日本における難民受け入れ状況は、2025年の1年間で難民と認定された人が187人にとどまるという数字に表れています。難民とは、人種・宗教・国籍・特定の社会的集団の構成員であること、または政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあり、国籍国の保護を受けられない人を指します(難民条約の定義)。この記事では定義の説明は最小限にして、2025年の認定数、制度の仕組み、世界の最新の数字、海外からの評価、日本国内の支援を順にたどります。読み終えたとき、ニュースで難民の数字を見かけても自分で読み解けるようになることを目指します。
日本の難民認定は今どうなっているのか|2025年の数字
出入国在留管理庁が2026年3月27日に公表した「令和7年における難民認定者数等について」には、日本の難民認定の最新状況がまとまっています。数字を並べると、申請は1万人を超える一方で、難民と認定される人は200人に届きません。ただし、在留が認められる道は難民認定だけではありません。
申請は約1.1万人、難民認定は187人
2025年の難民認定申請者は11,298人で、前年より1,075人(約8.7%)減りました。難民と認定された人は187人(一次審査183人、審査請求4人)です。2024年の難民認定者は190人でしたので、認定数はほぼ横ばいです。
一次審査で処理された人は14,832人で、前年より約77%増えました。ただし、この中には取り下げなどで手続きが終わった5,435人も含まれています。「申請した人のうち認定された人の割合」を考えるときは、申請の取り下げや審査の途中の人が混ざる点に注意が必要です。
難民以外にも在留が認められる3つの枠がある
2025年に難民認定制度の中で在留が認められた人は、全体で1,186人でした。内訳は、難民認定が187人、補完的保護対象者の認定が474人、人道的配慮による在留許可が525人です。「認定数が少ない」という見方だけでは、実際に日本に在留している人の姿を捉えきれません。
補完的保護対象者とは、条約上の難民には当たらないものの、紛争などで避難を余儀なくされた人を「難民に準じて保護すべき者」として認定する枠です。2025年の補完的保護の認定申請者311人は、主にウクライナ出身の人々でした。人道的配慮による在留は、難民にも補完的保護にも認定されなかったものの、個別の事情を考慮して在留を認める運用です。
審査請求は急増、認められたのはごくわずか
不認定とされた判断に不服を申し立てる審査請求は、2025年に7,702人となり、前年から約135%増えました。同じ年に処理された審査請求は4,676人で、このうち「理由あり」とされたのは8人(難民4人、補完的保護4人)でした。申請者にとっては、一次審査で認められなければ、その後の道もかなり狭いことが数字から読み取れます。
なぜ認定数が少ないのか|制度の線引きと誤解されやすい点
日本の認定数の少なさは、「受け入れる気がない」という一言で説明できる話ではありません。難民条約の定義の読み方、申請者の顔ぶれ、審査の手続きという3つの要因が重なっています。ここでは、数字の背景にある制度の線引きを整理します。
「迫害のおそれ」の立証が申請者に求められる
難民と認められるには、本人が迫害を受けるおそれが十分にあることを、資料や供述で示す必要があります。命からがら逃れてきた人が、日本語もわからない状況で、出身国の証拠書類をそろえるのは容易ではありません。国外で受けた迫害を第三者が裏づける資料が残っていないことも多くあります。
「紛争から逃れた」ことと「個人として迫害を受けるおそれがある」ことは、条約上は別の問いとして扱われます。この違いが、日本で補完的保護のような制度が設けられた理由の1つです。紛争を理由に避難した人は、条約上の難民には当たらなくても、保護される道ができました。
申請者の国籍は、世界の難民の出身国と一致しない
2025年の難民認定申請者の主な国籍は、タイ、ミャンマー、インド、スリランカ、バングラデシュでした。2024年はスリランカ、タイ、トルコ、インド、パキスタンです。世界全体で難民の数が多い国と、日本への申請者の出身国は、同じではありません。
日本は地理的に紛争地域から遠く、大規模な難民流入の経路にもなっていません。日本に申請する人の中には、就労を目的とした申請が含まれるという指摘が、政府・国会でたびたびされてきました。一方で、迫害のおそれから逃れてきた人が個別に紛れていることもあるため、国籍だけで申請者を一括りにはできません。
改正入管法で何が変わったか
