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日本の経済格差とは|原因と対策をわかりやすく解説

日本の経済格差とは?原因と対策について

日本の経済格差とは、所得や資産の差が、世帯の構成や世代、働き方によって大きく開いている状態を指します。厚生労働省の2025年国民生活基礎調査(2026年7月公表)では、2024年の相対的貧困率は15.0%で、前回調査の15.4%から0.4ポイント下がりました。それでも6〜7人に1人が貧困線を下回り、ひとり親世帯では44.7%に上ります。この記事では、最新の数字の読み方、格差が広がった原因、国の対策がどこまで届いているのかを順に見ていきます。

この記事で学べること

  • 2026年7月公表の最新データで見る、日本の貧困率とジニ係数の読み方
  • 非正規雇用や少子高齢化など、格差が広がった4つの原因
  • 最低賃金・同一労働同一賃金・教育無償化といった国の対策と、届きにくい「すき間」
  • 知る・支える・選ぶの3方向で、今日からとれる行動

日本の経済格差の現在地|貧困率は下がっても「苦しい」が増えている

経済格差の大きさを測る代表的な指標が、相対的貧困率です。ここでは、2026年7月に公表された最新の調査結果と、数字だけでは見えにくい生活実感のずれを整理します。

相対的貧困率15.0%、子どもの貧困率は11.0%

相対的貧困とは、等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態を指します。等価可処分所得は、世帯の手取り収入を世帯人数の平方根で割って求める、世帯規模をそろえた所得です。食べるものや住む場所に直ちに困る絶対的貧困とは違い、その社会の標準的な暮らしから大きく離れてしまう状態を捉える考え方です。

2025年国民生活基礎調査によると、2024年の相対的貧困率は15.0%で、2021年の15.4%から0.4ポイント低下しました。17歳以下の子どもの貧困率は11.0%で、前回の11.5%から0.5ポイント下がっています。一方で、ひとり親世帯の貧困率は44.7%と、2人に1人に迫る水準が続いています。

相対的貧困と絶対的貧困の違いを、もう少し丁寧に確認したい方は次の記事もあわせてご覧ください。

数字は改善しても、生活実感は厳しいまま

同じ調査では、生活が「苦しい」と答えた世帯が全体の55.4%でした。母子世帯では8割を超え、前回調査の75.6%から上昇したと報じられています。相対的貧困率は所得の中央値を基準にした指標です。物価が上がって社会全体の所得の水準も動くと、貧困率がほとんど変わらなくても、買えるものが減って苦しさが増すことがあります。

子どもの貧困率が下がったのは前進です。ただ、貧困率だけで「改善した」と判断すると、物価上昇の影響を受けやすい世帯の状況を見落とします。支援団体からも、貧困率に加えて、家計の負担感を含む指標で状況を捉えるべきだという指摘が出ています。

ジニ係数と資産で見る格差|再分配前は過去最大、再分配後は横ばい

所得の偏りを測るもう一つの指標が、ジニ係数です。0に近いほど平等で、1に近いほど一部の人に所得が集中していることを示します。ジニ係数は「どの段階の所得を見るか」で読み方が大きく変わるため、数字の意味を押さえておくと、報道の見出しに振り回されにくくなります。

当初所得と再分配後で、見える景色が違う

厚生労働省の令和5年所得再分配調査(2023年7〜8月実施)では、税や社会保障による再分配の前の「当初所得」のジニ係数が0.5855で、前回調査から0.0155ポイント上昇しました。報道では、統計開始以来の最大値とされています。一方、年金などの社会保障や税による再分配後のジニ係数は0.3825で、前回比0.0012ポイントの上昇にとどまり、平成11年調査以降は0.38前後で横ばいが続いています。再分配によって格差が縮まる割合を示す改善度は34.7%でした。

再分配前の数字が大きく上がった主な要因は、高齢化とされています。年金で暮らす世帯は、働いて得る当初所得が少なくなります。そのため、再分配前のジニ係数の上昇を「現役世代の格差が過去最大になった」とそのまま読むのは正確ではありません。ただし、再分配後が横ばいだからといって、現役世代やひとり親世帯の厳しさが解消したわけではありません。

