アメリカ、イギリスにおいて、人文学系大学生の人気就職先ランキングに、過去にNPO・NGOがランクインし、注目を集めました。
また、世界最高峰の学校のひとつ「ハーバード大学院」卒業生の就職先の2割は、NPO・NGOであるとも言われています。
非営利である両組織が就職先として人気を得た理由は、組織の特色である”社会貢献”という果たすべき使命への共感です。
日本でも、2021年におこなわれた調査で、就職先企業を選ぶ基準として「社会貢献度が高いこと」が1位に挙げられています。
また、同じく社会貢献につながるSDGsに対する、学生の興味・関心も高くなっています。
そこで、欧米で人気就職先としてNPO・NGOが選ばれる理由、日本の動向について詳しく解説します。
欧米で就職先として人気を得ているNPO・NGO
アメリカ・イギリスの人文学系大学生の人気就職先調査において、NPO・NGOがそれぞれランクインしています。
具体的に、ランキングの状況を見てみましょう。
アメリカの人気就職先 調査結果
企業ブランディングを手がける企業「Universum(ユニバーサム)」は、2015年に続き、2016年に「アメリカの文系人気就職先ランキング」を発表。
2016年のランキングでは、6位に国際NGO「Peace Corp(ピースコープ)」がランクインしています。
「Peace Corp」は、日本でいう青年海外協力隊のような団体で、ボランティアスタッフを開発途上国に派遣し、現地支援をおこなっています。(wikipediaより抜粋)
「Peace Corp」は、2015年にも人気就職先ランキングの6位にランクインしていました。
また、2016年の同ランキングには、NPO団体である「Teach for America(ティーチ フォー アメリカ)」(以下、TFA)が8位に入っています。
TFAは、アメリカにおける所得格差による教育格差、教師不足の解決を目的とした教育NPOとして設立されました。
目的達成のための具体的な活動として、アメリカ国内の大学卒業生を最低2年間、教員免許の有無に関係なく、国内の教育困難地域に講師として赴任させるプログラムを実施しています。
そうした活動に共感が集まり、2010年には全米文系学生・就職先人気ランキングでは1位となり、2015年も8位に選出されています。
イギリスの人気就職先 調査結果
アメリカと同様に、「Universum(ユニバーサム)」が2016年に発表した「イギリスの文系人気就職先ランキング」では、貧困と不正を根絶するための支援・活動をおこなう国際NGO「Oxfam(オックスファム)」が6位にランクイン。
前年2015年にも6位に選ばれ、1年経った2016年も同じ順位をキープしていることになります。
また、8位にはイングランドおよびウェールズの教育上の不利益に対処するNPO団体「Teach First(ティーチファースト)」が、2015年に引き続き選出されています。
NPO・NGOとは?就職先として人気の理由は「社会貢献」
NPO・NGOが就職先として人気を得ている理由は、「社会貢献」です。
その根拠は、両団体の定義と活動内容にあります。
またNGOは、政府とは別に地球規模の課題解決に取り組む民間団体を指します。
両団体の明確な線引きはなく、いずれも非営利であり、政府や企業から独立した立場をとっています。
そして、おこなっている活動内容が、社会における課題解決を通じた社会貢献であるという共通点を持っています。
この点から、NPO・NGOのおこなっている「社会貢献」への共感、そして活動を通じてやりがいを感じられることが、人気就職先となった理由であると考えられます。
日本の学生による就職先選びの基準は社会貢献となる「SDGs」
日本における2021年卒の文系学生の人気就職先ランキングには、NPO・NGOといった非営利団体はランクインしていません。
そこで、日本については「企業」に焦点をしぼって紹介します。
2020年8月、株式会社ディスコは、2021年3月に卒業予定の大学4年生のうち、就職先決定者を対象として「就活生の企業選びとSDGsに関する調査」をおこないました。
このレポートから、現在の日本の学生が就職活動において、どんな点を重視しているか見ていきましょう。
就職先企業として重視する項目は 「社会貢献度の高さ」
株式会社ディスコのレポートによると、就職先企業を決めた理由としてもっとも選ばれたのが「社会貢献度が高い」でした。
この項目は、3年前、2年前におこなった同じ調査でも、それぞれ1位となっています。
このことから、近年、就職活動をおこなった学生が、企業の社会貢献度を重要視していることがわかります。
「企業の社会貢献度を判断する要素」としてSDGsなどの取り組みは5位に
同じ調査の中で、「企業の社会貢献度を判断する要素」に対する回答として、「CSR/ESG/SDGsなどの取り組み」が5番目に選ばれました。
1位は、「企業理念」でしたが、「CSR/ESG/SDGsなどの取り組み」が「経営計画」「業績」よりも上位に選ばれていることから、具体的な社会活動に対する学生の注目度の高さがわかります。
就職活動中の学生のSDGsに対する認知度は70%を超える
同じ対象者に、SDGsを知っているかという質問をしたところ、全体の76.4%がSDGsについて「詳しく知っている」「ある程度知っている」「聞いたことがある」と回答しています。
前年同期となる2019年8年の調査では、SDGsの全体認知度は52.9%となっており、1年で認知度が向上したといえます。
また、2020年8月の結果を文系女子の回答にしぼると、96.0%が「詳しく知っている」「ある程度知っている」「聞いたことがある」と回答していて、特に認知度が高いことがわかります。
こうした結果から、日本でもSDGsへの取り組みが注目され、就職先選びの基準のひとつとなっているといえます。
また、欧米で社会貢献度の高さを基準に就職先としてNPO・NGOが人気であることと同様に、日本の学生も社会貢献度の高さによって就職先を選択している傾向があると考えられます。
積極的な社会貢献で 選ばれる企業へ
企業が人気就職先として学生に選ばれるためには、各企業がSDGsをはじめとした社会貢献活動に積極的に取り組み、学生だけでなく社会にアピールすることが大切です。
それにより企業イメージが向上し、優秀な人材を確保できます。
またそれだけでなく、企業も社会も持続可能となり、SDGsで定められたゴールの達成にも近づきます。
各企業でそうした結果を残すことで、日本そして世界でSDGsの達成が可能となります。
日本においては、株式会社ディスコの調査を通して学生が就職先企業を選ぶ基準として、給与や福利厚生よりもSDGsなどの社会貢献を優先していることがわかりました。
社会の動きや価値観が大きく変わる中で、社会貢献に真摯に取り組む企業に将来性を感じ、そこで自分の役割を果たすことで、やりがいや成長を感じられるのかもしれません。
今後SDGsの取り組みが世界的に加速する中で、この傾向はより明確になっていくでしょう。
しかし、社会貢献にはさまざまな方法があります。
企業や団体といった、大きな規模でしかできない活動もあります。
一方で、個人でもできる取り組み、個人でしかできない取り組みもあります。
私たちは日本に住む社会人として、会社や団体を通じた取り組みももちろんですが、一人ひとりが自分にできることを少しずつでも積極的におこなっていくことが大切なのではないでしょうか。
・Teach for America|Teach for all HP
・アメリカ・イギリスの文系人気就職先ランキング2016にTeach for Allネットワークがそれぞれランクイン、日本でも「非・大企業」が7位に。|Drive HP
・就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月)/キャリタス就活2021資料|株式会社ディスコHP
・就活生の企業選びとSDGsに関する調査(2020年8月)|株式会社ディスコHP