トレンドの服が安く購入できるファストファッションは、ここ20年程で生活の中に浸透してきました。
日本だけではなく、海外でもファストファッションブランドは人気です。
ファストファッションの安さを保つために、SPAという管理システムが存在します。
しかし、ファストファッションが安いのには、システムの他にとても重大な問題を含んでいる理由があることをご存じでしょうか?
それは、人権を無視したような生産工場の過酷な労働実態や、自然環境への甚大な影響があることです。
今回は、ファストファッションが安い理由を紹介します。
ファストファッションとは何か
ファストフードと言う単語は、2000年代半ばから言われ始めた言葉です。
早くて安いファストフードになぞらえて作られた言葉とも言われています。
ファストファッションとは、移り変わりの激しいトレンドの服を、安く大量生産して販売されている服を指します。
世界ではGAP(ギャップ)やZARA(ザラ)、日本ではユニクロやGU(ジーユー)などがファストファッションブランドとして認知されていて、世界中で低価格で手に入れることができるファストファッションの服が着られているのです。
ファストファッションが安い理由
ファストファッションが安い理由は2つ考えられます。
それまでの習慣であったシステムを戦略的手法に変え、人件費が安い国で服を作っていることが低価格を実現しています。
ここでは、ファストファッションが安い2つの理由を紹介します。
1.SPAという戦略で安い
従来、服を生産して販売するには、数多くの工程を挟んできました。
その工程には、さまざまな会社が必要となります。
例えば、デザインをするアパレルメーカーやそのデザインされた服を生産する生産会社。
そして流通過程で必要になる仲卸業者や商社を挟み、小売業会社が消費者向けに販売をしてきました。
しかし、ファストファッションの会社はSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel:製造卸小売業)と言って、企画・生産・販売まで一貫して1つの会社で完結させるシステムを採用しています。
このSPAのシステムは、自社でデザインしたものを、自社の工場で生産し、すぐに販売店に並べることが可能です。
また、SPAだと販売したデータを自社で分析して、売上の見込みも予測しやすくなります。
例えば、もし足りなそうな服があったら工場に連絡して、すぐに在庫補充などができるなどです。
そのため、トレンドなどの予測も立てやすくなり、より戦略的に服を生産・販売できるのです。
このようなSPA体制なら、効率よく売れるものを大量に生産することができます。
そして、仲卸などを介すことがなくなり、物流コストも下げることが可能になるため、低価格の服を提供できるようになるのです。
2.人件費の安い国で生産しているから安い
ファストファッションの服は、大量生産されるために安さを実現できている面が大きいです。
ファストファッションは自国だけでなく、世界規模で大量生産させる仕組みを作ることで、コストを大幅に削減しています。
そしてコスト削減のために、人件費の安い国で大量生産をしています。
実は、布地の価格はどこで購入しても、それほど価格差は無いのです。
そこで、安さを実現させるために、安い労働力を使って安く服を仕上げているのです。
労働賃金が安い新興国に縫製工場を作り、現地の安い賃金で雇用した従業員によって安い服を大量に生産しているため、ファストファッションは低価格で販売できるのです。
ファストファッションが安いために起きている問題
ファストファッションは、戦略的なシステムの構築と安い労働力によって作られることで、低価格を実現しています。
安価でトレンドの服を手に入れられる一方で、ファストファッション業界には、さまざまな問題があると言われています。
ここでは、ファストファッションによって問題となっている、生産現場の過酷な労働問題と環境への影響を解説します。
過酷な労働環境
人件費の安い新興国に建てられた縫製工場では、過酷な労働を強いられていることが問題になっています。
大量生産をさせるために、長時間労働を強いられたり、安全性が配慮されていない労働環境だったり、中には不衛生な工場もあるようです。
ある国の縫製工場では、クーラーなどの設置がされておらず、工場内の室温が40℃近くにもなっている場合や、工場で使われた汚染された水で床がびしょびしょになっている場所などもありました。
そして、生産ノルマが達成できない場合は、従業員に罰金が科される制度がある工場もあるとのことがわかった事例があります。
他にも、従業員の多さや大量のミシンの振動によって建物が崩壊し、甚大な被害が出た事故もありました。
安い服を実現させるために、安い賃金で働かなければならない人たちの人権が侵害されているのです。
自然環境への甚大な影響
ファストファッションに使われる布地を加工するために、有害な染料を使ったり、大量の水を使ったりします。
その有害な物質が混じった排水が現地の川や海に流れ込み、環境汚染がされているのです。
また、ファッションブランドだけではありませんが、服を作るためには大量の資源が使われ、CO2も大量に排出されます。
ファストファッションは、安くするために大量生産をするため、扱う服の量は従来に比べて多く、服を製造するために使われる水や原料などの資源、輸送のために排出されるCO2なども多いと言われています。
そしてファストファッションの最大の魅力である安さのため、トレンドが過ぎるとすぐに廃棄されるという問題もあります。
廃棄される服の数も大量になるため、さらに環境への影響は大きいと言えるでしょう。
ファストファッションが安い理由に隠れている問題を認識しよう
ファストファッションとは、トレンドに合わせて大量に生産され、安価で手に入る便利で魅力的な服です。
しかし、ファストファッションの安さを支えるために、縫製工場で働く人たちは、安い賃金で過酷な労働を強いられています。
また、ファストファッションは、環境への影響は甚大なものという認識が最近では広まりつつあります。
服が安い理由には、私たちにはわかりにくい裏側がありました。
安さの裏側には、他国の人の過酷な労働や、環境への影響があることを認識して、服を選ぶときの参考にしてみてください。