認定低炭素住宅とは、都市の低炭素化の促進に関する法律(通称”エコまち法”)の要件を充たす住宅などの建造物のこと。
都市部における二酸化炭素排出量の削減を実現して、持続可能な社会を目指すことを目的として制度化されたものです。
現在、日本だけではなく、世界規模で「持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)」に向けた取り組みが進められています。
そして、SDGsで掲げられている17目標のうち、「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任 つかう責任」という2つの意味において、認定低炭素住宅は大きな役割を果たすものとして注目されています。
そこで、本記事では、認定低炭素住宅とはどのような内容の住宅なのか、低炭素建造物認定制度の概要・認定を受けるメリット・デメリットなどについて分かりやすく解説します。
人々の居住する生活基盤自体がSDGsに寄与するものになれば、加速度的に持続可能な社会の実現は近づくはず。
ぜひ最後までご一読ください。
参照元:
・都市の低炭素化の促進に関する法律|法令検索
・「エコまち法に基づく低炭素建築物の認定制度の概要」(国土交通省HP)
認定低炭素住宅とは
認定低炭素住宅とは、エコまち法で定める要件を充たし、かつ、自治体からの認定を受けた住宅のこと。
認定を受けるために必要な要件は、次の3点です。
・省エネ基準を充たす性能を有すること・低炭素化促進のための対策がとられていること
・エコまち法の基本方針に適合する建設計画であること
・低炭素化のための物件建設に係る資金計画が適切であること
特に、1つ目の要件の適合性が重要となるため、その基準等について詳しく見ていきましょう。
(低炭素建築物新築等計画の認定基準等)
第五十四条 所管行政庁は、前条第一項の規定による認定の申請があった場合において、当該申請に係る低炭素建築物新築等計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をすることができる。
一 当該申請に係る建築物のエネルギーの使用の効率性その他の性能が、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第二条第一項第三号に規定する建築物エネルギー消費性能基準を超え、かつ、建築物のエネルギー消費性能の向上の一層の促進その他の建築物の低炭素化の促進のために誘導すべき経済産業大臣、国土交通大臣及び環境大臣が定める基準に適合するものであること。
二 低炭素建築物新築等計画に記載された事項が基本方針に照らして適切なものであること。
三 前条第二項第三号の資金計画が低炭素化のための建築物の新築等を確実に遂行するため適切なものであること。
参照:都市の低炭素化の促進に関する法律
認定低炭素住宅の要件1:定量的評価項目(必須項目)
認定低炭素住宅として各種優遇制度の適用を受けるためには、定量的評価項目を充たさなければいけません。
いずれの認定低炭素住宅にも共通する要件となっています。
定量的評価項目は、次の2つの性能に注目する要件です。
・外皮の熱性能:断熱性指標である「外皮平均熱貫流率」・外皮の日射遮蔽性指標である「冷房期の平均日射熱取得率」によって算出
・一次エネルギー消費量:一次エネルギー消費量を省エネ基準より10%以上削減。
これらの要件充足は審査機関において技術的なチェックが行われるので、設計内容説明書・各種図面・計算書などを提出してください。(審査機関については、「一般社団法人 住宅性能評価・表示協会」よりお問い合わせください)。
認定低炭素住宅の要件2:選択的項目
認定炭素住宅として各種優遇制度の適用を受けるためには、定量的評価項目に加えて、選択的項目を2つ充たす必要があります。
以下の低炭素化に資する8つの措置のなかから2つをご選択ください。
・節水に資する機器を設置している(便器・水栓・食器洗い機)
・雨水、井戸水または雑排水の利用のための設備を設置している
・HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)またはBEMS(ビルエネルギーマネジメントシステム)を設置している
・太陽光等の再生可能エネルギーを利用した発電設備及びそれと連系した定置型の蓄電池を設置している
・一定のヒートアイランド対策を講じている(緑地面積が10%以上など)
・住宅の劣化の軽減に資する措置を講じている
・木造住宅若しくは木造建築物である
・高炉セメントまたはフライアッシュセメントを構造耐力上主要な部分に使用している
認定低炭素住宅は長期優良住宅よりも認定を受けやすい
認定低炭素住宅のように、税制上の優遇制度などが設けられている制度として、長期優良住宅制度があります。
