「SDGs」という言葉を耳にする機会が増えて来ました。
SDGsとは、未来のために「2030年までに世界中で協力して解決したい17つの目標」のことで、正式名称は「持続可能な開発目標」です。
2015年に国連で定められたSDGsですが、目標達成を目指そうとしても、思うように行かなかったり難しさを感じる方もいるのではないでしょうか?
今回は、SDGsが抱える問題とその解決策を解説していきます。SDGsの概要については下記のコラムをご覧ください。
SDGsの問題点とは?
SDGsが抱える問題点は大きく分けて3つあります。
・SDGsの理解度の低さ
・テーマが壮大すぎる
・数値の妥当性
それぞれの問題点を詳しく説明していきましょう。
理解度の低さ
日本におけるSDGs自体の認知度の低さが、問題点の一つとなっています。
2019年に世界フォーラムが行なった調査では、日本人の49%が「SDGsを聞いたことがある」と回答しています。
しかし世界平均の74%と比較すると、かなり低いと言えるでしょう。
義務教育で扱われ始めたことも影響して、若い方たちを中心にSDGsへの関心は高まりつつあります。
しかし依然としてSDGsの認知度は低い状態です。
テーマが壮大なため個人での解決は不可能
SDGsには「すべての人」「ゼロ」などという言葉が使われている目標があります。
以下のような目標が、これに当てはまります。
2.飢餓をゼロに
3.すべての人に健康と福祉を
4.質の高い教育をみんなに
7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに
10.人や国の不平等をなくそう
16.平和と公正をすべての人に
地球全体がSDGsを達成できるのが理想ですが、現実では難しいと考えられる目標もあります。
そしてこれらの目標は、決して個人の取り組みだけでは解決できません。
どんなに影響力のある人でも、事業の拡大や社会問題を訴えて広めていくには、多くの人の協力が必要です。
このように実現が難しい目標は、理想を掲げただけで終わってしまう恐れがあります。
数値の妥当性
SDGsには各目標に対して複数のターゲットが存在します。
ターゲットは、具体的な数値やどのように目標を達成するかを説明しています。
しかし、この数値の妥当性が疑問視されています。
「目標3.すべての人に健康と福祉を」のターゲット3.1では「2030年までに、世界の妊産婦の死亡率を出生10万人当たり70人未満に削減する」としていますが、なぜ70人未満なのかは説明されていません。
世界保険期間(WHO)の発表によると、2017年時点での妊産婦の死亡率は出生10万人当たり約216人でした。
「目標1.貧困をなくそう」ではターゲット1.1「2030 年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる」と定められています。
しかし1日1.26ドルで暮らす人々は支援の対象に入らないのではという声も上がっています。
企業がSDGsに取り組む際の問題点とは?
国や自治体だけでなく、多くの企業がSDGsに取り組んでいます。
ここからは、企業がSDGsに取り組む際の問題点を解説していきます。
SDGsウォッシュ
「SDGsに取り組むことが会社の常識」になりつつあります。
そこで気をつけないといけないのが「SDGsウォッシュ」です。
「SDGsウォッシュ」とは、SDGsに取り組んでいないにも関わらず、イメージアップや消費者へのアピールのために”SDGsに取り組んでいます”とアピールすることです。
実際は何の取り組みもしていないのにSDGsのマークや目標のアイコンを表示している行為も「SDGsウォッシュ」に当てはまります。
環境問題において、以前より「グリーンウォッシュ」という言葉が言われています。
これは、実際は取り組んでいないにも環境への配慮をアピールしたり、環境に悪影響のある事業は隠して環境に配慮した事業のみを伝えるという意味です。
「SDGsウォッシュ」は、このグリーンウォッシュと同じ文脈で使われるようになりました。
SDGsウォッシュであると判断されるとイメージダウンになるなど、社会的信用を失ってしまうようです。
事業内容によってはSDGsを取り入れにくい
先ほど説明した「SDGsウォッシュ」になってしまう原因には、事業がSDGsを取り入れにくいという問題が挙げられます。
