SDGsの目標4は「質の高い教育をみんなに」を掲げ「すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する」とうたっています。
しかし、世界にはさまざまな理由で学校に行けない子どもが約1億2100万人(うち初等教育では約5900万人)、教育を受ける機会がないまま大人になったために、文字の読み書きができない人が約7億7300万人いるのが現状です。
世界で起こる問題と深く関わる「教育格差」について世界の状況を見てみましょう。
世界の教育格差の現状
ユニセフの調査によると、2021年時点で約2億4,400万人の子どもたち(6歳~17歳)が学校に通えていません。特に、初等教育就学年齢(小学校学齢期:一般的には6歳から11歳)の子どもたちの約9%(約6,700万人)が学校に通っておらず、これは2000年の19%からは改善されていますが、依然として多い数です。
特に、小学校に通っていない子どもの割合が高い国々としては、南スーダン(62%)、赤道ギニア(55%)、エリトリア(47%)、マリ(41%)が挙げられます。
中等教育前期の学齢期(中学校学齢期:一般的には12〜14歳)の子どもたちでは約14%、つまり約7人に1人にあたる約5,700万人が学校に通えていません。(2000年の時点では25%)
中等教育後期の学齢期(高等学校学齢期:一般的には15〜17歳)子どもたちでは約30%、これは約3人に1人にあたる1億2,100万人が学校に通えていない状況です。(2000年の時点では48%)
サハラ以南のアフリカは、学校教育を受けられない子どもの数が世界で最も多く、その割合は唯一増加傾向にあります。2009年から2021年にかけて、学校に通えない子どもたちが2,000万人増え、9,800万人に達しました。
学校に通えない子どもが多い国のトップ10には、インド、パキスタン、ナイジェリア、エチオピア、中国、インドネシア、タンザニア、バングラデシュ、コンゴ民主共和国、スーダンが含まれています。
なお現在、世界の人口のうち約7億5000万人、約10人に1人は文字が読めません。最も低い西部・中部アフリカでは、15~24歳の識字率は男性が73%、女性が60%です。
参照元:教育 | ユニセフの主な活動分野 | 日本ユニセフ協会
教育格差によって起こること
現在世界で起きている貧困・飢餓・健康・ジェンダーなど多くの問題に、教育は密接にかかわっています。
就学率が低いことは、貧困によって起こり、貧困の連鎖を引き起こす原因です。教育を受けていないと、どこに行っても知識やスキルが必要ない職業にしかつけません。
教育が行き届いているかどうかを示す指標として、しばしば識字率が使われますが、字が読めない人ができる仕事はかなり限られてくるでしょう。
開発途上国でしばしば問題になる医療の遅れも、専門的なスキルが必要な医療従事者になれるだけの教育を受けられないことも原因のひとつです。
児童婚や女性の貧困も「女性には教育が不要」という誤った価値観から引き起こされます。性教育がなされないことにより、女性に無理な出産を強いた結果の人口爆発や、衛生知識が十分でないことから生じる環境破壊による病気の蔓延などもです。
教育格差から起こる問題は非常に多岐にわたります。
世界の教育格差が生まれる原因
教育格差が生まれる原因は、貧困の連鎖と非常に大きく関係しています。
大きいのは以下の3つです。
紛争や戦争
紛争や戦争の状況下では、日常生活がままなりません。学校に通って勉強するどころか、兵士として子どもが戦争に参加することすらあります。
就学率の低い地域は、政情が非常に不安定です。アフリカでは多くの地域ではいまだ戦闘状態にある国が少なくありません。そのような場合、学校の建物は訓練所や避難所となります。
治安が悪いため、登下校の最中に戦闘に巻き込まれたり、誘拐されることもあるため、学校に通うこと自体が危険です。
仮に、戦争地域から逃げ出したとしても、その先では難民として扱われ、満足な教育を受けられないこともあります。
教育予算の問題による施設・教員の不足
政情が不安定な場所では、教育予算に多くを割くことができません。
そのため、子どもを集めて勉強を教えるための学校設備が作れないばかりか、教員を育成することができないのです。
また、教員の給与の低さや、社会的地位の低さから、教育を受けても教員になる人が少なく、教員が不足している現状があります。
