2020年に、IRCC(カナダ移民省)は2021〜2023年にかけて120万人以上の移民を受け入れることを発表しました。
これまでも多くの移民を受け入れてきたカナダですが、ここへきてこれだけの移民の受け入れを決めた背景には何があるのでしょうか。
この移民計画の中には、日本人留学生についても含まれています。こちらの記事では、移民大国であるカナダの歴史を踏まえながら、この度の移民計画について触れていきましょう。
移民大国カナダとは
ここ近年、日本でも外国人の移民を受け入れて、共生するための社会が重んじられるようになっています。
これまでの日本に比べれば、非常に積極的に移民を受け入れているものの、日本人全体の人口からすれば、微々たる人数です。
都市部では外国人が普通に暮らしていますが、まだまだ山間部や地方では外国人は珍しい存在といっても過言ではありません。
しかし、カナダは伝統的に移民を受け入れている国です。そんな移民大国カナダとはどんな国なのでしょうか。
カナダの移民の人数
カナダでは、実に1500万人もの移民を受け入れている国です。これは、カナダの国民の5人に1人に当たると言われる人数であり、いかに移民が多く暮らす国かがわかるでしょう。
カナダで移民が多い根幹には、「移民が国の経済を豊かにしてくれる」という考え方があります。
基本的に、カナダが受け入れている移民は、祖国から逃れてきた「難民移民」の他に、「ファミリー移民」と呼ばれる結婚等に伴う移民や仕事を目的としてカナダに移住した「経済移民」です。
中でも、「経済移民」をカナダでは重視しており、定住に関しても積極的に促進しています。2017年には、28万人を超える移民の永住権を認めているほどです。
憲法で守られている多文化主義
実は、カナダでは憲法において多文化主義を謳っています。つまり、国を挙げて揺るぎない考えの一つとして多文化主義を掲げているのです。
この多文化の中には、海外から移住してきた移民の文化を尊重することも含まれています。
移民それぞれが持つ母国のカラーや文化を持ちながら、カナダの社会に馴染むことができる社会作りがなされているといっても過言ではありません。
もちろん、中には差別的なこともあるでしょう。しかし、国が持つ風潮として、人種や宗教、性別、障害に対する差別的な発言が認められない姿勢があります。
また、原住民としてカナダに暮らしていたインディアンに対して、税金の面で優遇しており、しっかりとした配慮がなされているのもポイントです。
2つの公式言語
また、カナダが移民大国であることが影響しているのが公式言語です。カナダの中でも移民が多く多文化主義を大切にしているエリアがケベック州です。
カナダ東部にある大きな州であり、アメリカの国境沿いには有名な大都市であるモントリオールが位置しています。
実は、ケベック州の公式言語は英語ではありません。基本的にカナダの公式言語は英語ですが、ケベック州ではフランス語が公用語として使われています。
例えば、交通標識も全てフランス語で表示され、英語は補足的に書かれています。年配の人の中には、フランス語しか話せない人もいるほどです。
この背景には、フランスが長くケベック州を支配していたことが挙げられます。そのため、今でも、フランス文化や言語を大切に守り続けているのです。
移住者向けの語学レッスンは無料
移民大国のカナダでは、移住者に向けた語学レッスンが充実しています。教材が豊富なのはもちろん、無料で受けられる点は大きなポイントです。
英語やフランス語を使わない国からの移民に対しても、すぐに公式言語を学ぶことができる環境が整っています。
カナダ移民増加計画について
2020年に発表されたカナダ移民増加計画は、カナダの歴史においても最多数の受け入れ体制です。
どのような理由やプランがあって、この移民増加計画が発表されたのでしょうか。一つずつ紐解いていきましょう。
移民増加計画のプラン
まず、IRCCでは、2020年に起こった新型コロナウィルスにより達成できなかった移民の受け入れ目標を、2021年から3年間で補うとしています。
また、移民全体における6割の移民カテゴリーを、Ecconomic(職歴や学歴を使用する)として申請できる方向です。
さらに、移民の新生プロセスやシステムはデジタル処理を導入し、よりスムーズな新生ができると言います。
移民増加計画の理由とは
カナダでは、日本と同じように少子高齢化が深刻な問題となっています。そのため、健康保険制度を支える力が弱くなることが見えており、働き手も減ってくる点も否めません。
カナダが移民を増やしていく背景には、カナダでの働き手を増やしていきたいという思いが込められています。
つまり、カナダの移民増加計画は、経済の回復や成長にターゲットを絞った計画というわけです。
新型コロナウィルスによる背景
カナダでも、新型コロナウィルスによる経済の低迷は深刻です。移民増加計画をする導入することで、経済回復にも繋がるとカナダでは考えられています。
医療制度も移民の素材が不可欠であり、その他の情報技術企業や農業においてビジネスの拡大を行ていくためには、移民が持つスキルや能力が欠かせないためです。
移民を増加することで、結果的にカナダ人の雇用を増やすことにもつながるでしょう。そのため、IRCCでは、パンデミックの最中でも移民の申請を受け付けていました。
しかし、世界的に渡航が規制されたことにより、思うような移民数を得ることができません。この不足を補うために、この度の移民増加計画が立ち上がったというのも理由の一つです。
とはいえ、カナダにおいても、健康や安全を守るためのセキュリティは最重要事項であり、国境におけるチェックは強化されています。
まとめ
日本に暮らしていると移民という言葉に触れることがあまりありません。そのため、移民大国であるカナダの常識は日本人にとって驚くべきものでしょう。
しかし、グローバル化が進みボーダレスな社会となりつつある地球において、カナダの動きは学ぶべき点が多いといえるのではないでしょうか。
特に、多文化を受け入れている姿勢は重要なポイントです。それぞれの祖国が持つ文化や心を尊重した上で、新たな地に馴染んでもらうための環境が整っているのは、移民にとって暮らしやすくありがたい点でしょう。
そして、もともと暮らしていた人たちへのリスペクトも含めて、カナダが作り上げた形は、大いに参考になるものです。