近年、経済成長が好転しているフィリピンですが、貧困が大きな問題となっています。
国内の経済が安定し国全体が潤うと、貧困削減に繋がるイメージをもつでしょう。
しかし、フィリピンの貧困問題を調べると、さまざまな原因が見えてきます。
本記事では、フィリピンの貧困の現状や原因・取り組みなどをまとめました。
経済成長が進むフィリピンで貧困が深刻化している
マニラやセブ島など人気の高い観光地もあり、世界中から多くの人々が訪れるフィリピン。
その点のみを切り取ると豊かな国に見えますが、陰では深刻な貧困問題が起きています。
なぜ貧困問題が深刻化しているのかについて踏み込んでいく前に、まずはフィリピンの現状について知りましょう。
人口の23.7%が貧困に苦しんでいる
フィリピン統計機構の発表によると、2021年時点でフィリピンの貧困率は23.7%でした。
人口約1億1,100万人のうち2,614万人の人々は、苦しい生活を送っていることになります。
また、貧困層の1カ月の生活費は3,000円ほどです。
通常、フィリピンで1カ月生活するためには、食費だけでも1人あたり5,000円ほどかかります。
それに加えて、家賃の支払いや生活用品を購入するお金も必要です。
このように貧困層の人々は、最低限の生活も保障されていない状態のなか暮らしているのです。
参照元:
・フィリピン統計機構
・人口:フィリピン2021|populationpyramid.ne
・フィリピンから貧困がなくならない理由とボランティアの役割|Gloleacebu
断ち切ることが難しい貧困の連鎖
貧困家庭の子どもは、自身も貧困から抜け出せずに、そのまま大人になるケースが大半です。
親は、その日の生活費を稼ぐことで精一杯なため、子どもを学校に通わせる余裕はありません。
少しでも収入を増やすために子どもを働かせたり、育てられない場合は孤児院へ預けたりもします。
それにより、子どもは学ぶ機会を失い、文字の読み書きや計算ができないまま大人になるのです。
結果、学歴も能力もなく社会に出ることになり、収入の安定した仕事にも就けず貧困に苦しみながら生きていきます。
このように、貧困は親から子供へと連鎖していくのです。
ここまでは、フィリピンの貧困の現状をお伝えしました。
貧困層が厳しい生活を送っていることを、理解できたのではないでしょうか。
そして、その影響を大きく受けているのが子どもたちです。
フィリピンの貧困層に生まれた子どもの現状
先述した通り、貧困の連鎖を断ち切ることは簡単ではありません。
フィリピンでは家計を支えるために、幼い子どもが学校に行かずに働く姿をよく目にします。
ここからは、貧困層の家庭に生まれた子どもたちについて見ていきましょう。
ストリートチルドレンにならざるを得ない子どもたち
路上で働く子どもを、「ストリートチルドレン」と言います。
小学生くらいの年齢の子どもが多く、働く理由も「家族のため」「学費を稼ぐため」などさまざまです。
なかには、幼い兄弟の面倒を見ながら働く子どももいます。
そして、日中は路上で働き夜は家に帰る子どももいれば、孤児院へ帰る子どもや家族と離れ子どもだけで生活している場合もあります。
一括りにストリートチルドレンと言っても、さまざまな状況の子どもがいるのです。
割合としては、家族と生活している、または接触を持っている子どもが大半だと言われています。
ストリートチルドレンが受けている被害
働かざるを得ない環境にいるストリートチルドレンは、事件や事故に巻き込まれやすい面もあります。
そして、下記のような被害を受けているのです。
・人身売買
・薬物中毒
・性暴力
・感染症
「学校に行かせてあげる」「お給料の良い仕事を紹介してあげる」など、甘い言葉をささやき子どもたちを誘拐。
また、路上生活を送る子どもは、寝ている間に連れ去られることも少なくありません。
その後、労働力として売られたり暴力を受けたりする被害が発生しています。
また、親から暴力を受け、その苦しみから薬物に逃げる子どももいるそうです。
