日本が解決しなければならないSDGsの課題は、2025年版のSDGs達成度ランキングでは「ジェンダー平等」「つくる責任・つかう責任」「気候変動」「海の豊かさ」「陸の豊かさ」の5つの目標に集中しています。
ドイツの財団とSDSN(持続可能な開発ソリューション・ネットワーク)が毎年まとめる「持続可能な開発報告書」で、日本は2025年に167カ国中19位でした。
SDGsは2030年までに達成をめざす17の目標で構成される国際目標です。
この記事では、最新の達成度と日本の課題を整理します。あわせて、国・自治体・企業の取り組みと、暮らしの中でできる関わり方も紹介します。
日本のSDGs達成度ランキングの現在地
日本の順位は、2021年版の記事でお伝えした18位から約4年たっても、10位台後半にとどまっています。
まずは順位の推移と、数字の見方を確認します。
2020年の17位から2025年の19位までの推移
日本の順位は、2020年が17位、2021年が18位、2022年が19位、2023年が21位でした。
2024年は18位に戻り、2025年は167カ国中19位でした。スコアは80.66です。
アジアの国ではトップ水準で、2025年版では主要国のカナダ(25位)、韓国(34位)、米国(44位)を上回っています。
順位が下がってもスコアは上がっている
2023年のスコアは79.41でしたが、2025年は80.66です。日本の得点は上がっているのに順位が動かないのは、他の国も同じ速さか、それ以上の速さで改善しているためです。
2021年版の記事では、前年の11位から翌年5位に浮上したベルギーの例を挙げました。順位は自国の努力だけでなく、他国の動きにも左右されます。
世界全体の進捗はどうなっているか
2025年版の報告書では、世界全体で2030年までに達成の軌道に乗っているSDGsのターゲットは約17%にとどまると示されています。17の目標のうち、現在の進み方で2030年に達成できる見通しの目標は1つもありません。
日本だけが遅れているわけではなく、世界全体が目標の折り返しを過ぎて遅れているのが現状です。
そのうえで日本は、先進国としてどの分野に力を入れるべきか問われています。
日本が解決しなければならない5つの目標
日本が「大きな課題が残る」とされた目標は、2023年版でも2025年版でも、ほぼ同じ顔ぶれです。
2025年版ではこれに目標2「飢餓をゼロに」を加える整理もあります。これは、食料生産の持続可能性や輸入への依存度が評価に影響しているためです。
ここでは、特に差が大きい5つの目標を取り上げます。
目標5 ジェンダー平等を実現しよう
世界経済フォーラムの2026年版ジェンダーギャップ指数で、日本は145カ国中117位、スコアは0.670でした。主要7カ国(G7)では最下位です。
分野別に見ると、政治が121位、経済が119位と低く、健康は49位、教育は68位です。
学ぶ機会や健康面の男女差は小さい一方で、意思決定の場にいる女性の少なさが数字に表れています。
背景としては、家事や育児の負担が女性に偏りやすいことが、働き方や政治参加に影響していると指摘されています。
2021年の記事では目標5は「適度に改善」の黄色い矢印でしたが、現在も深刻な課題が残る目標とされています。
目標12・13 つくる責任、つかう責任と気候変動
日本の2023年度の温室効果ガス排出・吸収量は約10億1,700万トン(CO2換算)でした。前年度から4.2%、2013年度から27.1%減っており、環境省は過去最低と発表しています。
減少の要因は、電源に占める再生可能エネルギーと原子力の割合が3割を超えたことと、製造業の国内生産活動が落ち込んだことの2つです。
国は2035年度に60%、2040年度に73%(いずれも2013年度比)の削減をめざしています。2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画は、2040年度の電源構成で再生可能エネルギーを4〜5割程度とする見通しを示しました。
排出量は減っています。それでも報告書が課題とするのは、化石燃料への依存の大きさと、輸入品の生産に伴う環境負荷です。
自国の排出量だけでなく、海外で生産された食料や製品を通じた環境負荷まで含めて評価されるため、目標12と13は国内の対策だけでは改善しにくい構造になっています。
目標14・15 海と陸の豊かさ
目標14は、魚の乱獲や海洋の健康状態が課題です。目標15は、森林や生態系の劣化に加えて、輸入に伴う生物多様性への影響が指摘されています。
環境省の第5次レッドリスト(植物・菌類)は2025年3月に公表されました。掲載は2,952種で、そのうち絶滅危惧種は2,063種です。
第4次の2,270種より減っていますが、環境省は評価基準の見直しと、個別の種の回復が理由だと説明しています。数字が減ったことを、そのまま自然環境全体の改善と読むことはできません。
動物のレッドリストは2025〜2026年度にかけて順次公表される予定です。
2021年の記事では、目標15が前年より悪化した点に注目しました。この目標は、その後も大きな課題が残る目標に入っています。
「達成済み」でも安心できない理由
ランキングは、日本の現在地を知る手がかりになります。ただし、数字の意味を取り違えると、行動の優先順位を誤ります。
ここでは誤解されやすい点を3つ挙げます。
「達成済み」は終わりではなく維持の課題
健康、教育、平和と公正などの目標は、日本が比較的高く評価される分野です。2025年版でも、目標3「すべての人に健康と福祉を」は達成の評価です。目標4、9、16などでも高い評価が並びます。
2021年の記事で、教育・産業・平和の3つが緑の評価だったのと同じ傾向です。
こうした分野は、少子高齢化や地域の人口減少で、今の水準を保てなくなるおそれがあります。達成した目標は、維持するための取り組みが必要です。
国全体の指標では地域や個人の差が見えない
ランキングは国単位の統計で決まるため、都道府県や市町村ごとの違いは反映されません。
