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スマートシティの課題とは?デメリットを克服して目指すSociety 5.0 実現の場

スマートシティの課題とは?デメリットを克服して目指すSociety 5.0実現の場

スマートシティの課題とは、一言でいえば「便利さを支えるデータとシステムを、誰が守り、誰が使い方を決め、誰が払い続けるのか」という問いです。スマートシティは、先進的技術で都市や地域の機能・サービスを効率化・高度化し、課題の解決と新たな価値の創出を図る取組で、Society 5.0の先行的な実現の場と位置づけられています。この記事では、プライバシー、サイバー攻撃、データの独占、費用対効果という4つのデメリットを取り上げます。日本の自治体の実例と国の最新資料から、克服に向けて何が動いているかを確認し、住む側がどこを見ればよいかまで整理します。

この記事で学べること

  • スマートシティの4つの課題が、それぞれどこで起きやすいか
  • 加古川市と会津若松市の実例から見る、プライバシーの守り方の違い
  • 国のガイドラインや資料で、課題の克服がどう進んでいるか
  • 自分の住む街で確かめられる5つのチェックポイント

スマートシティの課題はなぜ生まれるのか|4つのデメリットの全体像

スマートシティの課題は、機器の性能そのものより、データがどう集まり、誰の手に渡り、誰が責任を負うかという「流れ」の部分に現れます。4つの課題を最初に地図として並べておくと、以降の節が読みやすくなります。

4つの課題は「データの流れ」のどこかに対応する

カメラやセンサーでデータを集める段階では、プライバシーが問われます。データを街全体でつなぐ段階では、サイバー攻撃やシステム停止が問題になります。データを預かり、使う段階では、特定の企業や組織への集中が論点です。サービスを続ける段階では、運営費を誰が負担するかという費用対効果が問われます。

どれか1つを解決すれば済む話ではなく、1つが弱いと住民の信頼が崩れ、ほかの3つの対策も意味を失いやすくなります。

国の支援は広がり、論点は「導入」から「続け方」へ移っている

スマートシティ官民連携プラットフォームの会員・オブザーバー数は、2026年3月18日に1,000団体を超えたと発表されています。内閣府はスマートシティリファレンスアーキテクチャ(街のデータ連携の設計図)を更新し続けています。第4版を2025年5月23日に、第5版を2026年3月11日に公表しました。

国土交通省も2026年5月26日に、スマートシティ実装化支援事業の効果検証に対する評価と考察を公表しています。取組の数を増やす段階から、成果を検証して続けられる形に整える段階へ、議論の重心が移っていることがうかがえます。

課題を知ることは、スマートシティを否定することではありません。弱点を先に言葉にしておくほど、住民に信頼される設計に近づくからです。

プライバシーの課題|カメラとデータをどこまで許せるか

交通の流れを読む、子どもを見守る、災害時に避難を誘導する。こうしたサービスはどれも、人の位置や行動に関するデータを前提にします。便利さと引き換えに何を差し出すのかを、街ごとにどう決めているのかを見てみます。

加古川市|条例でルールを決めて見守りカメラを運用する

兵庫県加古川市は、市が設置する見守りカメラについて「見守りカメラの設置及び運用に関する条例」を制定し、画像データの扱いを条例で定めています。総務省の資料によると、条例第9条に基づく画像データの外部提供件数は、2017年度(平成29年度)の9件から、2021年度(令和3年度)には999件へ増えました。

提供は犯罪捜査のために必要な場合や、生命・身体・財産の保護のために緊急かつやむを得ない場合に限られ、加古川警察署とは2018年1月に協定を結んでいます。件数が資料で確認できるのは、条例という公のルールの下で運用されているからだと読めます。一方で、見守りの効果と記録が広く使われることの間には、住民が考え続けるべき緊張関係もあります。なお、ここで示した数値は2021年度までの実績で、それ以降の最新値は市の公表資料で確認が必要です。

