「食品ロス」という言葉が、テレビや雑誌などで取り上げられています。
カフェやスーパーなどでも“食品ロス削減のために”というポップを見かけることも増えました。
「食品ロス」とは、食べられるのに捨てられる食品を指します。
毎日、驚くべき量の食べられる食品が捨てられているのです。
しかし「食品ロスってどのくらい問題なの?」「なんで食品ロスが起きるの?」などと疑問に思っている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、食品ロスの現状や影響、そして食品ロスが起きる原因を説明します。
また、私たちが食品ロス削減のためにできることも紹介しているので、最後まで読んでみてください。
食品ロス問題とは?
「食品ロス」とは、まだ食べられるのに捨てられてしまう食品のことです。
最近になって耳にする機会が増えたため、新しい言葉のように思われがちですが、実は約30年前から「食品ロス」という言葉は使われています。
食品ロスは、日本のような先進国だけでなく、発展途上国でも多く発生しており、全世界で解決すべき問題の1つとなっているのです。
食品ロスの現状
世界では年間13億トンもの“まだ食べられる食料”が廃棄されています。
その量は、世界の食料生産量の3分の1に相当しており、私たちは自分たちで作った3分の1の食料を食べることなく捨てていることになります。
2018年度の集計では、日本での廃棄は年間約600万トンです。
日本の人口一人当たりの食品ロス量は年間約47kgで、毎日お茶碗1杯分の食料を捨てている計算になります。
「生活の中で食品を捨てることはない」という方もいるかもしれません。
しかし、24時間豊富な品揃えが期待されるコンビニやスーパーなどの「〇〇でなければならない」という認識が、食品ロスを生み出していると言えます。
参照元:食品ロス量(平成30年度推計値)の公表について|農林水産省
企業や家庭で食品ロスが起きる原因
日本での食品ロスの原因は大きく分けて2つあります。
・企業から出る食品ロス(事業系食品ロス)
・家庭から出る食品ロス(家庭系食品ロス)
年間約600万トンのうち、事業系食品ロスは約324万トン、家庭系食品ロスは約276万トンと報告されています。(2018年度集計)
どこから、これだけの食品ロスが発生してしまうのでしょうか?
なお、上記で「発展途上国でも食品ロスが起きている」と述べましたが、発展途上国での食品ロス発生の理由は先進国とは異なります。
発展途上国では、せっかく食べ物を作っても技術不足で収穫できなかったり、流通や保管環境が整っていないため、売られる前に腐ってしまうなどの理由が多いです。
ここでは日本における食品ロスの原因を見ていきます。
企業から出る食品ロスの原因
企業での食品ロス(事業系食品ロス)は、スーパーやコンビニなどの小売店において、多く発生しています。
小売店では、様々な商品がたくさん並べられている状態を保つために、多くの在庫を持ちます。
しかし、商品によっては売れなかったり、仕入れが多すぎて販売期限内に売り切れず、廃棄されてしまうのです。
2018年度の事業系食品ロスの内訳は、以下のとおりです。
- 食品製造業:126万トン
- 外食産業:116万トン
- 食品小売業:66万トン
- 食品卸売業:16万トン
日本では、食品製造業での廃棄が最も多いです。この理由として、高すぎる品質基準が挙げられます。
商品の見た目に高い品質基準が設けられていて、そのため、形やサイズ、重さなどが規格に合わない食品は、破棄されてしまうのです。
では、次に食品製造業における廃棄についてもう少し詳しく、①製造工程、②原材料、③販売工程の3つに分けて廃棄が起こる原因を見ていきます。
①製造工程
食品の製造工程では、まず最初の段階で野菜のくずなどが出ます。そして、本来食べられる食料においても、製造する機械のトラブルなどによって、商品にできないものが発生しています。
さらに、製造が完了して商品として出荷できるまでの段階で、規格外とされてしまったり、試作品としてもロスが発生しているのです。商品が完成すると、欠品対策のために多く作られた商品の余りが、また食品ロスとなっています。
②原材料
原材料は、生産計画に基づいて入荷することが基本ではありますが、計画どおりに生産されるとは限らない食材や、入手できる時期が限定されている食材などもあるので、予定が変更となる場合もあります。
そして、ある原材料が予定通りに入手できないという状況が発生したことによって、急遽予定していた商品の製造を中止しなくてはならないというような事態も起こっています。天候の影響による場合もあるので、避けることが難しいのが現状です。
③販売工程
販売工程では、欠品や品切れとなってしまうと販売する機会を失ってしまうため、ある程度多めに仕入れて一定程度の廃棄は仕方ないと考えられています。
また、新商品を開発されるときには、実際にどれほど売れるのかが予測できないため、ヒット商品とならなかった場合には、ここでも食品ロスが発生しています。
家庭から出る食品ロスの原因
家庭での食品ロス(家庭系食品ロス)の原因は、主に3つあります。
- 作りすぎによる食べ残し
- 調理しないままの破棄
- 食べられる部分も捨ててしまう
消費者庁が2017年に徳島県で行った調査では家庭系食品ロスの要因は、食べ残し57%、傷み23%、賞味・消費期限切れ11%という結果でした。
