CO2の排出量が実質ゼロとなるカーボンニュートラルな発電として、近年注目が集まっているバイオマス発電。
皆さんは、バイオマス発電についてご存知でしょうか。
電気は私たちの生活に無くてはならない大切なものですが、SDGs13「気候変動に具体的な対策を」でも述べられているように、従来のCO2を大量に排出するような発電方法は持続可能な社会の実現に逆行しているとも言えます。
そこで今回は、環境に優しい再生可能エネルギーの1つ、「バイオマス発電」をテーマに、その特徴や日本での現状について解説します。
「バイオマス発電という言葉は知っているけれど、どんな仕組みなのかはよく知らない…」
「日本のバイオマス発電の現状ってどんな感じなの?」
という方に向けて、基礎的な内容から詳しく解説しますので、ぜひ最後までご覧ください!
バイオマス発電とは?
バイオマス発電とは、動植物などの生物資源を使った発電方法です。
生物を意味する「bio」と、量を意味する「mass」からできた言葉で、化石燃料以外の生物由来の再生可能資源を指します
植物などの生物資源を燃やすことでCO2を排出しますが、植物の成長過程において光合成が行われ大気中のCO2を吸収するため、排出と吸収でそれぞれ相殺され、CO2の排出量が実質ゼロとなるいわゆる「カーボンニュートラル」で地球温暖化の防止につながると言われています。
ただし、一部の環境団体からはバイオマス発電がカーボンニュートラルを実現していないという見解が出るなど、意見が分かれている点もあるのが現状です。
バイオマス発電に使用される資源は?
バイオマス発電に使用される生物資源には、主に4つの種類があります。
・木質系バイオマス:間伐材、未利用材、廃材など
・家畜系バイオマス:牛や豚、鶏などの家畜の排泄物など
・食品系バイオマス:生ゴミや食品廃棄物など
・植物系バイオマス:稲わら、サトウキビ、なたねなど
食品系バイオマスを「バイオガス」、植物系バイオマスを「バイオエタノール」と呼ぶこともあります。
特にバイオエタノールは自動車関係の話題で登場することもあり、聞きなじみがある方も多いのではないでしょうか。
発電目的だけではなく、自動車向けの燃料として使用されているなど、再生可能エネルギーはさまざまな場面で活用されています。
バイオマス発電の効果
近年バイオマス発電が注目される背景として、CO2の排出量が実質ゼロとなることはすでにお伝えしていますが、他にも以下のような効果があります。
農山漁村の活性化:家畜の廃棄物や稲わら、未活用の木材など、本来であれば廃棄されていたものや活用方法がなかなか見いだせないバイオマス資源を活用することで、農村漁村内で自然循環させることができ、農村漁村の持続的な発展を望めます。
地域環境の改善:家畜の排泄物や生ゴミなどは、適切に処理がされないと、地域環境を汚染することにもつながります。これらを上手に活用しながら処理することで地域環境を改善できます。
バイオマス発電は単なる発電だけでなく、地域の発展にも一躍買っていることが分かります。
バイオマス発電における3つの方式
バイオマス発電には下記の異なる3つの発電方式があります。それぞれ説明していきます。
直接燃焼方式
直接燃焼方式は、火力発電と同じ方式です。
バイオマス燃料を燃焼させて水を沸騰させ、水蒸気でタービンを回して発電します。直接燃焼方式は作り出せる温度が比較的低いので、大型の設備でないと発電効率が良くありません。ただし、大型の設備を安定稼働させるためには、品質の高いバイオマス燃料が大量に必要です。
熱分解ガス化方式
熱分解ガス化方式は、木材などのバイオマス燃料を高温で熱処理することで炭化する際に出る「熱分解ガス」を燃料に、タービンを回して発電するしくみです。
直接燃焼方式と比べると、燃焼温度が高いため、規模が小さい発電所でも行えるのが特徴です。
生物化学的ガス化方式
生物化学的ガス化方式は、下水汚泥や家畜の糞尿を発酵させてメタンなどのガスを発生させ、タービンを回して発電するしくみです。発酵させることから、水分が多いバイオマスでも活用できます。
また、廃棄物を有効利用できる点もメリットです。糞尿からメタンガスを発酵させた際にできる消化液は肥料に、残りかすは再生敷料として有効利用もできます。
バイオマス発電のメリット・デメリット
バイオマス発電のメリット・デメリットをそれぞれ見ていきましょう。
バイオマス発電のメリット
再生可能エネルギー
バイオマス発電は植物や動物の廃棄物、木材、農業残渣などを燃料として使用するため、再生可能なエネルギーです。これにより、化石燃料への依存を減らし、持続可能なエネルギー供給が可能です。
地域資源の活用
バイオマス発電では地域資源を活用できます。これにより、地元産業の振興や雇用創出につながり、地域経済の活性化が期待できます。
廃棄物処理
バイオマス発電は、廃棄物を燃料として利用するため、廃棄物の処分負担を軽減し、リサイクル社会の実現に貢献します。また、動物の排泄物や農業残渣を発電燃料として利用することで、これらの廃棄物の有効活用が可能です。
バイオマス発電のデメリット
発電コスト
バイオマス発電の設備投資や燃料調達、運転・保守管理などのコストが高いため、発電コストが化石燃料に比べて高くなることがあります。一部のバイオマス発電技術はまだ成熟しておらず、効率的な発電が難しい場合もあります。
燃料供給の安定性
バイオマス燃料は、収穫時期や天候などの影響を受けやすく、安定した供給が難しい場合があります。そのため、燃料の調達や運搬にコストがかかることがあり、エネルギーの安定性が低下する恐れがあります。
