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IUU漁業とは? 原因や対策、SDGsとの関係性、日本の規制と買い物でできることまで

IUU漁業とは? 原因や対策、SDGsとの関係性も紹介

IUU漁業とは、Illegal(違法)・Unreported(無報告)・Unregulated(無規制)の頭文字を取った言葉で、国内外のルールや資源管理の枠組みの外で行われる漁業の総称です。漁獲の実態が見えなくなるため、海の資源が減るだけでなく、船で働く人の人権や、ルールを守る漁業者の暮らしにも影響します。しかも、輸入水産物の多い日本の食卓とも無関係ではありません。この記事では、3つの頭文字の正確な意味から、原因、世界と日本の最新の対策、SDGsとの関係、買い物での選び方までをまとめます。

この記事で学べること

  • 違法・無報告・無規制の違いと、「アサリの産地偽装はIUU漁業なのか」という疑問への答え
  • IUU漁業が起きる背景と、海・人・漁業者それぞれへの影響
  • 寄港国措置協定、WTO漁業補助金協定など、世界で進む最新の対策
  • 水産流通適正化法を軸にした日本の制度と、その限界
  • MSC・ASCなどのラベルの見方と、買い物で気をつけたいこと
目次

IUU漁業の3つの頭文字|正確な意味と、よくある取り違え

IUU漁業は3つの言葉の組み合わせですが、それぞれが指す範囲は少しずつ違います。解説記事では「無報告の例は産地偽装」「無規制の例は密猟」といった説明も見かけますが、実際の定義とはずれがあります。ここでは国連食糧農業機関(FAO)などが用いる整理にそって、1つずつ確認します。

違法漁業(Illegal)

沿岸国の許可なくその国の排他的経済水域で操業する、許可の条件に反して漁を行う、漁期や漁具、漁獲枠の決まりを破る、といった行為です。国内の漁業法令に反する密漁も、この「違法」にあたります。つまり、密猟は無規制ではなく、違法の代表的な例です。

無報告漁業(Unreported)

獲った魚の種類や量を、関係当局や地域の漁業管理機関に報告しない、あるいは実際より少なく、または別の魚種として報告する漁業です。資源を管理するには「何をどれだけ獲ったか」という数字が土台になります。その数字が正しくなければ、漁獲枠を決める科学的な評価そのものが狂ってしまいます。

無規制漁業(Unregulated)

管理のルールを定めた国際的な枠組みに入っていない国の船や、国籍のない船が、その枠組みの管理措置に従わずに操業する漁業です。また、管理措置がまだ定められていない海域や資源で、国際法上の責任にそぐわない形で行われる漁業も含まれます。違法と言い切れない「ルールの隙間」で起きる点が、無規制の特徴です。

アサリの産地偽装はIUU漁業なのか

2022年に大きく報じられた熊本県産アサリの産地偽装は、IUU漁業そのものではありません。外国産を国産と偽って売る行為は、食品表示法上の問題だからです。農林水産省の調査(2021年10〜12月)では、熊本県産として販売されていたアサリの97%が外国産の可能性が高いと判定されました。全国の小売店での推定販売量は2,485トンで、熊本県の2020年の漁獲量21トンの約120倍にあたります。

ただ、この事件はIUU漁業と共通する弱点を示しています。「いつ、どこで、誰が獲ったのか」が流通の途中で追えなくなると、不正が見つかりにくくなるという点です。IUU漁業対策が産地や漁獲の「追跡」を重視するのは、同じ理由からです。

IUU漁業の原因と、何が問題なのか|資源の状況・取締りの限界・人権

IUU漁業は、単に「悪質な漁師がいる」という話ではありません。資源が厳しくなるほど違法な漁獲への誘因が強まる、取締りが届きにくい海がある、という構造の問題です。そのうえで、被害は海の中だけにとどまりません。

背景にある資源の逼迫

FAOの「世界漁業・養殖業白書」2026年版によると、2024年の漁業と養殖業を合わせた水産動物の生産量は2億3,500万トンでした。天然の漁獲量は1980年代後半から8,600万〜9,400万トンの範囲でほぼ横ばいで、増えた分は養殖が担っています。同じ報告では、生物学的に持続可能な水準にある資源は62.4%で、前回の64.5%から低下しました。裏返せば、持続可能とは分類されない資源が約4割弱あることになります。

