自分や子どもが使っていたランドセルは、思い出としてしまっておく人も多いでしょう。
なかには、ランドセルの生地や部品を再利用し、小物や小さなランドセルに作り替える人もいます。
このように、使用済みランドセルの行方は人によってさまざまです。
しかし、なかには「手元に置いておくより、誰かに使ってほしい」という人もいます。
そういった人達が利用しているのが、「ランドセル寄付」です。
本記事では、ランドセル寄付の詳細や送る際の注意点などを紹介します。
ランドセル寄付とは?
ランドセル寄付とは、名前の通りランドセルを誰かに譲り、使ってもらうことです。
主に、東南アジアやカンボジアなどの途上国に暮らす子どもや経済的に苦しい家庭の子どもへ届けられます。
ランドセル寄付は勉強するきっかけにもなる
ランドセルを届けることによって、教育を受けるきっかけになります。
とくに「女の子に勉強は必要ない」という考え方が根強く残る地域では、男女平等にランドセルを配ることで「女の子にも学ぶ権利はある」と周囲が認識し始め、就学につながる可能性が高まるのです。
ランドセル寄付の方法
ここからは、ランドセルの寄付方法を確認していきましょう。
方法は支援団体によって多少の違いはありますが、流れとしては下記の通りです。
1.ランドセルの確認と準備
まずは、ランドセルの確認から行います。
使い込まれてボロボロになっていたり、宗教上の理由から豚革製のランドセルは使えなかったりと、いくつか決まりがあるためです。
また、防犯ブザーや御守りが付いたランドセルも送れません。
2.海外郵送にかかる費用を振り込む
ランドセルを海外の子ども達へ届けるための、輸送費を振り込む必要があります。
支援団体によっては、海外輸送費と同じ金額分の書き損じハガキの送付でも可能です。
そして、入金後にランドセルを郵送します。
詳細は各団体のホームページで確認しましょう。
3.ランドセルを決められた場所に送る
各支援団体が、指定する場所にランドセルを送ります。
その際ランドセルは、紙袋やビニール袋などに包んでください。
以上が、ランドセル寄付の流れになります。
輸送費の入金方法やランドセルの輸送場所など、各支援団体で多少異なる点があるかもしれません。
そのため、必ずホームページを確認し、指示に従ってください。
続いては、寄付する際の注意点を見ていきます。
ランドセル寄付の注意点
ランドセルを寄付する際は、いくつかの注意点があります。
破損が酷いランドセルは送れない
ランドセル寄付の方法でも少し触れましたが、ベルトや金具などが取れていたり、破損していたりするものは送れません。
多少の傷や擦れは大丈夫です。
郵送前に、必ず破損していないか確認しましょう。
豚革製のランドセルを送る際は注意
宗教上の理由から、特定の動物の皮を使ったランドセルを使えない国もあります。
例えば、イスラム圏のアフガニスタン。
イスラム教を信仰する人は、宗教上の理由から豚肉や豚由来成分を避けて暮らしています。
そのため、豚の皮で作られたランドセルは使えません。
ランドセルを送る際は、どこの国や地域に届けるのか必ず確認しましょう。
参照元:ムスリム観光客受け入れのために|国際機構日本アセアンセンター
支援団体へ送る際の料金は自身で負担することが多い
寄付予定のランドセルは、支援団体が指定した場所まで自身で送ります。
その際の送料は、自己負担になることがほとんどです。
さらに団体によっては、別に海外輸送費を寄付する場合もあります。
ランドセル寄付の事例
ここからは、実際にランドセル寄付を行っている支援団体の事例を3つ紹介します。
ぜひ、自身が送る際の参考にしてください。
【国際協力NGOジョイセフ】思い出のランドセルギフト
ジョイセフは、女性の命や健康を守るために活動している国際協力NGO団体です。
日本で誕生しました。
ジョイセフでは「思い出のランドセルギフト」と名付け、アフガニスタンやモンゴルの子どもたちが、楽しく学校に通えるようにランドセルを寄付しています。
