皆さんは「平和で公正な世界」とは、どのような世界を思い浮かべるでしょうか。
漠然とした言葉で、日本に暮らしていると、実生活ではあまり意識することのないテーマかもしれません。
本記事ではSDGsの目標16にあたる「平和と公正をすべての人に」の概要やターゲット、企業の取り組みについて解説しています。
この記事を読めば、平和や公正を妨げる様々な問題について知り、「平和で公正な世界とはどんな世界か」という問いかけについての自分なりの答えが見つけることができるでしょう。
目標16「平和と公正をすべての人に」とは?
目標16「平和と公正をすべての人に」の正式な目標名は、「持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する」といいます。
包摂的な社会とは、世界中のひとりひとりが社会の構成員として取り込こまれ、差別や地域低要因によって排除されることがない社会のことを意味しています。
これはまさに「誰一人取り残さない」というスローガンを掲げるSDGsの目標そのものです。
世界では、今もなお紛争や内戦などによって人々の命が脅かされています。
そればかりではなく、住む場所を追われ、十分な食料がなく、教育や医療といった最低限な制度を活用できない困難な状況を生きています。
つまり、すべての人々が平和な社会で暮らせることができ、公平に制度を利用できるような世界を目指すということです。
目標16のターゲットは?
SDGsの「ターゲット」とは、目標をより具体的に示したもののことです。
このターゲットを知ることで、「平和と公正をすべての人に」を取り巻く問題と具体的な行動方法がわかります。
減少させる。
16.2 子どもに対する虐待、搾取、取引及びあらゆる形態の暴力及び拷問を撲滅する。
16.3 国家及び国際的なレベルでの法の支配を促進し、すべての人々に司法への平等な
アクセスを提供する。
16.4 2030 年までに、違法な資金及び武器の取引を大幅に減少させ、奪われた財産の回復 及び返還を強化し、あらゆる形態の組織犯罪を根絶する。
16.5 あらゆる形態の汚職や贈賄を大幅に減少させる。
16.6 あらゆるレベルにおいて、有効で説明責任のある透明性の高い公共機関を発展させる。
16.7 あらゆるレベルにおいて、対応的、包摂的、参加型及び代表的な意思決定を確保する。 16.8 グローバル・ガバナンス機関への開発途上国の参加を拡大・強化する。
16.9 2030 年までに、すべての人々に出生登録を含む法的な身分証明を提供する。
16.10 国内法規及び国際協定に従い、情報への公共アクセスを確保し、基本的自由を保障する。
16. a 特に開発途上国において、暴力の防止とテロリズム・犯罪の撲滅に関するあらゆる レベルでの能力構築のため、国際協力などを通じて関連国家機関を強化する。
16.b 持続可能な開発のための非差別的な法規及び政策を推進し、実施する。
このターゲットからは、戦争だけではなく虐待や組織犯罪などのあらゆる暴力の根絶によって平和を目指すことが述べられています。
また、国際法レベルでの制度改革によって人々の公共アクセスを確保することも挙げられています。
次の章では、平和で公正な社会を築くために知っておきたい問題について触れていきます。
内戦や紛争に追われる人々の生活
世界の様々な地域では、今この瞬間も内戦や紛争によって故郷を追われる人々がいます。
その数は世界の人口の108人に1人、そして時間にして2秒に1人といわれています。
これまで紛争が原因で故郷を追われた人の数は7080万人、そのうち2018年に新たに、または再び移動を強いられた人は1360万人に及びます。(2018年現在)
さらに、これらの2人に1人が18歳未満の子供なのです。
彼らは「難民」と呼ばれ、武力紛争や人権侵害などによって自国を逃れ、国境を越えて他国に逃れる人々です。
近年では、国境を越えずに避難生活を行う「国内避難民」もさすようになっています。
難民になると、定住できる家はなくなり、移動生活を強いられることとなります。
食糧不足や不衛生な環境などにより、日々を生き延びることが困難です。
