9月8日は「国際識字デー」。
世界では識字率が低い問題を解決し、文字の力や学びの力を高めることで、だれ一人取り残さない未来を目指しています。
しかし、「識字率とは?」「どれくらい低いの?」と疑問に思う方もいるかもしれません。
この記事では、識字率の意味や低い原因を解説するとともに、世界のランキングや識字率を上げるための取組みについて紹介します。
世界の識字率がわかる内容になっているので、ぜひ最後までお読みください。
識字率(しきじりつ)とは
識字率とは、国あるいは地域における文字の読み書きができる人の割合をあらわしたものです。
ユネスコ(国連教育科学文化機関)では、「簡単な文章の読み書きができる15歳以上の人口の割合を百分率で表したもの」と定義されています。
しかし厳密にいえば、国や専門家によって定義は異なっています。
識字率は、国や地域の教育水準をはかる指標の一つです。
「質の高い教育はなされているか」「どのような生活状況か」などを判断する重要な役割を果たしているといえるでしょう。
世界の識字率ランキング
日本の識字率は、ほぼ100%といわれています。
では、世界の識字率はどうなっているのでしょうか。
今回はユネスコの調査をもとにし、識字率ランキングを数値の低い順にまとめました。
順位 | 国名 | 識字率 |
1 | チャド | 22.3% |
2 | 二ジュール | 30.6% |
3 | ギニア | 32.0% |
4 | 南スーダン | 34.5% |
5 | マリ | 35.5% |
6 | 南アフリカ | 37.4% |
7 | ブルキナファソ | 41.2% |
8 | シエラレオネ | 43.2% |
9 | ギニアアビサウ | 45.6% |
10 | コートジボアール | 47.2% |
国によっては、読み書きができない方が多い場合もあるといえます。
また、ユニセフ「世界子供白書」をもとに地域で比較すると、ヨーロッパやアジアの識字率は、ほぼ9割以上である一方で、サハラ以南のアフリカ地域は約7割でした。
2022年現在においても、世界に目を向ければ、文章の読み書きができない人が多く存在しているのです。
識字率を上げることが課題の一つといえるでしょう。
参照元:
・世界の統計2021
・世界子供白書2021|日本ユニセフ協会
識字率が低い国の背景とは
どうして、識字率が低い国があるのでしょうか。
この背景にある問題を3つ解説します。
①教育を受けられない
教育を受けることができなかったため、読み書きができない場合も多く見られます。
ユネスコの調査によると、学校に行けない6〜14歳の子どもは約1億2100万人にのぼるといわれています。
その中でも教育を受けないまま大人になったため、世界の7人に1人は文字の読み書きができません。
ユニセフの「世界子供白書2021」をみても、初等教育や中等教育の修了率が低いほど、識字率も低くなっているといえます。
学校に行けない理由は、貧困や学校が近くにないなどさまざまですが、最近では新型コロナウイルス感染症の影響も出てきています。
約1億1450万人の生徒たちが新型コロナウイルス感染症の影響で教育を受けられない状況にあるとも懸念されています。
学びの場を奪うことは、読み書きに大きな影響を与えるといえるでしょう。
②女性の教育格差
識字率が低い国を性別ごとにみると、特に女性の方が低くなっているのが明らかです。
これは、女性への教育格差が原因といえるでしょう。
世界には「女性には教育は必要ない」「女性は働かずに家庭に入ればいい」などの慣習が残っている地域があります。
6歳から11歳の子どものうち、一生学校に通えない女の子は男の子の約2倍。
教育を受けられない女性が多くいることは深刻な社会問題になっています。
SDGsの目標「5.ジェンダー平等を実現しよう」の中にも、「すべての女性と女の子に対するあらゆる差別をなくす」という内容が明記されています。
識字率を上げるには、女性への教育格差をなくすことも重要です。
③紛争や戦争
紛争や戦争によって、学びの場を奪われた子どもが多くいます。
学校が閉鎖されたり、避難場所になったり破壊されたりなど、さまざまな理由で教育を受けられません。
さらに少年兵として徴収され、教育を受けられないというケースもあります。
争いさえなければ、読み書きができた子どもや大人は多くいるのです。
このように識字率が低い背景には、紛争や戦争が深く関わっています。
参照元:
・世界子供白書2021|日本ユニセフ協会
・読み書きができない若者10人に3人|ユニセフ協会
どうして、識字率を上げる必要があるのか?
