2015年から、「環境」「社会」「経済」に関する課題を解決するために始まったSDGs。
最近では企業や自治体だけでなく、個人も積極的に取り組むなど、日本でも少しずつ広がりを見せています。
しかし、まだまだ解決しなければならない課題は山積みです。
本記事では、日本が2030年までに解決しなければならない、SDGsの課題や世界から見た日本の目標達成度をまとめました。
SDGsとは?
まずは日本の課題や達成状況を確認する前に、SDGsとは何かを見ていきましょう。
SDGsは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」と訳します。
「環境」「社会」「経済」の課題を解決するために、全世界共通の目標とターゲットを設定。2015年の国連総会に参加した、全ての加盟国が賛成し決定しました。
2030年までに、達成しなければならない目標が17個。その目標達成に向けて、「いつまでに、どの位の数値を目指すか」を表したターゲット169個で形成されています。
SDGsの特徴の1つは、目標やターゲットは設定してあるけれど達成方法が決まっていない点です。
生活環境や信仰している宗教などの理由から、達成できない国も出てくると考え、枠組みのみの設定となりました。
そしてSDGsは利益を出しながら、課題達成への取り組みを行うことも推進しています。
これにより、今まで経済的に参加する余裕のなかった中小企業も、SDGsの課題解決のために取り組めるようになりました。
このようにSDGsは、全員で課題解決を目指すことで、誰一人取り残されない世界を実現する内容となっています。
続いては、日本や世界の取り組み状況を示したSDGs達成度ランキングについて見ていきましょう。
SDGs達成度ランキングとは?
SDGs達成度ランキングは、世界各国のSDGsに対する取り組みの進捗状況をランキング化したものです。
このランキングは、ドイツのベルステルマン財団によって毎年作成されている「Development Report(持続可能な開発報告書)」をもとに順位付されています。
報告書には、各国のSDGsの達成度や進捗状況がまとめられており、目標ごとに達成度を数値化。
一目見て自分たちの達成度が分かると同時に、世界とどのくらい差があるのか把握できます。
また、達成できていない部分が具体的に示されており、改善策を考える時にも役立つでしょう。
2021年の報告書も6月に公開されました。次はSDGs達成度ランキングにおける、日本の順位と達成内容を確認していきます。
2021年のSDGs達成度ランキングにおいて日本は18位
2021年のSDGs達成度ランキングにおいて、日本は193カ国中の18位でした。
加盟国の中でも、目標達成に向けて積極的に取り組んでいることが分かります。
参照元: Sustainable Development Report2021 | 持続可能な開発レポート2021
そして現時点で達成している目標は、緑色で示されている「目標4 質の高い教育をみんなに」「目標9 産業と技術革新の基礎をつくろう」「目標16 平和と公正をすべての人に」の3つです。
参照元: Sustainable Development Report2021 | 持続可能な開発レポート2021
この3つに関しては「SDGsの達成を軌道に乗せる、または維持する」を表す緑の矢印もついているため、後退しないようにすることが今後の課題になります。
残りの14個は、課題が残る黄色が5個、重要な課題が残るオレンジが4個、主な課題が残る赤が5個という結果になりました。
全体的に見ると達成数も少なく、解決しなければならない課題も多い印象を受けます。
しかし緑の矢印も多く、少しずつですが目標達成のゴールに向けて歩んでいると言えるでしょう。
このように日本は、小さな1歩を確実に積み重ねている状態です。
その結果がSDGs達成度ランキングにも表れています。
しかし今年は、前年のランキングから順位を落としてしまいました。
2020年から順位を1つ落としてしまった日本
2021年のSDGs達成度ランキングにおいて、日本は18位という結果になりました。
しかしこの結果は、今までのランキングの最高順位ではありません。
2020年の日本は17位という結果を残しているため、今年は前年よりも1つ順位を落としたことになります。
さらに、2019年のSDGs達成度ランキングでは15位でした。
日本は、2年続けて順位を落としていることになるのです。
なぜ日本は、このような結果となってしまったのでしょうか。
理由の1つに、ほかの加盟国の存在があります。
・Sustainable Development Report2019| 持続可能な開発レポート2019
・Sustainable Development Report2020| 持続可能な開発レポート2020
