食品ロスとは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。日本では2024年度に約461万トンの食品ロスが出ました。食品ロスが起きる原因は、家庭と企業とでかなり違います。原因ごとに対策を選ぶと、無理なく減らしやすくなります。
この記事では、農林水産省と環境省が2026年6月に公表した最新の推計をもとに、食品ロスが起きる原因を家庭と企業に分けて見ていきます。そのうえで、私たちが今日から取り入れやすい削減の方法をまとめます。
日本の食品ロスは今どのくらい?2024年度は461万トン
2024年度(令和6年度)の食品ロスは約461万トンで、前年度の464万トンから3万トン減りました。内訳は、食品関連事業者から出る事業系が237万トン、一般家庭から出る家庭系が224万トンです(農林水産省・環境省、2026年6月30日公表)。
数字を並べて見ると、変化の中身が分かります。2012年度は総量が643万トンで、事業系が331万トン、家庭系が312万トンでした。2024年度までに、事業系は94万トン、家庭系は88万トンほど減っています。一方で、2024年度は家庭系が前年度より9万トン減ったのに対し、事業系は6万トン増え、3年ぶりの増加になりました。全体は減少傾向にあっても、毎年きれいに右肩下がりになるわけではありません。
世界に目を向けると、国連環境計画(UNEP)の「Food Waste Index Report 2024」は、2022年に世界で約10億5,000万トンの食品が廃棄されたと推計しています。小売・外食・家庭に届いた食品の約5分の1にあたります。そのうち家庭からの廃棄は約6億3,100万トンで、全体の最大6割を占めると報告されています。食品ロスは先進国だけの問題ではなく、家庭の食卓が大きな発生源になっている点は、日本とも共通しています。
食品ロス問題の全体像をあらためて確認したい方には、次の記事が役立ちます。
企業で食品ロスが起きる原因|製造・小売・外食の事情
事業系食品ロス237万トンの内訳は、食品製造業が110万トン、外食産業が70万トン、食品小売業が48万トン、食品卸売業が9万トンです。最も多いのは製造業で、小売店の棚で捨てられる食品よりも、その手前の段階で出るロスのほうが量としては大きいことになります。業種ごとに、ロスが生まれる理由は異なります。
食品製造業は製造工程と返品が中心
食品製造業では、パンの耳のような製造工程で出る端材や、返品された商品が主な発生源です。環境省の食品ロスポータルサイトも、製造業の発生要因として製造工程でのロスと返品を挙げています。
見た目や大きさの規格に合わない食材が出荷されないことも、原因の一つになります。農産物の規格外については、次の記事で廃棄量や販売の動きを詳しく紹介しています。
卸売・小売では返品、納品期限切れ、売れ残りが重なる
食品卸売業と小売業では、返品、納品期限切れ、売れ残り、破損品が主な要因とされています。ここで大きく関わるのが「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習です。賞味期間の3分の1以内に小売店へ納品するという慣例で、この期限に間に合わなかった商品は、まだ十分に食べられても店頭に並ばず、行き場を失うおそれがあります。
また、欠品を避けるために在庫を多めに持つ店の事情もあります。品揃えの豊富さを期待する私たち買う側の感覚が、このロスの背景にあることも見逃せません。大手コンビニ各社がどのように値引きやAI発注に取り組んでいるかは、次の記事で比べています。
外食は食べ残しと仕込みロス
外食産業では、お客さんの食べ残しと、仕込んだものの使い切れなかった仕込みロスが中心です。来店数を事前に正確に読むのは難しく、予約が直前に変わることもあるため、店側の工夫だけでは減らしきれない部分があります。食べ残しは、注文の量を選べる私たち客側の行動でも変えられる領域です。
家庭で食品ロスが起きる原因|捨てられ方は3種類
