今、若い世代ほど認知度が高い「SDGs」。
実は、工夫をこらしたSDGsの取り組みが多くの学校で実施されています。
その背景に、文部科学省が持続可能な教育を推進していることが挙げられます。
けれども、「どうしてSDGsが学校で必要なのか?」「どんな取り組みがあるの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、学校でのSDGsの取り組みを詳しく紹介するとともに、より具体的なイメージが持てるよう、小中高に分けた解説も加えています。
どうして、学校教育にSDGsが必要なのか?
どうして、学校教育にSDGsが必要なのでしょうか?
それは、持続可能な社会を実現するための人材が必要だからです。
文部科学省は、平成29年3月公示された小中学校新学習指導要領の中で、「持続可能社会の創り手の育成」を教育目標に掲げています。
つまり、持続可能な社会づくりのために、SDGsの取り組みが必要不可欠。
地球規模の問題を主体的に考え、解決するために行動する力を育てることが重要視されています。
SDGsとESDの違いとは?
ここで、紛らわしい「SDGs」と「ESD」の意味を確認しておきましょう。
・「SDGs」とは、Sustainable Development Goalsの略。持続可能な社会を実現するための17個の目標です。
・「ESD」とは、Education for Sustainable Developmentの略。持続可能社会の創り手を育成するための教育です。
つまり、「SDGs」の目標達成に貢献する教育が「ESD」という関係になります。
・参照元:持続可能な開発のための教育|文部科学省
小学校の取り組み事例
まずは、小学校の事例から紹介します。
地域との関わりが深まる取り組みがありました。
「スローフードでオリジナル弁当」気仙沼市立鹿折小学校
6年生は、気仙沼市と会津若松市の食材を組み合わせたオリジナル弁当を発案し、試食会を開催。
修学旅行とスローフードを掛け合わせた活動に取り組みました。
2つの市の特産物や地理を比較することで、気仙沼の食の価値を再発見。
地元の魅力を守っていこうという思いを育むことに繋がったそうです。
参照元:
・気仙沼市立鹿折小学校
・ユネスコスクール加盟校エリア|気仙沼市立鹿折小学校
「フラワータウンプロジェクト」大牟田市立大正小学校
「花でつながるあたたかいまちづくり」に取り組みました。
道路沿いなどに地域住民と協力して花を植え、花のあるまちづくりに尽力しました。
さらに、フラワーフェスティバルでは、「子ども花屋」をオープン。
花を通して地域の活性化に貢献したそうです。
子どもたちの思いが「11.住み続けられるまちづくりを」の大きな力になっていました。
中学校の取り組み事例
では、中学校ではどのような取り組みがあるのでしょうか。
環境問題に特化した事例を紹介します。
「腐葉土づくり」世田谷区立喜多見中学校
腐葉土づくりを通して、環境教育に取り組んでいます。
地域清掃で集めた落ち葉で腐葉土を作り、大根栽培や緑化活動に活用しました。
自分たちの行動が、自然界の役に立ったという達成感を肌で感じたようです。
地域清掃では「11.住み続けられるまちづくりを」、環境保全は「15.陸の豊かさを守ろう」の意識を、経験を通して高めていました。
参照元:
・世田谷区立喜多見中学校
・ユネスコスクール加盟校エリア|世田谷区立喜多見中学校
「木のストロープロジェクト」横浜市立市ヶ尾中学校
横浜市の水源である山梨県道志村内の水源林の間伐材を利用した「木のストローを作るワークショップ」を開催。
全校生徒に「地球が抱えている重大な問題が自分たちの10年の行動にかかっていること」ということを呼びかけました。
「1本の木のストローが環境、社会、経済の総和的な課題解決につながっている」という学びから、このようなワークショップへと発展。
身近な行動がSDGsに繋がっていることに気づいたことで、2人に1人の生徒が「考えや行動が変わった」と話していたそうです。
1本の木のストローが、多くの生徒に環境問題を自分事として考えるきっかけを与えました。
参照元
・横浜市立市ヶ尾中学校
・ユネスコ加盟校エリア|横浜市立市ヶ尾中学校
高校の取り組み事例
最後は高校での取り組み。
それぞれの専門性を生かした事例が多く見られました。
「特産物で地域貢献」兵庫県立篠山産業高等学校
丹波篠山の特産物を生かした地域活性化に取り組んでいます。
地域の農家と連携して、農産物を生かした使った商品を開発。
商品オーディションを経て、考案したものが地元のケーキ店から商品化されました。
また、地域防災を強化するために、避難所である小学校に「防災かまどベンチ」を設置。
機械工学科・電気建設工学科など、学科の枠を超えて協力した成果で、2021年度に2基の設置を成し遂げました。
このように地域の生活を豊かにする活動は、「11.住み続けられるまちづくり」の貢献になります。
参照元
・兵庫県立篠山産業高等学校
・ユネスコ加盟校エリア|兵庫県立篠山産業高等学校
「小学生に金融教育を」秋田市立秋田商業高等学校
小学生に「キッズビジネスタウン」というお仕事体験を実施。
学校全体を地域に見立て、銀行やコンビニ、ハローワークなど幅広い職種を用意し、小学生に楽しい体験を通して、働く意味やお金の価値を教えていました。
同時に、伝えることで高校生はビジネスや金融社会に関する知識を深められたようです。
高校生と地域の小学生との連携から生まれた金融教育は、「4.質の高い教育をみんなに」「8.働きがいも経済成長も」に繋がります。
参照元
・秋田市立秋田商業高等学校
・ユネスコ加盟校エリア|秋田市立秋田商業高等学校
取り組む上で注意すべきこと
学校でのSDGsの取り組みは、未来を担う子どもにとって価値があります。
紹介した事例はどれも素晴らしい内容でした。
けれども、注意すべきこともあります。
それは、「SDGsを学ぶこと」や「何か目立つことをすること」が目的になってはいけないということ。
何より大切なことは、「よりよい未来のために自ら行動できる力」を子ども一人ひとりに育てることです。
そのため、学校でのSDGsの取り組みは、子どもの「どうして〜なのだろう」「〜したい」という主体性があって、初めて成り立ちます。
今の社会には、子どもたちが、環境、経済、社会の問題に興味関心をもてるような環境を作っていくことが求められているのではないでしょうか。
まとめ
今回、学校でのSDGsの取り組みを紹介しました。
SDGsに関する教育は、持続可能な社会の創り手を育むことが目的。
そのために、多くの学校でSDGsを授業に取り入れていることが分かりました。
さらに、活動内容もSDGsについて学んで終わりではなく、自ら考え、行動することをゴールに置いたものばかり。
地域の特性を生かした取り組みも多くありました。
今後もSDGsは学校で必須教育の一つ。
しかし学校以外でも、子どもが環境、経済、社会の問題を身近に感じられる場が必要です。
家庭、自治体、企業が協力し合って、だれもがSDGsを生活で意識できる社会を目指していくことが大切ではないでしょうか。