会津若松市|市民が自分で同意するオプトインを前提にする

福島県会津若松市は、市民中心のオプトイン(事前承諾)を前提にスマートシティを進めてきたと紹介されています。都市OSと呼ばれるデータ連携基盤を使い、ヘルスケア、行政、観光、防災、決済、食・農といった分野でサービスを提供しています。

データを特定の民間企業に直接預けず、地元の産官学が参画する法人が運営に関わる形がとられていると報じられています。「自分のデータを何に使うかを自分で選べる」ことが、データ提供への安心感を支えるという考え方です。

国が示す道具「PIA」で、実施前にリスクを見積もる

内閣府は2025年4月に、データ利活用でPIA(プライバシー影響評価)をルールや仕組みにする際の検討ポイントを示しました。PIAは、個人のデータを使い始める前に、取得から廃棄までの各段階のリスクを分析し、対策を準備する手法です。

検討の観点として、評価の対象やタイミング、評価体制、評価基準、結果の公表などが挙げられています。加古川市の「条例でルール化する」方法と、会津若松市の「本人の同意を前提にする」方法は、どちらか一方が正解というより、サービスの性質に応じて組み合わせる選択肢と考えるのが現実的です。

サイバー攻撃とシステム停止の課題|つながるほど止まったときの影響が大きい

交通、防災、行政手続きが同じ基盤でつながる街では、1か所の不具合が思わぬ範囲に波及します。これは「つなぐこと」で得られる価値の裏側にある性質です。

国はガイドラインで守り方を整理している

総務省は、スマートシティのセキュリティ対策の考え方を「スマートシティセキュリティガイドライン」としてまとめています。第3.0版の案については2024年4月に意見募集が行われました。このガイドラインは、内閣府が定めるスマートシティリファレンスアーキテクチャを前提としており、第2版(2023年8月公表)を踏まえた改定とされています。スマートシティで扱うデータの種別を整理する記載も新設されました。

どのデータが漏れると何が起きるのかを、種類ごとに考える足場が整えられつつあるということです。

「止まらない」より「止まっても戻せる」を設計に含める

攻撃や災害を完全に防ぐことは現実的ではありません。そのため、バックアップの確保、重要サービスだけを手動や紙で動かせる代替手順、復旧の訓練といった「止まったときの備え」が、設計に含まれているかが重要になります。住民から見えにくい部分ですが、街の説明資料に停止時の対応が書かれているかは、確認できる手がかりです。

また、街の基盤は複数の事業者の機器やソフトウェアで成り立つため、1社の弱点が全体の弱点になりえます。事業者を選ぶ段階から、セキュリティの要件を契約に入れておく発想が欠かせません。

データの独占と費用対効果の課題|誰が担い、誰が払い続けるのか

プライバシーや安全の問題は「起きたとき」に気づきやすい一方、データの集中と費用負担は、静かに進んでから問題になります。この2つは、街が長く続くかどうかを左右します。

データが一社に集まらない設計を選ぶ

データを預かる主体が単一や少数になると、外部の目が届きにくくなり、利用が営利活動へ偏るおそれがあります。対策として、運営法人に自治体や地元団体が加わること、データ連携基盤を共通の仕様で作り、事業者を乗り換えやすくすることが挙げられます。

内閣府がリファレンスアーキテクチャを定めている背景には、街ごとにばらばらに作るのではなく、共通の設計で他地域にも広げやすくする狙いがあります。

補助金が終わったあとの運営費を見込む

内閣府の分科会資料では、初期費用には補助金を使えても、運営費(ランニングコスト)を考えると回らなくなることがある、という趣旨の意見が出されています。データを活用するだけでは収益に結びつきにくい、という指摘もあります。

費用対効果が見えにくい理由は、効果が「渋滞の減少」「安心感」のように、金額に換算しにくい形で現れることにもあります。そのため、導入前に成果の指標(KPI)を決め、実装後に検証して公表する仕組みが重要です。国土交通省が実装化支援事業の効果検証を公表しているのは、その方向に沿った動きです。

