食品ロスについて考えたことはあるでしょうか。
食品ロスとは、まだ食べられる状態であるにも関わらず、廃棄してしまう食品のことです。
食品ロスは資源の無駄遣いになることはもちろん、焼却時のCO2排出などの環境への影響を及ぼすため、私たちにとって身近な社会問題の1つと言えるでしょう。
実際、SDGs目標12の「つくる責任 つかう責任」にもあるように、持続可能な社会の実現のためには、世界中で食品ロスを可能な限り減らしていくことが望まれています。
食品ロス削減のためにできることはさまざまありますが、今回は特に企業の取り組みにスポットを当て、具体的な事例をご紹介します。
食品ロスの現状
農林水産省によれば、日本での食品廃棄物は年間2,531万tに上ると言われています。
その中で、本来食べられるのに捨てられている食品(=食品ロス)の量は年間600万t。
この内訳は事業系食品ロスが324万t、家庭系食品ロスが276万tであり、個人はもちろんですが、企業の食品ロスに対する取り組みが重要であることが分かります。
参照元:食品ロスとは|農林水産省HP
企業は何ができるのか?
食品ロスに対して、企業はどんな取り組みができるのでしょうか。
現在、食品リサイクル法において、「事業系食品ロスの削減に関して、2000年度比で2030年度までに半減させる」という新たな基本方針が打ち出されています。
これに伴い、同法に基づいて不可食部も含めた食品廃棄物等の発生抑制目標値が業種別に設定されており、食品ロスの発生抑制が推進されています。
参照元:農林水産省 食品廃棄物等の発生抑制の取組|農林水産省 HP
企業は上記の発生抑制目標値を達成するため、以下のような取り組みを行うことが推奨されています。
業種共通 | 商習慣の見直し(返品・過剰在庫削減)、余剰フードのフードバンク寄贈、需要予測精度向上 |
製造業 | 賞味期限延長・年月表示化、過剰生産 |
卸・小売業 | 売り切り、配送時の汚・破損削減、バラ売り |
外食産業 | 調理ロス削減、食べ切り運動の呼びかけ、提供サイズの調整、ドギーバッグ等での持ち帰りへの協力(自己責任) |
企業の食品ロス対策事例
食品ロス問題との関わりが深い、大手コンビニと食品メーカーの事例を取り上げ、具体的にどんな食品ロス対策を行なっているのかをご紹介します。
同じ業界であっても各社の取り組みは三者三様であり、独自の工夫が伺えます。
コンビニの取り組み
まずは、大手コンビニチェーンの取り組みをそれぞれ詳しく見ていきましょう。
セブンイレブンの事例
セブンイレブンでは、2020年5月から全国の店舗で「エシカルプロジェクト」を開始しています。
販売期限が近づいた対象商品に店頭価格の5%分のnanacoボーナスポイントを付与することで、食品廃棄物の発生を抑制する取り組みです。
また、生産工場の技術革新による長鮮度商品開発に注力しています。
製造工程や温度、衛生管理を見直すことで保存料を使うことなく安全・安心を保ちつつ、味・品質を高めながら消費期限延長を実現しています。
その他にも、フードバンクへの寄贈や家庭での食品ロスに対する啓蒙活用など、積極的な取り組みを行なっています。
参照元:セブン&アイ・ホールディングス 食品ロス・食品リサイクル対策|セブン&アイ・ホールディングスHP
ローソンの事例
ローソンでは、製造段階で原材料の投入量、出来高量、盛り付け量など、すべてグラム単位で計量して商品を製造する「生産加工管理システム」を導入し、食品ロスの削減を図っています。
一方で店舗では、商品の発注に「セミオート(半自動)発注システム」を導入し、売上動向や客層の情報、天気などの情報を分析し、最適な品揃えと商品別の発注数を自動的に推奨するシステムを活用。無駄な廃棄を抑制する発注制度の向上に取り組んでいます。
売れ残り商品の飼料化・肥料化リサイクルにも力を入れており、食品ロスの発生抑止とリサイクルにバランス良く取り組んでいます。
ファミリーマートの事例
ファミリーマートでは、商品の包装にも工夫を凝らしています。
例えば、お惣菜シリーズ「お母さん食堂」の商品の一部に「ガス置換包装」を採用し、通常のパッケージよりも鮮度を保ち、添加物を増やすことなく消費期限を延長させています。
また、冷凍食品は消費期限の観点から食品ロスの削減につながるという考えから、冷凍食品の品揃えを充実させ、売り場の拡大を行なっています。
一方、ストアスタッフ全員を対象とした環境関連法令遵守などの教育にも取り組んでいます。
教育ツール「ecoぱーとなー」を通じた環境情報の電子配信や、点検ツールを配信することで、廃棄物のリサイクルをはじめとした環境に対する取り組みの意識向上を図っています。
参照元:ファミリーマート 食品ロスの削減|ファミリーマートHP
食品メーカーの取り組み
コンビニだけではなく、大手食品メーカーも食品ロス削減のために様々な取り組みを行っています。
ここでは、ニチレイとキューピーの取り組みをご紹介します。
ニチレイの事例
ニチレイでは、長期保存や品質保持、食材の再現性といった冷力の特性を生かした事業を通じて、食品ロス削減に貢献しています。
特にサプライチェーン全体での取り組みを強化しており、調達時には食材を全国各地の冷蔵倉庫で適正な温度で保管し、鮮度と品質を維持しながら必要なときに必要な分だけ使用しています。
また、流通時には低温物流拠点と全国を網羅する輸配送ネットワークを活かし、物流過程での食品ロス削減を行なっています。
キユーピーの事例
キユーピーは、ユーザーに対する食品ロスへの注意喚起や、食料廃棄の抑止効果を狙った取り組みとして、一部製品の賞味期限表示を「年月日」から「年月」への変更、並びに一部製品の賞味期間延長を実施。
賞味期限の「年月」表記による返品の抑制や、製造から流通までのオペレーションの一部短縮化によるコスト削減を図っています。
また、マヨネーズ製造に使用する卵や野菜の再資源化のため、東京農工大学との共同研究も行なっており、研究結果が日本畜産学会で報告されるなど、産学の取り組みにもつながっています。
参照元:キユーピー もったいない!みんなで減らそう食品ロス|キユーピーHP
企業の食品ロス対策はSDGsを推進する
今回は、食品ロス問題に対する企業の取り組みについてご紹介しました。
各社の事例を見てみると、食品ロスの発生抑制をすることはもちろん、発生してしまった食品ロスのリサイクルなどにも工夫を凝らしていることがお分かりいただけたのではないでしょうか。
食品ロス問題は、個人と企業が一緒に取り組むことで、効果はより大きなものとなります。
それぞれの立場でできることを着実に実施し、持続可能な社会の実現につなげていきましょう。