アップサイクルとは、不要になったモノや副産物を、素材の特徴を活かしながら元より価値の高いモノへ作り替えることです。海洋プラスチックはアクセサリーに、車のエアバッグはバッグに、コーヒーかすはタンブラーに生まれ変わります。この記事では、おすすめのアップサイクルブランド5選を、日本で買える実例から紹介します。環境省のデータで「なぜ今アップサイクルなのか」を確かめたうえで、気軽に取り入れられるものから始めるための選び方と、買う前の確認点もまとめました。
衣替えで手持ちの服を見直し、年末のギフトを考え始める10月は、モノとの付き合い方を見直しやすい時期です。この機会に、アップサイクル製品という選択肢を知っておいてください。
アップサイクルとリサイクルの違いを整理する
アップサイクルのブランドを選ぶ前に、リサイクルとの線引きと、よくある誤解を押さえておきます。ここを知っておくと、商品説明の読み方が変わります。
素材を原料に戻すか、そのまま活かすか
リサイクルは、使い終えたモノを一度溶かしたり細かく砕いたりして原料に戻し、別の製品に作り直す方法です。新聞紙が再生紙になる、ペットボトルが繊維になる、といった流れが代表的です。
アップサイクルは、素材の形や質感をなるべく残したまま、デザインや用途の工夫で新しい価値を持たせる方法です。着なくなったジーンズがバッグになる、古いタイヤが植木鉢になるといった例が当てはまります。
青森県は、アップサイクルを「価値を高めたリサイクル」と説明しています。廃棄物や副産物など、これまで不要とされたり十分に活用されていなかったものを、工夫によってより価値の高いものへ転換することです。同じ県のページでは、熱回収のようなエネルギー利用は対象に含まれないとしています。日本では国による統一的な定義は見当たらないため、自治体や企業ごとに説明が少しずつ異なります。商品を選ぶときは、言葉の定義より「何を、どう活かしたのか」が書かれているかを見るほうが確かです。
「アップサイクルだから環境に良い」とは限らない
よくある誤解が、アップサイクル製品を買えばそれだけで環境に貢献できるという受け止め方です。原料に戻す工程を省けるぶん、エネルギーを抑えられる場合はあります。それでも、製品1つあたりの環境負荷が実際に小さいかどうかは、素材の集め方や運搬、加工の方法によって変わります。
もう1つ見落とされやすいのが、買い足しそのものの影響です。すでに持っているバッグや文具を使い続けるほうが、新しく何かを作るより資源を使いません。アップサイクル製品は「新しく買う必要が出たときの選択肢」と考えると、無理のない付き合い方になります。
数字で見る日本の衣類と、アップサイクルが注目される理由
アップサイクルの素材は衣類だけではありませんが、日本で最も量が大きく、データも整っているのは衣類です。環境省の資料から、現状を確認します。
環境省のサステナブルファッションのページによると、日本で供給される衣服は2024年に約35億着で、1990年の約20億着から約1.8倍に増えました。一方で購入量はほぼ横ばいとされています。同じ資料では、私たちが持っている服の約45%が使われないままタンスに眠っており、1年間に1回も着られていない服は1人あたり約24枚にのぼると示されています。
手放された服の行き先も数字になっています。日本の家庭から焼却・埋立される衣類は年間約50万トンで、1日に大型トラック約130台分に相当するとされます。手放された服のうちリユース・リサイクルされるのは約38%です。なお、この資料の中でも画像によって焼却・埋立量の数値に幅があり、推計の年版によっても数字は動きます。引用するときは、どの年の推計かを環境省の元資料で確かめてください。
こうした状況を受けて、政府は2030年度までに家庭から廃棄される衣類を2020年度比で25%減らす方針を掲げています。この目標を実現するには、リサイクルの仕組みづくりに加えて、手放される前に長く使う工夫や、手放された素材を別の価値に変える選択肢が欠かせません。アップサイクルは、その選択肢の1つとして位置づけられます。
おすすめアップサイクルブランド5選
ここからは、素材も用途も異なる5つのブランドを紹介します。いずれも日本のオンラインショップや販売店で出会えるものを選びました。価格や在庫、取り扱いは変わることがあるため、購入前に公式サイトで最新の情報を確認してください。
カエルデザイン|海洋プラスチックのアクセサリー
カエルデザインは、海岸に流れ着いたプラスチックごみをアクセサリーに作り替えるクリエイティブユニットです。2020年の紹介記事によると、障がいのあるパートナーと海岸でごみを回収し、重曹で手洗いして乾かし、色ごとに選別します。その後、色を組み合わせて板状に成形し、ハサミで切り出して仕上げるという工程です。
一つひとつの色の混ざり方が異なるため、同じものが二つとない点が魅力です。回収する海岸のごみの色がそのまま柄になるので、手に取るたびに海のごみの問題を思い出すきっかけにもなります。紹介記事では、売上の一部を環境NGOに寄付する取り組みにも触れられています。寄付の有無や割合は時期によって変わる可能性があるため、公式サイトで確認すると安心です。
kome-kami|食べられないお米から生まれた紙