実験都市と既存の街では課題の出方が違う|トヨタのWoven Cityと自治体型の比較

スマートシティと一口にいっても、ゼロから作る街と、すでに人が暮らす街とでは、同じ課題でも出方が異なります。比べて見ると、住民の同意の意味が分かりやすくなります。

トヨタは2025年9月25日、静岡県裾野市の東富士工場跡地で「Toyota Woven City」のオフィシャルローンチを行いました。同月から、トヨタ関係者とその家族数世帯が暮らし始めています。第1期(Phase1)では最終的に300名程度が暮らす予定で、一般のビジターの受け入れは2026年度以降とされています。

ここでは、住民は実証に参加することを前提に暮らし始めます。データの使い方に同意したうえで入居する形をとれるため、同意の設計がしやすい環境といえます。

一方、加古川市や会津若松市のような既存の街では、住民は最初から選んで暮らしているわけではありません。参加しない自由や、使わない人が不利にならないことを、後から整える必要があります。実験都市の知見を既存の街に持ち込む際には、この前提の違いを踏まえることが大切です。

自分の街で確かめたい5つのポイント|住民としてできること

スマートシティの課題は、専門家だけが扱うものではありません。自治体のウェブサイトや説明会の資料から、住民が確認できる観点があります。次の5点は、ここまでの内容をもとにした確認の目安です。

データの使い道が公表されているか

どのデータを、何のために集め、どれだけ保存するのかが示されているかを見ます。目的外に使わないことが条例や規約で書かれていれば、より確かな材料になります。

同意と撤回の仕組みがあるか

サービスの利用が本人の選択で、あとから提供をやめられるかを確認します。会津若松市のようなオプトイン型は、この点を設計の中心に置いています。

運営主体と外部の監視体制はどうなっているか

データを預かる組織が1社だけでないか、自治体や第三者が点検できる体制があるかを見ます。住民からの問い合わせ窓口が明記されているかも、手がかりになります。

止まったときの代替手段が示されているか

システム障害や災害のとき、主要なサービスをどう続けるかが説明されているかを確認します。紙や窓口での手続きが残されているかも重要です。

運営費の負担の見通しが語られているか

補助金が終わった後の運営費を誰がどう負担するのかが、説明に含まれているかを見ます。税金での負担か、利用料か、民間の収益かによって、住民の関わり方が変わります。

まとめ

スマートシティの課題は、プライバシー、サイバー攻撃、データの独占、費用対効果の4つに整理できます。どれも技術だけでは解けず、条例やオプトインのような社会のルール、ガイドラインや設計図のような共通の仕組み、運営費の見通しとセットで考える必要があります。加古川市の条例による運用、会津若松市の同意を前提にした設計は、同じ課題への異なる答えの例です。

国の側では、内閣府のリファレンスアーキテクチャの更新や、PIAの検討ポイントの提示、総務省のセキュリティガイドライン、国土交通省の効果検証などが進んでいます。課題への備えは、制度として少しずつ整えられている段階です。そのうえで、住民が目的・同意・監視・代替手段・費用の5点を見ておくことが、信頼できる街づくりを後押しします。

Society 5.0の「先行的な実現の場」としてのスマートシティは、弱点を隠さず、住民と一緒に点検し続ける街から育っていきます。まず1つだけ、お住まいの自治体のウェブサイトでスマートシティ関連のページを開き、データの使い道が書かれているかを探してみてください。

  • 課題は、プライバシー・サイバー攻撃・データの独占・費用対効果の4つに整理できる
  • 加古川市は条例で運用を定め、会津若松市はオプトインを前提にするなど、街ごとに守り方が異なる
  • 国はガイドラインやPIAの検討ポイント、効果検証で、課題への備えを整えつつある
  • 住民は、使い道・同意・監視体制・代替手段・費用の5点を確かめられる

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
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