廃棄の前に、服は作られる段階で多くの資源を使っています。日本で売られる衣服の約98%は輸入品なので、環境負荷の多くは海外の生産地で発生しています。
水は1着で約2,300リットル、その大半は綿の栽培
環境省の調査では、1着の服を作るのに必要な水は約2,300リットル、浴槽約11杯分とされています。国内に供給される衣服全体の製造用水は年間約83億立方メートルで、そのうち約9割が綿の栽培に使われます。環境省は、すべての綿をオーガニックコットンに切り替えれば、年間約67億立方メートルの水を減らせるとも試算しています。
水不足の地域で綿花を育て、染色にも水を使えば、地元の水資源を圧迫します。元の記事で触れた「湖が干上がる」という問題も、こうした水の使い方の積み重ねから起きています。
CO2は1着あたり約25.5kg、排出の大半は上流で出る
同じ環境省の調査で、1着の服の供給に伴うCO2排出量は約25.5kgと推計されています。ペットボトル(500ml)に換算すると約25.5万本分に相当するという説明です。日本のファッション産業のCO2排出のうち、原材料調達と製造の段階で90%以上を占めるとされています。
つまり、購入後の洗濯や乾燥より、作られるまでの段階の負荷のほうが圧倒的に大きいということです。1着を長く着るほど、この上流の負荷を分散できます。
染色排水と農薬の問題
染色や加工の工程で出る排水が、浄化が不十分なまま川に流れ込み、水の色が変わってしまう問題は、生産地周辺で繰り返し報告されています。綿花の栽培でも農薬の使用が課題とされ、現地で働く人の健康への影響も指摘されてきました。
ただし、こうした問題の深刻さは国や工場、取引先の管理状況によって大きく異なります。「ファストファッションだから必ず汚染している」というわけではなく、サプライチェーンの透明性や認証の有無といった情報を確認することが、買い手にできる判断材料になります。
よく見る数字の揺れ、どこまで信じてよいか
ファストファッションの環境負荷を調べると、「CO2排出の10%」「水使用量は世界2位」「ジーンズ1本で1万リットル」といった数字が繰り返し登場します。これらは広く流通していますが、出典によって幅があるため、使い方には注意が必要です。
「CO2の約10%」は推計の幅の上のほう
衣料・靴産業の温室効果ガス排出量の世界シェアは、2019年の国連ニュースでは8%と紹介されました。一方、UNEP(国連環境計画)の担当者は2025年の取材で、2〜8%という範囲を示しています。算出の対象範囲(原材料調達まで含めるか、物流や廃棄まで含めるか)によって数字が変わるためです。
「10%」と言い切る記述は、推計の上限付近を単一の数字として扱っている可能性があります。この記事では、「数%から8%程度と推計され、報告によって幅がある」と受け止めておくのが安全です。
水の数字は対象範囲で変わる
2019年の国連ニュースは、衣料産業の年間水使用量を約930億立方メートルと紹介し、ジーンズ1本には約7,500リットルが必要としています。「1万リットル超」という数字は、製品や算出条件によっては上回ることもありますが、7,500リットルという数字が国連の紹介にあります。また、水使用量が「世界で2番目」という順位は、比較対象の産業や定義で変わるため、出典の確認が取れる範囲では断定を避けるべきです。
数字の不確かさは、問題が小さい証拠ではない
数字に幅があることは、環境負荷が小さいという意味ではありません。どの推計を採っても、衣料品は大量の水とエネルギーを使い、世界の排出量のうち無視できない割合を占めるという点は共通しています。大切なのは、数字そのものを覚えるより、「出典と前提を確かめる」習慣を持つことです。
海外と日本の制度はどこまで進んだか
個人の努力だけでなく、制度の面でも変化が起きています。ここでは、欧州と日本の最新の動きを整理します。
EUは衣類の回収・リサイクル費用を事業者に負担させる
EUでは、改正廃棄物枠組み指令(Directive (EU) 2025/1892)が2025年10月16日に発効しました。衣類・靴・家庭用繊維を作る事業者に、使用後の回収、選別、リサイクルの費用を負担させる「拡大生産者責任(EPR)」の制度を、加盟国が整備することが義務になっています。各国は発効から30か月以内に制度を設ける必要があります。
この枠組みでは、超高速で入れ替わるファッション(ウルトラファストファッション)を念頭に、過剰生産や過剰消費を促す事業者の費用を高く設定する仕組みも選べるようになっています。使用済み繊維を「再利用目的」と偽って輸出することを防ぐ規定も盛り込まれました。
日本は検討が進む段階にある
日本では、経済産業省と環境省が2023年に「繊維製品における資源循環システム検討会」を設け、同年9月の報告書で回収、選別・繊維再生、設計・製造、販売の課題を整理しました。2025年度には環境省の「持続可能で循環型であるファッションに関する検討会」が開かれ、第1回が2025年10月29日、第2回が2026年1月30日に行われています。衣類の廃棄量削減に向けた「循環型ファッションの推進に向けたアクションプラン(仮称)」の素案が、2026年2月付けの資料として公開されています。
環境省は、家庭からの衣類の廃棄量を2030年までに2020年度比で25%削減することを目指しています。ただし、EUのようにEPRを法律で義務づけるかどうかは、私が確認できた範囲の資料では示されていません。今後の動きは、環境省と経済産業省の公表資料で追う必要があります。
制度が整うまで、買い手の選択が効く理由
制度が整うまでの間は、事業者が自主的に回収や再生に取り組み、消費者がそれを利用する形が中心になります。購入時の選択や、手放し方の選択が、そのまま市場へのメッセージになります。次の節では、実際に衣類を回収している企業の仕組みを見ます。
企業の回収は何を解決し、何が残るのか
衣類の回収は、日本でも大手のアパレルチェーンを中心に広がっています。ここでは、店頭回収の代表的な事例を2つ取り上げ、できることと限界を整理します。