家庭系食品ロスは、環境省の分類で「直接廃棄」「食べ残し」「過剰除去」の3つに分けられます。環境省が示す直近の内訳(令和5年度推計)では、直接廃棄が100万トン、食べ残しが97万トン、過剰除去が36万トンでした。この3つに分けて考えると、自分の家ではどこでロスが出ているかを見つけやすくなります。
直接廃棄は買ったのに使わなかった食品
直接廃棄は、賞味期限切れなどで使われず、手つかずのまま捨てられた食品です。家庭系の中で最も量が多い区分です。原因として多いのは、冷蔵庫や棚の在庫を把握しないまま買い物をすること、特売でまとめ買いをすること、冷蔵庫の奥で忘れてしまうことです。
食べ残しは作りすぎと食べ切れなかった分
食べ残しは、食卓に出た料理が食べ切られずに捨てられたものです。家族の食べる量が読みにくい日や、作り置きに飽きてしまう場合に起きやすくなります。食べ切れない分を小分けにして冷凍する方法があることを知らず、そのまま処分してしまうケースもあります。
過剰除去は食べられる部分まで取り除くこと
過剰除去は、皮を厚くむいたり、ヘタや芯を大きく切り落としたりして、食べられる部分まで捨ててしまうことです。量は3区分の中で最も少ないものの、調理中の無意識の習慣で起きるため、気づきにくい原因です。皮ごと使えるレシピに変えるなど、調理の工夫で減らせます。
食品ロスをめぐる3つの誤解と見落としがち
食品ロスの話では、「期限が過ぎたら捨てるもの」「家庭は関係ない」といった思い込みが、行動を止めてしまうことがあります。ここでは、読者の方が疑問に思いやすい点を3つ整理します。
賞味期限と消費期限は意味が違う
「賞味期限」は、袋や容器を開けない状態で、定められた方法で保存した場合に、おいしく食べられる期限です。期限を過ぎてもすぐ食べられなくなるわけではありません。一方の「消費期限」は、お弁当や生菓子など傷みやすい食品に付く、安全に食べられる期限です。こちらは期限を過ぎたら食べないほうがよいとされます。
この違いを知らずに、賞味期限が切れたものを一律に捨ててしまうと、直接廃棄につながります。賞味期限を過ぎた食品は、見た目やにおいを確かめたうえで、自分で判断することが大切です。
食品ロスは「食品廃棄物」すべてではない
食品ロスは、まだ食べられるのに捨てられるものを指します。魚の骨や卵の殻のように、もともと食べられない部分は含まれません。「家で生ごみが出るから、自分も食品ロスを出している」と感じて落ち込む必要はありません。ただし、本来は食べられた部分が混ざっていないかを一度見直すと、改善点が見つかります。
途上国と先進国では原因が違う
先進国では、買いすぎ、作りすぎ、期限表示や商慣習が原因の中心です。一方、途上国では、収穫後の保管や輸送の設備が整っていないために、消費者に届く前に傷んでしまうケースが多いとされています。同じ「食品ロス」でも、原因が違えば、効く対策も違ってきます。
食品ロスがもたらす影響|環境・飢餓・暮らし
食品ロスは、捨てる側の「もったいない」にとどまらない問題です。国連のニュースによると、世界では食品ロスと食品廃棄に関連する温室効果ガスが、世界の排出量の最大10%を占めると推計されています。食べ物は、育てる、運ぶ、作る、冷やすという過程でエネルギーを使うため、捨てれば、その分のエネルギーも無駄になります。
同じUNEPの報告は、世界では約7億8,300万人が飢餓に直面している一方で、大量の食品が捨てられていることを指摘しています。食べ物の量そのものよりも、行き渡る仕組みに課題があることが分かります。
日本でも、食品ロス削減はSDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」のターゲット12.3(小売・消費レベルの1人当たり食料廃棄を半減させ、生産・サプライチェーンの食品ロスを減らす)に関わる課題です。
国と企業の取り組み|2030年度の目標と商慣習の見直し
国は2025年3月25日に閣議決定した「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」で、2000年度比の削減目標を示しています。事業系は2030年度までに60%削減、家庭系は2030年度までに半減させ、2030年度より前の達成を目指す内容です。
