「移民」というと、アメリカやヨーロッパ諸国のような人種の混ざった国で耳にする言葉というイメージが強いかもしれません。
なんとなく「移民」と聞くと、自分とは関係ないことのような気がしてしまう人も多いと思います。
この記事では、日本における移民の受け入れ態勢について、そして移民を受け入れることのメリットについてご紹介していきます。
少子高齢化が進む日本において、避けては通れない「移民受け入れ」について、考えていきましょう。
そもそも移民とはなんでしょうか?定義から理由まで
「移民」と聞くと、アフリカ大陸から小舟でヨーロッパへ向かう方々のようなイメージが頭をよぎる方も多いのではないでしょうか。
確かに正規ステップを踏むことができず、無理やり国境を渡る人もいますが、「移民」とはそれだけではありません。
具体的に、定義から移民となる理由まで確認していきましょう。
移民の定義とは?
漠然としたイメージしか湧きにくい「移民」という単語ですが、具体的にはどのような方々のことを指すのでしょうか。
国際連合広報センターによると、下記の通りとされています。
この定義で興味深いのは、「理由に関係なく、移住国の変更をした人」を指すという点です。
なんとなく「苦しい状況から命からがら逃げてきた人」というイメージの強い移民ですが、実は必ずしもそうではないということです。
移民となる理由は?
先の移民の定義によると、移民になる理由は限定されていません。
つまり、移民となる理由は、人によってバラバラということです。
・もっと良い教育を受けたいと思って、違う国に留学をしている人
・家族の仕事や教育の都合で、別の国に移動した人
「自発的に」「自分から選んで海外へ行く道を選んだ」という人も、移民にカテゴライズされます。
このようにポジティブな理由で移民になる人もいるということを念頭に置いておきましょう。
一方で、ネガティブな理由で海外に移動する人もいます。
こちらの方がイメージがつきやすいかもしれません。
・宗教上の理由などで、自国に住むことが難しくなってしまった人
このようなケースは、国際機関などがサポートしていたり、多くのNGO団体が介入していたりと話題になることが多いので、メディアなどで見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
間違えやすい難民との違い
「移民」という言葉と似ていて、混同してしまいがちなのが「難民」です。
難民とは、本人の意思とは関係なく、紛争や迫害などの理由が原因で、国境を越えざるを得なかった人のことを指します。
テレビの報道などで、紛争地域から家財道具を担ぎながら国境を跨ごうとしているシーンを見たことがある方も多く、こちらはイメージしやすいかもしれません。
移民という大きなカテゴリーの中に、「自発的に移民になった人」と「難民とならざるを得なかった人」が含まれているということです。
日本における移民の受け入れ状況
日本にいると、あまり「移民を受け入れる」というフレーズに出会うことはありません。
それもそのはず、日本は積極的に「移民受け入れ」をしているわけではありません。
その一方で、最近では買い物に出かけるとお店のスタッフが外国の方であることが増えたなと感じることはありませんか。
日本における「移民受け入れ」事情についてご説明していきます。
日本における外国人労働者受け入れの歴史
日本の移民政策を語るときに気を付けなければいけないのは、日本では「移民」と「外国人労働者」がしっかりと区別されているということです。
「移民」に対して積極的には門戸を開いていませんが、「外国人労働者」に絞って政策が進んでいるのが現状です。
日本の外国人労働者受け入れの歴史は意外と長く、バブル景気による人材不足を受けた頃から始まりました。
2012年には、高度な知識・技術をもつ外国人労働者を積極的に受け入れる「高度人材ポイント制」を導入。
さらに2019年には国内人材の不足を受けて、新しい在留資格である「特定技能」制度も始まりました。
10年で2.5倍に増えた外国人労働者
外国人労働者の受け入れは、年々急増しているというのは、なんとなく肌感覚でも感じられる人も多いのではないでしょうか。
外出先で、主にアジア出身の外国人労働者の方を目にする機会は、ここ数年でもグッと増えたと感じています。
年 | 外国人労働者の総数 |
2011年 | 約65万人 |
2013年 | 約71万人 |
2015年 | 約90万人 |
2017年 | 約127万人 |
2019年 | 約165万人 |
2021年 | 約172万人 |
厚生労働省の発表しているデータによると、ここ10年間で外国人労働者の数は2.5倍へと増えています。
高度な技術を持つ労働者の受け入れに対して、積極的に政策を続けていることが功を奏しているのでしょう。
移民を受け入れることのメリットとは?