事業内容やビジネスプランに合っていないのに関わらず、無理矢理SDGsを取り入れようとしてしまうと、見た目だけのSDGsになってしまったり、本業がおそろかになってしまう可能性があるのです。
また異なる価値観や理念とSDGsを組み合わせようとすると、必ず方向性のブレが生じてしまいます。
事業内容や企業方針によってSDGsを取り入れられないのが、企業にとっては問題点となってしまうでしょう。
社内での認識にズレがある
「SDGsとCSRの違いが分からない」という企業や社員が多くいることも、企業にとっての問題の1つです。
SDGsは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」で、CSRは「Corporate Social Responsibility(企業の社会的責任)」の略です。
SDGsは「ビジネスを通して社会をよくする」ことなのに対し、CSRは「社会のためのボランティアする」という考え方です。
例えば、SDGsの取り組みとして「利益の一部で植林をする」ことにしたとしましょう。
しかし、もし利益がなくなってしまったら植林活動は行えず、継続はできません。
つまり、この植林はボランティア(CSR)となりSDGsの取り組みではないと言えます。
この違いを理解していないと「CSRを行なっているのに、なぜSDGsにも取り組まないといけないのか?」という不満が出てきてしまうのです。
SDGsの問題を解決するには?
どうすれば、SDGsが抱える問題点を解決できるのでしょうか?
そのためには以下の3つの方法が挙げられます。
・SDGsについて話し合う
・目先の利益だけでなく長期スパンで考える
解決策1.SDGsの意味や背景を理解する
「SDGsが流行っているから」という感覚で取り組むと、継続できなかったり、企業の場合はSDGsウォッシュになりかねません。
SDGsの意味や背景を深く知り、問題意識を持って取り組むようにしましょう。
政府が出しているガイドラインを読んだり、企業であれば社内研修を行うことで、SDGsに関する理解を深めることができます。
参照元:SDGsとは?|JAPAN SDGs Action Platform|外務省
解決策2.SDGsについて話し合う
自分だけが理解したとしても、SDGsの目標達成は難しいでしょう。
なぜならどの目標も1人だけで達成できるものではないからです。
もしかしたらSDGsに対する自分の認識が、違う方向に向いているかもしれません。
周囲の人にSDGsを知ってもらったり、認識のズレをなくすためには「SDGsについて話し合うこと」が大切です。
自分が気になっている目標や、SDGsについて自分が心がけていることを話し合ってみましょう。
企業においても、社内コミュニケーションはSDGsの理解や取り組みの継続を進めていくためには重要です。
SDGsの企業行動方針をまとめた「SDGsコンパス」というものがあります。
これは、国際的NGOのGRI、国連グローバル・コンパクト、国際企業で構成される組織WBCSDの3者によって作成され、企業がSDGsに貢献できるための最終ステップが「報告とコミュニケーションを行う」です。
SDGsコンパスでは、SDGsに関する進捗状況の定期的な報告・コミュニケーションが重要だとしています。
解決策3.目先の利益だけでなく長期スパンで考える
SDGsで定められた目標は、短期間で達成できるものではありません。
そのため、一時的に取り組んで終わりにするのではなく「未来への投資」として長期的なスパンでSDGsに取り組む必要があります。
10年後の未来を想像し、自分がどんな世界に住みたいのか、将来の子供達にどんな環境で育ってもらいたいのかを考えてみましょう。
2019年5月に経済産業省から出された「SDGs経営ガイド」も参考にしてみてください。
まとめ
SDGsの認知や取り組みは、年々増加しています。
その一方で、SDGsは様々な問題点を抱えているのも事実です。
2020年からの10年は「行動の10年」と呼ばれており、少しでも早く行動を起こすことが重要です。
しかし、誤った認識や十分な理解のないままSDGsに取り組んでも、継続できなかったりSDGsウォッシュになってしまったり、方向性にズレが生じてしまいます。
個人や企業がSDGsの意味を理解し、長期的なスパンで行動することが目標達成への方法と言えるでしょう。