2020年7月から、日本では買い物時のレジ袋有料化が実施されています。
レジ袋はその手軽さから重宝されていましたが、レジ袋を含むプラスチック製品が海洋汚染を引き起こし、世界でレジ袋への対策が進められています。
実は、毎年約800万トンものプラスチックゴミが海へ流れ込んでいるのです。
このペースのまま海へプラスチック製品が流れ込めば、2050年にはなんと魚の量よりもプラスチックゴミの量が多くなってしまう計算が出ています。
地球に住み続けるために、海洋汚染をはじめ環境問題への早急な対応が必要です。
世界では、SDGs(持続可能な開発目標)など国際的な活動へと発展しています。
日本でもレジ袋有料化をきっかけに、1人ひとりが環境問題への意識し行動することが大切になってきているのです。
レジ袋などのプラスチック製品が海洋汚染をしている
プラスチックは安価で成形しやすいため、レジ袋だけでなく、シャンプーのボトルや飲料水のペットボトルなど、私たちの生活の中でたくさん使われています。
しかし手軽に使える一方で、レジ袋などの使い捨てプラスチック製品が処理されずに、毎年大量に海へ流れ込んでいるのです。
海に流れ込んだプラスチックゴミは、生物による分解がされず海を漂い続けるため、海洋汚染が問題になっています。
海洋汚染の現状については下記のコラムで詳しく紹介しています。
プラスチック製品による海洋汚染
レジ袋などのプラスチック製品は、自然界で分解されることがありません。
そのため、一度海に流れ込んでしまったプラスチックゴミは、半永久的に海を漂い続けます。
すでに海には1億5,000万トンのプラスチックゴミがあると言われていて、さらに毎年800万トンほどのプラスチックゴミが流れ込んでいるとされています。
このまま増え続けると、冒頭にも触れたように、2050年には魚の量よりもプラスチックゴミの方が多くなるという試算が世界経済フォーラムで2016年に報告されました。
今後、海へ流れ込むプラスチックゴミについて対策をしないと、将来は海での漁業で、魚よりもゴミの方が多く取れてしまうことが、起きてしまうかもしれません。
参照:第3章 プラスチックを取り巻く状況と資源循環体制の構築に向けて|環境省HP
海洋生物への影響はすでに出ている
レジ袋による海洋生物への悪影響がすでにいくつも報告されていて、実際に海に漂っているレジ袋などのポリ袋を誤って食べてしまうニュースもよく聞きます。
例えば、ウミガメがレジ袋を食べ、胃の中でレジ袋が消化されずに残ってしまうケースです。
他にも、2019年11月には、スコットランドの砂浜で見つかったクジラの死体の胃の中から、100㎏ものプラスチックゴミの塊が発見されました。
海洋生物たちは、海に漂うプラスチックゴミを、エサだと勘違いして食べてしまうことがあるのです。
マイクロプラスチックによる海洋汚染
レジ袋などのプラスチックゴミは、処理されないと自然界に半永久的に残ってしまいますが、実はその形は時間の経過とともに徐々に変わっていきます。
プラスチックゴミが海に流れ込むと、太陽の紫外線や波の力などによって劣化し、どんどん小さくバラバラに崩れてしまのです。
劣化して小さくなったプラスチックゴミで、5㎜以下の大きさのものが「マイクロプラスチック」と呼ばれます。
一見ゴミが小さくなることは良いのではと思ってしまうかもしれませんが、マイクロプラスチックになってしまったゴミは、その小ささから回収がとても困難です。
このマイクロプラスチックが、どんどん海に溜まっていくのが問題になっています。
マイクロプラスチックにも区分がある
マイクロプラスチックは、大きさが5㎜以下のプラスチックゴミですが、実は2種類に分類されています。
一次マイクロプラスチック
もともとマイクロサイズで製造されたプラスチックです。
例えば、洗顔料のスクラブ剤などのマイクロビーズなどです。
使うと排水溝からそのまま自然へ流れ出てしまいます。
一部の国(アメリカ・カナダ・フランス・イギリス)では、製造や販売がすでに規制されています。
日本でも、日本化粧品工業連合会が、自主規制の呼びかけをしています。
二次マイクロプラスチック
レジ袋やシャンプーの容器など、もともと大きいサイズで製造されたプラスチックが、自然の中で劣化しバラバラになり、マイクロサイズになったものです。
小さくなる前に回収が可能なので、プラスチックゴミを海へ流さない策がとりやすいです。
参考:環境省プラスチックを取り巻く国内外の状況|平成30年8月環境省資料
人体への影響はまだ研究途中
海を漂うプラスチックゴミは、海辺の景観を損ねたり、船舶の航行に影響が出たりなど、人々の生活にも影響が出ます。
また、マイクロプラスチックになると、目で確認することが難しいこともあり、知らないうちに私たちの健康を害している可能性が出てきています。
