数年前、大量の恵方巻が廃棄されているというニュースが話題になりました。
記憶に新しい方も多いのではないでしょうか?
世界には飢餓で苦しんでいる人々が約8億人以上いる一方で、年間約13億トンの食品ロスが発生しています。
日本の食品ロスが減少しないのは、食品メーカーと小売店との間にある昔からの慣習によるところも大きいと言われています。
今回は、食品ロスによる主な影響と現状、SDGsとの関係性、私たちにできることについて考えていきたいと思います。
【この記事で学べるポイント】
- 食品ロスとは?現状とSDGsとの関係
- 食品ロスによって起きるマイナスの影響
- 私たちができること
食品ロスとは
食品ロスとは「食べられるのに捨てられてしまう食べ物」のことです。
農林水産省によると、日本の食品ロスは年間約570万トンとなっており、一人あたり1年で45㎏。
毎日お茶碗一杯分のごはんを捨てている量に相当します。
食品ロスというワードと引き離せないのが「3分の1ルール」です。
3分の1ルールとは「食品の納入期限を賞味期限の3分の1以内にする」という食品メーカーと小売店との間で決められた慣習です。
例えば、上記の図のように賞味期間6ヵ月の場合、食品メーカーは製造してから2ヵ月以内に小売店に食品を納入しなければなりません。
納入できなかった製品に関しては、小売店も受け取ることができないため、値引き販売もしくは廃棄となってしまいます。
この3分の1ルールは食品ロスが解決しない原因となっており、日本全体で見直しの動きが出ています。
参照元:食品ロスとは|農林水産省 HP
食品ロスが与える影響とは?
なぜ食品ロスが問題となっているのでしょうか?食品ロスが与える主な影響は以下の3つです。
- 大量の二酸化炭素を排出
- 食の不均衡
- 経済的損失
それぞれの影響について確認しましょう。
影響①:大量の二酸化炭素を排出
先述の通り、食品ロスは年間約570万トンとなっており、それらを廃棄する際には大量の二酸化炭素が排出されます。
特に食べ残しなどの生ごみは水分量が多く、他のごみに比べて焼却に時間がかかるため、その分二酸化炭素の排出量も増えてしまうのです。
二酸化炭素は地球温暖化や異常気象の原因となるため、排出量を減らす必要があります。
影響②:食の不均衡
大量の食品ロスが発生するなど先進国を中心に食料があり余っているのにもかかわらず、飢餓に苦しんでいる人たちがたくさん存在しています。
2021年は新型コロナウイルスの影響で栄養不足に陥った人が増加しており、その数は最大で8億1,000万人と推定されています。
食品を必要とする人々が食べられず、本来食べられるものが捨てられている現状を変える必要があるでしょう。
参照元:世界の飢餓、新型コロナウイルスで悪化 アフリカ人口の2割以上が栄養不足 食料と栄養に関する国連合同報告書|ユニセフ協会HP
影響③:経済的損失
食品が製造されて私たちの手元に届くまでに、当然、製造や物流における過程で工場の燃料代や人件費などのコストが発生しています。食品の廃棄が発生するということは、それらのコストを無駄にしてしまっているというわけです。
2022年の日本総研の発表によると、食品ロスの削減効果は4.7兆円にのぼるそうです。これは1世帯あたり年間5.4万円に相当します。物価高が続く経済の中で、食品ロスを減らすことで少しでも経済的負担を減らすことに繋がると言えます。
食品ロスの現状と対策
食品ロスの現状と対策について見ていきましょう。世界と日本の現状をご紹介します。
世界の現状と対策
日本と同様に、世界でも食品ロスは大きな問題となっています。
農林水産省によると、人口1人あたりの食品廃棄物発生量(※)が一番多い国はイギリスで187kg、フランス148〜200kg、アメリカ177kgと先進国が上位を占めています。
食品ロスの対策例として、フランスでは2016年に食品ロスに関する法律「食品廃棄法」が制定されています。
具体的には、スーパーマーケット等で売られている賞味期限切れや賞味期限が迫っている食品を廃棄しません。
ボランティア団体などに寄付することで、食に困っている子どもたちや家庭に配分されるという仕組みになっています。
(※)まだ食べられる食品と、魚の骨などの食べられない部分を併せて食品廃棄物発生量と呼ぶ。
日本の現状と対策
次に、日本の現状と対策を見ていきましょう。
日本は一人あたりの年間食品廃棄物発生量は約133キロ、隣国の韓国や中国に比べて20〜60㎏ほど多くなっています。
先述の通り、3分の1ルールなどの慣習が根強く残っていることも日本の食品ロスが多い理由の一つと言えます。
そこで日本では2030年までに、事業系・家庭系食品ロスどちらも2000年のロス量から半減を目指しています。
「2030年」という期限、聞きなじみがある数字ですね。そう、まさにSDGsとの関連性がここにあるのです。
SDGsと食品ロスの関係性
食品ロスを減らす行動は、
・目標1「貧困をなくそう」
・目標2「飢餓をゼロに」
・目標12「つかう責任 つくる責任」
の達成につながります。
目標12にある「2030年までに、お店や消費者のところで捨てられる食料(一人当たりの量)を半分に減らす。また、生産者からお店への流れのなかで、食料が捨てられたり、失われたりすることを減らす」は、食品ロス削減の目標と言えるのです。
食品ロスに対して私たちができること
食品ロスを減らすためには、消費者である一人ひとりの行動がとても重要です。私たちにできることを2つ紹介します。
例①:こまめに買い物をしよう
食品ロスを減らすためには、なるべくこまめに買い物をするようにしましょう。
こまめに買い物することで、食材を腐らせてしまったり、買い過ぎをしてしまったりするのを防止できます。
「仕事で忙しい」「こまめに買い物に行くのは億劫」と思う方も、自分の可能な範囲で大丈夫です。
買い物に行く回数を少し増やしてみることを心がけてみましょう。
例②:特殊冷凍の食品を購入してみよう
特殊冷凍技術の食品を購入してみるのも一つの方法です。
例えば、パンを放置しているとすぐに硬くなってしまいます。
そのため、多くの売れ残り品が廃棄処分されていました。
そこで、現在は冷凍パンの自動販売機導入が行われています。
冷凍したパンは、トースターやレンジなどで解凍すれば本来の美味しさが味わえます。
特殊な方法で急速冷凍することで、細胞のダメージを最小にし、うまみや栄養素を残すことができるという仕組みです。
パン以外にもお寿司、お酒なども冷凍保存できるようになっています。
最近は冷凍食品専門ショップが続々とオープンしているため、気になる方はぜひチェックしてみてください。
参照元:
・フードロス「0」めざして|タウンニュース
・伊藤忠食品/横浜の冷凍食品専門店で冷凍食品「凍眠市場」販売|流通ニュース
まとめ
今回は、食品ロスが与える影響とは何か、世界と日本の現状、SDGsとの関係性、個人にできることを紹介しました。
食品ロスは迅速に解決すべき問題ですが、根深いルールや私たちの習慣を変えるのは容易なことではありません。
まずは、私たちの先入観や考え方を変えていくことが、食品ロス問題解決への第一歩。
「賞味期限が近い商品から購入してみる」「食品ロスの商品をネットで調べてみる」など、できることから始めてみてくださいね。