日本において外国人労働者を受け入れることは、どのようなメリットがあるのでしょうか。
具体的に見ていきましょう。
労働力の確保・特に若い人材の確保
少子高齢化の人口減少が激しい日本において、労働力人口の確保が急務となっています。
特に若い世代が少ないとあり、外国人労働者受け入れを進めることが国を挙げて積極的に進められています。
興味深いのは、日本の強みとする造船業や伝統的文化を守るために、外国人労働者を活用しているという取り組みです。
国内での文化継承者が見つからないケースも多く、その分野に興味のある外国の方が、次の世代として成長しつつある産業も少なくありません。
社会保障制度をサポート
少子高齢化が進むことで足りなくなるのは、労働力だけではありません。
若い働き盛りの世代が、リタイアした世代を助けるという仕組みである日本の社会保障。
若い世代が激減していることで、社会保障の財源確保が急務となってきています。
現時点では消費税UPによって、財源を確保しようとしていますが、人口が減っていくことで国内の消費も減っていくことは避けられないことです。
外国人労働者を受け入れることで、労働力が増えるだけでなく、社会保障制度の貢献者も増えますし、さらには日常生活における消費力UPにもつながると想定されています。
グローバル化への対応・海外進出の足掛かりにも
「グローバル化が不可避である」と言われるものの、まだまだスローペースな日本のグローバル化。
外国人労働者の受け入れが本格化し始めたことで、大都市に限っては、例えば言語の壁への対応が少しずつ始まって来ているものの、他のアジア諸国と比べると圧倒的に出遅れているというのが正直なところです。
今後、ますます外国人労働者が増えてくることで、日常生活において英語が必要な場面はもっと増えてくるでしょう。
学校教育での早期取り組みも始まりましたが、実践の場が増えることで、必要性が増し、国民の英語力の底上げにつながるといわれています。
一方で、海外に進出したいけれど言葉や文化の壁から足踏みしている中小企業もたくさんあります。
そのような企業においては、外国人労働者を受け入れることで、他の国への足がかかりを作ることに繋がります。
具体的には、自国での調査から販売・マーケティングまでを請け負うような外国人労働者も多くいて、日本の良いモノ・良い文化を他国へ提供していく良いチャンスとなっています。
新たな仕事やニーズの発掘
外国人労働者を受け入れることで、日本国内において新しいビジネスが生まれています。
例えば、日本に慣れていない在住歴の短い方々に対するサポート体制であったり、日本語をはじめとする語学学校はますます必要とされていきます。
さらには、日本に来る前の方を対象に、語学学習と文化体験の場を提供するビジネスも人気と言われています。
違う価値観を持つ人と一緒に仕事を進めることで、今まで日本人同士では思いつかなかったような新しいビジネスが生まれることもあるでしょうし、思いついたビジネスを別の国で展開することも可能かもしれません。
違う価値観や背景を持つ人との共生
島国日本にとって足りないものは、「違う価値観を持つ人」「違うバックグラウンドを持つ人」と出会うことだと言えるでしょう。
お互い日本人同士だからなんとなく分かるでしょうと暗黙の了解で進んでいたものが、外国人労働者を受け入れることで伝わらないというもどかしさもあるかもしれません。
しかし、一歩外の世界を見ると、欧州でもアメリカ大陸でも、そのような環境はとても当たり前です。
伝えたいことをしっかりと言葉にして伝えること、相手が言おうとすることをくみ取ること、違う考え方もあるということを受け入れること。
このようなことを、実生活の中で学べるというのは、外国人労働者との共生の大きなメリットと言えるでしょう。
まとめ:移民の受け入れは他者との共生を学ぶことに繋がる
日本においては1980年代後半から、じわじわと外国人労働者の受け入れが始まりました。
なんとなく日々の生活の中でも、外国の方を見かけることが増えたなと感じている人も多いかもしれません。
実際、ここ10年間というスパンでも約2.5倍の約172万人の方々が、日本に労働者として働きに来ています。
なにかと内を向きがちな日本人からすると、外国の方がたくさんいるという環境に委縮してしまい、デメリットの方に目を向けてしまいがちな移民問題。
それでも人口減を鑑みると、労働者受け入れは不可避なものとなっています。
グローバル市場において、日本の競争力を高めるためにも、そして日本の経済を守るためにも、メリットの方に目を向けていきたいところです。