例えば、マイクロプラスチックは小さい海洋生物もエサと勘違いして食べてしまいます。
そして食物連鎖で、だんだんと大きい魚に食べられます。私たちの食卓に並ぶ魚にも、小さい魚から大きい魚へと連鎖していったマイクロプラスチックゴミが、含まれている可能性があるのです。
しかし、人間へのマイクロプラスチックの影響は、まだ研究が発展途中です。
マイクロプラスチックが、私たちにどのような影響があるのかは実はまだ明確にはわかっていないです。
日本のレジ袋有料化の背景
実はあまり知られていないですが、日本は主要な地域・国の中でアメリカに次いで2番目にプラスチックの排出量が多いと言われている国です。
そこで、私たちが普段からプラスチックゴミについて意識するきっかけとして、2020年7月からレジ袋有料化が始まりました。
レジ袋有料化は環境問題対策への第一歩
無料で便利なレジ袋を有料化したのは、国民の意識を変える目的が強いと感じます。
いままで無料だったレジ袋を有料化すると、買い物時に余分なお金を使いたくないという心理を利用して、レジ袋を使う量を減らす狙いです。
しかし、実際はお金を払いたくないというよりは、無料から有料化したことで、レジ袋を利用することがどこか少しいけないことのようなイメージになったように思います。なるべく各々がマイバックを持参するべきという意識を高めることができました。
レジ袋の使用量が減れば、その分プラスチックゴミを減らせるので、そうした身近なところから海洋汚染や環境問題に意識を向けることができます。
このレジ袋の有料化は、地球温暖化や海洋汚染などの関心を集め、次世代へ資源を残す行動を一人ひとりが考えるきっかけのひとつになったと言えるでしょう。
有料対象外のレジ袋
実は日本では、すべてのレジ袋が有料になったわけではありません。
環境に配慮した以下の3つのタイプのレジ袋は、有料対象外です。
理由:繰り返し使えて、レジ袋の過剰使用を抑えるため・海洋生分解性プラスチック配合率100%のもの
理由:海洋で微生物によって分解されるプラスチックは、海洋汚染対策されているため・バイオマス素材配合率25%のもの
理由:バイオマス素材は植物由来の素材で、CO2の排出を抑えることができ、地球温暖化対策されているため
レジ袋だけ規制しても海洋汚染は無くならない意見も
レジ袋は、全プラスチック製品の数%しか占めていません。
全体の数%を削減しても、「海洋汚染対策としては十分ではない」という意見もあります。
しかし、レジ袋を通して海洋汚染について考える機会ができるだけでも、環境問題の提起になります。たった数%でも、「やらないよりはマシ」という意見も多いです。
世界でレジ袋対応が進んでいる
世界では日本よりも早くレジ袋の有料や、なかには禁止の対応までしている国も多くあります。
各国で、プラスチックゴミなどの環境問題について、確実に意識が高まっているのです。
・禁止の国:フランス、バングラデッシュ、中国、台湾 など
・有料または課税の国:イタリア、韓国、ベトナム、インド など
特にフランスでは、プラスチック製の容器、カトラリーは販売禁止となっていて、2040年までにゼロプラスチックを目指して、使い捨てプラスチック製品についての積極的な施策が行われています。
参照:プラスチックを取り巻く国内外の状況|平成30年8月環境省資料
SDGs:海の豊かさを守ろう
持続可能な開発目標(SDGs)は、2030年までに「地球上の誰一人残さないための地球保護」を目指す17つの国際目標です。
このSDGsは、地球規模で人類が今後も豊かに暮らすために、解決しなければならない事項を掲げています。
SDGs目標14の「海の豊かさを守ろう」の1つ目のターゲットに
“2025年までに、海洋ゴミや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する。”
というのを掲げています。
今回取り上げた、レジ袋を含む海洋プラスチックゴミも、このSDGsに沿ってまず真っ先に削減しなければならないもののひとつです。
レジ袋有料化で海洋汚染を知り行動することが大切
レジ袋有料化は、深刻な海洋汚染や環境問題に取り組むために、日本でも実施されました。世界では、レジ袋を禁止している国もあります。
レジ袋を含むプラスチックゴミは、自然界では分解されず、半永久的に残り続けてしまいます。
毎年800万トンもの大量のプラスチックゴミが海に流れ出していて、海洋生物への影響が年々危惧され、私たちの生活にも影響が出始めているのです。
また、マイクロプラスチックが私たちに与える影響も、研究途中で未知数です。
レジ袋有料化は海洋汚染や環境問題を私たちに認識させるきっかけでもあります。
豊かな海を守り、将来地球に住み続けるために、プラスチックゴミや環境問題について、1人ひとりが考えて行動していきましょう。