資産は平均値と中央値で大きく違う

資産の差も見ておく必要があります。金融経済教育推進機構(J-FLEC)の2025年調査では、二人以上世帯の金融資産保有額は平均1,940万円、中央値720万円で、いずれも調査開始以来の最高額でした。平均値は一部の多額の資産を持つ世帯に引き上げられるため、中央値との間に大きな開きが生まれます。

この調査の金融資産は、日常の出し入れや引き落としに備える預貯金を含まない定義です。一般に言う「貯蓄」とは範囲が異なる点に注意してください。それでも、平均値だけを見ると実態より豊かに映りやすいこと、中央値付近の世帯でも老後や教育費への備えには余裕が限られることは読み取れます。

日本の経済格差が広がった4つの原因

経済格差は、一つの原因で生まれたものではありません。雇用の変化、人口構成、産業の変化が重なって、少しずつ形づくられてきました。ここでは4つに分けて、時間の流れに沿って見ていきます。

バブル崩壊後の就職難と就職氷河期世代

1980年代末のバブル経済のあと、1990年代に入ると金融機関の破綻や企業の倒産が相次ぎました。生き残った企業も採用の凍結やリストラに踏み切ります。この時期に就職活動を迎えたのが、人口の多い団塊ジュニア世代を含む就職氷河期世代で、リーマンショック後にも同様の就職難が再び起きました。

新卒で正社員になり、年次とともに賃金が上がるという道筋に乗れなかった人が多く、その影響は現在40〜50代にあたる世代の収入や貯蓄、結婚・出産の選択にまで及んでいます。

労働者派遣法の改正と非正規雇用の拡大

企業が人件費を抑えようとする流れのなかで、2004年の労働者派遣法の改正により、製造業への派遣が解禁されました。以降、非正規雇用で働く人が大きく増えました。総務省の労働力調査(2025年平均)では、役員を除く雇用者5837万人のうち、正規が3708万人、非正規が2128万人で、非正規は約36%を占めます。

ただし、状況は少しずつ変わっています。2025年7〜9月期には、非正規の割合が36.2%と前年同期から0.5ポイント下がり、正規の職員・従業員は10期連続で増加しました。非正規が減り始めた背景には人手不足があり、雇用の質の改善がどこまで進むかは、賃金や待遇の変化を見て判断する必要があります。

少子高齢化と世代内の格差

安定した仕事に就けず、結婚や出産を先送りにした人が多かったことも、少子化を加速させた一因とされています。若い世代が減る一方で、年金や医療費を必要とする高齢者が増え、社会保険料の負担は重くなっています。

高齢者のなかでも、利率の高い時期に貯蓄を積み上げ、退職金を受け取れた人と、蓄えも仕事もなく生活に不安を抱える人に分かれます。世代間の差に加えて、同じ世代のなかの格差も課題です。

デジタル化による産業構造の変化

デジタル産業の拡大で、IT人材の需要と賃金は高まっています。一方、企業活動のデジタル化は効率を高める半面、雇用を増やしにくい面があります。肉体労働や定型的な事務を中心にしてきた産業では、規模の縮小や賃金の伸び悩みが起こりやすく、職種による収入の差が広がる一因になっています。

誤解されやすい3つのポイント

格差の話題は、数字の一部だけが切り取られて広まりやすいテーマです。検索で出会う情報を読み解くうえで、とくに混同されやすい3点を整理します。

「ジニ係数が横ばいなら問題ない」とは言えない

再分配後のジニ係数が0.38前後で安定していることは、年金や税制が一定の役割を果たしていることを示しています。ただし、ジニ係数は社会全体の分布の偏りを一つの数字にまとめた指標です。ひとり親世帯の貧困率が44.7%に及ぶこと、母子世帯の8割超が「生活が苦しい」と答えていることは、全体の数字には表れません。指標は、全体を見るものと、特定の層を見るものを併せて読むのが基本です。