kome-kamiは、奈良市の紙卸商ペーパルが開発した紙素材です。賞味期限切れの備蓄米、破砕米、くず米、酒造りで出る米のぬかなど、食用に向かないお米を粉末にして、FSC認証のパルプに混ぜて作られます。素材の開発は2021年で、2023年11月には紙に含まれる化学的な結合剤を、お米由来の新しい糊に置き換えた改良版が発表されたと報じられています。
売上の1%がフードバンクへの寄付に充てられる点も特徴です。名刺、パンフレット、カレンダー、メモ帳など身近な紙製品に使われているので、アクセサリーやバッグより日常に取り入れやすい部類です。仕事で紙を発注する機会があれば、用紙の選択肢に加えるだけで参加できます。
AIRPAQ|廃車のエアバッグとシートベルトで作るバッグ
AIRPAQは、ドイツ発のバッグブランドです。廃車から取り出したエアバッグ、シートベルト、バックルを再利用し、ロールアップ式の開口部や肩ひもなど、もともと丈夫な素材の強みを活かして仕立てています。日本では2020年6月に登場し、三栄コーポレーションのサステナブルプロジェクト「Our EARTH Project」が展開しています。
エアバッグの生地は個体ごとに色や傷み方が異なるため、同じ型でも表情が変わります。人と同じものは持ちたくないという人に向いています。新品の素材を一から作る必要がないぶん、素材の来歴がはっきりしている点も、選ぶ理由になります。
SUS coffee|コーヒーかすを混ぜた日用品
SUS coffeeは、スペースシップアース社のアイグッズが展開する、コーヒー抽出後のかすを使った雑貨のシリーズです。2021年6月の報道では、第一弾のタンブラーはコーヒーかすを30%使用し、二重構造で耐熱温度は90度とされています。同じ時期に、ノートも発売されました。当時の参考価格はタンブラーが2,200円、ノートが1,760円で、売上の一部は「TABLE FOR TWO」を通じて発展途上国の子どもたちへの支援に充てられると紹介されています。
大切なのは、コーヒーかすの配合が30%であるという点が明示されていることです。残りは別の素材であるため、「100%コーヒーかす」と受け取らないようにしてください。配合率が公開されている商品は、買う側が中身を判断しやすく、信頼できる目安になります。価格は発売当時の参考価格で、現在は変わっている場合があります。
Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE|シートレザーの端材を継ぐ
Tsugi-Craftは、トヨタが展開するアップサイクルブランドです。自動車づくりの過程で生まれる上質なシートレザーを、パッチワークのように一枚ずつ継ぎ合わせて仕立てます。ブランド名の「Tsugi」には、継ぐ、繋ぐ、次の未来へという意味が込められています。
公式ページによると、キズやシワ、色合いの違いも欠点として隠さず、素材の個性として活かすことを大切にしています。自動車メーカーの工場で出る素材を使うため、素材の出どころを追いやすい点も特徴です。5つのうち最も「ものづくりの現場から出る端材を、別の産業が使う」型に近い事例といえます。
気軽に取り入れるための場面別の選び方
ブランドを知っても、何から買えばよいか迷う人は多いでしょう。ここでは、使う場面ごとに、取り入れやすい順に考えてみます。
贈り物から始める
年末のギフトや誕生日の贈り物は、最初の一歩に向いています。自分用だと「本当に必要か」を悩みますが、贈り物は誰かに渡すという目的があるぶん、選ぶ理由がはっきりします。アクセサリーや雑貨には、素材の背景を話題にできる良さもあります。
ただし、受け取る相手の好みを無視して、素材のストーリーだけで選ぶのは避けたいところです。ストーリーに共感するかどうかは人それぞれです。デザインや使い勝手が相手に合っていることが前提になります。
毎日使う日用品で試す
タンブラーやノート、ペンケースなど、毎日使う小物は、使うたびに素材の工夫を実感できます。使用頻度が高いので、買ったあとに使われなくなる心配も少なくなります。耐久性や洗いやすさなど、日用品としての基本性能も合わせて確認しておくと、長く使えます。
すでに同じ用途のものを持っているなら、新しく買い足さず、使い切ってから選ぶほうが、結果的に資源の消費を抑えられます。買い替えのタイミングが来たときに、候補にアップサイクル製品を入れておく、という程度で十分です。
仕事で使う紙や備品に取り入れる
名刺、封筒、カレンダー、パンフレットなど、仕事で発注する印刷物は、個人の買い物より量が多くなります。kome-kamiのように、用紙の種類を変えるだけで取り入れられる素材があるため、担当者の判断で小さく試せる範囲があります。社内で提案するときは、価格、納期、印刷の仕上がりを比較表にして示すと、話が通りやすくなります。
買う前に確認したい5つのチェックポイント
アップサイクルという言葉が広がるにつれて、実態の伴わない「環境に良さそうな表現」も増えています。景品表示法の優良誤認にあたる表示が問題になることもあり、根拠のない環境配慮のアピールは、グリーンウォッシュと呼ばれます。商品説明を見るときは、次の5点を確かめてください。
- 何を素材にしたのかが具体的に書かれているか(海洋プラスチック、エアバッグなど)
- 再生・アップサイクル素材の配合率が示されているか