世界のSDGsに対する取り組み強化も原因の1つ
SDGs達成度ランキングは、どの加盟国も目標達成に向けて真剣に取り組んでいます。
そのため、1年で大きな結果を出す国も少なくありません。
現に、2019年のランキングで11位のベルギーが、翌年のランキングでは5位に浮上するという飛躍もありました。
このように全世界が、2030年までに目標達成に向けて真剣に取り組んでいるため、日本が順位をさらに落とす可能性もないとは言い切れません。
日本がこれ以上順位を落とさないためには、現在達成している3つの目標の維持と残り14個の目標達成が鍵となります。
そして、報告書で「主な課題が残る」とされた5つの目標にも優先的に取り組むことが大事です。
次は日本が優先的に解決しなければならない、5つの目標について見ていきましょう。
課題が残る日本のSDGsの目標は全部で5つ
日本が優先的に取り組まなければならない目標は、下記の5つになります。
参照元:Sustainable Development Report2021 | 持続可能な開発レポート2021
・目標5 ジェンダー平等を実現しよう
・目標13 気候変動に具体的な対策を
・目標14 海の豊かさを守ろう
・目標15 森の豊かさも守ろう
・目標17 パートナーシップで目標を達成しよう
目標5と17に関しては、「適度に改善」を表す黄色い矢印がついており前年よりも改善が見られます。
目標13と14は「停滞」を表すオレンジの矢印がつけられました。
・化石燃料の燃焼やセメント生産による二酸化炭素の排出量
・輸入に含まれる二酸化炭素の排出量
・海洋健康指数の低下
・魚の過剰搾取や在庫
上記の課題が問題視されています。
参照元:Sustainable Development Report2021 | 持続可能な開発レポート2021
そして、とくに重く受け止めなければならない課題が目標15です。
5つの中で唯一、前年より状況が悪化してしまいました。
次は、目標15が悪化する原因となった課題について踏み込んでいきます。
前年よりも悪化した目標15の課題とは?
目標15が2021年のSDGs達成度ランキングで悪化した原因は、「陸と淡水地の平均面積」「レッドリスト」の2つが関係しています。
それぞれが、どのように関係しているのか1つずつ見ていきましょう。
陸上と淡水地の平均面積の減少
目標15「森の豊かさも守ろう」は自然環境の保護はもちろん、陸や内陸にある淡水地域に暮らす生態系などの課題も含めた目標になります。
生き物が暮らすためには、豊かな自然が必要です。
しかし、2020年からこの課題は改善されず、停滞しています。
主な原因として、
・地球温暖化
・砂漠化
・化学肥料や薬品による土壌・水質汚染などが挙げられます。
レッドリスト指数の低下
レッドリストとは、絶滅の可能性がある野生動物をリスト化したものです。
レッドリストは平成29年に改訂され、3,772種の生物が登録されました。
このレッドリストを、総合的に測るためにレッドリスト指数は存在します。
SDGsの長期目標では、レッドリスト指数1が目標です。
しかし、現在の日本のレッドリスト指数は0.77、前年の0.78から低下しました。
【日本のレッドリスト指数】
原因としては、
・地球温暖化
・環境汚染
・採取や乱獲
・外来種の放出
などが挙げられます。
上記のような課題を解決するためには、自治体や企業だけでなく、1人ひとりが真剣に向き合い取り組むことが必要です。
課題解決のために私たちにできることをしよう
「陸上と淡水面積の減少」「レッドリスト指数の低下」に共通する原因として、環境汚染や地球温暖化などが挙げられます。
このような課題に対して、私たちができることをしていきましょう。
例えば、
・使わない部屋の電気をこまめに消す
・水道の水を出しっぱなしにしない
・再生可能エネルギーの電力会社に乗り換える
・運転する場合はエコドライブを意識する
などがあります。
1人ひとりの行動は、ほんの些細なものです。
しかし、全員が意識することによって課題解決への大きな取り組みになります。
無理をせず、自分ができることから始めましょう。
まとめ
本記事では、SDGsに対する日本の課題や対策を紹介しました。
日本が2030年までに達成しなければならない目標は、現時点で14個あります。
そのうちの5個はとくに問題視されており、取り組みを強化する必要があるのです。
さらに目標15に関しては、前年より悪化する結果となりました。
課題である陸や淡水地域の面積を増やし、レッドリスト指数の低下を防ぐ必要があります。
2つの課題を改善するために一人ひとりが意識し、できることから取り組みましょう。
特定の人が大きいことをするのではなく、小さなことを地球上の全員が取り組むことに意味があります。
そうすることによって、課題解決のきっかけとなるのです。