ユニクロの回収の仕組み
ユニクロは「RE.UNIQLO」として、全国の店舗に回収ボックスを置き、ユニクロ・ジーユー・プラスの服を受け付けています。回収後は、そのまま着られるものとリサイクルするものに仕分けされます。着られる服は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)やNGO・NPOを通じて、難民キャンプや被災地などに届けられます。着られない服は、ダウンジャケットのダウンとフェザーを取り出して新しい商品の原材料にしたり、固形燃料や自動車用の防音材に再生したりしています。
ここで注意したいのは、「服から服」に生まれ変わるのは、ダウンなど一部の素材に限られるという点です。それ以外は燃料や素材へのリサイクルが中心になります。
H&Mの回収の仕組み
H&Mは日本の全店舗で、ブランドや状態を問わず不要な衣類や家庭用繊維(タオルやシーツなど)を受け付けています。回収後は、古着として再販売するもの、清掃用品などに作り変えるもの、リサイクルするもの、エネルギーとして回収するものに分けられると報じられています。2022年からは、日本国内の古着リサイクル企業に提携先を切り替えたとされています。
他社の服も受け付ける点は、利用しやすさにつながります。ただし、回収に出せば環境負荷がなくなるわけではありません。報道ベースの情報であり、最新の条件や特典は店頭や公式サイトで確認が必要です。
回収に出す前に考えたい、もう一つの選択
2社の事例からも分かるように、回収は「捨てる」より望ましい選択ですが、リサイクルの過程にもエネルギーがかかります。最も負荷が小さいのは、そもそも新しい服を買う回数を減らし、すでにある服を長く着ることです。回収やリサイクルは、「どうしても着られなくなった服の出口」として位置づけるのが現実的です。
衣替えの今、買う前・手放す前に確認したいこと
10月は衣替えの季節です。クローゼットを入れ替えるこのタイミングは、服との付き合い方を見直す機会になります。ここでは、判断の基準を具体的に挙げます。
手放す前に、着なかった理由を確認する
環境省の調査にあるとおり、1年間に1回も着なかった服は1人あたり約24枚あります。手放す前に、「サイズが合わない」「合わせにくい」「手入れが面倒」といった着なかった理由を確認してみてください。丈直しやボタンの付け替えといった修繕で着られるようになる服もあります。環境省の調査では、1年間に修繕する服は約2着にとどまる一方、約11着が手放されています。
買う前に、3つの質問を自分にする
新しい服を買うときは、次の3つを確認すると、後悔の少ない選択につながります。
- 手持ちの服の何枚と組み合わせられるか
- 30回以上着る場面を具体的に想像できるか
- 洗濯や手入れの方法が、自分の生活に合っているか
安さだけで選ぶと、これらの確認が抜け落ちやすくなります。1回あたりの着用コストで考えると、少し高くても長く着られる服のほうが、結果的に費用も資源も節約できる場合があります。
手放し方は「着られるかどうか」で分ける
まだ着られる服は、フリマアプリでの売却、知人への譲渡、自治体や地域の回収、店頭回収の順に、再び着てもらえる可能性が高い出口を選んでください。着られない服は、自治体の分別ルールを確認し、店頭回収や資源回収の対象になるかを調べます。可燃ごみに出すのは、それらが難しい場合の最後の選択肢にします。
まとめ
ファストファッションと環境汚染の関係は、服を作る段階の水とCO2、洗濯で流れ出るマイクロプラスチック、そして使われないまま手放される服という、3つの場面がつながって生まれています。環境省の推計では、日本では年間約35億着が供給され、家庭から焼却・埋立される衣類は年間約46万トンにのぼります。1人が1年に約19枚買い、約11枚手放し、約24枚は一度も着ていません。
よく引用される「CO2の10%」「海洋マイクロプラスチックの35%」といった数字は、前提や範囲によって幅があります。出典を確かめながら、「無視できない規模である」という共通点を押さえることが大切です。EUでは事業者に回収費用の負担を求める制度が動き出し、日本でも政策の検討が進んでいます。制度が整うまでは、買う回数と手放し方を見直すことが、私たちにできる具体的な行動です。
衣替えの今、まずクローゼットを開いて、1年間着ていない服が何枚あるか数えるところから試してみてください。
- 日本の家庭から焼却・埋立される衣類は年間約46万トンで、手放された服の半分以上が可燃・不燃ごみとして出されている
- 洗濯由来のマイクロプラスチックは、海に出る一次マイクロプラスチックの16〜35%程度と推計されており、ネットやフィルターで流出を減らせる
- 「CO2の10%」などの数字は推計の幅が大きく、出典と前提を確認して使う必要がある
- EUは事業者による回収費用の負担を義務化し、日本も循環型ファッションのアクションプランを検討している
- 最も負荷が小さいのは、手持ちの服を長く着ること。回収やリサイクルは着られなくなった服の出口として使う
参考文献
- 環境省「サステナブルファッション」(2025年)
- 環境省「ファッションと環境の現状」(2025年)
- 環境省「サステナブルファッション 審議会・検討会等」(2026年)
- 欧州環境機関(EEA)「Microplastics from textiles」(2022年)
- IUCN「Primary Microplastics in the Oceans」(2017年)
- UN News「UN launches drive to highlight environmental cost of staying fashionable」(2019年)
- 欧州議会「Revision of the EU waste framework directive」(2025年)
- ユニクロ「RE.UNIQLO」(2025年)
- FASHIONSNAP「H&Mのサステナビリティ」(2022年)

