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児童労働が多い国はどこ? 世界1億6000万人の現実と私たちにできること

児童労働 多い国

今、世界のどこかで、学校に行けない子どもが畑を耕し、工場で働き、路上で物を売っています。あなたが手にしているチョコレートやTシャツ、スマートフォンの部品、その原材料の一部を、幼い子どもの手が作っている可能性がゼロとは言い切れません。

ILO(国際労働機関)とUNICEFが2022年に発表した共同推計では、世界の児童労働者数は約1億6000万人にのぼります。コロナ禍以降、この数は20年ぶりに増加に転じたとされており、国際社会が警戒水準を引き上げています。

この記事では、児童労働の定義・現状・多い地域・背景にある構造的な問題を整理したうえで、日本に暮らす私たちが日常の消費行動から取り組める具体的なアクションを提案します。

児童労働とは何か|定義と国際条約の中身

「児童労働」という言葉は広く使われますが、正確な定義を確認しておくことが重要です。ILOは児童労働を「子どもの健全な発達を妨げ、最低就業年齢を下回る年齢で行われる労働、または危険有害な環境での労働」と定義しています。一般に15歳未満の就業が対象となりますが、発展途上国では条約上の猶予規定が認められ14歳まで引き下げられる場合もあります。また、18歳未満であっても危険・有害な業務(重化学工業、採掘、農薬散布など)は年齢を問わず禁止されています。

国際条約の観点からは、以下の2本が柱となります。

子どもの権利条約(1989年採択)

国連が採択した子どもの権利条約は、18歳未満のすべての人を権利の主体として位置づけ、「守られる権利」の一環として暴力・搾取・有害労働からの保護を明記しています。日本を含む196か国・地域が締約しており、実質的に普遍的な国際規範となっています。

最悪の形態の児童労働禁止条約(ILO第182号条約、1999年採択)

ILO第182号条約は2021年にILO加盟187か国すべてが批准した初の条約であり、人身売買・強制労働・武力紛争への徴用・児童ポルノ、および健康・安全・道徳を損なう労働を「最悪の形態」として即時撤廃を義務付けています。全加盟国が批准しているにもかかわらず、現実の数字は依然として深刻です。

世界1億6000万人|コロナ禍で増加に転じた衝撃のデータ

ILOとUNICEFが2022年に発表した「No Child Left Behind(どの子も取り残さない)」報告書によると、世界の児童労働者数は1億6000万人と推計されています。これは世界の子ども10人に1人に相当する数字です。

特に注目すべきは、2000年代から続いていた減少トレンドが、コロナ禍(2020〜2021年)を契機に20年ぶりに反転したとされている点です。パンデミックによる貧困の深刻化、学校閉鎖による就学機会の喪失、家計収入の急落が複合的に作用し、多くの子どもたちを労働に追い込みました。国際的な支援が届かない地域では、この逆流がまだ続いているとみられています。

また、同報告書では危険有害業務に従事している子どもが約7900万人いると推計されており、これは全児童労働者のほぼ半数に達します。危険な仕事とは、農薬を素手で扱う農作業、換気のない炭鉱や採掘現場、爆発物の製造といった生命や健康に直接かかわる環境での就業です。

児童労働が多い国・地域はどこか

ILOの地域別データでは、サハラ以南アフリカがもっとも児童労働者数が多く、約8600万人が該当するとされています。アジア太平洋地域が約4800万人でこれに続きます。両地域合わせると全体の約85%を占めており、開発途上国が集中するこれらの地域への集中的な国際支援が求められています。

国別では、ナイジェリア・エチオピア・コンゴ民主共和国などサハラ以南アフリカ諸国のほか、バングラデシュ・インド・ミャンマーなど南・東南アジアが上位を占めています。また、中南米・カリブ海地域でも約850万人が従事しているとされ、グローバルサプライチェーンとの関連が指摘されているケースもあります。