2004年5月から活動を始め、2021年12月時点で贈ったランドセルの数は、257,626個になりました。
ランドセルを受け取った1人の女の子は、「おかげで勉強を続けることができた」と、ジョイセフへメッセージを送ったそうです。
NPO法人グットライフ【セカンドライフ】
NPO法人セカンドライフは2011年から、寄付されたランドセルを国内外の里親さんへ届けるリユース活動を行っています。
毎年3,000個以上のランドセルが集まり、子ども達のために仕分け作業を行っているそうです。
海外では東南アジアや中近東・アフリカを支援し、ランドセルの他に家具や雑貨も届けています。
国内では、NPO法人グッドライフが運営するサービス「にこっと」を通して譲渡しています。
参所元:ランドセルの寄付なら安心のセカンドライフ|NPO法人グッドライフ
株式会社クラレ【ランドセルは海を越えて】
株式会社クラレでは、紛争が続くアフガニスタンの子ども達への支援活動「ランドセルは海を越えて」を2004年から開始。
これまでの17年間で、13万個以上のランドセルを届けてきました。
アフガニスタンでは武装勢力の影響もあり、女の子の就学が認められていない時期もありました。
しかし、ランドセルを平等に配ることによって、「女の子にも教育を」と、考える親が増えてきているそうです。
現在、さまざまな企業や団体が、世界中の子ども達のために支援活動を行っています。
その結果、多くの子ども達が勉強する機会を手に入れられるようになりました。
そして、この活動はSDGsの目標達成にも大きく貢献しています。
ランドセル寄付はSDGsの目標達成にも
ランドセル寄付は、
・目標1「貧困をなくそう」
・目標2「飢餓をゼロに」
・目標4「質の高い教育をみんなに」
・目標5「ジェンダー平等を実現しよう」
・目標10「人や国の不平等をなくそう」
など、さまざまな目標と関わりの深い活動です。
今回は、そのなかでもとくに密接に関わっている、目標4「質の高い教育をみんなに」について紹介します。
まずは、簡単にSDGsについて知りましょう。
SDGsとは
SDGsとは、2015年に開かれた国連総会にて193カ国が賛同した国際目標です。
世界中で起きている、環境・社会・経済の課題を2030年までに解決することを目指しています。
17個の目標と169個のターゲットが設定されており、地球上に暮らす全員が課題を「自分ごと」として考えて行動することが大事です。
目標4「質の高い教育をみんなに」
ランドセル寄付と、とくに関係の深い目標4「質の高い教育をみんなに」。
この目標はキャッチコピーからも想像できるように、教育分野に関する課題に注目しています。
「地球上に暮らす全員が、質の高い教育を平等に受けられるようにする」ことを目指し、その内容には生涯学習の機会の促進も含まれているのです。
ランドセル寄付は、さまざまな可能性を秘めています。
寄付することによって、女の子にも勉強する機会が与えられたり、勉強は必要ないと思っていた親の認識が変わったりと、誰もが教育を受けられる世界に近づけるのです。
このまま良い方向へ進み、全員が最低限度の教育を受けられるようになると目標4も達成できるでしょう。
そして教育分野だけでは終わらずに、貧困やジェンダー平等など、さまざまな目標の達成にもつながっていきます。
まとめ
世界には紛争や性別・宗教など、さまざまな理由から勉強する機会を失っている子ども達がいます。
本来であれば当然の権利を、奪われたまま生きているのです。
文字の読み書きや計算ができるだけで、将来就ける職業の選択も広がります。
給料も上がり、貧困問題の解決にもつながるでしょう。
もし、自宅に自身や子どものランドセルが眠っているのであれば、寄付してみませんか?
直接現地に行き問題解決の手助けをすることは難しくても、ランドセル寄付のように間接的に行える支援もあります。
「自分も何かしたい」と思っているのであれば、選択肢の1つとして考えてみてください。