また無国籍者も多く、国境を越えたとしても国籍がないことを理由に、自由な雇用や教育、医療などが受けられない人々もいます。
参照元:数字で見る難民情勢(2018年)|UNHCR日本HP
様々な暴力で苦しむ世界の子供たち
戦争は、無差別に罪のない人々の命を奪う大きな意味での暴力です。
他にも暴力はあらゆるところに存在しています。
特に子供を取り巻く暴力は深刻です。
暴力の実態はすべてを把握するのが難しいことから、正確な実態を明らかにするのは困難であるといわれています。
ですがユニセフの統計によれば、世界の2~4歳の子どもの75%が、日常的に家庭内暴力を受けており、その数は毎年2億7500万人近くにのぼるとしています。
暴力は家庭内にとどまらず、学校や労働現場、児童施設などの場所で行われており、身体的、性的、心理的な暴力にまで及びます。
子供の人身売買もその一つです。
参照元:16.平和と公正をすべての人に|SDGs CLUB unicefHP
企業の取り組み事例
SDGsの目標達成に向けて企業が様々な取り組みを始める中、「平和と公正をすべての人に」のための取り組みを行っている企業も増えてきています。
外務省では本目標に通ずる活動を行っている団体や企業を紹介していますが、本記事ではその中から二つの企業と団体をピックアップしてご紹介します。
1.公益社団法人ガールスカウト日本連盟の取り組み
ガールズスカウトは、国籍や人種、宗教の違いを超え、152の国と地域で約1,000万人の会員が活動する、世界最大の少女と女性のための団体です。
日本では47都道府県すべてに活動拠点をもち、5歳から100歳を超える女性まで約3万人が所属している団体です。
世界150の国と地域のガールスカウトとともに、少女に対する暴力をなくす、その名も「Stop the Violence」キャンペーンを展開しています。
日本では、恋人から受けるデートDVなどの身近に潜む暴力について理解を深める例などが取り組みとして行われています。
身体的な暴力、性的暴力、人身売買などの女性を取り巻く暴力問題に対して教育を行い、自身の身を守ることができるようなプログラムとなっています。
参照元:Stop the Violenceキャンペーン|公益社団法人ガールスカウト日本連盟HP
2.薬樹株式会社の取り組み事例
薬樹株式会社は、健康な人、健康な社会、健康な地球をコンセプトに、真に健康な毎日をサポートする保険調剤薬局です。
薬樹株式会社では「エコステーション」と呼ばれる取り組みを行っています。
まだ着られる衣類を回収し、リユース業者への売却することで、国際人道支援を行うNPO法人へと利益を寄付します。
これらの利益は、アフリカの内戦の元こども兵の社会復帰支援や地雷除去などに役立てられます。
アフリカの内紛は、レアメタルや石油などの資源の奪い合いを原因とであることが多いため、限りある資源の大切さを知ってほしいという意味も込められています。
2019年には段ボール76箱分が集まり、これはラオスやカンボジアの地雷や不発弾撤去の支援、元こども兵士社会復帰センターの給食106食分に相当する寄付となりました。
まとめ
本記事では、SDGsの目標16「平和と公正をすべての人に」の概要、ターゲット、取り組みについて紹介してきました。
今回紹介した取り組みは、ほんの一部にすぎません。
この目標に対して取り組みを進めている企業、団体の取り組みを見てみてください。
活動分野は多岐に亘っており、様々なアプローチが世界で困難な生活を強いられている人々の支援になることがわかるでしょう。
「平和や公正」いうと難しいテーマに聞こえるかもしれませんが、そこには、あらゆる暴力や差別、食糧・生活物資の不足などの貧困、公的サービスへのアクセス困難などの様々な問題をはらんでいます。
こうした問題に派生していけば、身近なところでできることは意外とたくさんあります。
例えば簡単なことでは、食品ロスの削減や不用品のリサイクルなどもその一つです。
世界の現状に目を向け、戦争の現実、そこで暮らす人々の生活や問題について知ることで自分たちにできることを実践に移していくことが大切です。