日本の消費者と繋がりが深い品目と産地

私たちの日常に最も近い問題として押さえておきたいのが、輸入品との関連です。アメリカ労働省が毎年更新する「児童労働・強制労働で生産された物品リスト(ILAB List)」では、カカオ(コートジボワール・ガーナ)、コーヒー(エチオピア・タンザニア)、コバルト(コンゴ民主共和国)、綿花(ウズベキスタン・ブラジル)、タバコ(マラウイ・ジンバブエ)などが列挙されています。スマートフォンや電気自動車のバッテリーに使われるコバルトの約70%がコンゴ民主共和国産であり、採掘現場での児童労働が国際NGOによって繰り返し報告されています。

チョコレートを選ぶとき、コーヒーを注文するとき、スマートフォンを購入するとき——それぞれの選択が遠い地の子どもたちの労働環境と結びついているという視点は、消費者として持っておく価値があります。

なぜ児童労働はなくならないのか|構造的な背景

「子どもに働かせるのはおかしい」と誰もが感じます。それでも児童労働がなくならないのは、個人の道徳の問題ではなく、複数の構造的要因が絡み合っているからです。

貧困の連鎖

最大の要因は貧困です。親の収入だけでは食費・医療費・住居費をまかなえず、子どもを働きに出さざるを得ない家庭が世界中に存在します。借金の返済を理由に子どもを担保代わりに働かせる「債務労働(Debt Bondage)」は、インドやネパールの農村部などで今も確認されています。さらに、子どもを雇う側の事業者にも「大人より安く使える労働力」という経済的動機があり、需要と供給が悪循環を形成しています。

教育環境の格差

発展途上国の一部地域では、公教育の質が低く実用的なスキルが身につかないため、子ども自身が「学校より仕事のほうがマシだ」と感じるケースも報告されています。学費・制服・教材費の負担が家計を圧迫することも就学を妨げる要因の一つです。コロナ禍での学校閉鎖はこの傾向をさらに強化しました。ユネスコによると、パンデミック期間中に世界で最大1億人以上の子どもが学習機会を失ったとされています。

紛争・気候変動・自然災害

紛争地域では、子どもが兵士として徴用されたり、避難中に人身売買の被害に遭ったりするリスクが高まります。また、気候変動による旱魃・洪水・食料不足は農村の貧困を悪化させ、家庭の経済的圧力を通じて間接的に児童労働を増やす要因になっています。ILOは気候変動と児童労働の関連性について警告する報告書を複数公表しており、今後の主要なリスク要因として位置づけています。

グローバルサプライチェーンの不透明性

多国籍企業のサプライチェーンは多層的で、下請け・孫請けの先まで監視が届きにくい構造があります。原料の産地からエンドユーザーの手元に届くまでに数十もの取引が介在するケースもあり、どこかの工程に児童労働が紛れ込んでいても発見が難しい現実があります。この透明性の欠如が、意図せず児童労働を支える経済構造を生み出しています。

日本政府と企業の取り組み

日本政府は、ODA(政府開発援助)を通じて児童労働の多い地域への支援を続けています。ガーナのカカオ産業では、カカオ農家の生産性と収入向上を目的とした「カカオ豆バリューチェーン海外事業」への資金・技術支援を実施してきました。また、2020年1月には「開発途上国におけるサステイナブル・カカオ・プラットフォーム」を設立し、企業・NGO・行政が情報を共有しながら産地の児童労働問題に対処する仕組みを整えています。

企業レベルでは、2023年に改訂されたG7のサプライチェーンガイドラインを受けて、日本の大手製造業・小売業が「人権デュー・デリジェンス(人権DD)」の実施体制を整備する動きが広がっています。経済産業省が2022年9月に策定した「責任あるサプライチェーン等における人権尊重のためのガイドライン」は、児童労働・強制労働の排除を具体的な対応項目として列挙しており、一定規模以上の企業にはサプライチェーン全体の人権リスク評価が求められます。