非正規で働く人が全員、望まない働き方をしているわけではない

非正規の人数だけを見て「非正規は問題だ」と一括りにするのも正確ではありません。労働力調査(2025年平均・詳細集計)では、非正規で働く主な理由として最も多いのが「自分の都合のよい時間に働きたいから」で、757万人でした。育児や介護、学業と両立するために、あえてその働き方を選ぶ人もいます。

一方で、正社員の仕事が見つからないまま非正規で働く人がいること、同じ仕事でも待遇差が残りやすいことも事実です。問題の中心は雇用形態そのものではなく、選べる選択肢の少なさと、待遇や雇用の不安定さで生活が成り立たなくなる状況にあります。

「親ガチャ」という言葉が示しているもの

「親ガチャ」「出生ガチャ」という言葉が広がった背景には、家庭の経済状況が、進学や就職の選択肢に影響するという実感があります。努力に意味がないという意味ではなく、スタートラインの差を社会がどこまで埋められるかという問いだと受け止めるほうが、実態に近いでしょう。

格差が世代を超えて続くと、働く意欲や将来への期待が弱まり、消費や納税の担い手の減少を通じて社会全体の力にも響きます。格差が社会に及ぼす影響については、次の記事でも詳しく取り上げています。

国と自治体の対策|賃金・働き方・教育費の3方向

日本の格差対策は、大きく「賃金を底上げする」「働き方の待遇差を縮める」「教育費の負担を軽くする」の3方向で進められています。それぞれの内容と、直近の動きを確認します。

最低賃金の引き上げ

2025年度の地域別最低賃金は、全国加重平均で1,121円となりました。前年度から66円、率にして6.3%の引き上げで、目安制度が始まった1978年度以降で最大の上げ幅です。全都道府県で初めて1,000円を超えました。

一方で、最も高い東京の1,226円と、最も低い高知・宮崎・沖縄の1,023円との間には203円の差があります。政府は2020年代に全国平均1,500円という目標を掲げていますが、達成には2026年度以降もさらなる引き上げが必要とされています。

同一労働同一賃金

同一労働同一賃金は、同じ企業のなかで正規雇用と非正規雇用の間に、不合理な待遇差を設けることを禁じる制度です。基本給、賞与、各種手当、教育訓練、福利厚生などが対象で、2020年4月に大企業で、2021年4月に中小企業で適用が始まりました。

非正規で働く人は、正社員との待遇差の内容や理由について、事業主に説明を求めることができます。制度があるだけでなく、職場で実際に使われてはじめて待遇差の是正につながります。

教育費の負担軽減

幼児教育・保育の無償化は2019年10月に始まり、3〜5歳は原則全世帯、0〜2歳は住民税非課税世帯が対象です。高校では、公立高校の授業料(年額11万8,800円)への支援が2025年度から所得制限なしで始まりました。さらに2026年度からは、私立高校についても所得制限が撤廃され、支援の上限は全国の私立高校の授業料の平均額にあたる45万7,200円に引き上げられました。

大学などの高等教育では、2020年4月から、授業料・入学金の減免と給付型奨学金を組み合わせた修学支援新制度が始まっています。教育費の格差が進学機会の差を生み、将来の所得格差につながるという連鎖を断つための施策です。教育格差の原因や広がり方は、次の記事で詳しく扱っています。

対策が届きにくいのはどこか|制度の「すき間」

制度が整っても、必要としている人に届かなければ格差は縮まりません。ここでは、見落とされやすい3つの「すき間」を取り上げます。

申請しなければ届かない支援

高校の就学支援金は、入学後の申請が必要です。多くの支援制度は、本人や保護者が申請してはじめて受けられる仕組みになっています。制度の存在を知らなかったり、手続きの時間が取れなかったりすると、対象でありながら受け取れない状況が起こります。