2023年に成立した改正入管法に基づき、補完的保護対象者の認定制度が整えられました。あわせて、難民認定の申請中は一律に送還が停止されるという従来の取り扱いも見直されました。3回目以降の申請者などは、「相当の理由がある資料」を出さなければ、手続き中でも送還できるようになっています。
日本弁護士連合会の関係者などは、迫害を受けるおそれのある国へ人を送り返してはならないという国際原則に反しかねないと懸念を示してきました。政府側は、送還を逃れる目的の申請の繰り返しを防ぐための見直しだと説明しています。制度が実際にどう運用されるかは、今後の認定数と審査請求の結果を見ながら判断する必要があります。
世界の難民の現在地|2025年末の最新データ
日本の数字を理解するには、世界の動きとあわせて見る必要があります。UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が2026年6月に公表した「グローバル・トレンズ」は、2025年末時点の強制移動の状況を示しています。
強制移動者は1億1,780万人、10年ぶりに減少
2025年末の強制移動者は、世界で約1億1,780万人でした。前年末から約540万人減り、10年ぶりの減少と報告されています。内訳は、難民などが約4,160万人、国内避難民が約6,870万人です。
減少の大きな要因は、故郷への帰還です。2025年に帰還した人は約1,470万人で、前年から約5割増えたとされます。主な帰還先はシリア、アフガニスタンなどです。UNHCRは、帰還した人の多くが基礎的なサービスの不足やインフラの破壊、治安の不安定さに直面している点に警告を出しています。数字が減ったことが、状況の改善を意味するとは限りません。
受け入れの多い国は、紛争地の近隣国と欧州
難民や国際的な保護を必要とする人々の受け入れ数は、2025年末時点でコロンビアが約280万人、ドイツが約270万人、トルコが約240万人、ウガンダが約190万人、イランが約170万人と報告されています。かつて世界最大の受け入れ国とされたトルコが240万人まで減っている一方、周辺国に避難する人が多い構造は変わっていません。UNHCRの報告では、難民や国際的な保護を必要とする人の約65%が、出身国の隣国で暮らしているとされています。
この比較から、日本の「受け入れが少ない」という指摘がどこから出てくるのかがわかります。日本の難民認定数は、ドイツなどの数十万〜数百万人という規模とは桁が違います。ただし、各国は地理的条件も法制度も異なるため、人数の単純な比較だけで優劣はつけられません。
「難民鎖国」という海外の反応と、日本側の事情
日本の難民受け入れは、国内外で「難民鎖国」と呼ばれることがあります。この呼び方は、認定数の少なさを批判する文脈で使われる言葉です。批判の中身と、日本政府や慎重論の立場を並べて見ていきます。
国連の人権機関からの勧告
国連の自由権規約委員会は2022年11月、日本の難民認定率の低さに懸念を示し、国際基準に沿った包括的な難民保護の法制度の導入を勧告しました。この勧告では、入管収容の期間に上限を設けることや、裁判所による実効的な審査を受けられるようにすることも求められています。2020年には、国連人権理事会の恣意的拘禁作業部会も、司法審査のない無期限の入管収容を問題視しています。
こうした指摘は、認定数そのものだけでなく、審査の独立性や収容のあり方といった手続き面にも向けられています。批判の主な論点は、認定を出入国在留管理庁が担っていて中立性に疑問があること、申請の回数制限が国際原則に反しかねないことの2点です。
日本の主張と慎重論
一方で、日本は資金面でUNHCRを支えてきた主要な拠出国の一つとされ、世界の難民支援に貢献してきたと政府は説明しています。国内には、治安や雇用への影響を心配する声や、就労目的の申請への対策が必要だという意見もあります。
「受け入れが少ない」という批判と「資金面で貢献している」という評価は、どちらも事実の一面です。国外の支援と国内での受け入れを分けて見ると、日本の立ち位置が見えやすくなります。どちらか一方の評価だけで日本の姿勢を決めつけると、議論が噛み合わなくなります。
日本に逃れた人を支える仕組み
認定されるまで、あるいは認定された後に、日本で暮らす難民を支える仕組みには、国の制度と民間団体の活動があります。認定制度ほど注目されませんが、実際に暮らしを成り立たせているのはこうした支援です。
第三国定住と定住支援プログラム
第三国定住とは、最初に逃れた国から、受け入れに合意した別の国へ移り、定住する仕組みです。日本は2010年度にタイのミャンマー難民をパイロット的に受け入れ、2015年度からは、マレーシアに一時滞在するミャンマー難民を毎年約30人の枠で受け入れる本格実施に移りました。
