現在、世界中で過剰漁獲が問題となっており、その数は世界の水産資源3分の1以上と言われています。
これは、過剰漁獲が続く限りこの世に魚たちがいなくなってしまうことを意味しています。
そんな危険事態の対策として定められたのが、MSCの「海のエコラベル」。
MSC認証の存在によって、持続可能な漁業が実現できるのです。
本記事では、
・MSC認証とは何か
・MSC認証が必要な理由
・ASC認証との違い
・MSC認証商品を取り扱っている企業
・SDGsとの関係性
などを紹介します。
ぜひ参考にしてみてくださいね。
MSC認証とは?持続可能な漁業を守る「海のエコラベル」
MSC認証とは、水産資源や環境に配慮されている漁業かどうか判断する認証制度のことです。
MSCによる厳正な審査により「持続可能な漁業」として認められると、販売される水産物にMSC認証のラベルが貼付されます。
MSC認証のラベルは、別名「海のエコラベル」とも呼ばれます。
海のエコラベルによって、消費者が環境に配慮された商品を購入できるようになります。
参照元:MSC「海のエコラベル」とは|Marine Stewardship Council
MSCとは
簡単にMSCという団体について触れておきましょう。
MSCとは、海洋管理協議会(Marine Stewardship Council)の略称です。
1997年に非営利団体として設立され、2000年よりMSC「海のエコラベル」が表示された製品が誕生しました。
2017年にはMSCエコラベルの製品は25,000以上となり、現在も世界中で普及しています。
参照元:MSC「海のエコラベル」とは|Marine Stewardship Council
MSC認証が必要な理由
MSC認証が必要な理由は主に2つあります。
それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
理由①:過剰漁獲
まず1つ目は「過剰漁獲」です。
私たちの食事には欠かせない魚介類ですが、現在34.2%の魚が獲り過ぎと言われています。
加えて1970年から2012年までの間に、海洋生物の数が49%も減少しています。
このまま必要以上の魚を獲っていると、海洋生物はいなくなるうえ、漁業関係者の仕事も無くなってしまうでしょう。
持続可能な漁業を行うためにもMSC認証が大切なのです。
参照元:危機に直面している海 |Marine Stewardship Council
理由②:違法漁業・破壊漁業
違法漁業や破壊漁業も問題視されています。
先述の過剰漁獲は、ルールを守らない違法漁業によって行われており、年間損失は約1兆円〜2兆3,500億円を超えていると言われます。
また、毒やダイナマイトを用いて、魚を麻痺させたうえで漁獲する破壊漁業も行われています。
MSCは、このような持続可能性からかけ離れた違法漁業を排除するよう努めているのです。
参照元:過剰漁獲、違法操業、破壊的な漁業|Marine Stewardship Council
ASC認証との違い
MSC認証とASC認証との違いを確認しましょう。
MSC認証は天然水産物を守る認証に対して、ASC認証は「水産養殖管理協議会(Aquaculture Stewardship Council)」が設けた認証制度です。
1990年以降、養殖水産物の生産量は一気に増加し、2020年の世界水産生産量約200万トンのうち約100万トンが養殖となっています。
一方、ASCは急激な養殖の増加にともない、2010年にWWF(世界自然保護基金)とIDH(オランダの持続可能な貿易を推進する団体)の支援によって設立されました。
生産量の増加は一見ポジティブな印象を受けますが、海洋環境の悪化や逃げてしまった養殖魚によって生態系が崩れてしまう、労働環境が悪化するなどの問題が発生する恐れがあります。
海を守り続けるためにも、ASCは厳しい基準を設けているのです。
CoC認証
MSC認証とASC認証とは別に、「CoC認証」という認証も存在します。
CoCとは「加工・流通過程の管理(Chain of Custody)」という意味です。
無事MSC認証を取得できたとしても、CoC認証を取得していなければ消費者に提供することはできません。
というのも、水産物の流通・加工の段階では、MSC認証を「取得した水産物」と「取得していない水産物」の分別ができないのです。
それぞれの水産物が流通業者・加工業者・小売店・レストランなどに届くように、CoC認証という仕組みが作られています。
MSC認証の製品を紹介
では実際に、MSC認証の製品を販売している企業を3つご紹介します。
日本水産株式会社
冷凍食品でなじみのある日本水産株式会社(ニッスイ)は、MSC認証とASC認証を取得した製品の販売や、水産物の活用に取り組んでいます。
日本水産株式会社では、アラスカのスケソウダラを主にさまざまな魚種でMSC認証を取得しています。
2017年時点でニッスイグループで取り扱っている魚の37%が、MSC認証を得た漁業方法で漁獲されているのです。
「今日のおかずMSCフィッシュフライ特製タルタルのせ」や「さばオイル漬け」「北海の玉手箱・ほたて貝柱」など、MSC認証を取得した製品が販売されています。
参照元:ニッスイグループの水産物の持続的利用への取り組みについて|日本水産株式会社
イオントップバリュ株式会社
イオングループのプライベートブランドであるトップバリュ。
トップバリュでは”海を守り、その恵みを未来に残していく”という考えのもと「サステナブル(持続可能な)シーフード」を推進しています。
かつおやたら、子持ちししゃもなどさまざまな魚のほか、MSC認証の具材を使用した「炙りたらこおにぎり」や「紅鮭おにぎり」が手軽に購入可能です。
他にもブルーホワイティングを使用した「環境にやさしいMSC認証サクサクとした食感の白身魚フライ」などの冷凍食品も販売しています。
公式サイトでは、MSC認証について消費者にもわかりやすい説明が掲載されています。
ぜひチェックしてみてください。
参照元:豊かな海の恵みを子どもの未来に。持続可能な水産業の証―MSC, ASC。|TOPVALU
日本マクドナルド株式会社
ファストフード店として人気の高いマクドナルドでも、MSC認証を取得した魚が使用されています。
定番商品である「フィレオフィッシュ」に使用されている白身魚は、2019年8月よりMSC認証を取得したアメリカ・ロシア産のスケソウダラが使用されています。
参照元:フィッシュ MSC認証|日本マクドナルドホールディングス
SDGsとの関わり
私たち消費者は、MSC認証の商品を購入することでSDGsの目標達成に貢献することができます。
例えば、MSC認証の商品を購入することは、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」の達成につながります。
「海の豊かさを守ろう」は、過剰漁獲や違法漁業を含め海で起きている問題を解決し、海生物の命や漁業関係者の仕事の存続を守っていくための目標です。
MSC認証製品を購入する消費者が増えれば、さらにMSC認証製品がお店に並ぶようになるでしょう。
そして、過剰漁獲や違法漁業の減少にもつながるのです。
まとめ
この記事では、MSC認証やMSC認証が必要な理由、CoC認証、ASC認証との違いMSC認証を取り扱っている企業、SDGsとの関係性を紹介しました。
私たちの食事には欠かせない魚は減少傾向にあり、このままだと消滅してしまう危険性があります。
そんな状況に陥らないように、MSCは認証制度を設けて持続可能な漁業を推進しているのです。
私たち消費者も、魚を食す際はぜひMSC認証に注目してみましょう。