昨今、日本でも少しずつ浸透している「ゼロウェイスト」ですが、世界に目を向ければ、すでに定着している国も多くあります。
ゴミを出さずに暮らすことを表しており、誰でもできるエコな暮らしとして注目を集めている概念です。
こちらの記事では、ゼロウェイストについて詳しく解説するとともに、世界の廃棄物対策についても解説します。
ゼロウェイストとは?
ゼロウェイストを英語表記するとZero Wasteとなり、読んで字のごとくゴミをゼロにするという意味です。
大量生産・大量消費が当たり前となった昨今、現代社会は環境に多大なる影響を及ぼしています。
ゼロウェイストは、こうした状況に危機感を持った人の活動により始まりました。
ゼロウェイストの方法は、人によって様々でバリエーションも豊富です。
例えば、生ゴミのコンポストを活用するのもゼロウェイストのひとつです。
そのほか、昨今、日本でも定着しつつあるエコバッグもすぐに取り入れやすい手段でしょう。
また、カーシェアリングやレンタルサービスも、ゴミを出さない生活として非常に有効です。
ゼロウェイストに向けた5つの「R」
ゼロウェイストの提唱者であり、実際にゼロウェイストな生活を手がけているカリフォルニア在住のベア・ジョンソン氏は、ゼロウェイストにつながる行動として5つの「R」を挙げています。
続いては、それぞれ「R」について解説します。
Refuse
Refuseとは「断る」を意味する単語です。
つまり、レジ袋を断ったり無料で配布されるティッシュを受け取らないといった行動を断つことを表します。
これらのアイテムは、もらってすぐにゴミになる可能性があるためです。
ゴミになる根源を断つことで、ゼロウェイストに近づくことができます。
Reduce
Reduceは「減らす」という意味があります。
例えば、ショッピングセンターで安売りをしていれば、つい必要のないものを買ってしまうこともあるでしょう。
結局使わずに、タンスの肥やしとなるアイテムも少なくありません。
購入をする段階で本当に必要なものかどうかを見極め、消費を減らす行動もゼロウェイストにつながります。
Reuse
再利用を表すのがReuseです。
最近は、日本でもマイバッグやマイボトルなどが浸透しており、何回も使えるアイテムが重宝されています。
使い捨てのアイテムをできるだけ避けて、ゼロウェイストを目指しましょう。
Recycle
Recycleはリサイクルの英語表記で、資源を有効的に活用することを指しています。
使わなくなったものは分別回収に出したり、フリマアプリで売るというのも一つの手段でしょう。
Rot
他の行動と比べて聞きなれない単語ですが、堆肥にして自然に還すことを「ロット」と言います。
コンポストを活用して、生ゴミを再利用する方法が該当するでしょう。
日本のゴミ事情について
ゼロウェイストを始めるためには、まず日本のゴミ事情を知っておく必要があります。
環境省が令和2年3月30日に発表した「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度)について」で、ゴミ排出量が東京ドーム115杯分に相当する4,272万トンあったと伝えられました。
前年度と比べると0.6%減少しているものの、ゴミ処理事業費用は増加しており、課題は残ります。
参照元:一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度)について|環境省
日本のリサイクルについて
日本は、リサイクル技術の先進国だと言われています。
しかし、リサイクルをするためには回収から運搬、加工に至るまで、莫大なエネルギーと手間がかかる点は否めません。
例えば、ペットボトルを理細工するためには多くの石油が使われています。
リサイクルを行うことによって資源が多く使われるといった、本末転倒な事態も起こっているのです。
一方で、リサイクル時に発生する熱を再利用する「サーマルリサイクル」も浸透しつつあります。
このように、リサイクルに関する課題はまだありますが、対策も少しずつ進み始めているのが現状です。
ゼロウェイストに関する取り組み
日本を含めた世界の国々で、多くの企業や自治体がゼロウェイストに関する取り組みを行なっています。
こうした取り組みを知ることで、個人個人の行動も変わっていくでしょう。
続いては、企業や自治体の取り組みをご紹介します。
カンタス航空による取り組み
オーストラリアや南半球最大の航空会社であるカンタス航空でも、ゼロウェイストに関する取り組みを行なっています。
機内サービスで使われる使い捨てのプラスチック製品を、2021年末までに75%削減する目標を掲げました。
具体的には、機内食で使われるカトラリーなどのアイテムをサトウキビでできたお皿やデンプンでできたナイフ・フォークに置き換えるという方法です。
その他、2012年には初めてバイオ燃料によるフライトを実施しています。
2018年には、オーストラリア・アメリカ間のフライトも、バイオ燃料にて行いました。
参照元:カンタス航空HP
徳島県上勝町の取り組み
日本で初めて「ゼロウェイスト宣言」を行ったのが、徳島県上勝町です。
2003年には宣言を行い、その段階で2020年までに焼却・埋め立て処分をなくすための最善の努力をすると謳っていました。
現在もゼロウェイストの先駆者として、「未来のこどもたちの暮らす環境を自分の事として考え、行動できる人づくり」といった目標を掲げています。
また、具体的な課題を立てて一歩ずつ歩んでいる様子が行政ホームページからも伝わるでしょう。
参照元:「ゼロ・ウェイスト宣言」2030年に向けて|上勝町役場
祇園祭の取り組み
日本三大祭りとして古くから親しまれている京都の祇園祭でも、ゼロウェイストを目指した取り組みが行われています。
2014年に開催された祇園祭では、リユース食器を導入し、ゴミの分別にも尽力しました。
この活動は「祇園祭ごみゼロ大作戦」と銘打たれ、以降毎年のように実施されています。
その結果、取り組みを開始する前年の2013年には約57万トンあったゴミが、平均約42トンまで削減されました。
2021年も引き続きゼロウェイストに対する取り組みは実施されています。
参照元:【広報資料】「祇園祭ごみゼロ大作戦2021」ボランティアスタッフを募集!|京都市HP
Loop
2021年にアメリカから日本にやってきたサービスが「Loop」です。
使い捨てのプラスチック容器の代替品として、耐久性の高いステンレスやガラス容器を使い、その中に食品や調味料、洗剤といった日用品を重鎮して販売します。
例えば、ロッテのキシリトールガムや資生堂のアクアレーベルなどが参入しており、中身がなくなれば一度容器は回収され、洗浄して再利用するのが特徴です。
パッケージのデザイン性も高く、おしゃれにサステナブルな生活を始められるのも魅力でしょう。
オンラインストアやスーパーで購入することができ、容器は宅配業者か店舗内の回収ボックスに入れるだけで手間もかかりません。
こうしたゼロウェイストにちなんだサービスは、これからも増えていくでしょう。
参照元:Loop公式サイト
まとめ
ゼロウェイストを暮らしに導入するためには、まず自分の家庭から出ているゴミがどの程度あるかを知ることが欠かせません。
思ったよりもたくさんのゴミが出ていることに驚く人もいるでしょう。
とはいえ、一度に全てのゴミをなくすことはできません。
しかし、エコバッグを持ち歩いたり、コーヒーショップにはマイボトルを持っていくという人も増えています。
自分にできることから、ゼロウェイストに向けた行動を起こすことで、一歩ずつゼロウェイストに近づくでしょう。
まずは、小さな一歩からで構いません。
意識を向けることで、いつの間にかゼロウェイストに向けた行動が増えていきます。