また、化石燃料発電設備に比べて運用・保守管理が複雑であることもあります。特に、バイオマス燃料の品質管理や発電設備の清掃・メンテナンスなど、これらの作業にはコストや労力がかかります。
環境への影響
バイオマス発電は温室効果ガスの排出を抑制する効果がありますが、燃焼時に他の有害物質が排出されることがあります。また、燃料となるバイオマスの生産が過剰になると、生物多様性や土壌の状態が悪化することが懸念されます。
日本におけるバイオマス発電の状況
日本において、バイオマス発電はどのくらい浸透しているのでしょうか。
バイオマス発電導入の背景
日本では、2002年に「バイオマス・ニッポン総合戦略」が閣議決定されたことを機に、バイオマス発電の導入が進みました。その後、2006年に行われた改訂や、2009年に制定された「バイオマス活用推進基本法」により、さらに普及していきます。
そして、2012年の7月から「固定価格買取制度(FIT制度)」が始まり、バイオマス発電も対象となっており、安定的に運転できる再生可能エネルギーとして高い注目を集めるようになりました。
バイオマス発電の割合
確かにバイオマス発電の認知度は上がっていますが、実際はメジャーな発電方法とは言えないのが現状です。
資源エネルギー庁が報告している「電力調査統計」によれば、国内発電量のうちバイオマス発電が占める割合は、2021年時点で4.1%程度。
地熱や風力、太陽光など、他の再生可能エネルギーと比較するとバイオマス発電の割合はやや多くなっていますが、それでも全体から見ればまだまだ少ないと言えるでしょう。
2050年の脱炭素化が叫ばれている昨今、バイオマス発電をはじめとした再生可能エネルギーの浸透がますます期待されています。
参照元:2021年の自然エネルギー電力の割合(暦年・速報) | ISEP 環境エネルギー政策研究所
バイオマス発電所の立地
バイオマス発電所はどういった場所にあるのでしょうか。
バイオマス発電では、さまざまな廃棄物などを利用するため、収集や運搬・管理するのに便利な立地でないと無駄なコストがかかってしまいます。
また、廃棄物の内容によっては、住環境に近い地域には建設できないこともあります。
こうした条件を踏まえ、一般的には、山林や牧場、下水処理施設、廃棄物処理施設の内部あるいは隣接する場所に建設されることが多くなっています。
バイオマス発電に限ったことではありませんが、発電所の建設というのは近隣住民にとって大きな負担がかかることも事実。
トラブルを避けるためにも、建設立地の選定は慎重に行う必要があります。
バイオマス発電所一覧
バイオマス発電所は、全国に点在しています。
ここでは、近年設立された新しい発電所を中心に、国内のバイオマス発電所を10拠点ご紹介します。
名称 | 発電事業者 | 所在地 | 設備認定日 |
室蘭バイオマス発電所 | ENEOSバイオマスパワー室蘭合同会社 | 北海道室蘭市 | 2020年5月 |
四日市バイオマス発電所 | 中部電力株式会社 | 三重県四日市市 | 2020年5月 |
大船渡バイオマス発電所 | 大船渡発電株式会社 | 岩手県大船渡市 | 2020年1月 |
豊前バイオマス発電所 | 豊前ニューエナジー合同会社 | 福岡県豊前市 | 2020年1月 |
西風新都バイオマス発電所 | 太平電業株式会社 | 広島県広島市 | 2019年10月 |
CEPO半田バイオマス発電所 | CEPO半田バイオマス発電株式会社 | 愛知県半田市 | 2019年10月 |
防府バイオマス・石炭混焼発電所 | エア・ウォーター&エネルギア・パワー山口株式会社 | 山口県防府市 | 2019年7月 |
八戸エコエネルギー発電所 | エム・ピー・エム・王子エコエネルギー株式会社 | 青森県八戸市 | 2019年7月 |
JRE神栖バイオマス発電所 | 合同会社JRE神栖バイオマス発電 | 茨城県神栖市 | 2019年5月 |
七ツ島バイオマス発電所 | 七ツ島バイオマスパワー合同会社 | 鹿児島県鹿児島市 | 2019年1月 |
参照元:
・設備概要|ENEOSバイオマスパワー室蘭合同会社・中部電力のバイオマス発電所|中部電力
・イーレックスグループのバイオマス発電所|イーレックス株式会社
・西風新都バイオマス発電所|太平電業株式会社
・CEPO半田バイオマス発電所の営業運転開始について|株式会社シーエナジー
・AWEP山口について|エア・ウォーター&エネルギア・パワー山口株式会社
・八戸エコエネルギー発電所のご案内|エム・ピー・エム・王子エコエネルギー株式会社
・JRE 神栖バイオマス発電所の竣工式が執り行われました|ジャパン・リニューアブル・エナジー株式会社
・七ツ島バイオマス発電所が竣工しました|九電みらいエナジー
まとめ|バイオマス発電の普及に注目
今回は、バイオマス発電の基礎知識や国内の現状について解説しました。
先述のバイオマス発電所の一覧を見てみると、ここ数年でバイオマス発電所の数がかなり増えていることがお分かりいただけたかと思います。
バイオマス発電は旧来の発電方法と違い、CO2を発生させないことや、本来であれば廃棄するはずだったものを再生する環境に優しいクリーンな発電方法です。
しかし、発電所の立地やコストなど、当然導入に際しての課題もあります。今後日本において、バイオマス発電がどのように普及していくのか、ぜひ注目してみてください。