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教育格差とは|日本の現状データと今日からできる対策を整理

「同じ日本に生まれたのに、通える塾も進学先の選択肢もまったく違う」。そう感じたことはないでしょうか。教育格差とは、生まれ育った家庭の収入や地域、家族構成などによって、子どもが受けられる教育の質や量に差が生じる状態を指します。義務教育制度が整っている日本では見えにくい問題ですが、進学率や生涯収入のデータを見ていくと、その差は決して小さくありません。この記事では、日本国内の教育格差の実態を数字とともに整理したうえで、行政・NPO・企業がどのような対策を進めているか、そして読者が今日から関われる行動の選び方までを具体的に見ていきます。

教育格差とは|「機会」と「結果」の両方に生まれる差

教育格差には大きく分けて二つの側面があります。ひとつは学校や塾、教材、ICT環境といった「教育を受ける機会」の差。もうひとつは、進学率や学力、その先の就職・収入といった「教育の結果」の差です。日本では小中学校の義務教育がほぼ全員に保障されているため、一見すると機会は平等に見えます。しかし、通える塾の有無や家庭内での学習サポート、進学に関する情報量など、目に見えにくい部分での差は確実に存在しています。

国連の「世界人権宣言」第26条は、すべての人が教育を受ける権利を持つと明記しており、SDGs(持続可能な開発目標)の目標4でも「質の高い教育をみんなに」が掲げられています。教育格差は個人の努力不足の結果ではなく、社会の仕組みが生み出す構造的な課題だという理解が、対策を考えるうえでの出発点になります。

日本の教育格差はどこまで進んでいるのか

「教育格差は海外の話」と捉えられがちですが、日本国内にも複数の切り口から格差が確認できます。ここでは家庭の経済状況、地域差、ひとり親世帯という三つの視点から現状を見ていきます。

家庭の経済状況が生む「見えない格差」

厚生労働省の国民生活基礎調査では、子どもの相対的貧困率は2018年の13.5%から2021年には11.5%まで改善したとされていますが、依然としてOECD諸国の平均と比べて高い水準にあるとされています。経済的に厳しい家庭では、学習塾や通信教材、参考書といった学校外教育費に回せる余裕が少なく、学力差につながりやすいことが指摘されています。文部科学省の就学援助制度の利用状況を見ても、経済的な理由で就学援助を受けている小中学生は全体の1割を超える水準で推移しているとされ、家計と学びが密接に結びついている実態がうかがえます。

地域差とデジタル格差|GIGAスクール構想のその後

地方や過疎地域では、そもそも近隣に高校や大学がなく、進学のために下宿や長距離通学が必要になるケースが少なくありません。通学・下宿費用は家計への負担となり、進学そのものを諦める要因にもなります。国は2019年度から「GIGAスクール構想」により児童生徒1人1台の端末整備を進めてきましたが、端末を持ち帰っても家庭のインターネット環境が整っていなければ、オンライン学習の恩恵を十分に受けられません。整備から数年が経過した現在は、端末の更新時期や運用格差といった新たな課題も指摘されるようになっており、ハード整備が終われば格差が解消するわけではない点に注意が必要です。

ひとり親世帯が抱える壁

ひとり親世帯では、就労と子育てを一人で担う構造上、学習を見守る時間そのものが不足しがちです。加えて世帯収入も相対的に低くなりやすく、貧困と学習支援の不足が重なりやすい傾向があるとされています。こうした家庭を対象にした学習支援事業や子ども食堂といった居場所づくりが各自治体で広がっていますが、地域によって支援の量や質に差があるのが実情です。

進学の有無が生涯収入を左右する|大卒と高卒の差

文部科学省の学校基本調査によれば、大学(学部)への進学率は2020年度に54.4%で当時過去最高を記録しましたが、その後も緩やかな上昇傾向が続いているとされています。一方でOECD加盟国の中では、依然として高等教育進学率が高い水準とは言えないとの指摘もあります。

内閣府がまとめた資料では、大卒者と高卒者の生涯賃金には数千万円規模の差が生じるとされており、進学できるかどうかがその後の生活設計に長期的な影響を及ぼすことが示されています。義務教育で基礎学力が保障されていても、その先の進学機会まで保障されているとは限らない、という点が日本の教育格差を考えるうえで見落とされがちなポイントです。

世界に広がる教育格差|地域によって異なるリアル

教育格差は日本だけの問題ではありません。ユネスコの報告によれば、学齢期であるにもかかわらず学校に通えていない子どもは世界で約1億2000万人にのぼるとされ、多くがアフリカ・中東・南アジアの紛争地域や貧困地域に集中していると報告されています。また、日本ユネスコ協会連盟によると、読み書きができない成人は世界で7億人を超えるとされ、これは15歳以上人口のおよそ1割に相当する規模です。

ユニセフの報告では、サハラ以南のアフリカでは子どもの5人に1人が学校に通えていないとされています。背景には、学費の負担だけでなく、「女子は家庭にいるべき」「子どもは働いて家計を助けるべき」といった文化的な価値観が、教育を受ける機会そのものを奪っている実態があります。

一方、教育先進国とされるアメリカでも、居住地域によって学校予算や教育の質に大きな差が生まれることが知られています。教育に手厚い予算を割く地域と、そうでない地域とでは、本人の努力だけでは埋められないほどの前提条件の差が生じているのが実情です。貧困から抜け出すための最大の武器であるはずの教育が、逆に格差を固定化する装置になってしまうという矛盾は、先進国・途上国を問わず共通した課題だといえます。