獲れる量に上限があるなかで需要が伸びれば、許可や枠の外で獲ろうとする動きが出やすくなります。IUU漁業による経済的な損失は、国連の紹介する推計で年間100億〜230億ドル規模とされています。推計は手法によって幅があり、正確な実態をつかむのが難しいこと自体が、この問題の特徴です。

取締りの限界と経済事情

準地域漁業委員会(SRFC)が挙げる原因には、関係当局に訓練を受けた人員が足りないこと、貧しい国には対策に投資する余裕がないこと、船主が漁師の低い収入につけ込んで監視員に不正な支払いをすること、巡視船や航空機の購入・維持費が高く効果的な管理ができないことなどがあります。つまり、IUU漁業は取締りに使える資金や人材が乏しい地域で起きやすいといえます。

海は広く、公海には1つの国の管轄が及びません。船の登録国(旗国)が管理を徹底しなければ、その船は事実上、誰にも監視されない状態になります。取締りを強めるだけでなく、取締りを担う国を支える仕組みが必要なのは、このためです。

海への影響|放置された漁具が残り続ける

IUU漁業では、違法行為の証拠を残さないために、網や釣り具などの漁具が海に捨てられることがあります。こうして海に残された漁具は「ゴーストギア」と呼ばれ、WWFジャパンなどは海洋プラスチックごみの約1割を占めると指摘しています。ウミガメや海洋哺乳類、海鳥が絡まって動けなくなったり、窒息したりする被害が出ています。また、底引き網などによる海底の破壊が、サンゴや海底の生きものの生息場所を傷める場合もあります。

人への影響|洋上で起きる人権侵害

IUU漁業を行う船は、発覚を避けるために長期間、海上にとどまります。補給船が食料や燃料を運ぶため、数か月から年単位で寄港せずに操業できる場合があり、船内の様子が外に漏れにくくなります。NPO法人ヒューマンライツ・ナウの報告では、2020年に発覚した漁船「Longxing629号」で、インドネシア人乗組員が長時間労働や不十分な食事、暴行を受け、パスポートも取り上げられて逃げられなかったとされています。IUU漁業は環境問題であると同時に、強制労働や人身取引と結びつきやすい労働問題でもあります。

ルールを守る漁業者への影響

違法に獲られた水産物は、コストをかけずに市場に出回ります。そのため、許可を取り、漁獲枠を守って操業している漁業者の水産物が、価格で不利になります。長く続けば、真面目な漁業者が経営に行き詰まる一方、違法な漁獲が相対的に利益を生みやすくなるという悪循環が生まれます。

世界で進む対策|寄港国措置協定・地域漁業管理機関・WTO漁業補助金協定

IUU漁業は1国だけでは止められません。そのため、港で止める、海域ごとに管理する、お金の流れを断つという3つの方向から国際的な対策が積み上がっています。

寄港国措置協定(PSMA)|港で入口を閉じる

FAOが作った国際協定で、2016年6月5日に発効しました。外国漁船が入港を求めたとき、IUU漁業を行った明確な証拠や疑うに足りる根拠があれば、入港や港の使用を拒否したり、船を検査したりできます。国連の2025年の資料によると、2025年1月時点で78の締約国が加わっており、これは沿岸国の65%にあたります。2026年は発効から10年の節目の年です。

地域漁業管理機関(RFMO)|海域と魚種ごとに管理する

沿岸国や遠洋漁業国が参加する国際機関で、地域や魚種ごとの保存管理措置を法的拘束力のある形で定めます。IUU漁業を行った船のリスト作成や、漁船の監視・取締りも担います。日本の食卓になじみのあるサンマなども、北太平洋漁業委員会(NPFC)などの枠組みで資源管理が進められています。ここで重要なのは、枠組みに入っていない国の船が「無規制」の抜け道になりやすいことです。

WTO漁業補助金協定|お金の流れを断つ

2025年9月15日、WTOの漁業補助金協定が発効しました。外務省によると、WTO加盟国の3分の2にあたる111の加盟国が受諾して発効に至り、日本は2023年に受諾しています。協定は、IUU漁業につながる補助金や、過剰に漁獲された資源に対する補助金などを禁じています。燃料費や船の建造費を支える補助金が、結果として乱獲を後押ししてきたという反省が背景にあります。