フェアトレード認証を取得した商品を扱う企業も増えており、フェアトレードジャパンによると認証商品の国内市場規模は年々拡大しています。フェアトレード認証は価格の公平性だけでなく、児童労働・強制労働の禁止を認証要件に含めており、消費者が製品を通じて間接的に監視に参加できる仕組みです。

消費者として日常でできる5つのアクション

国際機関や政府の取り組みは重要ですが、児童労働を支える経済構造を変えるうえで消費者の選択も無視できない力を持っています。以下は、今すぐ始められる具体的なアクションです。

フェアトレード・エシカル認証の商品を選ぶ

チョコレート・コーヒー・紅茶・バナナなど、産地の労働環境がリスクとして指摘される食品については、フェアトレードマーク・レインフォレスト・アライアンス認証・UTZなどの認証ラベルを目印にする方法があります。認証制度が完璧とは言えませんが、第三者機関が産地の労働条件を審査しており、何も見ずに選ぶよりも情報をもとに選ぶ姿勢を持てます。

企業の人権方針を調べる

スマートフォン・衣料品・コスメを選ぶ際、メーカーが「人権デュー・デリジェンス報告書」や「サプライチェーン透明性レポート」を公開しているかを確認する習慣を持つことが、企業への間接的なプレッシャーになります。日本では経産省ガイドライン施行後、大手企業が開示を進めており、各社のサステナビリティページで参照できます。

信頼できる団体へ寄付・支援をする

国際NGOへの寄付は、現地で活動する支援者の継続的な活動を支える直接的な方法です。ユニセフ・ACE(アクト・アゲインスト・チャイルド・エクスプロイテーション)・ワールド・ビジョン・ジャパンなど、児童労働に特化した支援プログラムを持つ団体が日本語で寄付を受け付けています。月数百円からのマンスリーサポーターとして参加できる仕組みも整っています。

SNSで現実を共有する

ILOが呼びかける「レッドカードアクション」では、専用カードをダウンロードして #STOPCL のハッシュタグをつけてSNSに投稿することで、児童労働への関心を周囲に広げることができます。SNSの発信は一人ひとりのリーチは小さくても、積み重なることで企業・政府への社会的圧力に変わります。

不用品を寄付・適切にリサイクルする

着なくなった衣類や本は、査定額が支援活動への寄付に充てられるサービスを通じて手放す方法があります。また、スマートフォンなどの電子機器を適切にリサイクルすることは、採掘需要の抑制につながり、間接的に採掘現場での児童労働を減らす方向に働きます。「捨てる前に寄付かリサイクルを検討する」という習慣は、ごみ減量と人権支援を同時に実現します。

まとめ|知ることが変化の第一歩

世界1億6000万人という数字は大きすぎて、実感しにくいかもしれません。でも、その一人ひとりに名前があり、好きな遊びがあり、夢があります。私たちとつながっているサプライチェーンの末端に、その子どもたちがいます。

児童労働を完全になくすのは簡単ではありません。貧困・教育・気候変動・紛争が複雑に絡み合っており、一つのアクションで解決できる問題ではないからです。それでも、消費の選択・情報の共有・寄付・企業への関心——これらの小さな行動が積み上がれば、構造を少しずつ変えていく力になります。

今日できることを、以下に整理します。

  • フェアトレード・エシカル認証のラベルを意識して商品を選ぶ
  • チョコレート・コーヒーなど産地リスクが高い食品の認証を確認する
  • スマートフォンや衣類メーカーの人権方針・サプライチェーン開示を調べる
  • ユニセフ・ACEなど児童労働支援に特化したNGOへ寄付を検討する
  • 不用品は廃棄より寄付・リサイクルを優先する
  • #STOPCLのハッシュタグでSNSから児童労働問題の認知を広げる

まず1つだけ、今日の買い物でラベルを確認してみてください。それが出発点になります。

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