経済産業省が行った調査によると、ファッションやアパレル商品を購入する際に、生産や製造過程で環境に与える影響を考えて買う人は36.1%。生産者の生活や人権に配慮したものを購入する人は、34.3%という結果になりました。
このように、近年、地球環境や人に優しいサステナブルな製品を求める人が増えています。しかし、「どれがサステナブルな製品か見分けがつかない」という人も多いでしょう。そこで注目したいものが、認証マークです。今回は、認証マークの1つである「GOTS認証」について紹介します。
GOTS認証とは
GOTS認証(Global Organic Textile Standard)とは、繊維製品をつくる際に必要な原料の収穫から加工・製造・流通まで、環境的・社会的に配慮した方法を採用していることを証明する国際基準です。
日本では、「オーガニックテキスタイル世界基準」とも呼ばれており、オーガニックコットンやウール・麻・絹などが対象になります。なおGOTS認証の審査は、独立した第三者機関によって行われます。
2種類のGOTS認証ラベル
GOTS認証には、下記のような2種類のラベルが存在します。
左側の「organic」と書かれているものが、製品に95%以上のオーガニック繊維を使用していることを。右側の「Made with Organic」が、製品に70%以上のオーガニック繊維を使用していることを示すラベルです。
そして、使用可能なオーガニック以外の天然繊維や化学・合成繊維も、「organic」の場合は5%未満、「Made with Organic」の場合は30%未満と規定されています。また、GOTSには有機農業の基準がないため、使用するオーガニック原料は、IFOAM(国際有機農業運動連盟)の有機農業基準を満たす必要があります。
参照元:GOTS|日本オーガニック協会
2021年には、承認数が過去最多に
『GOTS年次報告2021』によると、2021年のGOTSの承認件数は、過去最多の80カ国12,338施設と報告されています。
とくに増加率が高かった国は、下記の通りです。
トルコ | 1,799件(+61%) | デンマーク | 115件(+14%) |
イタリア | 894件(+53%) | スイス | 61件(+15%) |
ドイツ | 817件(+19%) | ベルギー | 59件(+55%) |
ポルトガル | 608件(+35%) | スウェーデン | 51件(+34%) |
フランス | 122件(+22%) | ベトナム | 51件(+264%) |
年々認証件数は増えており、GOTS認証が、市場で認められるオーガニックテキスタイル認証になっていることが分かります。
参照元:プレスリリース|GOTS
GOTS認証の基準
続いては、GOTS認証の基準を確認していきましょう。
GOTS基準
GOTS認証の基準は、下記の通りです。
原料 | オーガニックの使用割合が70%以上であること |
一貫した認証 | 原料から製造まで、全ての工程をカバーする |
トレーサビリティ | 製品の、原料の調達から加工・流通・販売までの履歴を、追跡できる状態にする |
有機製品制度 | オーガニック以外の製品との混同や、汚染がないようにする |
残留物 | 完成品に、残留物がないか確認する |
環境配慮 | 水やエネルギーの使用、廃棄物などに対する環境目標を設置する |
薬剤使用制限 | 廃水処理方法や生分解性の基準をまもり、毒性の強い薬剤は使用しない |
GMの禁止 | 原料または助剤などに、遺伝子組換技術を使用しない |
動物実験の禁止 | 生体実験の禁止 |
雇用倫理 | 強制労働や児童労働を禁止する |
労働環境 | 衛生的で安全な労働環境・搾取のない労働条件 |
差別禁止 | 差別的な言動や行動の禁止が実践されている |
GOTS認証は3年ごとに更新される
GOTS認証は、2005年に「Version1.0」が誕生し、その後Versionは3年ごとに更新され、現在(2023年3月時点)はVersion7.0が最新となっています。
また基準を改定する際は、
・環境やエコロジカル・社会的責任の視点で、厳格かつ拘束力のある内容か
・生産工程において、求める事項が実行可能であること
を重要視しています。
そして、達成するために「有機繊維生産」「繊維加工」「繊維化学」など、各分野の専門家や国際的に活躍する団体の人々から意見を聴取し、決めているのです。
GOTS認証製品の見分け方
GOTS認証の普及に伴い、誤った認証ラベル使用していたり、不正に使用した製品も登場したりしています。そういった製品を購入しないためにも、GOTS認証製品の見分け方を知りましょう。
ラベルを確認
正しいGOTS認証ラベルには、下記の4つの項目が記載されています。
- 「GOTS」のロゴマークまたは、「Global Organic Textile Standard」と記載されている
- 「オーガニック/organic」または「オーガニックで作られた/made with organic」と、GOTSラベル等級が記載されている
- 承認した機関の名前
- ライセンス番号または、認証された企業の名前
また、GOTSのパブリックデータベースにある「free text field」に、GOTS認証ラベルに記載されているライセンス番号や企業名を入力すると、認証を受けた企業のデータを確認することも可能です。
■GOTSパブリックデータベース: https://global-standard.org/find-suppliers-shops-and-inputs/certified-suppliers/database/search
GOTS認証とSDGs
最後に、GOTS認証とSDGsの関係性を見ていきます。まずは、SDGsとは何か知りましょう。
SDGsとは
SDGsとは、2015年に開催された国連総会にて、193カ国が賛同した国際目標です。世界中でおきている環境・社会・経済の課題を解決するために、17の目標と169のターゲットが設定されました。
またSDGsは、2030年までに全目標の達成を目指しているため、地球上に暮らす全員が協力し取り組むことが鍵となります。
GOTS認証はSDGsの全目標と関りがある
GOTS認証を取得すると、SDGsの全ての目標達成に貢献すると期待されています。
例えば、目標4「質の高い教育をみんなに」
この目標は、
・全ての人が公平に、質の高い教育を受けられるようにすること
・生涯学習の機会を促進すること
を実現するための内容となっています。
これまでコットン栽培では、児童労働や強制労働が問題視されてきました。とくに、学校へ行かずに働く児童労働は、子ども達から勉強する機会を奪います。そのため、文字の読み書きや計算ができないまま成長してしまい、収入の高い仕事に就ける可能性が低くなるのです。その結果、貧困から抜け出せなくなります。
一方でGOTS認証では、児童労働を禁止し繊維労働者も適切な収入を得られるようになっているため、子ども達が勉強できる機会の増加に繋がっているのです。このような理由から、GOTS認証の取得はSDGs目標4の達成に貢献すると言われています。
参照元:
・Why GOTS|GOTS
・SDGs(持続可能な開発目標)|蟹江憲史 著
まとめ
繊維製品の原料の収穫から加工・製造・流通まで、環境的・社会的に配慮した方法を採用していることを証明するGOTS認証。GOTS認証を取得する施設は世界的に増加傾向にあり、2021年時点で、80カ国12,338施設も存在します。
消費者も、GOTS認証の施設や製品が増えることによって、嘘偽りのないオーガニック製品を選択できるようになります。しかし、GOTS認証ラベルを不正に使用している製品があることも事実です。認証製品を購入する際は、ラベルに記載されている4つの項目を確認したり、GOTSのパブリックデータベース「free text field」で検索したりしましょう。
「安いから」という理由だけで選ぶのではなく、「環境や人に優しい製品であるか」を決め手にする人が増えることによって、地球環境の保全やSDGsの目標達成に繋がります。