ただし、この協定には、発効から4年以内に、より包括的な規律が合意されない場合は終了する条項があるとされています。発効はゴールではなく、規律を広げていくスタートラインにあたります。

日本の制度と現場|水産流通適正化法で何が変わったのか

日本は水産物の輸入国でもあり、違法に獲られたものが国内に入ってこない仕組みが欠かせません。その中心にあるのが、2022年12月1日に施行された「特定水産動植物等の国内流通の適正化等に関する法律」(水産流通適正化法)です。

国内で獲られるものへの規制

密漁が問題になりやすい魚種は「特定第一種」に指定されています。対象はアワビ、ナマコ、そしてシラスウナギ(2025年12月1日から)です。採捕する事業者や取り扱う事業者は、国や都道府県への届出が必要です。取引では、魚種や数量、漁獲番号などを取引先に伝え、取引記録を作って3年間保管します。輸出する際は、国が発行する適法漁獲等証明書が求められます。密漁品と知りながら運んだり、取得したりする行為は罰則の対象です。

輸入されるものへの規制

国際的にIUU漁業のおそれが大きい魚種は「特定第二種」に指定され、サバ、サンマ、マイワシ、イカが対象です。これらを輸入するときは、その水産物を適法に採捕したことを外国の政府機関が証明した「適法採捕証明書」などの添付が求められます。第三国で加工されて入ってくる場合は、加工地の政府機関などが発行する書類も必要です。秋の味覚のサンマも、この制度の対象になっています。

制度の限界も知っておく

この制度が確認するのは、現時点では指定された魚種に限られます。つまり、日本で流通するすべての水産物が同じ方法で確認されているわけではありません。また、証明書の仕組みは相手国の政府機関が書類を発行できるかにも左右されるため、運用の細部は今も更新が続いています。制度が整ったから安心、と考えるのではなく、対象の広がりを見守っていく視点が必要です。

アサリ問題のあとに変わった表示ルール

先に触れたアサリの産地偽装を受けて、2022年3月に産地表示のルールが見直されました。これまでは「飼育期間が最も長い場所」を産地とする考え方が使われていましたが、見直しで、蓄養(短期間、場所を移して育てること)の期間は成育期間に含まれないと明確になりました。輸入アサリの原産地は、蓄養の有無にかかわらず原則として輸出国です。例外は、輸入した稚貝を区画漁業権にもとづいて1年半以上育成し、根拠書類を保存している場合に限られます。

IUU漁業とSDGs|目標14のターゲットは今どうなっているのか

SDGs(持続可能な開発目標)は、2015年の国連総会で採択された国際目標です。IUU漁業と深く関わるのは、目標14「海の豊かさを守ろう」のなかの2つのターゲットです。

ターゲット14.4|2020年の期限には届かなかった

ターゲット14.4は、2020年までに漁獲を効果的に規制し、過剰漁業やIUU漁業、破壊的な漁業慣行を終わらせ、科学的な管理計画を実施することを掲げています。しかし、結果は目標どおりには進んでいません。国連の2025年の資料によると、過剰漁獲の状態にある資源は2019年の35.4%から、2021年には37.7%に増えました。前述のとおり、FAOの2026年版でも、持続可能な水準の資源の割合は低下しています。

ターゲット14.6|補助金の規律が動き出した

ターゲット14.6は、過剰漁獲につながる補助金を禁止し、IUU漁業につながる補助金を撤廃することを求めています。こちらは、先ほどのWTO漁業補助金協定が2025年に発効したことで、ようやく国際的な法的枠組みが動き出しました。寄港国措置協定の締約国も増えており、対策の「仕組み」は広がっています。一方で、国連の専門家会合は、資金の制約や政治的な分断のため、全体の進展は限定的だと指摘しています。

他の目標とのつながり

IUU漁業は目標14だけの問題ではありません。船上での強制労働は目標8「働きがいも経済成長も」、水産物を選ぶ私たちの消費行動は目標12「つくる責任 つかう責任」にもつながっています。ひとつの問題が複数の目標にまたがっているため、環境だけ、労働だけの視点では見落としが出ます。