「いいものを作り、手入れをし、長く大切に使いつづける」というストック活用型社会を実現するために設計された制度です。
「良い住宅を作る・住む」という意味では2つの制度は共通していますが、両者の認定基準は全く異なるものです。
たとえば、長期優良住宅制度を利用するためには、耐震性・維持管理の難易度・劣化対策・省エネ基準などの多数の基準を充たす必要がありますが(参照:「長期使用構造等とするための措置及び維持保全の方法の基準」)、認定低炭素住宅では「省エネ基準」「低炭素化措置」だけが掲げられます。
つまり、これから住宅を新築する場合には、認定低炭素住宅制度を活用した方が甘い認定基準で税制上の優遇措置等を受けられると考えられます。
参照元:
・長期優良住宅|国土交通省
・長期使用構造等とするための措置及び維持保全の方法の基準|国土交通省
認定低炭素住宅の認定を受けるメリット・デメリット
それでは、認定低炭素住宅制度を活用するとどのようなメリットが得られるのでしょうか。
あわせて、デメリットについても紹介するので、これからマイホームの建設等を検討している方はご参照ください。
認定低炭素住宅の3つのメリット
低炭素住宅の認定を受けるメリットは次の3つです。
・税制上の優遇を受けられる
・低金利の住宅ローンを組める
・生活環境が良い
それでは、各メリットについて、それぞれ具体的に見ていきましょう。
認定低炭素住宅のメリット1:税制上の優遇を受けられる
低炭素住宅の認定審査に通ると、各種税金における優遇措置を受けられます。
・住宅ローン減税:控除対象借入限度額5,000万円・最大控除額100万円
・投資型減税:性能強化費用の10%を所得税から減税
・登録免許税:保存登記・移転登記ともに0.1%相当額
また、同時に各自治体が定めている地域型住宅グリーン化事業等の補助金制度を活用できる場合があるので、経済的なサポート体制が充実したなかでマイホームを手に入れることができます。
認定低炭素住宅のメリット2:低金利の住宅ローンを組める
認定低炭素住宅の場合、フラット35S(金利Aプラン)の適用を受けるので、金利引き下げ期間10年の低金利条件(0.25%引き下げ)での融資を受けることができます。
ただし、11年目以降は通常金利になる点にご注意ください。
参照元:フラット35|住宅金融支援機構
認定低炭素住宅のメリット3:生活環境が良い
低炭素住宅の認定を受けることができれば、快適な環境で生活をすることができます。
低炭素住宅では省エネ基準以上の外皮の熱性能が定量的評価項目として求められるので、冬場は暖かく、夏場は遮熱性の恩恵を受けることに。
光熱費も抑えられるので、家計節約にも役立ちます。
認定低炭素住宅の2つのデメリット
地球環境への配慮をした低炭素住宅を増やすために各種メリット・サポート体制が整えられている一方で、低炭素住宅を建設する際には、次のデメリットにも留意する必要があります。
・建築コストが高くなる
・市街化区域にしか建築できない
住宅は大きな買い物ですし、簡単に買換えが出来るものでもありません。
今後の生活拠点となる大切なものであることから、デメリット面もしっかり考慮したうえで購入を検討しましょう。
認定低炭素住宅のデメリット1:建築コストが高くなる
省エネ性能などを完備した物件を建設するには、どうしても資材等にこだわる必要があるため、建築コスト・設備費用の負担が重くなります。
もちろん、月々の光熱費は抑えられますし、金銭的評価ができないほど快適な環境で生活できるというメリットは得られますが、中長期的な住宅ローン返済に耐えられるだけの経済力が不可欠でしょう。
認定低炭素住宅のデメリット2:市街化区域にしか建築できない
低炭素住宅は、市街化区域内でなければ認定を受けることができない点に注意が必要です。
なぜなら、エコまち法の趣旨は、「都市部における炭素排出量を削減すること」だからです。
元々炭素排出量の少ない地域において、行政側の施策として低炭素住宅を推進する意味はありません。
したがって、自分が住みたい場所ならどこでも低炭素住宅を建設できるというわけではありません。
希望する場所・地域が市街地区域に含まれるかを事前にご確認ください。
認定低炭素住宅でSDGsに貢献しよう
現在、世界中がSDGsに取り組んでいます。
まずは2030年までの達成目標を掲げ、国・企業が大規模な施策を実施しているという実情があります。
そして、SDGsに貢献できるのは、社会・国・会社という大きな存在だけではなく、地球で生活する人、一人ひとりの努力が不可欠です。
それぞれの住環境からSDGsに配慮したものを選ぶことによって、向こう数十年の日々の暮らしが持続可能な未来に役立つことになります。
認定低炭素住宅はまさに住まいの側面から環境問題に資するもの。
これからマイホームを建築するという方、大規模リフォームなどを実施するという方は、ぜひ認定低炭素住宅について専門窓口までご相談ください。