- 素材の出どころや回収の方法が説明されているか
- 寄付や雇用への貢献をうたう場合、割合や対象が明記されているか
- 長く使える品質か、修理や問い合わせの窓口があるか
1つ目と2つ目は、SUS coffeeのように配合率が公開されているかどうかで判断できます。「アップサイクル」とだけ書かれていて、何をどのくらい使ったのかが分からない商品は、判断材料が足りません。
3つ目と4つ目は、背景のストーリーが事実に基づいているかを見る視点です。素材の出どころが追えるブランドは、問い合わせにも答えてくれることが多い印象です。売上の1%を寄付する、障がいのある人と一緒に制作する、といった説明は、購入の決め手になりやすいぶん、中身を確かめる価値があります。
5つ目は、見落とされやすいのに最も大きく効く点です。どれほど素材が良くても、数回で壊れて捨てることになれば、アップサイクルの意味は薄れます。気に入ったデザインを長く使うことが、結果として環境負荷を下げることにつながります。
日本の地域と企業に広がるアップサイクルとSDGs
個人が買う製品だけでなく、日本では自治体や企業の動きも広がっています。最後に、その広がりとSDGsとのつながりを確認します。
地域資源を活かす自治体の取り組み
青森県は、県内の未利用資源を活かした新しいビジネスを生み出すため、アップサイクルフォーラムを開きました。対象には、果実の搾りかす、酒粕、ホタテの貝殻などが挙がっています。このフォーラムは令和7年度で終了し、「青森県GXビジネスネットワーク」に移行したとされています。地域の産業で出る副産物を、地域の企業が新しい商品や事業に変えていく流れです。
製造業の端材を別の価値に変える企業
トヨタのTsugi-Craftのように、自動車づくりで出る素材を活かした事例があります。AIRPAQのように廃車の部品を使うものも含め、モビリティ分野の素材は、強度や耐久性が高く、アップサイクルとの相性が良い素材です。製造業が、自社の端材を自社ブランドの商品に変えれば、廃棄物の削減と新しい収益を両立できます。
SDGs目標12とのつながり
アップサイクルは、SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」と関わります。農林水産省が紹介するターゲット12.5は、「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用及び再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する」という内容です。また、ターゲット12.3は、2030年までに小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄を半減させ、収穫後損失などを減らすことを掲げています。食べられなくなったお米を紙にするkome-kamiは、この食料の廃棄の問題にも触れる事例です。
ただし、1つの商品を買えばSDGsの目標が達成されるわけではありません。目標の達成には、企業の生産のあり方、制度、私たちの消費の習慣が重なる必要があります。個人にできることは、そのなかの「選ぶ」部分を丁寧にすることです。
まとめ
アップサイクルは、捨てられるはずだった素材に、新しい価値を与える取り組みです。リサイクルのように原料に戻す工程を省けますが、環境に良いかどうかは素材の集め方や使い方で変わります。環境省のデータが示すとおり、日本では今も毎年多くの衣類が手放されて焼却・埋立されています。手放す量を減らす努力と、手放された素材を活かす選択肢の両方が必要です。
この記事で紹介したカエルデザイン、kome-kami、AIRPAQ、SUS coffee、Tsugi-Craftは、素材も使う場面も異なります。贈り物、日用品、仕事の備品と、無理のない場面から選んでみてください。買う前には、素材、配合率、出どころ、寄付の中身、長く使えるかの5点を確認しておくと、実態の伴わない表現に惑わされにくくなります。
まず1つだけ、次に買い替える予定の小物を、アップサイクル製品の候補から探してみてください。
- アップサイクルは素材の形や質感を活かして価値を高める方法で、環境負荷の低さは別途確認が必要
- 環境省の資料では、家庭から焼却・埋立される衣類は年間約50万トン
- 5つのブランドは、アクセサリー、紙、バッグ、日用品、レザー小物と、素材も用途も異なる
- 贈り物・日用品・仕事の備品の順に、取り入れやすい場面から試せる
- 買う前に、素材・配合率・出どころ・寄付の内容・耐久性の5点を確かめる
参考文献
- 環境省「サステナブルファッション」(2025年閲覧)
- 農林水産省「SDGsの目標とターゲット」(2025年閲覧)
- 青森県「青森県アップサイクルフォーラムについて」(2025年閲覧)
- Forbes JAPAN「食べられないお米を紙にアップサイクル」(2023年)
- 共同通信PRワイヤー「AIRPAQ」プレスリリース(2021年)
- BCN+R「SUS coffee」(2021年)
- ELEMINIST「カエルデザインwithリハス 海洋プラスチックごみから生まれるアクセサリー」(2020年)
- トヨタ自動車「Tsugi-Craft by TOYOTA UPCYCLE」(閲覧時点の公式ページ)