忙しいひとり親世帯や、日本語に不慣れな世帯ほど、情報にたどり着きにくくなります。学校や自治体が手続きの案内を丁寧にすることが、制度の効果を左右します。

授業料以外の費用が残る

無償化の対象は授業料です。入学金、制服、教材、通学費などは自己負担のまま残ります。北海道新聞の報道では、私立高校に通う場合の初年度の自己負担額が、北海道内の平均で約25万円になるとされています。授業料が無償になっても、家計の負担がゼロになるわけではありません。

私立高校の授業料が支援の上限額を超える場合も、その差額は家庭が負担します。無償化の対象と範囲を、学校ごとに事前に確認しておくことが大切です。

地域によって賃金の水準が違う

最低賃金に203円の地域差があることは、同じ時間を働いても、住む地域で収入が変わることを意味します。都市部は賃金が高い一方で家賃も高く、地方は賃金が低い一方で車の維持費など別の負担がかかります。

そのため、全国一律の指標だけでは、各地域の暮らしやすさは測れません。自治体ごとの支援制度や、物価を踏まえた生活の実態を、あわせて見る視点が欠かせません。

私たちにできること|知る・支える・選ぶ

格差は大きな社会課題ですが、個人にも手がかりはあります。生活者として今日からとれる行動を、知る・支える・選ぶの3つに分けて挙げます。

使える制度を調べる

まず、自分や家族が使える制度を調べることです。小中学生の学用品費や給食費を支える就学援助、高校生向けの奨学給付金、ひとり親世帯向けの手当や貸付など、自治体の窓口やホームページで確認できる制度が複数あります。

対象かどうか分からない場合も、窓口で相談すれば案内してもらえます。身近に困っている人がいるときは、制度の名前と窓口を伝えるだけでも、支援につながる入り口になります。

地域の支援を支える

こども食堂やフードバンクなど、地域で食べ物や居場所を届ける活動は、寄付やボランティアで支えることができます。金銭の寄付だけでなく、食品や日用品の提供、活動の周知、イベントの運営の手伝いなど、関わり方は複数あります。

関わるときは、支援を受ける側を「かわいそうな人」として扱わず、同じ地域に暮らす隣人として接することが大切です。

職場と選挙で意思を示す

働いている人は、自分の職場の待遇を見直すところから始められます。パート・有期雇用の人は、正社員との待遇差について説明を求められます。管理職や経営者の立場なら、待遇差の理由を点検することが、人材の定着にもつながります。

選挙では、最低賃金、教育費、社会保障といった政策が、格差にどう影響するかを比べて判断できます。候補者や政党の公約を、貧困率や賃金の推移といった公的データと照らし合わせて読むと、見えるものが増えます。

まとめ

日本の相対的貧困率は2024年に15.0%と、前回の15.4%からわずかに下がりました。子どもの貧困率も11.0%に下がっています。ただし、ひとり親世帯の貧困率は44.7%と高く、生活が「苦しい」と感じる世帯は5割を超えます。数字の改善と生活実感の間には、まだ開きがあります。

格差の背景には、就職氷河期、非正規雇用の拡大、少子高齢化、デジタル化による産業構造の変化が重なっています。対策は、最低賃金の引き上げ、同一労働同一賃金、教育費の負担軽減と広がってきました。ただ、申請しなければ届かない支援や、授業料以外の費用、地域差といった「すき間」が残っています。

格差を考えるときは、平均値や一つの指標だけで判断せず、中央値や特定の層の状況もあわせて見ることが大切です。まず1つだけ、お住まいの自治体で使える教育や子育ての支援制度を調べてみてください。

  • 2024年の相対的貧困率は15.0%で、前回から0.4ポイント低下したが、ひとり親世帯は44.7%と高いまま
  • ジニ係数は再分配前が過去最大でも、主な要因は高齢化で、再分配後は横ばい
  • 格差の原因は、就職氷河期、非正規雇用の拡大、少子高齢化、産業構造の変化が重なったもの
  • 最低賃金や教育無償化は進んだが、申請の壁や授業料以外の費用が残る
  • 制度を調べる、地域の支援を支える、職場と選挙で意思を示すことが、個人にできる行動

参考文献

  • 記事を書いたライター
  • ライターの新着記事
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