政府はストリートチルドレン増加に歯止めをかけるために、さまざまな法律を制定しました。
しかし、根本的な問題である「貧困」が解決していないため、あまり効果を発揮していないのが現状です。
続いては、多くの問題を引き起こしている貧困の原因について見ていきましょう。
フィリピンで起きている貧困の原因
フィリピンの貧困は、下記のような原因が挙げられます。
階級格差
経済成長を遂げるフィリピンですが、その恩恵を受けているのは4割の中産階級以上の人々です。
本当に必要としている人には届かず、何の不自由もなく暮らしている人々に、お金が入る流れができています。
この流れを変えなければ階級格差はさらに広がり、貧困で苦しむ人が増えるでしょう。
無教育によって職業選択の幅が狭まる
職業選択の幅は、学力によって変わります。
例えば、マニラでベビーシッターとして働きたい場合は、小学校を卒業していなければいけません。
また、コンビニ定員は、高校卒業に加えて英語力も必要です。
職種や地域によって異なりますが、ある程度の能力が求められます。
そのため教育を受けていない人は、日雇いの力仕事や家事手伝い・物売りなど、低収入の仕事の中から選択せざるを得ないのです。
お給料も、1カ月働き、やっと1万円程度の金額になります。
このように、教育と貧困は繋がっているのです。
先進国への輸出品を作るために低賃金で働かされている
「先進国の業者が現地の人を雇い、輸出用の農作物や水産物をつくる」
フィリピンに限らず、発展途上国では一般的なことです。
しかし、長時間働いたにもかかわらず、1日分の生活費にも満たない金額しか貰えないケースも少なくありません。
このような悪徳業者が存在するため、現地の人々が貧困から一向に抜け出せないのです。
悪徳業者を減らすために、働きに見合った賃金を支払い、生産者にも配慮しているフェアトレード製品の選択が大切です。
私たちも「ただ安いから」という理由で製品を購入すると、知らず知らずのうちに悪徳業者へ加担している恐れがあります。
ここまでは、貧困の原因についてお伝えしました。
続いては、貧困問題を解決するために行われている取り組みに焦点を当てます。
参照元:エシカル・バナナキャンペーン
フィリピンの貧困問題を解決するための取り組み
最近は、フィリピンの貧困問題を解決しようと、国外からの支援も増えています。
自立支援施設の設立
ストリートチルドレンや虐待・育児放棄などによって、帰る場所を失った子どもたちを受け入れる施設が設立されています。
心身のケアだけではなく、安定した仕事に就けるように教育を受ける環境も整えられているのです。
これまで、貧困層の子どもは学校に行けず、大人になっても定職に就けないケースが大半でした。
しかし、自立支援施設ができたことによって、安定した職に就ける可能性も高くなります。
貧困の連鎖を断ち切ることに繋がるでしょう。
参照元:フィリピン 貧困の連鎖に対する「若者の家」という解決策、そして希望|国境なき子どもたち
フェアトレード事業
働き口がない貧困層の若者や女性を対象に、仕事の機会を提供している団体も存在します。
認定NPO法人アクセスでは、フェアトレード事業を通して貧困層の自立を支援。
生産者である若者や女性が、1つひとつ手作りした商品を販売しています。
商品が売れる度に生産者の収入は上がり、仕事に対する自信にも繋がるのです。
また、商品の販売だけではなく、生産管理や原材料の調達・品質管理など自立のために必要なスキルも学べます。
まとめ
階級格差や無教育など、さまざまな理由から深刻化するフィリピンの貧困問題。
悪化を防ぐためにも、早急な対策を行わなければいけません。
私たち個人も、直接できることは少ないかもしれませんが、フェアトレード製品の購入や寄付など、間接的に支援できることはあります。
「自分が暮らす国ではないから関係ない」ではなく、自分にも何かできることはないか考えてみましょう。
あなたの行動が、誰一人取り残さない世界をつくることに繋がります。
すべての人が最低限の生活を送れるように、できることから始めましょう。