教育格差が社会に及ぼす影響|個人の問題では終わらない理由

教育格差は、当事者である子ども本人の将来だけでなく、社会全体にも影響を及ぼします。教育を十分に受けられなかった子どもが大人になり、その子どももまた同じように教育機会を得られないという「貧困の連鎖」が続くと、世代を超えて格差が固定化されていきます。内閣府の報告書でも、子どもたちの将来が貧困の連鎖によって閉ざされることがあってはならないと強調されています。

さらに、少子化が進む日本にとって、一人ひとりの労働生産性や創造性は国の競争力に直結する要素です。教育を受ける機会が家庭環境によって左右され続ければ、本来社会で活躍できたはずの人材が力を発揮できないまま埋もれてしまう可能性があります。教育格差の解消は、福祉の観点だけでなく、経済・産業政策の観点からも重要なテーマだと捉えることができます。

教育格差を縮めるための国内の取り組み

教育格差の解消に向けては、国・自治体・民間それぞれのレベルで対策が進められています。ここでは代表的な取り組みを、行政の制度とNPOの活動に分けて整理します。

行政による支援制度の拡充

2020年度から始まった高等教育の修学支援新制度では、住民税非課税世帯やそれに準ずる世帯を対象に、大学等の授業料減免と給付型奨学金の支給が行われています。加えて政府は「こども未来戦略」の一環として、扶養する子が3人以上いる多子世帯を対象に、所得制限を設けずに大学等の授業料を支援する方針を打ち出したと発表しています。こうした制度は、進学の意思があっても経済的な理由で諦めざるを得なかった家庭に対して、選択肢を広げる役割を担っています。

ただし、こうした制度は「知らなければ使えない」という課題も抱えています。進学に関する情報が家庭に届いていなければ、制度があっても活用されないままになってしまいます。学校や自治体の窓口だけでなく、地域のNPOが情報を届ける役割を担っているケースも少なくありません。

学習支援に取り組むNPO・団体の活動

行政の制度を補完する形で、民間のNPOがそれぞれ異なるアプローチで学習支援に取り組んでいます。たとえば、経済的な理由で塾や習い事に通えない子どもに「スタディクーポン」を提供する団体、放課後の居場所と学習支援を組み合わせて提供する団体、教育に意欲のある人材を教師として学校現場に派遣する団体など、支援の形はさまざまです。

これらの団体の活動を比較すると、「学習機会そのものを金銭的に補う型」「居場所と学習支援を一体で提供する型」「担い手となる人材を学校に送り込む型」という三つのアプローチに大別できます。寄付や関わり方を選ぶ際には、自分がどの課題に関心があるか(費用の壁か、居場所の不足か、指導者の不足か)を軸に団体を選ぶと、支援の実感を持ちやすくなります。

海外に目を向けると、約190の国と地域で子どもの命と権利を守る活動を行う国際機関や、アジアの山岳地域で学校づくりを支援するNPO、現地の教育現場に映像授業を届ける団体なども存在します。国内外どちらに関心があるかによって、関わり方の選択肢は大きく広がります。

今日からできること|寄付・ボランティアの選び方

教育格差の解消は、行政や団体だけに任せる問題ではありません。一人ひとりが関われる方法はいくつかあります。

  • 認定NPO法人や公益法人への寄付(多くの場合、寄付金控除の対象になります)
  • 地域の学習支援ボランティアや子ども食堂への参加
  • 不要になった教材・参考書・制服のリユース活動への協力
  • 就学支援制度や奨学金制度について、家族や周囲に情報を共有すること

寄付先を選ぶ際は、活動報告書や決算情報を公開しているか、支援対象や地域が自分の関心と合っているかを確認することが目安になります。国税庁の資料によると、認定NPO法人や公益財団法人などへの寄付は、要件を満たせば所得税の寄付金控除の対象になる場合があります。金額の大小にかかわらず、まずは自分が続けられる範囲で関わってみることが、長く支援を続けるコツだといえるでしょう。

まとめ|教育格差は「知ること」から変えられる

教育格差は、日本国内でも世界でも、生まれ育った環境によって子どもの将来の選択肢が狭められてしまう構造的な課題です。義務教育が整っている日本であっても、塾や進学、デジタル環境をめぐる格差は確実に存在し、それが生涯収入にまで影響を及ぼしています。行政の支援制度やNPOの活動はこの十数年で着実に広がってきましたが、情報が届かなければ制度は生かされません。まずは自分の身の回りにある支援制度や団体を一つ調べてみることから始めてみてください。

  • 教育格差は「機会」と「結果」の両方の差として日本にも存在する
  • 子どもの貧困率は改善傾向とされるが、OECD内では依然高い水準にあるとされる
  • 大卒と高卒では生涯賃金に大きな差が生じるとされ、進学機会の差が将来を左右する
  • 行政の修学支援制度やNPOの学習支援など、関われる選択肢は複数ある

参考文献

  • 文部科学省「学校基本調査」(https://www.mext.go.jp/)
  • 内閣府「子供の貧困対策」(https://www8.cao.go.jp/kodomo/)
  • UNESCO Institute for Statistics(https://uis.unesco.org/)
  • 国税庁「寄付金を支出したとき」(https://www.nta.go.jp/)

本記事はMIRASUS編集チームが公的資料・国際機関の公開情報をもとに作成しています。

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