移民とは、生まれ育った国を離れ、他国に移動して住む人々を言います。
グローバル化が進む現代では、移民が普通のことになりつつあります。
その一方で、移民を受け入れる側や移民の人たちの間においても、さまざまな問題が引き起こされています。
ただし、移民自体にはデメリットだけではなく、多くのメリットもあります。
移民は必ずしもネガティブなキーワードではありません。
本記事では移民や移民問題について解説していきます。
移民のことをもっと知りたい、移民問題の解決を考えてみたいという方は、ぜひ本記事を参考にしてください。
移民とは?
移民とは、自分の意志で自分の国を離れた人です。
より多くの収入を求めたり、より高い職能を求めたり、自身や家族の幸せのために、意思をもって他国を目指して移動した人です。
国際連合広報センターによると、移民とは、
となっています。
国際的に移民は増加傾向にあり、2019年に2億7,200万人と、2010年から5,100万人増加しています。
日本では『移民』という言葉になじみがない人も多いと思いますが、『外国人労働者』や『外国人留学生』はたくさん日本に住んでいます。
日本政府として明確な『移民政策』は取っていませんが、その一方で『外国人の受け入れ』は拡大する方針となっています。
・国際移民は世界全地域で増大を続け、2億7,200万人に達する、と国連が予測(プレスリリース日本語訳)|国際連合広報センター
・外国人受け入れ拡大へ 改正入管法4月1日施行 5年間で34.5万人|日本経済新聞
移民問題とは?
移民問題とは、移民を受け入れることによって新たにもたらされる問題のことをいいます。
移民の中には、不法な入国や期限を過ぎた滞在をする人たちがいます。
これを不法移民といいます。
不法な入国が増えると、国同士の関係が悪化する原因にもなります。
不法移民は移住国において保護や権利も認められず、貧困に陥ったり、犯罪に手を染めてしまったりする場合もあり、母国に強制送還されたりします。
また、合法的な移民であっても、移住先の人たちや文化となじめずに確執を生んでしまったり、言葉の問題や生活の困窮が原因で低賃金の労働を強いられたりする場合もあります。
国際的に移民は増える傾向にありますので、移民問題も増えていく傾向が強まることでしょう。
難民とは?移民との違い
移民に似た言葉として、難民という言葉もあります。
難民とは自分の意思に反して、戦争や迫害、干ばつなどにより、やむを得ず他国に逃れた人のことを言います。
国連の定義によると、難民とは、
となっています。
引用元:難民とは|UNHCR日本
移民との違いは、自分の意思に反するやむを得ない事情で逃れている点です。
移民と難民の違い | 移民 | 難民 |
意思 | 自らの意思 | 自らの意思に反してやむを得ず |
理由 | 高い賃金や職能、生活の安定のため。 | 自分や家族の命を守るため。 迫害や差別などから逃れるため。 |
ここでは移民と難民はまったく異なる定義をしましたが、難民も『他国に移動して住む人』という広義では移民に含まれたり、『移民の中にも実質的には難民に近い人』もいたりします。
世界中に難民は7950万人もいるとされています(2019年末時点)。
そのうちの約40%が18歳未満の子どもであり、生命と安全の保護だけでなく、貧困や教育格差も大きな問題になっています。
参照元:|今さら⁉聞けない 難民問題、ポイント解説!|つながる世界と日本 JICA
難民が発生しないためのもっとも有効な手段は、戦争や内戦を防ぐことです。
紛争が起きると、その地域の生活や社会が破壊され、民族が分断され、憎しみが憎しみを生む悪循環に陥ります。
また多くの難民が生まれ、他国に流入し、新たな問題を引き起こします。
仮に紛争が終わったとしても、町や田畑、農場が破壊されているため、元の地域に戻ったり、新しい生活をやり直したりすることが困難です。
かといって、避難先の他国で生活を再建することも難しいことが多く、難民の支援も隅々までには行き届きません。
大切なのは、難民を保護すること以上に難民を発生させないことです。
そのためには、国際的な協力を強め、不幸な戦争や内戦を勃発させないことが重要です。
難民問題については以下の記事に詳しい解説があります。
ぜひ参考にしてください。
移民を受け入れるメリット・デメリット
私たち日本人はどちらかというと移民に対して、ネガティブでデメリットが多いイメージが強いかもしれません。
しかし、諸外国の多くは移民政策によって国が富み、共存共栄でますます発展しているところも多いです。
つまり、移民にはメリットも多くあるのです。
移民のメリット・デメリットについて解説していきます。
移民のメリット
移民には、多くのメリットがあります。
移民を受け入れることによって得られるメリットは、以下の5つです。
・グローバル化の促進
・イノベーションの創出
・人口増加による経済の活性化
・多様性のある社会の実現
それぞれを解説していきます。
労働力の確保・人手不足の解消
移民の多くは、若い労働者や学生です。
こうした人たちは自分や家族の幸せのために懸命に働く人が多く、勉強熱心でまじめな労働の担い手になってくれます。
特に日本では人口減少が進み、人手不足が深刻化すると予想されています。
『外国人労働者』を多く受け入れることは、日本の発展のためにも必要なことと考えられています。
グローバル化の促進
移民を受け入れることによって、海外でのビジネスチャンスが拡がったり、海外の事情に精通した人材が増え、グローバル化が促進されます。
世界第4位の貿易大国である日本は、より多くのビジネスチャンスを獲得するためにもグローバル化の促進が必須です。
イノベーションの創出
移民を受け入れることによって、ビジネスや社会に新しい考え方や文化が取り込まれます。
いままでは考えることができなかった革新的なアイディアが生まれることで、イノベーションが創出されます。
