日本では、富裕層の資産が増える一方で、非正規雇用の若年層が貯金ゼロであることも珍しくありません。厚生労働省が2023年7月に公表した国民生活基礎調査(2021年実施)によると、日本の相対的貧困率は15.4%で、先進国の中でも高い水準にあります。この記事では、経済格差が生まれる原因と、国が進める対策についてわかりやすく解説します。
戦後最大に広がる日本の経済格差
現在、日本は戦後初めてともいえる富裕・貧困の二極化に直面しています。富裕層はその資産をますます増やしている一方で、団塊ジュニア世代以降の非正規雇用の人たちは貯金ゼロであることも少なくありません。
厚生労働省の国民生活基礎調査(2021年)によると、相対的貧困率は15.4%で、およそ6.5人に1人が相対的貧困状態にあるとされています。相対的貧困とは、等価可処分所得が中央値の半分に満たない状態を指し、2021年時点ではおおよそ127万円未満のラインとされています。
近年では「親ガチャ」「出生ガチャ」という言葉も一般化してきました。生まれる家と育つ環境が良くないと、努力だけでは上には行けないという意味です。日本においても格差が固定しつつあることを示す指摘があります。
日本の経済格差の原因
経済格差が生まれる要因はさまざまですが、代表的な原因を取り上げます。
バブル崩壊による団塊ジュニア世代の就職難
日本で格差社会という言葉が生まれ始めたのは、高度経済成長期以降のことです。それまでは、高卒あるいは大卒で一律に就職し、終身雇用制度で賃金も業界ごとに決まっていたため、格差が生まれづらい状況にありました。
1980年代末期にはバブル経済が到来し、企業はこぞって大掛かりな設備投資を行い、事業を拡大しました。一方、投資や不動産で巨額の富を得る人が現れます。しかし、1990年代に入りバブルがはじけると、大手金融機関の破綻や企業の倒産が相次ぎ、残った企業もリストラや採用の凍結を行いました。
ちょうどこのころ就職活動が重なったのが、人口ボリュームの多い団塊ジュニア世代です。ここから就職氷河期世代が始まり、リーマンショックの時にも再来しました。新卒で就職し、年次と共に給料が上がるという正社員としての収入ルートが途絶えたことが、少子高齢化へとつながっていく一因とされています。
労働者派遣法による非正規雇用の増加
企業にとって正社員を抱えることは、社会保険料や将来の給与・退職金なども含めるとコストがかかります。経済のグローバル化に伴い、企業は国際競争力を強めようと人件費を切り詰める方策を取り始めました。
2004年から労働者派遣法が改正されたことに伴い、就職難だった人々が非正規雇用になだれ込んだとされています。非正規社員は正社員と比べて収入が低いだけでなく、雇用の保証もされていません。正社員になれる人が少なくなったことが、格差を助長した一因といわれています。
日本は失業率が低いと言われますが、雇用の調整弁にされやすい非正規労働者の存在があってこそです。コロナ禍では職を失う非正規労働者が増加し、社会的な課題として注目されました。
少子高齢化
日本の出生率低下による少子高齢化も、格差を生む原因の一つとされています。本来であれば、人口ボリュームの多い団塊ジュニア世代以降が出生率を押し上げる予定でしたが、安定した仕事に就けず、結婚や出産を諦めた人も少なくありません。
若い世代が少なくなる一方で、年金を受け取ったり医療費がかかる高齢者が増えています。財源確保が難しくなり、社会保険料は右肩上がりです。正社員の職に就き家庭を築いていても、将来を考えると多くの子供をもうけることは難しいと感じる人も多いでしょう。
高齢者については、利率の高い時期に貯金をし、退職金を受領してきた層と、蓄えもなく仕事もなく困窮する層に分かれており、世代内の格差も課題となっています。
産業構造の変化
技術革新によって産業構造が変化したことも、格差に拍車をかけているとされています。近年の急激なデジタル化による産業構造の変化は、社会の経済格差を大きくしたといわれています。デジタル産業の規模は拡大し、IT人材の需要と賃金は高くなっています。
これまで主流だった肉体労働は、デジタル化によってITの専門的な知識を持った人材が重宝されるようになりました。企業活動のデジタル化による効率化は良いことのように言われますが、その分、雇用は増えにくい側面もあります。相対的に肉体労働や単純労働を主としていた産業は規模の縮小や賃金の低下を余儀なくされ、格差が生まれた一因といえるでしょう。
日本の経済格差是正のために行われている対策
日本では、経済格差是正のためにどのような対策が行われているのでしょうか。主な取り組みを紹介します。
働き方改革
日本における所得の格差、特に正社員と非正規雇用の人たちの間の不平等を是正するために行われているのが「働き方改革」です。長時間労働の是正に加え、「同一労働同一賃金」により、非正規雇用による格差是正が盛り込まれています。
同一労働同一賃金は、同一企業内で正規雇用と非正規雇用の間に、基本給、昇給、賞与、各種手当、教育訓練、福利厚生などにおいて不合理な待遇差を設けることを禁止する制度です。
3つの教育無償化
3つの教育無償化とは、幼児教育の無償化、私立高校の無償化、大学などの高等教育の無償化のことです。世帯年収が低くて子どもに十分な教育を受けさせられないことは、未来の格差につながるため、教育費の心配をなくすための施策として実施されています。
幼児教育の無償化では、0歳から2歳までは住民税非課税世帯が対象、3歳から5歳までは原則全世帯が対象です。私立高校無償化は2020年4月からスタートし、年収910万円未満の世帯が対象で、年収590万円未満の世帯では実質無償化となります。高等教育では、授業料・入学金の免除・減額と給付型奨学金の支援が始まっており、世帯収入や資産の要件を満たす学生が対象です。
まとめ|格差縮小が日本経済の活性化の鍵
日本の格差は、諸外国のように莫大な富を持つ所得上位層が増えたことではなく、本来普通の暮らしを送れるはずの人たちが低所得者層に落ち込んだことから生じていると指摘されています。
厚生労働省の調査によると、相対的貧困率は1980年代から上昇傾向にあり、OECD加盟国の中でも高い水準です。格差が全く生じない社会はありませんが、貧富の差を縮めて、より多くの中間層を形成することが日本経済の活性化につながる鍵といえるでしょう。一人ひとりができることとして、格差問題に関心を持ち、支援団体への寄付やボランティア参加、選挙での政策判断など、身近なアクションから始めてみてはいかがでしょうか。