2024年度の事業系食品ロスは、2000年度比で57%の削減になりました。60%の目標までには、まだ少し距離があります。家庭系も2024年度は2000年度比で約48%減と、半減の目標にかなり近づいています。
企業側の取り組みとして、農林水産省は「納品期限の緩和」と「賞味期限表示の大括り化」を進めています。納品期限の緩和は、先ほどの3分の1ルールの見直しにあたります。賞味期限の大括り化は、日付まで細かく示す表示を年月表示などに切り替え、納品や保管の管理を簡単にする工夫です。
毎年10月30日は「食品ロス削減の日」で、全国一斉商慣習見直しの日とされています。農林水産省は、この日に合わせて、納品期限を緩和する小売事業者の一覧などを公表しています。昨日がちょうどその日でした。「うちの店では緩和している」と各社が公表することで、商慣習を変える動きが広がっています。
私たちにできること|原因別に選ぶ食品ロスの減らし方
原因が分かれば、減らし方も選びやすくなります。環境省が紹介する行動をもとに、場面別に整理します。
買い物で直接廃棄を防ぐ
直接廃棄を減らすには、買い物の前の確認が効果的です。冷蔵庫の中身を見てから出かけ、足りないものだけをメモして買います。特売で買い込むときは、その日のうちに冷凍するかどうかも一緒に考えます。
調理と保存で食べ残しと過剰除去を防ぐ
食べ切れる分だけ作ることが基本です。余ったときは、冷凍や翌日のアレンジで食べ切ります。保存したものは忘れないよう、冷蔵庫の見える位置に置くのも一案です。皮やヘタの扱いに意識を向けるだけでも、過剰除去は減らせます。
外食や宴会での食べ残しを防ぐ
外食では、食べ切れる量を注文し、残った場合は持ち帰れるかを店に確認します。これから年末にかけて、宴会が増える時期です。乾杯後の30分と、お開き前の10分は自分の席で料理を楽しむ「3010運動」が、環境省などから紹介されています。
余った食品は寄付という選択肢も
まとめ
日本の食品ロスは、2024年度に約461万トンとなり、10年あまりで大きく減ってきました。ただし、事業系は前年度より増えており、減らす取り組みは続ける必要があります。企業では製造工程や返品、3分の1ルールなどの商慣習、外食の食べ残しが主な原因です。家庭では、買ったのに使わない直接廃棄と、食べ残し、過剰除去の3つが原因になります。
同じ食品ロスでも、原因によって効く対策は違います。冷蔵庫の在庫を見てから買い物に行く、食べ切れる量を作る、皮やヘタを厚く捨てない、外食では食べ切れる量を頼む、といった行動は、どれも原因に直接つながっています。
全部を一度に変えなくても大丈夫です。まずは次の買い物の前に、冷蔵庫の中を一度のぞいてみてください。
- 2024年度の日本の食品ロスは約461万トンで、事業系237万トン、家庭系224万トン
- 企業ではロスが製造業に最も多く、返品や3分の1ルールなどの商慣習が原因になる
- 家庭では直接廃棄、食べ残し、過剰除去の3つに分けると、減らす場所が見つかる
- 賞味期限と消費期限の違いを知ると、まだ食べられる食品を捨てずに済む
- 国の目標は、家庭系は半減、事業系は60%削減で、どちらも2030年度までの達成を目指す
参考文献
- 農林水産省「食品ロス量(令和6年度推計値)の公表について」(2026年)
- 環境省「令和6年度の食品ロス量の推計値について」(2026年)
- 環境省「食品ロスポータルサイト 食品ロスについて」(閲覧時点の最新版)
- 環境省「食品ロスポータルサイト 事業者向け情報」(閲覧時点の最新版)
- 農林水産省「食品ロス削減に向けた商慣習の見直し(納品期限の緩和)」(閲覧時点の最新版)
- UN News「With 783 million people going hungry, a fifth of all food goes to waste」(2024年)