識字率の問題は世界でも注目されています。
しかし、どうして、識字率を上げる必要があるのでしょうか。
実は文字の読み書きができないと、生活においてさまざまな問題が生じてしまうのです。
以下に、3つの理由をまとめました。
①就職
文字の読み書きができないことで、就職できない問題に直面する場合があります。
学校教育だけではなく、仕事に必要な教育も受けられず、スキルアップもできません。
読み書きの能力を必要としない仕事は限られていて、賃金や労働環境も必ずしもいいとはいえず、貧困に陥ってしまいます。
また、現代のコミュニケーションツールとして、読み書きは欠かせません。
文章を理解できなければ、コミュニティや社会から取り残されてしまうのです。
識字率の低さは、就職率の低下や貧困を招いてしまうといえるでしょう。
②危機管理
日常生活では、文字を読むことで正しい情報かどうかを判断することは多いのではないでしょうか。
つまり、目の前の情報を読んで理解できなければ、さまざまトラブルを回避できません。
・場所や使用方法などの警告や注意書きを理解できない
・聞いた情報だけで判断して詐欺被害にあう
・製品が違法かどうかを判別できない
・不当な契約をさせられる
・正しく薬を使用できない
読み書きができないことで、自分や家族の命を危険にさらしてしまうこともあるのです。
③公共のサービスが受けられない
悪い情報に気付けないということは、自分の生活を支えてくれる情報も理解できないと言い換えられます。
・出生届など戸籍に関わる手続き
・子どもの医療や教育に関する申請
・予防接種やワクチン接種などのサービス
・選挙の投票案内
このように、正しい情報を得られないことで公共のサービスを受けることが困難になることもあるのです。
参照元:世界寺子屋運動|ユネスコ
識字率を上げる取り組み
では、識字率を上げるために、どのような取り組みが行われているのでしょうか。
世界の事例を紹介します。
①ユネスコ「世界寺子屋運動」
ユネスコは識字率を上げるために、「世界寺子屋運動」を立ち上げました。
・小学校を中途退学した子どもが復学できる機会の提供
・文字の読み書きや計算、保健衛生や生活に役立つ知識の提供
・寺子屋やと図書館の創設
・収入向上につながる職業訓練の提供
・教員や寺子屋運営者の育成や研修の実施
さらに、教育支援につながる募金活動も行っています。
寄付できるのは現金だけではありません。
・書き損じハガキ
・未使用の切手
・商品券やギフトカード
・古本
・クレジットのポイント
・Tポイントやdポイントなどのポイント
自分にあった支援を選べるのが特徴です。
このように、「世界寺子屋運動」は性別や宗教など関係なくだれもが教育を受け、貧困のサイクルを断ち切れるよう、1989年から活動を続けています。
参照元:世界寺子屋運動|ユネスコ
②ワールド・ビジョン・ジャパン「チャイルド・スポンサーシップ」
ワールド・ビジョンは、識字率向上のために「チャイルド・スポンサーシップ」を軸とする支援プログラムを実施。
どのような状況においても、子どもたちが教育を受けられる環境づくりを目指しています。
チャイルド・スポンサーシップとは、月々4,500円、1日あたり150円を寄付する継続支援です。
支援金は子どもを取り巻く環境を改善するための長期的な支援に活用されます。
識字率を上げる具体例としては、以下のようなものがあります。
・教室の数の増加
・教材、机や椅子など必要な備品の支援
・女性用トイレを学校に設置
・読み書きの補修の実施
・教員向けの研修を行う
このように、子どもたちが健やかに成長できるような環境づくりに努めています。
参照元:ワールド・ビジョン・ジャパン
③ユニセフ「募金活動」
ユニセフは、すべての子どもの命と権利を守るために募金活動を行っています。
支援活動は、教育だけではなく、医療や衛生、暴力からの保護など幅広いです。
個人の募金でも、必要な支援物資を調達できます。
・357円分:えんぴつ10本とノート10冊
・378円分:縄跳びの縄10本
・769円分:バレーボール1ことバレーボールネット1枚
・1168円分:8色入りクレヨン10セットとスケッチブック10冊
これらの支援は、約190の国と地域に住む子どもへ届けられています。
識字率を上げるために私たちができること
識字率とは、国あるいは地域における文字の読み書きができる人の割合をあらわしたもの。
残念ながら、国や地域によっては半分以上の人が読み書きができないのが現状です。
目の前の情報を理解できなければ、就職が難しくなったり、危険な目に遭いやすくなったりと、自力で生活をよりよくすることは非常に困難といえます。
負のループから抜け出すためには、識字率を上げる支援が欠かせません。
私たちが直接何かを教えることはできませんが、募金や寄付などで支援することは可能です。
SDGsの目標「4.質の高い教育をみんなに」の達成を目指すための価値あるアクションといえるのではないでしょう。