買い物でできること|ラベルと表示の読み方

制度や国際協定は大きな枠組みですが、私たちが日々の買い物で参考にできる手がかりもあります。10月はサンマや鮭などの水産物が店頭に並ぶ時期です。次に魚売り場へ行くときに、確認できることを3つ挙げます。

認証ラベルを探す

天然の水産物には、MSC(海洋管理協議会)の「海のエコラベル」があります。資源の持続可能性、生態系への影響、漁業の管理体制の3点を審査する認証です。養殖の水産物には、ASC(水産養殖管理協議会)の認証があります。加工・流通の段階の管理を確認するCoC認証もあわせて取得している事業者の商品に、ラベルが付けられます。

原産地・漁獲方法・加工地を読む

パッケージの表示には、原産地のほか、天然か養殖か、どこで加工されたかが書かれています。表示を見て「どこの国で獲られ、どこで加工されたか」を意識するだけでも、水産物の来歴に目が向きます。アサリ問題のように、産地は食品表示のルールによって決まるため、表示の意味を知ることも大切です。

企業や店の情報公開を確認する

小売店やメーカーのサイトに、水産物の調達方針やトレーサビリティ(追跡できる仕組み)への取り組みが載っているかを見てみましょう。公表している企業は、問い合わせにも答えやすい傾向にあります。気になる商品があれば、お客様窓口に産地や調達方針を尋ねるのも、1つの行動です。

よくある追加質問

ここまで読んで浮かびやすい疑問を、3つ取り上げます。

Q1 認証ラベルのない魚は避けたほうがよいですか

ラベルがないことは、IUU漁業の産物であることを意味しません。認証の取得には審査と費用がかかり、認証を受けていなくても、適法に管理された漁業は多くあります。ラベルは選ぶときの目安の1つであり、ラベルがない水産物をひとくくりに避ける必要はありません。

Q2 スーパーの魚がIUU漁業のものでないか、確かめる方法はありますか

消費者が売り場で直接見分けることは、現状ではほぼできません。だからこそ、輸入時の証明書や国内の取引記録といった、事業者側の仕組みが重要になります。個人にできるのは、ラベルや表示を確認し、情報を公開している店や企業を選ぶことです。

Q3 密漁らしき現場を見かけたらどうすればよいですか

海上であれば海上保安庁の緊急通報用電話番号118番、陸上であれば警察の110番に連絡します。自分で止めようとはせず、日時と場所、状況をメモして伝えてください。

まとめ

IUU漁業は、違法・無報告・無規制という3つの側面を持ち、海の資源や生態系だけでなく、船で働く人の人権、ルールを守る漁業者の暮らしにも影響します。原因は、資源の逼迫と、取締りに使える資金や人材の不足という構造にあります。FAOの2026年版報告でも、持続可能な水準の資源の割合は62.4%に下がっており、SDGsの目標14のターゲット14.4は期限の2020年に間に合いませんでした。

一方で、対策は少しずつ前に進んでいます。寄港国措置協定の締約国は78に広がり、2025年9月にはWTO漁業補助金協定が発効しました。日本でも水産流通適正化法により、アワビ・ナマコ・シラスウナギやサバ・サンマ・マイワシ・イカについて、流通や輸入の確認が始まっています。ただし対象は限られ、制度は発展の途中にあります。

私たちにできることは、決して派手ではありません。ラベルや産地表示を読む、情報を公開している店や企業を選ぶ、といった小さな選択の積み重ねが、ルールを守る漁業者を支えることにつながります。まず1つだけ、次に魚を買うときにパッケージの原産地表示を確認してみてください。

  • IUU漁業は「違法・無報告・無規制」の3つで構成され、産地偽装や密猟とは区別して理解する
  • 背景には資源の逼迫と取締り能力の不足があり、海・人権・ルールを守る漁業者に影響する
  • 世界では寄港国措置協定とWTO漁業補助金協定(2025年発効)が対策の柱になっている
  • 日本は水産流通適正化法で一部の魚種を確認しているが、対象はまだ限られる
  • 買い物では、MSC・ASCなどのラベルと原産地表示を目安に、情報公開をしている店を選ぶ

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事

鹿児島県在住のフリーライター。コーヒーをきっかけにSDGsを知り、興味をもつように。普段は、ライフスタイルやSDGsに関する記事を執筆しています。

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