また、家庭で捨てられやすい食品は、多い順から主食(ご飯やパン、麺類)、野菜、おかずとなっています。
まず1つ目の、「作りすぎによる食べ残し」については、作った料理を家族が思ったよりも食べてくれなかった、たくさん作った料理を続けて食べることに飽きてしまったなどの状況で、廃棄につながっています。また、冷凍保存できることを知らないことが原因となる場合もあります。
料理のレパートリーが少ない場合、食べる人にとっては、どうしても味の変化が欲しくなるものです。作る人は、食べ切れることが予想できる料理だけをまとめて作る、作りすぎた場合は、2日目以降でひと手間アレンジを加えるなどの工夫をすることで、廃棄を防ぐことができます。
2つ目の、「調理しないままの破棄」は、食材を買った後そのまましばらく放置してしまい、傷んだしまったために廃棄するというケースです。これは、買い物をする前に、冷蔵庫の中身や食材のストックを把握できていないことが影響しています。食べきれない量・料理できないほどの量を買い揃えることが、破棄につながっています。
また、調理しないままの破棄では、「消費期限」と「賞味期限」の誤認識も食品ロスの要因の一つと言えるでしょう。「消費期限」は食べても安全な期限なのに対し、「賞味期限」はおいしく食べられる期間です。賞味期限を過ぎたからといってすぐに破棄するのではなく、自分で食べられるかどうかを判断することも大切です。
最後に3つ目の、「食べられる部分も捨ててしまう」は、過剰除去と言われます。食材の食べられる部分まで余計に取り除いてしまうケースです。具体的には、たまごを調理する時に白身の部分は使わないからといって捨てる、野菜の皮・ヘタ・芯などを大きく取り除く、鶏肉の皮や脂身を捨てる、などの状況です。
これらの行動は無意識にしている場合が多いですが、捨てられやすい部分にこそ、栄養がたくさん含まれている食材が非常に多いのです。調理をするときに「もったいない」という意識を持つだけで、かんたんに減らすことができます。
こちらで説明した、家庭での食品ロスの3つの原因・状況を理解しておくことは、家庭での食品ロスを減らす上でとても大切です。
参照元:暮らしに役立つ情報「もったいない!食べられるのに捨てられる「食品ロス」を減らそう」|政府広報オンライン
食品ロスによる影響
食品ロスが及ぼす影響は様々ですが、大きく分けて3つに分類されます。
- 環境問題
- 食糧不足
- 経済的損失
廃棄された食品は、焼却処分されます。その際に排出される二酸化炭素は、地球温暖化を助長します。
食品ロスが多ければ多いほど、地球温暖化を促進させてしまうのです。
また世界人口の9人に1人は飢餓に苦しんでいるという現状があります。
世界の食料援助量は2019年で年間約420万トンですが、なんとその1.4倍の量を日本では廃棄しています。
多くの食品を輸入しているにも関わらず、大量の食品ロスを排出しているという矛盾も生じています。
せっかく買った食品を食べずに捨てるのは、経済的にもよくありません。
SDGs「目標12.つくる責任つかう責任」での食品ロス
SDGs(持続可能な開発目標)では「目標12.つくる責任つかう責任」の中で食品ロスに触れられています。
12.3 世界全体の一人当たりの食料廃棄を半減させ、生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減らす
このターゲットを達成するためには、国や自治体だけでなく、個人、企業、NPO法人など様々な方の協力が欠かせません。
また、国は事業系食品ロスや家庭系食品ロスを2030年までに2000年比で半減するという目標を立てています。
2000年が事業系食品ロス547万トンだったのに対して、目標数値は約273万トンです。
私たちが食品ロス削減のためにできること
食品ロスを少しでも減らすために、私たちにできることはたくさんあります。
家庭系食品ロスの削減には、以下のような対策ができます。
- 食品を買いすぎない
- 食べられる分だけ作る
- 食品を使い切る
- 賞味期限をチェックする
冷蔵庫を確認してから買い物に行ったり、野菜などの皮の剥きすぎに注意するなど、普段の生活で少し意識すればできる事ばかりです。
また、外食時は食べきれる量を注文したり、食べきれない分は持ち帰ることも食品ロス削減に繋がるでしょう。
近頃は、持ち帰り用の容器(ドギーバッグ)が利用できる飲食店も増えています。
もし食べきれなければ、お店に聞いてみると良いかもしれません。
環境省から発行されている「自治体職員向け食品ロス削減のための取り組みマニュアル」では、各自治体の食品ロス削減の取り組みが紹介されています。
自分の住む地域や周辺の地域で、どのような取り組みが行われているかを知ることも大切です。
まとめ|食品ロスの原因を知り行動に移そう
日本は先進国の中でも食料自給率が低く、多くの食品を海外から輸入しています。
しかし、食品ロスが多いという現状は、一刻も早く解決しなければならない問題となっています。
今回、食品ロスの原因を企業と家庭でそれぞれご紹介しました。
全食料廃棄の半分近くを占める家庭での食品ロスに対して、上記でご紹介したように、私たちができる取り組みも様々あります。
いきなり食品ロスをゼロにするのは難しいでしょう。でも、一人ひとりが生活の中で少し意識するだけで、食品ロスは削減できます。
最後に紹介した「わたしたちにできること」を参考に、無理のない範囲で行動してみてはいかがでしょうか。