入国後は、約半年間の定住支援プログラムで、日本語教育(572時限)や生活ガイダンスを受けます。2026年7月に取りまとめられた有識者の検討では、受け入れ人数を拡大すべきとまでは言いがたいとしつつ、日本語教育の見直しや、定住先の自治体・雇用先との連携強化が提言されています。
ウクライナ避難民への支援
2022年3月以降、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、日本は避難を目的とする入国者を受け入れてきました。出入国在留管理庁によると、2026年7月末時点(速報値)のウクライナ避難民の在留者数は1,935人です。2026年6月末時点の入国者の累計は2,897人とされています。
この対応は、前述の補完的保護の認定に結びついています。条約上の難民の定義には当たらないものの、紛争から逃れた人を保護するという考え方が、制度として形になった例です。
民間団体が埋める生活のすき間
国の支援は、第三国定住の難民や補完的保護の対象者に比べ、難民認定を申請している最中の人には十分に届かない場合があります。難民支援協会(JAR)のような認定NPO法人は、住まいの確保、医療機関との橋渡し、日本語の学習、6か月間の就労準備プログラムなどを実施してきました。難民認定の申請を支援する弁護士のネットワークもありますが、日本では担い手がまだ多くないと指摘されています。
難民の多くは高い専門性や経験を持っていますが、日本語や日本企業の働き方に合わせる難しさが就職の壁になっていると、支援団体は報告しています。企業が受け入れる側として関わる余地もここにあります。
私たちにできること
難民問題は遠い国の話ではなく、日本で暮らす人や、これから日本で暮らす人の話でもあります。大きな行動を求めるつもりはありません。まず1つだけ選んで試す、という程度の距離感で十分です。
数字の読み方を身につける
ニュースで「認定数が少ない」と見聞きしたとき、補完的保護や人道的配慮を含めた在留数、世界の受け入れ数、審査の手続きのどこに論点があるのかを確認してみてください。この記事で挙げた出典(出入国在留管理庁、UNHCR)は、毎年春と初夏に更新されます。数字が変わったときに、自分の理解も更新できます。
支援に参加する選択肢
難民支援には、寄付、ボランティア、情報発信などいくつかの入り口があります。UNHCRの活動を支える国連UNHCR協会や、国内で生活を支える難民支援協会などの団体は、寄付や活動の詳細を公式サイトで公開しています。
地域や職場で出会うときのために
職場や地域に、難民として日本に来た人がいる可能性もあります。「かわいそうな人」としてではなく、日本語の学習中の同僚や隣人として接することが、その人の暮らしを支える最初の一歩になります。「難民かどうか」を本人に尋ねる必要はありません。
まとめ
日本の2025年の難民認定は187人で、申請者は約1.1万人でした。ただし、補完的保護474人、人道的配慮525人を加えると、難民認定制度全体で在留が認められた人は1,186人になります。数字の見方によって、日本の姿は違って見えます。
世界では、2025年末の強制移動者が約1億1,780万人と10年ぶりに減りましたが、これは帰還者の増加が大きく、避難先や帰還先の状況が厳しい人は多く残っています。日本に対する「難民鎖国」という批判と、資金面での国際貢献という評価はどちらも一面の事実で、双方を踏まえて判断することが大切です。まず1つ、出入国在留管理庁かUNHCRの最新の資料を開いてみてください。
- 2025年の日本の難民認定は187人、補完的保護474人、人道的配慮525人で、制度全体での在留許可は1,186人
- 審査請求は7,702人と急増したが、処理された4,676人のうち「理由あり」は8人にとどまる
- 世界の強制移動者は2025年末に約1億1,780万人で、10年ぶりに減少した
- 「難民鎖国」という批判には、認定数だけでなく審査の独立性や収容のあり方への指摘も含まれる
- 国の定住支援を補うのは民間団体で、情報を知ることと小さな支援が最初の一歩になる
参考文献
- 出入国在留管理庁「令和7年における難民認定者数等について」(2026年)
- 出入国在留管理庁「令和6年における難民認定者数等について」(2025年)
- UNHCR「Global Trends Forced Displacement in 2025」(2026年)
- 出入国在留管理庁「ウクライナ避難民の在留者数」(2026年)
- 出入国在留管理庁「第三国定住による難民の受入れ」