同じ「課題が残る」でも、都市部の長時間労働や、地方の担い手不足など、現場で起きていることは異なります。
自分の地域でどの課題が重いのかは、自治体のSDGs計画や統計で別に確認する必要があります。
順位を上げること自体が目的ではない
順位は改善の目安にすぎません。順位を上げるために指標だけを整えると、現場の実態から離れます。
大切なのは、各指標の背景にある暮らしや仕事の課題を見て、何が変われば状況が良くなるのかを考えることです。
国・自治体・企業は何に取り組んでいるのか
課題が見えたところで、次に気になるのは「誰が、何をしているのか」でしょう。日本の取り組みを、国、自治体、企業の3つに分けて見ていきます。
国の取り組み
日本政府は、総理大臣を本部長とするSDGs推進本部を設け、2017年から毎年「SDGsアクションプラン」を策定しています。2023年12月にはSDGs実施指針を改定しました。
2025年7月には国連ハイレベル政治フォーラムで、4年ぶり3回目となる自発的国家レビュー(VNR)を発表しています。
このレビューは、少子高齢化、地方のSDGs推進、防災など、日本ならではの挑戦に焦点を当てています。統計などのデータを使って、できる限り客観的に進捗を評価した点も特徴です。
自治体の取り組み
内閣府は、SDGsに優れた取り組みを提案した自治体を「SDGs未来都市」として選定しています。2018年度の開始から累計で200を超える自治体が選ばれています。
2025年度は9都市が選ばれ、岩手県遠野市、東京都西東京市、新潟県小千谷市、長野県箕輪町、静岡県三島市と小山町、大分県日出町、宮崎県高鍋町、鹿児島県志布志市が名を連ねました。
大都市から人口の少ない町まで含まれており、地域の事情に合わせた課題解決が進められています。選定都市の計画は、国の交付金による優先的な支援の対象になります。
企業の取り組み
ジェンダー平等については、政府が東京証券取引所のプライム市場に上場する企業に、2030年までに女性役員比率を30%以上にすることを目標として示しています。東証は2023年10月に上場規程等を改正しています。
食品ロスの分野でも、企業の努力が成果を出しています。2023年度の事業系食品ロス量は231万トンで、2000年度比で58%減りました。
一方、家庭から出る食品ロスは233万トンあり、事業系とほぼ同じ量です。企業の取り組みだけでは限界があり、暮らす人の行動も欠かせないことが分かります。
暮らしの中で課題に関わる3つの入口
最後に、読者のみなさんが日常で取り組める行動を考えます。ここまで見てきた課題の中から、生活とのつながりが分かりやすいものを3つ選びました。
食品ロスを減らす
2023年度の食品ロス量は464万トンで、経済損失は約4.0兆円、温室効果ガス排出量は約1,050万トン(CO2換算)と推計されています。
家庭系の食べ残しや、手つかずのまま捨てる食品を減らすことは、目標12に直接つながります。
10月は食品ロス削減月間です。冷蔵庫の中身を確認してから買い物に出かけるなど、買う量を見直すところから始められます。
電気の選び方を見直す
目標13に関わる行動として、使う電気の中身に目を向ける方法があります。
再生可能エネルギーの割合が高い電力プランを比べて選ぶ、使わない部屋の電気を消す、エコドライブを心がけるといった行動です。
2021年の記事でも触れたように、一人ひとりの行動は小さくても、需要が変われば供給側の動きも変わります。
地域の計画や身近な職場を知る
目標5や15のような構造的な課題は、個人の努力だけでは変えにくいものです。そのため、自分の自治体のSDGs計画を調べる、職場の育児休業の取得状況を知るなど、状況を把握することが最初の一歩になります。
身近な環境がどうなっているのかを知ることが、次の行動を選ぶ判断材料になります。
無理のない範囲で、関心のある分野から関わってください。
まとめ
日本は2025年のSDGs達成度ランキングで167カ国中19位でした。2021年の18位から大きくは動いていませんが、スコア自体は上がっています。
一方で、ジェンダー平等、つくる責任・つかう責任、気候変動、海と陸の豊かさの5つの目標は、一貫して大きな課題が残る分野です。
排出量の削減や食品ロスの減少など、改善している分野もあります。
ランキングは、日本の現在地を知る目安として役立ちます。ただ、順位や色分けだけで判断せず、国全体の統計では見えない地域や暮らしの課題にも目を向けることが大切です。
国、自治体、企業、個人がそれぞれの立場で動くことで、はじめて数字は変わります。
まず1つだけ、今週の買い物で食品の買いすぎを避けることから試してみてください。
- 日本は2025年のSDGs達成度ランキングで167カ国中19位、スコアは80.66
- 大きな課題が残るのは、目標5、12、13、14、15の5つ
- 順位は他国の動きにも左右されるため、スコアや指標の中身を見ることが大切
- 国のVNR、SDGs未来都市、企業の女性役員比率目標など、各層で取り組みが進んでいる
- 食品ロスの削減や電力の見直しなど、暮らしの中にも関われる入口がある
参考文献
- SDSN「Sustainable Development Report 2025」(2025年)
- ニューズウィーク日本版「最高ランク『達成済み』は2項目のみ。前回から評価を落とした項目、『深刻な課題がある』と判断された5項目とは?」(2023年)
- nippon.com「ジェンダーギャップ指数117位 高市首相就任でも下位グループ 脱せず」(2026年)
- 環境省「2023年度の温室効果ガス排出・吸収量について」(2025年)
- 環境省「第5次レッドリスト(植物・菌類)の公表」(2025年)
- 内閣府地方創生推進事務局「2025年度 SDGs未来都市の選定について」(2025年)
- 農林水産省「2023年度の食品ロス量(推計値)の公表」(2025年)
- 外務省「SDGs 自発的国家レビュー(VNR)2025」(2025年)