資源の少ない日本では、付加価値の高い製品やサービスで他国との差別化をしなければいけません。
そのためには、多彩なアイディアを結集したイノベーションの創出が欠かせないのです。
人口増加による経済の活性化
移民を受け入れることによって、人口の増加が期待できます。
移民の流入による人口増だけでなく、移民が子どもを生み育てていくことによっても人口が増えていきます。
人口が増えれば、経済は活性化していきます。
なぜなら、『ヒト』が増えれば、それに伴って『モノ』、『カネ』、『情報』の流通が増えるからです。
日本は深刻な人口減が予想されていて、2050年には総人口が1億人を切り、その後もますます減少していく傾向となります。
日本はこのままでは、人口減少による国際競争力の著しい低下が懸念されるのです。
多様性のある社会の実現
移民が増えることによって、人々の生活に新しい文化が取り込まれ、多様性のある豊かな社会が実現できるようになります。
民族や文化の違いを異質なものとして捉えるのではなく、多様性としてお互いに尊重し合い認め合うことは、偏見や差別のない世界を作るためにも大切なことです。
世界が取り決めた『持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)』においても、ジェンダー平等を実現したり、人や国の不平等をなくそうという項目があります。
多様性を知り、お互いを認め合うことは、差別や偏見をなくし、みんなが平等で尊厳のある生活を送るために極めて重要な考え方です。
参照元:SDGsとは? |総務省
移民のデメリット
移民を受け入れることには、デメリットも考えられます。
ここでは、下記の4つのデメリットを挙げました。
・治安の悪化や犯罪率の増加
・保障や権利の問題
・雇用を外国人労働者に奪われる
それぞれを解説していきます。
文化や風習の違いによる誤解や偏見
移民を受け入れることよって、異質の文化や風習が入ってきます。
移民同士がコミュニティを作ることも多く、既存のコミュニティと溶け込めなかったり、移民だけが社会から孤立することも考えられます。
移民や移民コミュニティが孤立すると、余計に誤解や偏見を持ちやすくなります。
異質な文化や風習への理解を深めるとともに、お互いの違いを尊重し合う努力が必要です。
治安の悪化や犯罪率の増加
移民が必ず犯罪を犯すわけではありません。
しかし、生活に困窮したり、異国でのストレスから、犯罪が増えることが予想されます。
なぜなら、移民によって若い労働力人口が増えれば、確率的に性犯罪や窃盗、傷害事件などの発生率も高まるからです。
移民を困窮させない社会の仕組みづくりや治安の強化も必要になります。
移民の犯罪については下記の記事に詳しい解説があります。
ぜひ参考にしてください。
保障や権利の問題
生活保護を必要する世帯が増えたり、不法移民の人権が守られなかったりする問題も考えられます。
移民が増えることによって、これまでの想定やシミュレーションにない社会構造の変化が起き、その対応に迫られることが考えられます。
移民をどのように受け入れ、どう守り、どう共存するのか、明確な移民政策を打ち出すことも必要になっていきます。
雇用を外国人労働者に奪われる
賃金の安い外国人労働者に、雇用を奪われるという問題も考えられます。それだけではなく、低賃金によるデフレや、失業率の上昇も懸念されます。
単純労働の分野だけでなく、専門領域における雇用も優秀な技能を持つ移民に奪われる可能性もあります。
移民の受け入れに関しては、下記の記事にも詳しい解説がありますので、ぜひ参考にしてください。
日本における移民の現状について
日本では、明確な『移民政策』を取らないスタンスを取っています。
単純労働者や難民が増えることは、受け入れのメリットが薄く、デメリットが大きく出てしまうことからと思われます。
日本は島国なので、大量の移民が国境を越えて押し寄せることがありません。
空港では厳しい入国審査がありますので、不法に入国することが難しいです。
ただし、『外国人労働者』や『外国人留学生』として受け入れた人が『不法移民』になってしまうケースは多く存在します。
令和2年7月1日現在の不法残留者数は8万2,616人となっています。
日本の現状については、下記の記事に詳しい説明があります。
ぜひ下記の記事も参考にしてください。
海外の移民事情
海外でも移民に関しては、いろいろな問題があったり、さまざまな政策を取っていたりします。
移民政策でうまくいっている国もあれば、深刻な問題を抱える国もあります。
各国の事情をまとめた記事がありますので、ぜひ参考にしてください。
まとめ 移民問題を考えよう
本記事では「移民とは?」について解説する共に、移民問題や難民との違いについて解説しました。
私たちに日本人は移民に対して、どちらかというとネガティブな印象を持ちがちです。
しかし、日本には多くの『外国人労働者』や『外国人留学生』がいます。
そして、その家族も含めると非常に多くの移民を受け入れている現状があります。
また、国際的に見れば移民の数は増加傾向にあり、グローバル化が進む現代では、ますます移民はスタンダードになりつつあります。
日本は人口減少社会になり、このままでは国力が低下する一方です。
かといって、過度な移民政策を取れば国民の多くが反発することが予想されます。
なぜなら、日本は島国文化であり、民族や文化の多様性を認め合うことに慣れていないからです。
しかし、グローバル化の波は止めることはできませんし、人口減少は日本の国際競争力をどんどん低下させます。
短期的なデメリットばかりに目を向けるのではなく、長期的なメリットが享受できるように移民について考えていくべきではないでしょうか?
他国の人々や文化を柔軟に受け入れ、イノベーションを起こして変化していくことが、日本の生き残りには必要かもしれません。
日本が未来を見据えて変わっていくためには、私たちひとり一人が移民についてもっと知ることが大切だと思われます。