学校の数が少ないことから、子どもは歩いて遠方まで通わなければなりません。しかし、通学路は日本のように舗装されておらず、治安もよくない状況であれば、物理的に通学ができなくなるケースも多いです。
さらに、少数民族となると言葉の問題もあり、自分の母語で教育を受けることが困難という問題もあります。
貧困による教育への無理解
教育は貧困から抜け出すための手段ともなります。しかし、貧困にあえぐ地域でほしいのは10年先の子どもの職よりも目先の労働力なのです。
「学校に通うよりも仕事を手伝ってほしい」という家庭が多く、子どもは働き手としてみなされがちです。
子どもに家事や下の子の面倒を見させたり、重労働である水汲みなどを担当させている家庭は多いです。こうした家庭では、保護者もそもそも教育を受けていないことから、その重要性を理解しません。
生活に必要なお金が足りない状況で、教育費が払えないのです。特に女の子には「どうせ結婚するから教育はいらない」という考え方がまだまだ根強くあります。
これは、開発途上国に限った考え方ではなく、相対的な格差が深刻になりつつある先進国でも生じている問題です。特に日本では、ひとり親家庭の相対的貧困は60%近く。子どもたちの教育への大きな問題となっています。
コロナ禍によって拡大する世界の教育格差
コロナ禍は、学校に通う子供たちにも大きな影響を及ぼしました。日本でも休校措置が取られましたが、世界でみるとピーク時には世界の子ども・若者の91%にあたる15億人が学校閉鎖に直面しました。
学校が閉鎖された場合、多くはオンライン授業に移行しました。しかし、デバイスや通信環境が得られないばかりに、4700万人の子どもが授業から取り残されたと言われています。
世界の教育格差に対して私たちができる対策
SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」、世界の教育格差を解消するためには、どのような取り組みがされているのでしょうか。日本の私たちには何ができるでしょうか。
世界の現状と行われている対策を知る
世界の現状を少しでも知ることです。
このサイトの記事もそうですが、SDGsに関する情報はネットだけでなく本からも得ることができます。
それに対し、日本や多くの期間では様々な取り組みをしています。
・日本ユニセフ協会
世界中の子どもたちの命と健康を守るために活動する国連機関です。最も支援の届きにくい地域の子供たちを対象に、保健、栄養、水と衛星、教育などの支援活動を実施しています。
参照元:日本ユニセフ協会
・日本ユネスコ協会
UNESCO(国際連合教育科学文化機関)憲章の理念に基づき、平和な世界の構築と持続可能な社会の推進をミッションとして掲げるNGOです。非識字者や貧困層の人たちが多いアジアで、誰もが教育の機会を得られるよう「世界寺子屋運動」の取り組みを行っています。
参照元:日本ユネスコ協会
・JICA(独立行政法人国際協力機構)
日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行う実施機関として、開発途上国への国際協力を行っています。JICAは、日本政府の教育戦略(「平和と成長のための学びの戦略」)に基づき、2030年までのSDG4の達成に向けて取り組んでいます。
参照元:教育 – JICA(独立行政法人国際協力機構)
参照元:アフリカにおけるJICAの基礎教育協力 – JICA(独立行政法人国際協力機構)
寄付をする
日本を含め、経済的理由を背景とした教育格差の解消のために、世界中で多くの機関が教育支援を行っています。彼らの活動を支えるために、気持ちだけでなく支援をしてみませんか。
世界の教育格差は、貧困やジェンダー、環境問題とも密接にリンクしています。
例えば、砂漠地帯に井戸を掘るための支援は、一見教育と関係なく見えるかもしれません。
しかし、それまで水汲みのために学校に行けなかった子供たちが、井戸のおかげで労働から解放されれば、教育を受ける機会を得ることにつながります。
まとめ|世界の教育格差に対して
今回は世界の教育格差について解説しました。まずは現状や格差の原因を知ることが大事です。
そして、多くの団体の中から、自分なりに支援をするためにも、いろいろな知識を集めて、納得できる寄付先を選びましょう。
ボランティアやイベント、Webサイトを通じて「この活動を支援したい」もしくは「自分も参加したい」と思えるものを見つけてみてください。